ファン交 2016年:月例会のレポート

 ■1月例会レポート by 根本伸子

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■日時: 2016年1月16日(土)14:00-17:00
■会場:上原区民会館(小田急 小田原線・東京メトロ 千代田線「代々木上原駅」より徒歩6分)

●テーマ:2015年SF回顧(国内・コミック・メディア編)
●ゲスト:森下一仁さん(SF作家、SF評論家)、日下三蔵さん(アンソロジスト) ほか


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2016年最初のSFファン交流会は、森下一仁さん(SF作家、SF評論家)、日下三蔵さん(アンソロジスト)、林哲矢さん(SFレビュアー)をお迎えして、2015年SF回顧と題しまして、前半は、国内のSF作品について、後半は、コミックについて2015年を振り返りました。
前半の国内SF作品について、森下一仁さんと日下三蔵さんより、いろいろお話を伺いました。
2015年は、梶尾真治、筒井康隆、谷甲州など集大成的な作品が目立ったとのことでした。
森下一仁さんが、2015年の注目作として取り上げられたのは、神林長平『絞首台の黙示録』(早川書房)。神林に長年親しんだSFファンに到達地として興味深い作品とのことでした。
そのほか、梶尾真治『怨讐星域』(早川書房)は、世代宇宙船の搭乗者とその船に乗れなかったが後により高速な宇宙船を作って世代宇宙船を待つ側の両者の物語。いくつかの物語が集まった作品で、ヴァーナー・ヴィンジ『遠き神々の炎』(東京創元社)に近い雰囲気だそうです。

日本のSF作家の第一世代・筒井康隆、最後の長編と噂され、集大成とも言える『モナドの領域』(新潮社)は、日下さんのお話では、今までの作品の中から登場人物が出てくるので、筒井読者はニヤッとするはずとのことでした。
また、SF第三世代の谷甲州『コロンビア・ゼロ 新・航空宇宙軍史』(早川書房)も面白かったとのこと。「どんどん書いてもらいたいですが、〈S-Fマガジン〉の隔月化は、『年刊日本SF傑作選』の作品探しにも影響が!(切実)」と日下さん。
昨年も大活躍だった円城塔さんの作品については、日下さん一押しは『シャッフル航法』(河出書房新社) 。『プロローグ』(早川書房)と『エピローグ』(早川書房)だったら『エピローグ』を先に読んだ方がいいとのことでした。

その他、おすすめ作品として上田早夕里『セント・イージス号の武勲』(講談社)〈世界の作りこみが良い〉、菅浩江『放課後のプレアデス みなとの星宙』(一迅社)〈ガイナックスアニメ「放課後のプレアデス」のサイドストーリー。アニメで描かれなかったところを補完する感じで書かれているので、アニメと一緒に読むと面白い〉、王城夕紀『マレ・サカチのたったひとつの贈物』(中央公論新社)〈量子病に侵された主人公のお話。ハードSFっぽい。〉。なお、日下さんの2015年ベストは、牧野修『月世界小説』(早川書房)とのこと。

ハヤカワSFコンテスト関連では、第3回大賞の小川哲(おがわ・さとし)『ユートロニカのこちら側』(早川書房)、佳作のつかいまこと『世界の果ての夏』(早川書房)、オキシタケヒコ『波の手紙が響くとき』(早川書房)のタイトルが上がりました。
アンソロジーでは、『多々良島ふたたび:ウルトラ怪獣アンソロジー』(早川書房)、『伊藤計劃トリビュート』(早川書房)、『屍者たちの帝国』(河出書房新社)。
変わり種としては、集英社オレンジ文庫の『螺旋時空のラビリンス』(集英社)が紹介されました。

後半のコミックは、今年も事前に福井健太さん、V林田さん、林哲矢さん、日下三蔵さんにご協力いただき、当日配布資料の「お勧めリスト」を作成していただきました。(いつもありがとうございます!) 各自リストの特にお勧めチェック作品を元に、順次紹介していただくことになったのですが、今回会場にお越しいただけたリスト関係者は林さんと日下さんのおふたりだけだったこともあり、マサカの「会場の中に『鋼鉄奇士シュヴァリオン』(ビームコミックス)をお読みの方いらっしゃいますか?」というひと声から始まるという、デンジャラスな展開に!

2015年最もきれいに上下巻でまとったSFコミックとのことで林さんが紹介してくださったのは、無限に4畳半が続く世界の謎がきれいに回収されていく『百万畳ラビリンス』(たかみち/ヤングキングコミックス)。そのほか、ドジですぐ死ぬ主人公『ちこたん、こわれる』(今井ユウ/ヤンマガKCスペシャル)、SF度高い作品『螺旋じかけの海』(永田礼路/アフタヌーンKC)。同じく本格SF『AIの遺電子』(山田胡瓜/少年チャンピオン)もおすすめとの話が出ました。

『スクール・アーキテクト』(器械 /まんがタイムKRコミックス)は、とても舌が長く伸びたり、常に高下駄をはいている少女などが登場する異色学園モノ。『猫瞽女-ネコゴゼ- 』(宇河弘樹/ヤングキングコミックス)は、日本が占領された世界。その世界の猫たちの話。『綿の国星』(大島弓子/白泉社)をとってもハードにした感じとのこと。何もしない時空修復官話『おとうふ次元』(カミムラ・原作:森繁拓真/MFC)などなど。

このほかにも、たくさんの作品が話題に上がりましたが、ここでは語りつくせません。
バラエティーに富んだ作品の宝庫となった2015年でした。

ご協力いただいたゲストの皆さま、作品リストを提供いただいた皆さま、ご参加いただいきました方々に感謝申し上げます。おかげさまで、新年から大盛況の例会となりました。

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■2月例会レポート by 根本伸子 

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■日時:2016年2月20日(土)14:00-17:00
■会場:笹塚区民会館
(京王線「笹塚駅」より徒歩8分)

●テーマ:2015年SF回顧(海外・アニメ編)
●ゲスト:
大森望さん(翻訳家、書評家)、添野知生さん(映画評論家)、縣丈弘さん(B級映画レビュワー)、林哲矢さん(SFレビュアー)橋本輝幸さん(レビュアー)、鈴木力さん(ライター)

