Present BY Kasumi Yahagi
数
本の題名
作者
霞美の一言メモ
5星評価
1223
ヨコハマメリー
中村高寛
横浜の老娼婦を追う映画監督の筆者。その制作過程で、横浜の歴史や人々の人生に触れていく。
清濁を持ち合わせた娼婦たちの人生ですが、私たちも同じだと感じました。ハマの人々もメリーさんも私たちも、ただ只管に生きようとしているのだと。2018/11/01
★★★
1224
ホーキング、宇宙を語る
スティーヴン・W・ホーキング
数式をほぼ使わず(相対性理論 E=mc2のみ)に宇宙を解説した本。ビックバン、虚時間、特異点など、宇宙を学ぶ上での根本的な考え方を教えてくれます。
ここまで数学的乃至専門的なことを、言葉のみで語った本も珍しい。奇跡の本です。18/11/14
★★★
1225
油を断てばアトピーはここまで治る
永田良隆
皮膚炎とは消化しきれない栄養(主に油)が肌から噴き出た状態。故にアトピーは食事で改善させる。
確かに書いてあることは理に適っていると思いました。実践する価値はあるかも。
常飲しがちのお茶類の摂取に関する情報も欲しかったです。18/12/12
★★★
1226
ウイグルの母 ラビア・カーディル自伝
ラビア・カーディル
ウイグル人実業家。数々の事業を成功させながらウイグル人を守る活動を続ける。
民族根絶を目論む共産党に睨まれ、無実の罪で逮捕。監獄で9年の地獄を経験して後、アメリカに政治亡命。
彼女の人生を通してこのウイグル問題を世界中の人に知ってもらいたい。そう願って止みません。18/12/18
★★★☆
1227
居合道 審査員の目
「剣道時代」編集部
居合道八段範士たちの、審査に対する着眼点が述べられています。特別なことは語られていませんが、目付や気構えなど、それこそが最も大切であると思える内容でした。18/12/21
★★☆
1228
野球の国のアリス
北村薫
「不思議の国のアリス」に准えた野球少女の物語。野球に対して真剣なだけに、女子であるが故に野球を長くは続けられない、
そんな現実が切なく、且つその青春は光り輝いていました。18/12/28
★★☆
1229
私の頭が正常であったなら
山白朝子
短編集。傷ついた人々が消ゆくか細い声に反応し、その手を必死に伸ばそうとする。
失ったからこそ見える優しさと悲しみを描いた物語の数々でした。19/01/27
★★☆
1230
とざされた時間のかなた
ロイス・ダンカン
父親の再婚相手として紹介された、二人の子を持つ美しい女性。しかしこの家族には、忌まわしい秘密があった。
永遠の命や若さを安直に人生の幸福と結びつけてはいけない。それは老いや死より恐ろしいことだと思いました。19/04/09
★★★
1231
闇のなかの赤い馬
竹本健治
落雷で死んだ神父の謎に迫る、はぐれ者の寮生徒たち。謎解きの楽しさと、その裏側に潜む事件の悲しい現実に涙する主人公。
それが印象に残るラストでした。19/05/16
★★☆
1232
コンビニ人間
村田沙耶香
コンビニでしか働くことのできない、精神的に無機質な主人公。常識を強要する周りが正しいのか。
自分のできることを理屈抜きにこなす、主人公が正しいのか。「普通」とは何かを問いかける奥深い物語でした。芥川賞受賞。19/05/24
★★★★
1233
メアリー・スチュアート
アレクサンドル・デュマ
女王エリザベスによって斬首となったスコットランドの王女メアリーの伝記。
政治と宗教、結婚と離婚、戦争と暗殺。女同士の絶妙な駆け引きが精巧な薇仕掛けの時計のようにその針を進めていきます。
死刑執行の間際まで侍女や家臣たちのその後を取り計らっていたメアリ王女。死に怯えなかったというのは本当なのかも知れません。19/07/02
★★☆
1234
わたしたちが孤児だったころ
カズオ・イシグロ
幼い頃に香港で両親とはぐれてしまった主人公。後にイギリスで探偵となり、再び両親を探します。
離れていた長い時。進んでしまった個の時間と心は、その美しい再開においても急に結び合うことはない。
