外は白い雪の夜・その3
ところで、山猫の牧師さんは、なんでこんな山奥で、 1人、牧師をしているのでしょう? みんな、疑問に思いました。 思い切って、夕食の後、たずねてみました。 「あー、なんで牧師になんかなったのかって? それはね、山の神に頼りきりの生活にうんざりしたからさ。 もちろん、山の神を否定しているわけでないよ。 人間だって同じだろ?動物も自立しなければならないのさ。 だけど、生き物は、とっても弱いモノさ。 だから、牧師となり、みんなを励まそうと思ったのさ」 「じゃー、前には、いっぱい山猫がいたの?」 「そうそう、同じような考えの仲間が大挙して、 山の神のもとを離れたのさ。そして、夏は暑さに、 冬は寒さに耐え、マタギとして暮らしたのさ。 自分たちの食べるモノはもちろん、 人間の村にも売りに行ったりして、商いも始めたのさ。 でも、上手く行かなかったのさ」 「必要以上の生き物を殺したから、バチが当たったのかな?」 ニャニャニャンが口を挟むと、 牧師さんは首を振り、こう答えました。 「売れなかったさの、獲物が、全然」 「なんで?」 「だって、猫のマタギが獲った獲物だろ? たいしたものが無くてさ。 これが、ホントのネコマタギ!なんちって」 外は白い雪の夜です。 部屋の中まで凍りつくように寒くなりました。 気まずい空気の中、ポポロンさんが口を開きました。 「あのぅ、で、どこまで、ホントの話なんでしょうか?」 「あははは。それより、もう一杯、 コーヒーを入れないか? もっと、楽しい話があるのさ!!」 暖炉の前で、3人は牧師さんの話を熱心に聞入り、 笑ったり時には泣いたりして、冬を過ごしました。 そして、春告鳥が森の木々の間をぬって飛び回り、 春が来る事をメロディーに乗せて歌い始めると、 もう、春は、そこまで来ているのです。