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2月のSFファン交流会は、ゲストに、映画評論家の添野知生さん、B級映画レビュアーの縣丈弘さん、翻訳家、書評家の大森望さん、SFレビュアーの林哲矢さん、レビュアーの橋本輝幸さん、ライターの鈴木力さんをお招きして、1月例会に引き続き、2015年のSF回顧を行いました。

 まず、メディア部門は、「2015年のベストワンとしては、「マッドマックス」があるけど、それは十分話題になったから別にいいよね。」と添野さんのコメントから始まりました。
 ということで「マッドマックス」以外のSFファンが観るべき映画と海外ドラマをご紹介いただきました。

 添野さんのおすすめ作品は、アルカジイ&ボリス・ストルガツキー兄弟の『神様はつらい』が原作の「神々のたそがれ」。ただし、映画が安全な娯楽だと思っている人は、絶対観ないでくださいという注釈付きでした。
 文明が遅れた惑星に地球人が行き、そこで起こる理不尽な出来事の数々が描かれるとのこと。解説的なものが全くない映画で原作を読んだことがある人だけがどういう映像なのかわかるそう。観ていると頭がおかしくなりそうな体験が次々と起こりちょっときついけど、美しく終わるのでSFファンと、筒井康隆氏、田中啓文氏に是非おすすめしたい作品とのことでした。

 縣さんおすすめの作品は、「プリデスティネーション」。「インターステラ―」などSF映画をブログでいろいろディスっているイーガン氏にもおすすめの映画とのこと。
 ロバート・A・ハインラインのタイムパラドックス短編小説「輪廻の蛇」を原作とした作品で、ドイツ系出身のオーストラリアの双子の映画監督マイケル&ピーター・スピエリッグ兄弟の作品とのこと。
原作にはない連続爆弾魔をタイムマシンを使って追うストーリー。まさかのビックリ展開が待っているそう。ダークな演出、小道具等も凝っていて、かっこいいの一言。女優サラ・スヌークの演技も見どころの一つとのことでした。

そのほかおすすめ作品としては、「チャッピー」「マッドガンズ」「Ex Machina」「ヒックとドラゴン2」「モンスター 変身する美女」「ブック・オブ・ライフ マノロの数奇な冒険」「ファイナルガールズ 惨劇のシナリオ」そして、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」などが話題に上がりました。

 また、飛び入りゲストとして作家の高山羽根子さんより、おすすめ映画リストと、高山さんが2015年に観たおすすめ映画として「ゼロの未来」「スパイオブギャラクシー」をご紹介いただき、高山さん手描きのかわいいイラスト入りのお土産資料も会場で配布させていただきました。

 後半の「海外SF小説編」では、まず『SFが読みたい!2016年版』の結果を見ながらの振り返りとなりました。

 ケン・リュウ『紙の動物園』は、「全作品が本質的にSFかどうか判断は分かれるけれど、とりあえずみんな入れるでしょ」との大森さんより一言。大森さん、林さんは、表題作よりは「結縄」がおすすめとのこと。橋本さんは「月へ」もよいとのことでした。SFファン、海外文学ファン両者が楽しめ、バラエティーに富んだ作品を集めた編集効果が非常にあったのではないかとの総括がありました。

 続いて、パオロ・バチガルピ『神の水』は、『ねじまき少女』にくらべて読みやすいけど、ガジェット部分が減り人間ドラマ部分が増えた作品とのことで。人間が書けてる小説アレルギーの林さん(笑)は、「人間部分さえ無視すればSFとして面白いです。」とのこと。「2015年は、『マッドマックス』といい本作といい、水の大切さを学んだ年だった。」と大森さんにまとめてもらいました。

 グレッグ イーガン『ゼンデギ』は、父と子の関係を描いており、珍しく人間を描いているイーガン作品との評価。「ホントは、こんなんじゃないよね。イーガン先生!」と思った読者は『クロックワークロケット』を読んでね! とのお話しでした。

 ラヴィ・ティドハー『完璧な夏の日』は、スーパーヒーロー実在世界のIFもの。「ゾマータークと呼ばれる白いワンピース少女は林さん以外のSFファンの心を掴んだに違いないが、書き方に色々技巧を凝らした結果読みづらくなってしまっているのが欠点かもとのことでした。

 ジーン・ウルフ『ジーン・ウルフの記念日の本』からは、不条理な一生を描く中篇「フォーレセン」、車が妊娠する「カー・シニスター」などが話題に上がりました。

 そのほかの作品としては、『明日と明日』『ブリリアンス-超能力ゲーム-』『ねじまき男と機械の心』大英帝国奇譚の2冊目、5冊目、『SF雑誌の歴史 黄金期そして革命』『複成王子』『時を紡ぐ少女』『ドリストグラス』などが話題に上がりました。

 雑誌掲載の作品では、〈S-Fマガジン〉の隔月化に伴い新人作家の短編が減少しており、新しい作家を紹介する媒体が欲しいとの要望がつよいとの意見で同意が得られました。

 そんな中ホラー系の雑誌として〈ナイトランド〉が復活したのが唯一の朗報のようでした。

 今月の例会も例年通り、すべてを語るには時間が足りない! と時間との闘いとなりました。
 多くのゲストの皆さまにご協力いただき、さらに多くの方にご来場いただくことができました。
 ご協力いただきました皆様に深く感謝申し上げます。


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 ■3月例会レポート by  根本伸子

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■日時:2016年3月20日(土)14:00-17:00
■会場:笹塚区民会館
(京王線「笹塚駅」より徒歩8分)

●テーマ:イーガン世界を読み解く
●出演:中村融さん(翻訳家)、板倉充洋さん(理系研究者)


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3月例会は[イーガン世界を読み解く]と題しまして、ゲストに 『クロックワーク・ロケット』翻訳者の山岸真さんと中村融さん、理系研究者の板倉允洋さんをお迎えしてSF作家イーガンの魅力に迫りました。