そんな切なさを感じる物語でした。19/09/11
★★★☆
1235
卵の緒
瀬尾まいこ
短編2編。双方血のつながりの向こう側にある絆について語られていました。
血の繋がりのない親子。血の繋がりの遠い兄弟。そこに、幸せになれない理由はないということです。19/12/04
★★★☆
1236
コーヒーの処方箋
岡希太郎
病気に対し、珈琲をどういう状態でどれだけ飲めばいいのか事細かく書いてある、まさに『家庭の珈琲医学』です。
今や健康飲料の珈琲ですが、超微量とはいえ、発がん性物質アクリルアミド毒性の含有量については、気になるところ。19/12/15
★★
1237
5分で驚く! どんでん返しの物語
『このミステリーがすごい!』編集部
表題の通りで。エンターテインメントとしてはよくできていますが、ハッピーエンドがあまりにも少ないのが残念でした。
妻の謎解きを一生をかけて考える男の話「記念日」がお薦めです。20/01/30
★★☆
1238
赤い刻印
長岡弘樹
短編集。犯罪、病、自殺、介護など。扱っている題材は非常に暗いという印象です。
障害を持つ弟の言動で辛い介護生活の先に光を見る「手に手を」がお薦め。20/04/09
★★☆
1239
FACTFULNESS
ハンス・ロスリング/オーラ・ロスリング/アンナ・ロスリング・ロンランド
世界の正しい見方を、解りやすく説いた一冊。固定観念で物事を悪い方へ考えてしまう、私たちの不安を払拭してくれます。
筆者は執筆途中に癌で他界。この本の執筆に最後の命を使った、尊く希少な一冊。希望に溢れた本でした。20/08/20
★★★★
1240
斬
綱淵謙錠
代々浅右衛門を名乗る介錯人の一家、山田家の物語。斬首という必要悪に徹しなければならない家の苦悩の他、
刀の評価、罪人の胆を使った薬造りなど、山田家のリアルが事細かく描かれています。
余談にある三島由紀夫の自決の真実についても興味深かったです。直木賞受賞。20/09/10
★★★☆
1241
螢草
葉室麟
父を切腹に追いやられ、また奉公先の心優しい主人も同じ悪者の手にかかり流罪に。
ヒロイン奈菜は、努力と多くの人の手を借りてこの不条理に立ち向かいます。何癖もある町の人々との出会い、触れ合い。
人生はいかにそれが大切であるかを痛感させられる、そんな物語でした。20/09/18
★★★
1244
サラバ!(上・中・下)
西加奈子
転勤、浮気、引きこもり、離婚、宗教。個性的な家族の中で中立を保ってきた自分が一番がまとも何だと豪語する主人公。
しかし、そんな驕りがゆっくりと自分の人生を崩壊させてゆく。再開した破天荒な家族は逆に人生を立て直していた。
納得のいかない主人公。結局は、自分自分で苦しんでいない人などいないという真実に、気づけなかったのではないだろうか。
そしてまた歩き出す主人公。崩壊と再生の物語でした。直木賞受賞。20/10/11
★★★★
1245
神様のコドモ
山田悠介
ショート作品。神様の子供が下界にもたらすちょっとした悪戯の物語。小さな子供が罪の意識もなく殺してしまった幼児の兄弟。
成長するにつれて自分のしたことを自覚していくだろうと、今ここで罰を与える必要もないと神に判断された「秘密」が凄まじいです。20/11/08
★
1246
魔眼の匣の殺人
今村昌弘
超常現象の研究施設跡地に閉じ込められた人々。そして、とある預言者の言葉を不気味になぞる連続殺人。
エゴを貫く犯人との対決を余儀なくされた比留子を思えば、助手葉村の存在も大きく見えてきます。
事件に挑むときは、ホームズには心の支えが必要なのだと。21/01/24
★★★☆
1247
破局
遠野遥
どこにでもいそうな青年が、恋愛の果てに遭遇する大きな災難。主観が少しでも行き過ぎると大きな不幸を産む。
そんな普遍的な恐怖を抱きました。芥川賞受賞。21/03/03
★★★
1248
一人称単数
村上春樹
体験を書いているのか創作なのか、とても興味深い内容でした。気になったのは、逮捕された音楽友達の話「謝肉祭」です。21/04/02
★★★
1249
スマホ老眼は治る!
