ポポロンさんとコココンさん
ある朝、ジュリが目を覚ますと枕元に書置きがありました。 「コココンが来ます。いぢめないで下さい。ポポロンより」 その筆跡の主はスーピーと寝息を立ててます。 「あぁ、タヌキの次はキツネかい」 そう、うんざりした口調でジュリはつぶやいて、 リビングに行きました。 ところが、キツネはいないようです。 そのかわり見知らぬ男がいました。 その、赤い派手なキモノを着た小太りの男は、 あやしいものではございません、 といつもここに来る人たちのキメぜりふを言わずに、 こう大声で叫びました。 「チャンラ〜〜!」 ゲゲ、コココンとはそういうことだったのか! でも、私は笑点は嫌いなのだ! とつぶやくジュリを横目にその男は、 ふるさとがどうしたとか、 どうでもいいことを大声で早口でまくしたてました。 そうしていると、 パジャマ姿のポポロンさんが ゲラゲラ笑いながらやってきました。 「おいおい、なんでこんな奴が来るんだよぉ。 大方、私の生まれたふるさとチャーザー村は 雪に閉じ込められているので、ここにおいてやって下さい、 とか言うんだろぉ? 私は笑点が嫌いなんだよぉ」 「お察しの通りでございます」 と、ポポロンさんは言いました。 「だいたい噺家ってぇのは江戸っ子を売りにしたもんだよ。 ところがコイツは田舎者丸出しじゃないか。 だいたい、チャーザー村なんてあるのか? それに、コイツが座ってる席は 『寄席に咲いた一輪の白百合』 とかマヌケなこと言ってた、小円遊がいたところだ。 歌丸のライバルだ。 それに、座布団運んでる奴、 ありゃぁずうとるびの奴だろう? なんでも、鈴鈴舎馬風に弟子入りしてるそうだ。 馬風は前は柳家かゑるだ。 前に座布団配ってた奴は松崎真だ。 あの人は、007に出てるんだぜ。 ほら、日本でロケした、ほら、浜美枝がボンドガールやったやつ! 港でボンドを襲う一味の中にいるんだぜ。 それから・・・・・・・」 「嫌いな割には、マニアックな事まで詳しいね」 とポポロンさん。 「うう・・・・」 当惑したジュリは、とにかく嫌いだぁ! と叫ぶと、林家こん平にケリをいれようとしました。 すると、こん平は、ドロンとキツネに早変わり。 「やっぱり、キツネだ!」 「そう、でも、時々本物に変わって笑点にも出てるんだよぉ」 そして、ポポロンさんは交換条件に、 三遊亭円楽師匠のサインをもらってきてあげると コココンが提案しているという。 ところが、ジュリは円楽が大嫌い。 有無も言わせず、コココンにケリをいれて追い出しました。 「あ、小遊三のサインをもらっておくんだったなぁ」 とわけのわからないことをつぶやいたジュリでした。 ジュリ 「あれ、で、どうしてカワイソウなんだか聞かなかったな」 ポポ 「こん平の影武者というだけで十分カワイソウだよ」 ジュリ 「身もフタもないねぇ」