まず、公の場には姿を現さない謎多きイーガン先生ってどんな方? というところからイーガンの人となりについて山岸さんを中心にいろいろお話していただきました。

高校生の頃から創作活動をはじめたイーガンは、イーガンの初期作品は、意外なことに、堀晃、小松左京の短篇みたいなお話が多く、宇宙空間に幾何学的存在する星の謎を調べるなど、作風は、現在のようなハードSFではなくホラーよりの作品を書いていたそう。

80年代に〈インターゾーン〉が原稿を掲載してくれたことがきっかけで、スーパーハードな作品をどんどん執筆していったとのことです。90年代にはシドニーからパースに帰郷し、病院のプログラマーとして働きながら兼業作家として活動。初期の作品に病院舞台が多いのは病院に勤めていた影響があるのではないかとのことでした。

現在は、専業作家として活動されているようですが、肩書は、サイエンスフィクションライター&プログラマーとなっているので、プログラマーのお仕事もどこかでなされているのかもしれません、とのこと。

知られざるイーガン先生、2000年頃は、オーストラリアの難民キャンプの処遇改善など、社会活動に深く関わった活動が忙しく、作品が出版されない時期が続いていたのだそうですが、その時期に日本で作品が売れていたので、「おかげで助かった。日本の読者のみなさんありがとう」とのコメントがあがったのだそうです。
などなど、謎多きイーガン先生の情報元は、主にホームページをチェックがよろしいということでした。

後半は『クロックワーク・ロケット』の世界の謎に迫りました。
特殊な宇宙環境により翻訳にもいろいろ縛りがあるというお話とか、これから発行される二巻のこともいっぱいお話していただいたのですが、ちょっとここに書くと即ネタバレになりそうなので、「ますますイーガンの〈宇宙SF三部作〉から目が離せません。」とだけご報告させていただきます。

〈宇宙SF三部作〉の内容のほかには、山岸さん、中村さんの翻訳の分担のアレコレや、特殊設定に伴う翻訳の苦労、イーガン先生のホームページの軌跡から読み解く作品制作のアイディア計算世界についてなど、専門知識がないとわからない情報を交えて、イーガン世界の魅力をたっぷりとお話ししていただきました。

レポートを書く身としては、出てくる情報密度が濃すぎてメモを取る速度が追いつきません!! と思わず心の中で叫んだほどです。とほほ・・・
ということで、あっという間の三時間。イーガン先生の話題は尽きることなく、大盛況の会となりました。
ご出演いただいたゲストの方々、ご来場いただきました皆さまありがとうございました。

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『クロックワーク・ロケット』〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉
(グレッグ・イーガン/山岸真・中村融訳/早川書房)↓
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013084/
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 ■4月例会レポート by  根本伸子

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■日時:2016年4月23日(土)14:00-16:30
■会場:笹塚区民会館
(京王線「笹塚駅」より徒歩8分)

●テーマ:2016年ファン交版 スペース・オペラ入門
●ゲスト:込山博実さん(編集者)、内田昌之さん(翻訳家)、中原尚哉さん(翻訳家)
   (堺三保さんは、体調不良のため、当日お越しいただくことができなくなりました)

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 4月は、スペースオペラ入門と題しまして、翻訳家の内田昌之さん、中原尚哉さん、ハヤカワの編集者の込山博実さんをお迎えして、SFジャンルの王道のスペースオペラについてお話ししていただきました。

 例会前に常連参加者の(ふた回りほど年上の)方と、「今日のテーマはSFのど真ん中でしょう!」と意気投合していたのですが、込山さんから「世代によってスペースオペラ観は全く違う」というお話をお聞きして、驚愕の事実が明らかに。意気投合したはずの彼が思い描いていたスペースオペラ像と、私の思うスペースオペラ像が全く違っていたのです。ふたりの会話、全然かみ合ってなかったのでした(笑)。

 彼のど真ん中なスペースオペラは、宇宙を舞台とした冒険小説で、パルプマガジンは、英米ではかつて侮蔑的に呼ばれることもあり、日本での紹介時にも賛否両論あったとか。当時否定的意見のあるなか、南山宏(森優)さんや野田昌宏さんが、面白いのが一番と積極的に紹介してくださったそうです。

 そもそもパルプ雑誌時代のSFの多くは、少年向け小説として売られていたため、宇宙活劇ものが主流だったそうで、ペーパーバックが出て『火星のプリンセス』など、活劇とは少し違うものが出版されてきたそう。
 日本のスペースオペラの初発は、その時代の小説を70年代に翻訳し出版し始めたので、本国でソープオペラと揶揄されていた時代のものよりは、後の時代の小説になっているとのお話でした。

 内田さんより、それとは別に野田さんは、パルプ雑誌時代のスペースオペラも積極的に紹介してくれたことをマガジンを持参してご紹介してくださいました。作家の意図とか考えてはいけない、野田さんいわく「スペース・オペラとは読むものではなくて参加するものだからであR。」と。(〈S-Fマガジン〉1966年08月臨時増刊号/野田宏一郎「ビバ! スペース・オペラ」より)

 また込山さんからは、原書より翻訳が面白いとの〈キャプテン・フューチャー〉について、(なんとなく予想はしていましたが、)は野田さん家にしか〈キャプテン・フューチャー〉の原書がなく、原文チェックができなかったため、普段は翻訳原書を横に置いて訳文チェックするところ、「話が面白ければそれでいい。という視点でのみチェックしてました。。」と、今だから話せる野田さんならではの、編集裏話をお聞きすることができました。

 私が高校生時代読んだ〈銀河の荒鷲シーフォート〉シリーズやロイス・マクマスター・ビジョルド〈ヴォルコシガン・サガ〉などは、NSO(ニュースペースオペラ)との分類になるとのことでした。

 意気投合したはずの彼との見解の違いに驚いたほかには、〈銀河の荒鷲シーフォート〉シリーズが、込山さん担当だったことにも、個人的に嬉しい衝撃を受けました。「有名なシリーズですよね!」との私の問いかけに、「あれは売れたんですよ」との込山さんのコメントのあと、未読者が多い結果に、私はさらなるショックが続きました。