荒井宏幸
まず、目の仕組みと老眼の原理をわかりやすく解説。多くは付録のブルーライトカットシート目当てで購入されるようですが、一読の価値はあるように思います。21/05/15
★★☆
1250
愛の手紙の決めゼリフ
中川越
偉人や文豪たちの想いや人生を一通の手紙から読み解く。筆者と解釈の違いはあれど、心揺さぶる幾つかの言葉に感銘を覚えました。21/07/06
★★☆
1251
ペスト
カミュ
人々の心情も言動もコロナ渦にある現在と何も変わらない、まるで預言書を読んでいるような錯覚にすら陥りました。
有事の時のために、自分の中に覚悟と決意を持っておく必要があると感じました。21/08/31
★★★
1252
一度きりの大泉の話
萩尾望都
女性版トキワ荘『大泉サロン』でおきた竹宮惠子氏との確執について答えた本ですが、言う程の事でもないです。
萩尾氏の想像力の大きさについて考えれば尚更です。それよりも、当時の生活や創作の進め方など、その点で興味深い本でした。21/09/28
★★★
1253
夜空に泳ぐチョコレートグラミー
町田そのこ
短編集。苦難を乗り越える各話の人々が、その人生の最中で交じり合う。ギミックが秀逸です。21/12/29
★★
1254
コーヒー哲学序説
寺田寅彦
明治後期から昭和初頭における、珈琲の一般事情がよくわかります。
酒や宗教は「信仰的主観」で犯罪に走るものも多いが、珈琲は「懐疑的客観」なので、そういうことがない。名文です。22/03/19
★★★☆
1256
かがみの孤城(上・下)
辻村深月
問題児が集められた不思議な孤城。
子供時代の悲しい経験が、優しさを知り得た大人への成長の一助となり、その大人たちがまた、悲しい子供たちに手を差し伸べていく。
そんな温かい円環の物語でした。22/03/21
★★★☆
1257
蟹工船
小林多喜二
生活のため、生きるために蟹工船に乗り込む労働者たち。鮨詰状態の劣悪な船内環境に蝕まれていく身心。力尽きる命。
精神的な意味においては現代社会もさして変わらないものと思えてなりませんでした。22/04/22
★★★
1258
同志少女よ、敵を撃て
逢坂冬馬
感想執筆中
22/04/27
★★★★
1259
くれぐしの里 奥会津回顧
五十嵐キヌコ
戦後の奥会津の生活を記した筆者の個人体験録。どぶくろの隠し場所から鉄漿の作り方まで、本当に希少な本だと思いました。
物語ではありませんが、夕暮れ時の空の色や風の匂い、カラスの鳴き声が聞こえてくる一冊です。22/05/07
★★★☆
1260
陰翳礼讃
谷崎潤一郎
日光を和紙で調光した、日本の光の生活。電気で全てを照らし出してしまう世の中に疑問符を打つ。
確かに思います。影があるからこそ、日の当たる場所が尊く映えるのだと。22/05/07
★★☆
1261
方上記
鴨長明
人生を家や財で必死に塗り固めて何になろう。厄災によって一瞬の内に奪い去られるというのに。
先の保証を過度に謳う現代人には、痛い言葉かも知れません。失うことに対する一片の覚悟さえ持てれば、
人はもっと自由に生きられるのではないでしょうか。22/05/08
★★☆
1262
華氏451度
レイ・ブラッドベリ
本がこの世から消え去り、上から与えられた情報のみで生きると人はどうなるか。
スマホ社会を予言していた内容ともいえます。考えないことに慣れきってしまった奥さんの末路にぞっとしました。
私たちが語り継ぐべき情報は、人の想いとセットでなければならないのかも知れません。22/06/17
★★★
1263
JR上野駅公園口
柳美里
上野駅公園口で暮らすホームレス達の歴史を語ったフィクション。息子、妻、孫の死。とにかく辛い話でした。
それでも精一杯生きたのだという人生の尊さも盛り込んで欲しかったです。22/08/17
★☆
1264
ひと
小野寺史宜
突然の両親の他界で大学を辞め、社会の海原に漕ぎ出さなければならなくなった青年の物語。
人とのつながりが自分を助けてくれるし、逆に傷つけもする。そんな人間関係をどう捉え、行動するかで未来が決まる。
小心ながらも直向きでありつづけた二流の中の一流である彼だからこそ、優しい人たちが彼のもとに残ったのだと思いました。22/10/17
★★★
1265
流浪の月
凪良ゆう
