風を感じて 2
「うんうん、それで?」 ポポロンさんは、ぞうさんに聞きました。 大きな体とは対照的な小さな瞳からポロポロと 涙をこぼしながらぞうさんは話しました。 「なんだって、なんだって?」 と、ニャニャニャンたちはポポロンさんに尋ねました。 なぜか、ぞうさんとはポポロンさんしか話せないのです。 「じつはね・・・・・」 と、ポポロンさんは話し始めました。 元々、このぞうさんはタイに住んでいて、 お金持ちの家に仕えていました。 なに不自由なく、ごはんは食べ放題。 お仕事も時々ご主人様を背中に乗っけて散歩に出る くらいだったので、大きなぞうさんには楽ちんでした。 おまけに、そのお屋敷には他にもたくさんの 象がいたため、お仕事も替りばんこ。 夢のような日々でした。 ところがある日ご主人様は、パソコンに興味を持ち始め、 次から次へとパソコンと周辺機器を買い漁りました。 そして、たちまちパソコン王になったのです。 そのうち、召使いを呼び 「おいおい、インターネットとやらを 始めてみようではないか」 と言い出しました。 ところが、パソコン王のお屋敷には電話がありません。 そこで、ぞうさんたちを走らせ、情報を落とし込んだ FDをやり取りするという原始的な手段を考えて実行しました。 そのため、ぞうさんたちは、 常にインターネットをやっている人に 家とパソコン王の家の間を(片道50km) 行ったり来たりしなければなりませんでした。 そうこうしているうちに、沢山いたぞうさんは、 一頭逃げまた一頭逃げ、 最後の一頭になったこのぞうさも疲れ果てて、 「電話回線を引いて下さい」 と書置きしてお屋敷を後にしたのです。 「ふーんタイヘンだったね。 ジュリも相当人使いが荒いけど、 そんなムリなことは言わないよ」 と、ポポロンさんが言うと、 「では、私を使ってもらえないでしょうか?」 「ええ! ジュリはぞうさんは好きだけど、 家には置いてもらえないよ。 そうだ、僕たちは今、ポポロンの郷という 動物たちの集う郷に向けて旅をしているんだ。 一緒においでよ」 そう誘うと、ぱおんぱおん言って 喜んだぞうさんでした。 「また勝手に決めやがって! こんなデカイ奴どうやって連れて歩くんだよ!」 とニャニャニャンは言いましたが、 「疲れたら背中に乗せてもらえるよ」 そのひとことであっさり 仲間入りを許したのでした。 「さあ、風の青さを抱きしめ て荒野へとまっすぐに出発だ!」