そのほか、〈老人と宇宙〉やアリステア・レナルズの分厚い三部作の話から ミリタリーSFとスペースオペラ違いについてなど話が及びました。

 内田昌之さんより、ジョン・スコルジーについて、戦闘シーンより変なエイリアンが書きたい作家であるといった話や、6月刊行予定の新作についてのお話いただきました。
 中原尚哉さんからは、〈スコーリア戦史〉シリーズの話やアリステア・レナルズの三部作には設定イラストが載っていること(気づいていない人多いけど)のほか、今後の翻訳予定のお話しなどをお聞きすることができました。

 語りつくせないほどの興奮と、それぞれの懐かしい読書歴に思いを馳せる楽しい時間となりました。
 ご出演いただいたゲストの方々、ご来場いただきました皆様ありがとうございました。

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◆早川ライブラリー「野田昌宏文庫」↓
http://www.hayakawa-foundation.or.jp/ndm/
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◆ハヤカワオンライン〈ジョン・スコルジー〉↓
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopbrand/author_SAgyo_SU_1985/
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 ■5月例会レポート by 平林孝之

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■日時: 5月4日(水)夜 (SFセミナー合宿企画内)
■会場:鳳明館森川別館(東京メトロ南北線 「東大前駅」徒歩3分)

●テーマ:今読む『カエアンの聖衣』、そして〈ワイドスクリーン・バロック〉
●ゲスト:大森望さん(翻訳家)、中村融さん(翻訳家)、林哲矢さん(SFレビュアー)


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 例年通り、5月は通常例会をお休みし、SFセミナーの合宿企画に出張させていただきました。今月は、早川書房創立70周年文庫企画「ハヤカワ文庫補完計画」で『カエアンの聖衣』が大森望さんの新訳にて復刊したのを機に、バリントン・ベイリーと〈ワイドスクリーン・バロック〉の魅力について、WSB作品を多く訳されてきた大森さん、中村融さん、WSBを愛するレビュアーの林哲矢さんと一緒に楽しみました。

 ベイリーといえば今回復刊された『カエアンの聖衣』以外にも多くの作品が邦訳されていますが、最近では品切れが目立っていました。その中から「補完計画」で本作が選ばれたのは、2013年のアニメ『キルラキル』で人を支配する生命繊維という本作を下敷きにした設定が話題になったからではないかとのことです。
 新訳を大森さんが担当されたのは、『時間衝突』を始めベイリー作品を多く訳してきた実績から。ご自身もベイリーにはこだわりがあるとは、以前のファン交でもおっしゃっていました。
 そんな大森さんにベイリーの魅力を伺うと、出版された当時でも古臭いアナクロな設定ととんでもないアイディアが面白いとのことでした。今でこそ昔の作品だしと思っていましたが、ベイリーが活躍したのは70年代、ニューウェーブSF真っ只中の当時からしてもやっぱり「古い」作品だったようです。

 ベイリーはワイドスクリーン・バロックに分類されることも多いですが、中村融さんによるとそのきっかけは、安田均さんが日本にWSBを紹介したときに『カエアンの聖衣』が挙げられていたからだそうです。ただし、「宇宙とか広いところに出ていっても、狭くて暗いところに籠る閉塞感がある」ベイリー作品はWSBに求められる時間的・空間的広がりに欠けるんじゃないかとか。中村さんは昔は定義に厳密で、ベイリーをWSBとは認めていなかったけれど、昨今のスチームパンク騒動を見て、緩く使っていった方が広まっていいかなと思い直しているのだそうです。

 新訳にあたっての苦労を大森さんに伺ったところ、旧訳では主人公ペデルの一人称が「あたし」だったり、小悪党の一人が関西弁だったりと、演出過剰気味だったところが古めかしい感じだったので、『キルラキル』を観て本作を手に取ったような人にも読みやすいように大分手を加えたのだそうです。ベイリーは単語の使い方が変で、辞書に載っていてもその単語は選ばないだろうというような場面が多々あるそうなのですが、いちいちそれを訳に反映してしまうと、やはり古臭い印象になるので平易な文体に努めたとか。  最近増えてきた新訳への反応を見ていると、固有名詞は変えない方がいいだろうということで、こうは読まないんじゃないかと思いつつも、カエアンやペデルなど主要な名前はいじらないことにしたとのことです。確かに、『シーアンの聖衣』ではちょっとイメージが変わってしまいますね。一方、あまりに変な綴りの単語については普通じゃない造語に変えたりと、バランスをとるのも難しそうでした。

 ゲストの方々に、『カエアンの聖衣』以外で好きなベイリー作品を訊いてみました。
 大森さんが挙げたのは『時間衝突』。時間と時間が衝突する、さらには斜行存在なんていうのも現れて……という一発ネタにやられたそうです。もののたとえのような話を本当に書いちゃうのがベイリーの魅力というお話でした。
 中村さんの一推しは『時間帝国の崩壊』。こちらは未来を支配する帝国と過去を支配する帝国が中間の空白時間を舞台に歴史を書き換える戦争を続けている世界。ナルシストな王子が数日先の自分と恋に落ちる……なんて馬鹿馬鹿しいネタもベイリーらしいです。
 短編好きの林さんは「地底潜艦インタースティス」のようなSFマガジンに載ったきりの短編を挙げられました。これは土に潜る戦艦ということで中村さんが「地底潜艦」という単語を作ったものの、大体「地底戦艦」と間違えられてしまうというこぼれ話も出てきました。

 会場からは『永劫回帰』が印象に残っているという声も。「宇宙的痛み」を経験した代わりに不死を得た主人公が、何百億年単位で繰り返される宇宙を生きる中で、何度も味わう羽目になる痛みを回避しようと奮闘する話。まさにワイドスクリーン・バロックというにふさわしいスケールのようですが、宇宙船から離れると不死ではなくなってしまうので、やっぱり「宇宙とか広いところに出ていっても、狭くて暗いところに籠る閉塞感がある」ようです。