誘拐されたと世間に勘違いされた、青年と少女の物語。本作のすべてを表したようなこのセリフが、私の感想の全てです。
「自らの定めた常識と優しさを言動に変えて私に押し付けて、これがあなたの幸せなのだと洗脳しようとするあなた達から、その無責任な優しさから、自由になりたい」23/01/09
★★★
1266
元彼の遺言状
新川帆立
欲に正直な女弁護士が、元カレの遺言状に記された遺産騒動に関わっていく物語。
人の気持ちが汲めず、初めてクライアントに見放されたとき、
本当に欲しいものがないから、お金や地位を求めたんだ、善良な人間に見下されるのが怖かったのだと、落ち込む彼女の気持ちに、得る何かがありました。23/01/28
★★
1267
奇譚蒐集録:弔い少女の鎮魂歌
清水朔
感想執筆中
23/02/17
★★★
1269
村上海賊の娘(上・下)
和田竜
石山合戦を背景に行われた毛利と織田の木津川口の戦い。
村上海賊の景姫と、織田方七五三兵衛。闘い傷つけあいながらも、引きつけ合う二人の心を描きます。
ページの割には短期間の話で展開が遅く、読むのには苦労しました。吉川英治文学新人賞、本屋大賞受賞。23/04/22
★★
1270
内閣情報調査室
和田竜
内調、公安、公安。実際の取材や事件を元に、この三組織がどう情報を集め扱っているのかがわかります。
組織の在り方や技術を常にアップデートしていかないと、すぐ海外勢に飲み込まれてしまう。そんな危機感すら感じる内容でした。23/05/30
★☆
1271
街とその不確かな壁
村上春樹
感想執筆中
23/06/18
★★★
1272
心をととのえるスヌーピー
チャールズ・M・シュルツ/訳・谷川俊太郎
スヌーピーと禅の共通点を見出して解説した本です。スヌーピーは禅の解釈をジョークに変えているものが多いのですね。
お気に入りは「大切にされていると感じたら、孤独じゃない」「購入したのに使っていないものがあれば、それは欲で購入したもの」。23/07/16
★★☆
1273
出版禁止
長江俊和
とある映像作家の心中事件。誰が誰を殺そうとしていたのか、その謎を追うミステリー。
実話であるかのような構成力は流石のものですが、ノンフィクションなら凄惨すぎます。23/07/22
★★★☆
1274
吾輩は猫である
夏目漱石
大長編。猫の視点でご主人、おそらく筆者の身の回りの出来事について語っています。
動物から見た人間生活の滑稽について、その語り部はユーモアで、時には考えさせられる部分もあります。
決してつまらない本ではないのですが、ただ物語の落ちにより、読後感はよくありません。23/09/15
★☆
1275
君たちはどう生きるか
吉野源三郎
主人公の抱く疑問や問題に、厳しくも優しくも心温まる返答をする叔父さん。後者が筆者の思いを代弁するという形で、読者に道徳を説きます。
疑問や起こる問題そのものは昭和初期当時のものですが、物の考え方は現代にこそ通ずる輝きがあります。
生きることに役立つ良書なので、なるべく早い時期に読むことをお薦めしたいです。23/10/01
★★★★
1276
いのちの初夜
北条民雄
ハンセン病を経験している筆者だからこその一冊です。筆者はその死病とどう向き合ったのか、物語を通して語られています。
人間でいられなくなってしまったら、そこに残るのは生命のみ。その命を、今一度どう使って生きるべきか。
その答えを見つけるのは、己でしかないのです。私はこの良書に、暗さや絶望といった感想は持ちませんでした。23/10/06
★★★★
1277
荒仏師運慶
梓澤要
難しい本ではありませんが、歴史の謎も相まって要領を得るのが難しい本でした。
比肩しうる快慶との仲についても、そう詳しくは書かれていません。運慶の時代の流れを知るには良い本です。23/11/09
★☆
1278
楽園のカンヴァス
原田マハ
感想執筆中
23/12/02
★★★
1279
リボルバー
原田マハ
感想執筆中
24/01/09
★★★
1280
愛の渇き
三島由紀夫
有閑階級の未亡人が、幸不幸を練り混ぜて作った針の切っ先で己の感情を突いて弄ぶ。
最悪の結末の後に泥のように眠る彼女の精神に閉口します。恐いのは、語彙力で彼女の狂騒を普遍的に説明しているところです。24/01/22
★★★