 とんでもない設定ばかりのベイリーですが、会場からはハードSF作家だと思ってたという声も。それもそのはず、ベイリー作品のネタには、背景となる理論や学説がちゃんとあるらしいのです。確かに、『カエアンの聖衣』も文化人類学など、様々な下敷きが見え隠れしていました。ハードSFっぽいものが好きだけど、素養がないまま独自理論を展開していくのが、ベイリーの魅力の源なのかもしれません。

 『カエアンの聖衣』の売れ次第では、未訳長編の翻訳や、日本オリジナル短編集の刊行もあるかもしれないという話。まだまだベイリーの魅力を楽しめそうです。
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◆『カエアンの聖衣〔新訳版〕』
(バリントン・J・ベイリー/大森望訳/ハヤカワ文庫SF)↓
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013170/
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 ■6月例会レポート by 根本伸子

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■日時:6 月18日(土)14:00-17:00
■会場:笹塚区民会館
(京王線「笹塚駅」より徒歩8分)
●テーマ:さあSFの夏を楽しもう!『JUST IN SF』
●出演:牧眞司さん(書評家)、日下三蔵さん(書評家)


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6月のSFファン交流会は、ゲストに書評家の牧眞司さんと日下三蔵さんをお招きして、「さあSFの夏を楽しもう!『JUST IN SF』」と題しまして、SFの書評についていろいろとお話しいただきました。

まず、「一番難しいだろうと思っていた企画が真っ先に本になった!」と牧さんより『JUST IN SF』出版までの経緯をお話ししていただきました。事の始まりは、『サンリオSF総解説』の星雲賞の授与式のためSF大会に参加中でのこと。大森望さんが『50歳からのアイドル入門』出すよという話を聞いた牧さんが、大会会場にいらしていて「本の雑誌社」の方に「俺のも出してよ!」と言ったひと言がきっかけとのこと! その後、とんとん拍子に話が進み、出版に至ったとのことでした。一度決まると出版までの流れが速いのが「本の雑誌社」の素晴らしいところ……、などなど各社出版社の出版までの道のりへのこぼれ話も面白かったです。

また、そもそも「本の雑誌社」でのWEB連載が始まったのは、偶然にもSFファン交流会の二次会で連載の執筆者を探していた「本の雑誌社」の松村さんに相談されたのがきっかけとのことで、はじめは「誰がいいかなぁ?」と若手を探していたけど、帯に短し、たすきに長し的な感じだなぁと熟考しているうちに、「あ、いた! 代打オレ!」(笑)、とまるで掛け合い漫才のような秘話を語っていただきました。
毎月週一のペースで月四冊、自分で好きに選んでかけるとことがWEB連載の良いとことで、文字数の制約も少なかったことから、少し長めの原稿となった結果、出版が早まったとの経緯もあるそうです。

次に書評家としての日下さんと牧さんの、書評に対する思いを語り合っていただきました。
一般の書評は、連載媒体が何かで取り上げる本のジャンルが決まることがほとんどだけど、たまにフリーダムで掲載できる媒体があり、日下さんだったら〈週刊大衆〉の書評欄(惜しくも終わってしまったとのこと)、牧さんだったらパズル雑誌〈ナンクロ〉の書評欄とのこと。

「いったい、誰が読むんだよー。」と思いながら、好きな作品を好きに紹介したのだけど、連載が終わったときに綾辻行人さんから「なくなってつまらないなぁ。」と感想を言われたりして、ちょっと嬉しかったといった話や、編集者さんから届く感想のメッセージが嬉しいなど、ほっこりとしたエピソードも。

互いに共通したエピソードとしては、自分の書評ほど面白いものはない。「誰だ! ツボを心得ている! あ、俺だ。」と、自分の原稿を数年後に読み返すと必ず思うとのこと。きっと自分達と同じように本が好きな人に向けて書評を書いているからなのかもしれないと日下さんが自己分析されていました。

『JUST IN SF』をおふたりで振り返りながら、週一で一冊のペースでこんなに面白いものが取り上げられる時代になったと、ここ10年で80人くらいの作家がデビューしている夏の時代だとの近年の出版事情についてお話しをして頂きました。

創元SF短編賞とハヤカワSF大賞の貢献度が大きいと同時に。〈SFマガジン〉が隔月発刊になったことで、短編を掲載する媒体が減少した結果、『年間SF傑作選』の選考が年々難しくなると日下さんの悩みは割と深刻なようです。
その他、お二人の書評家になったきっかけから、若手に向けて書評家のなり方をお話しいただいたり、牧さんのけいおんとの出会いについてお話しいただいたり、書評で、どこまで情報を開示するか問題についての見解や読者に本の魅力を伝えるために気を付けているポイントなどの技術的なお話もたくさんしていただきました。

ゲストの牧さんと日下さんの世の中にはこんな面白い本があるんだよ!!!  という本への愛に溢れた熱い思いが伝わり、あっという間の3時間となりました。楽しいお話しをありがとうございました。

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◆『JUST IN SF』(牧眞司/本の雑誌社)↓
http://www.webdoku.jp/kanko/page/4860112857.html
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 ■7月例会レポート by 根本伸子

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■日時:7月30日(土)
■会場:笹塚区民会館
(京王線「笹塚駅」より徒歩8分)
●テーマ:ビバ★ウルトラマン50周年!
●ゲスト:池田憲章さん(ライター、プロデューサー)、氷川竜介 さん(アニメ特撮・研究家)


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SFファン交流会7月例会は、「ビバ★ウルトラマン50周年!」と題しまして、池田憲章さん(ライター、プロデューサー)と氷川竜介さん(アニメ特撮・研究家)をお招きしました。

まず、「シン・ゴジラ」公開翌日ということもあり、50年前にこんな時代が来てこんなところでこんな話をするとは思わなかったよ。という話題から、当時少年だった氷川さんと池田さんの「ウルトラQ」との出会いについてのお話になりました。 「ウルトラQ」以前以後で、特撮やアニメの世界が全く違うといっていいくらい、ストーリー・構成、怪獣などなどすべてが全く新しく、ウルトラマンは少年だったお二人の心をがっちり掴んだそうです。

当時のエピソードで私がとても新鮮に感じたのは、録音テープのお話です。当時テレビを録音して繰り返し聞いて、好きなセリフ回しからその放送の脚本家がいることに気が付き、金城哲夫氏を発見するに至る経緯を語る池田さんのお姿から当時の少年の熱い思いを感じることができました。

録音の途中に家族の声が入って困ったなど、その後の二次会でも当時のテレビ録音にまつわるエピーソードをいろいろな方々からお聞きし、ジェネレーションギャップを感じながらも、「なんだか楽しそうだなぁ」と、すこしうらやましく思いました。 企画を2本出して、そのうちの1本しか採用しないシステムなど、選りすぐりのアイディア誕生のシステムのお話や、スペシューム光線発動から爆発までの、音と光の0.1秒の間合いの大切さ、脳が勝手に映像を補完する話などとても面白く、恥ずかしながら一度も「ウルトラQ」を観たことない私も、すっかり夢中になってしまいました。

後半は、スライドやDVDを上映しながらの、怪獣やウルトラマンの造形についてのお話を伺いました。
初代ウルトラマンでは、口部分のストッパーが外れて、思わぬところで口がパクパクする口パク問題があったといったお話や、星のマークの由縁、ガマクジラなどの面白怪獣の造形あれこれなど、とても貴重なお話をたくさんお聞きすることができました。

なかでも成田亨氏の原画をもとに怪獣についてお話いただけた、「ウルトラマン80」の放映終了後に生まれた世代としては、衝撃がありました。初めて細かく怪獣のディテールや設定を見聞きし、今までなかった怪獣愛が沸々と湧き上がるくらいお話は大変興味深かったです。(ガマクジラの目がとっても好きです。)

今回もあっという間の3時間で、平成のウルトラマンや田口清隆監督による最新ウルトラシリーズ事情などなど、語りつくせないエピソードが盛りだくさんで、時間が全く足りない!! といった感じに熱く盛り上がりました。

ご協力いただいたゲストの皆さま、ご参加いただいた参加者の皆さま、ありがとうございました。

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 ■8月例会レポート by  小野塚力

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■日時: 8月20日(土)
■会場:笹塚区民会館
(京王線「笹塚駅」より徒歩8分)
●テーマ:ロケットの夏がやってきた!川端裕人さんとめぐるロケットのあれこれ
●出演:川端裕人さん(作家)


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新刊「青い海の宇宙港」が刊行されたばかりの作家、川端裕人さんが今回のゲスト。

前半は、川端裕人さんのSFとの出逢いについてうかがいました。バローズからはじまり、一通りめぐったあと、サイバーパンクにおいていかれたという表現が印象的でした。

続く、ロケット開発をめぐるおはなしは、第一作品集「夏のロケット」で描いた世界が、いまや現実となったこと。それを受けての続編執筆ということでした。アメリカで展開する民間のロケット開発は、企業やアマチュア、それぞれで激しく動いていることが、川端裕人さんの熱い紹介でわかりました。
そして、おはなしは、舞台のモデルとなった、種子島の宇宙留学の話に。種子島に繰り返し訪れたという川端さんの熱意に感服しました。

後半は、種子島の見所と江戸時代に長崎にきていたドードーのおはなしに。
多様な話題で、川端さんに盛り上げていただいた例会でした。

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 ■9月例会レポート by  根本伸子

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■日時:9月17日(土)14:00-17:00
■会場:笹塚区民会館
●テーマ:
SFイラストレーター最前線!
●出演:
星野勝之さん、鈴木康士さん、シライシユウコさん、HR-FMさん


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9月例会は「SF イラストレーター最前線」と題しまして、星野勝之さん、鈴木康士さん、シライシユウコさん、HR-FMさんをお招きして、SFを彩るイラストの世界を贅沢に堪能しました。

前半は、イラストレーターになるまでのお話しとSFとの出会いについてそれぞれお話しをお聞きしました。
みなさんイラストレーターになったのは「成り行きで」とのことでしたが、お話しを聞けば聞くほどきっかけはさまざま。

子供の頃から絵が好きだったというシライシさんは、武蔵野美術大学の視覚伝達デザイン学科卒業後、一般会社勤務を経てイラストレーターになられたそうです。
鈴木さんは、イラストレーターになったきっかけはシンプルに、話すのが苦手だったからとか。ゲーム会社勤務を経てイラストレーターになったそう。鈴木さん、HR-FMさん、星野さんのお三方は、美術系の専門学校を経てイラストレーターになられたとの共通点がありました。

小学3年までは普通の少年だったHR-FMさんも、転校がきっかけで引きこもり気味になり絵を描くようになったとのエピソードをお話しくださいました。
ラストは星野さん。幼い頃はマンガ家になることを夢見ていた少年が、六田登さんの『F』を読んで「マンガは描けない。」とマンガ家の道を諦め、高校時代の破天荒エピソードを経て、3DCGイラストレーションの独自の境地へ達する経緯がとても面白かったです。

その他前半では、イラストレーターへの道は専門学校に入学した時点ですでに決まっているという話と皆さん打ち合わせに非常に気を配るといったお話しが印象深かったです。

後半は、皆さんの実際のメイキング画像を観ながら、制作過程を解説していただきました。
Photoshopで描くというシライシさんの特徴は、何パターンもラフを描くところと、本の装丁はなるべくピッタリ描きたいとのことで、バーコードや折り返しのガイドをあらかじめ入れたラフを描くとこととのことでした。
円城塔『エピローグ』の原案のパターンをたくさん見せていただきました。(会場では14Eというパターン番号にどよめきがわきました。)

鈴木さんには、アンレッキー『反逆航路』のラフから完成までの過程をみせていただきました。
シライシさんとは異なりこのときの作業では、ラフは2パターンだったとのこと。イラストもレイヤーをたくさん重ねることは少なく、分割して描かないのが特徴。
SFとの出会いは10年以上前に〈SFマガジン〉の表紙を描いたところからとのことで、『ペルディート・ストリート・ステーション』や『シップブレイカー』などの表紙のお話しもしていただきました。

海外との仕事も多いとのHR-FMさんは、実際のメイキング過程をMacのクイックタイム画面のキャプチャー動画で見せてくださいました。
方眼付メモ用紙に手書きで描かれた宇宙飛行士のラフスケッチが、iPhoneを経由しPC上にトリミングされ、B29や都市が成長した木、十字架などの複数のモチーフが隠れた、カラフルでスタイリッシュな作品が仕上がる様子は、それ自体が目もあやな映像で会場全体で見入ってしまいました。

トリを務めていただいたのは、ファン交の常連でもある星野さん。
作品作製過程は、立体造形作家+カメラマンのお仕事といったところでしょうか。3DCGだからこそできるアングルや、光源へのこだわりからPC上に立ち上がる立体世界を、星野プロデュースで見せてもらっているという、3DCGのイラストの深さを体感することができました。

今回も時間が本当に足りない! まだまだ観たい聞きたいという3時間でした。
出演していただいたゲストの皆さま、ご参加いただいた皆さまご協力ありがとうございました。

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・星野勝之さん ↓
http://www.geocities.jp/mbnippon
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・鈴木康士さん ↓
http://www016.upp.so-net.ne.jp/elegant/
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・シライシユウコさん ↓
http://uli.hanabie.com/
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・HR-FMさん ↓
http://www.hr-fm.com/
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 ■10月例会レポート by 平林孝之 

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■日程:10月8日(土)夜
■時間:夜(京都SFフェスティバル合宿企画内)
■会場::旅館「さわや」本店
●テーマ:〈筺底のエルピス〉解題
●出演:オキシタケヒコさん

※参加には京都SFフェスティバル合宿への参加申し込みが必要です。
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今年もファン交10月例会は京都SFフェスティバルの合宿企画に出張させていただきました。
京フェス出張版では、せっかくなので関西の方をゲストにと考えています。

今年は作家のオキシタケヒコさんをお招きし、小学館ガガガ文庫から刊行中の〈筺底のエルピス〉シリーズについてお話を伺いました。

〈筺底のエルピス〉シリーズは、異能バトルものですが、第3回創元SF短編賞で優秀賞を受賞された「プロメテウスの晩餐」は料理SF、初の単行本となった連作短編集『波の手紙が響くとき』はハートフルな音響SFと、これまでの作家オキシタケヒコからすると作風がガラッと変わっています。

このギャップについて訊いてみたところ、〈スーパーロボット大戦〉シリーズのシナリオを担当されていた経験から、もともとの依頼は「明るいロボットもの」だったそうです。
ところが担当編集者の企画書がなかなか通らない。そこで、企画屋としての経験ももつオキシさんが、主導権を握り、「だったら自分のやりたいことを全部盛り込んでやろう」と、誕生したのがエルピスだとか。

〈エルピス〉では、囲んだ中身の時間を停めてしまう「停時フィールド」というガジェットが、武器から物語全体の大仕掛けにまで幅広く使われていますが、停時フィールドのアイディア自体はロボットもの企画だったころに考案されたものだそうです。

もともとのアイディアは、動力のないロボットが外部から運動エネルギーを奪って動くための仕掛けだったようですが、エルピス企画になってからは大進化。ワームホールと停時フィールドがあれば、キップ・ソーン式タイムマシンが組めるので、このタイムマシン機構を使った歴史改変ものが主軸に置かれました。

また、ゲームのシナリオ作りと、小説を書くことの違いについてうかがったところ、物語や攻勢を考えるところまでは同じでも、そこから先の作業はまるで違うとのことでした。
シナリオでは、基本的にセリフだけ書けばよくて、外見やアクションは絵や演出で表現できるが、地の文がメインになってくる小説は、最初はどう書けばいいかわからなかったとか。

ゲームは時間管理をユーザーに任せる一方、小説では地の文でコントロールすることができるので、そこをコントロールしつつ読んでいくための運動エネルギーを、読者に与え続けるというところにも苦労の一つだそうです。

〈エルピス〉シリーズは現在のところ4巻・3話(3、4巻が第3話)まで刊行されていますが、主軸に置かれた歴史改変を個人、組織、世界レベルと徐々に規模を大きくしながらも、繰り返していくという構造を意識しながら書かれています。
このマトリョーシカ状繰り返し構造は、これからも維持されていくとのことで、世界レベルまできたら次は歴史? その次は? と今後、続きを読むときには、物語構造にも注意してみると一層楽しめそうです。

ライトノベル・レーベルから刊行されてはいますが、SFを書こうとしてSFを書いている、というオキシさんの言葉が印象的でした。
まだ既刊は4巻、読みやすい文体ですので、未読の方も今から手を付けて、救済の前の絶望を一緒に味わいませんか?

ーー本合宿企画は、基本的に読んでいる方々対象ということで、
  詳細に小説の内容について伺っています。
  以下はできれば、〈エルピス〉シリーズを片手にどうぞ。(by みいめ)

一挙手一投足にまで物理的な説明がされていて、構造からガジェットまで非常にロジカルに作られていますが、もともと停時フィールドの用法だった「外部から運動エネルギーを奪って動く」仕組みについては、円城塔さんから矛盾を指摘されてしまったそうです。もっとも、なにかあればすぐに突っ込みが出てくるSF読者にこれだけ読まれていて、今のところ指摘が一つだけというのはすごい気がします。

一方、オキシさん本人も仕組みを考えきれていないのが、マーシアンの使う《レグレス・トリポッド》、名前の通り外部に固定点を3つもち、それを順繰りにつかって宙を歩くUFOという設定でですが、どうやったらそれで動くかは原理募集中だそうです。ルールを無視してでも火星人のUFOとトリポッドを出したかったんだとか。

マーシアンはその名前で誘拐を担当していたり、分身が46人もいたりと、オキシさんの趣味が詰め込まれた面白いキャラになっています。彼女(たち)だけで短編2本分くらいの設定があるそうですが、最近のライトノベルだと外伝的短編集が並行して刊行されることも少なくなっていて、日の目を見ることがなさそうなのが残念です。

巻が進むにつ入れて熾烈になっていく物語ですが、第3話(3, 4巻)で印象的だった登場人物、ヒルデはプロット段階ではいなかった想定外の人物だったそうです。当初、敵サイドである〈ジ・アイ〉側は3巻の強敵だった奥菜正惟の視点から描くつもりだったけれど、彼の物語は家族と子弟の話にしかならないので、ヒロイン叶の対になる人物として新たにデザインしたのがヒルデでした。ヒルデが人気になったのは、意外だったとか。

4巻の最後で過酷な世界に帰っていったヒルデですが、彼女たちの世界も捨環戦の成果があるので「なんとかいくんじゃないですかね、たぶん」とのこと。彼女の先行きは気になっていたので、その一言が聞けただけでも企画した甲斐がありました。

もともと5話5巻構想だったものが、3話以降膨れ上がっているのも、地の文に対する想定が甘かったのが一因のようでした。キャラクターが増えると、その分文章も増えていくということを計算に入れていなかったとか……。ただ、それはキャラが増えても一人一人の描写は薄くならないということの裏返しでもあるので、今後も安心して読めそうです。

今後についても、やりたいこととやらねばならないことがあるとして、構想について少しお話しいただきました。
作者のやらいちことのためにひどい目に遭ってきたキャラクターや、彼らに感情移入してきた読者への責任を果たすために、当初の予定になかった話を一冊分差し込むことを考えているそうです。特に4巻ですべてを失ってしまったキャラについては、バッドエンドも考えていたけれども、もう許されないのでなんとかするとのこと。

うれしい話ではありますが、読者の感想が目に入らなかったら、もっと悲惨な展開が続いていたかもしれないということでしょうか? 感想をどんどんと発信していくことは大切ですね。

〈筺底のエルピス〉シリーズはもともと描写の細やかさと設定のロジカルさでSF界隈でも評判になっていた作品ですが、この夜は自分が気づいていなかった部分の作りこみについてもうかがうことができました。

今後の展開にも希望が見え(?)、一層続きが待ち遠しい作品になりました。

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『筺底のエルピス』
(ガガガ文庫/オキシタケヒコ/ イラスト:toi8 )
https://www.shogakukan.co.jp/books/09451527
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 ■11月例会レポート by  みいめ

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■日時:11月19日(土)
■時間:午後2時〜5時
■会場:笹塚区民会館
●テーマ:SF観光十年よもやま話
●出演:大森望さん(翻訳家、アンソロジスト)、小浜徹也さん(編集者)

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★この回の例会レポートはご用意がございません。

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 ■12月例会レポート by  根本伸子

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■日時:12月10日(土) 14:00-17:00
■会場:笹塚区民会館
●テーマ:VR/AR元年を楽しもう!
●ゲスト:タニグチリウイチさん(書評家)、三村美衣さん(書評家)、さいとうよしこさん(フリー編集者)、鈴木力さん(ライター)ほか交渉中


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12月例会は、2016年VR/AR元年! ということで書評家のタニグチリュウイチさん、作家の柴田勝家さん、書評家三村美衣さん、フリー編集者のさいとうよしこさん、ライターの鈴木力さんをお迎えして話題のVR/AR事情に迫りました。

90年代にVRゲーム機のはしりだった任天堂のバーチャルボーイは、黒字に赤色LEDを使った単色3Dで顔に付けるには重かった。という話に「あったあった懐かしい」と会場が湧く中! 開始5分でついていけるのかゲームど素人としては不安でいっぱいに。

「今はこんなのも出ているんですよ」とタニグチさんが出してくれたのは、スマホよりちょっと大きいサイズの箱。「この箱の中の部屋に女の子がいるんですよ。」という説明に、遠い異国から来たカメラを初めて見た昔の日本人と同じ気持ちになってしまいました。(知らない間に世の中は色々進歩してるんですね。)

「自分だけのアイドルの良いところは、こっちを見てくれて応援すればするほど反応があるので、つい熱が入りすぎてどちらが本当かわからなくなるんです。」
との柴田のさんの熱い説明に会場からも賛同の声が。

その他VRのメリットはたくさんあるようで、PSVRを体験された柴田さん曰く、サイリュウムも6本持てるし、ヲタ芸で周囲に迷惑もかけない。家でコンサートが楽しめるようになったり、アドベンチャーものやハンググラダーなど体験が気軽に楽しめ、田舎に住んでいる人や病気の人など今までやりたくてもできなかった人の環境の障壁を取り除いて世界を広くしてくれるという点でも生活を豊かにするというメリットがあるようです。

次に三村さんが紹介してくれたのは、いち早くVR技術を取り入れた絵本。
スマホの画面越しにトーマスが360°立体で見れたり、プロペラを回しながらヘリコプターが目の前で離着陸したりと驚きの世界が広がります。本の中のガリレオが喋る光景には、とハリーポッターのカエルチョコレートカードに想いを馳せ、既に現実は魔法を超えているのかと魔法界の行く末が心配になりました。

2016年わすれてならないのがポケモンゴーということで、石巻まで行きラプラスをゲットし全部モンスターを集めた三村さんとラプラスは偶然生まれて手に入れたというさいとうさんからポケモンゴーについて話をお聞きしました。

モンスターゲットのためにツアーバスが出て僻地に観光客を呼ぶなど経済面で地方にも旋風を巻き起こしたり、月刊住職でポケモンについての特集がくまれたりとポケモンゴーは様々な分野で世界に変化をもたらしたようです。

三村さんの75歳のお母様もポケモンGOをなされているそうで、「どっからかヘビがついてくる」というお母様になんの昔話か! と思ったとのエピソードにほっこりしました。ポケモンGOを民俗学的にみるという話もとても興味深かったです。 

他にも『ニューロマンサー』などでSFでは古くからおなじみだったバーチャル世界設定は、ライトノベルや漫画の世界にもブームを巻き起こしているそうで、異世界観を巧みにつかった作品が多いのだそう。『アクセル・ワールド』『グリムガル』といった作品が紹介されました。

12月例会も時間いっぱいまで話題はつきることなく、レポートにまとめきれません。
ゲームど素人の私も、VR技術はどう世界を変えていくのだろう? SFはどう変わっていくのかなととても楽しみになりました。

例会を盛り上げて下さったゲストの皆さま、来場して下さった参加者の皆様にお礼申し上げます。
ありがとうございました。

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