思い出したくない男
将軍様と側近……な二人の旅立ちまで間の物語
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【8】



 シーグルが自分を愛してくれている、という自信はある。なのにやはり彼からそれを態度で示して貰いたいと思うのは――我ながら馬鹿なのだろう、とはセイネリアも思う。
 セイネリアは現実主義で合理主義だが、一番重視するのは『心の満足感』だ。だから他人から見て見合っていない、という労力でも自分が満足すればセイネリアとしては問題ない。そしてシーグルの事に関して言えば、彼が喜んで彼からちょっとした『お礼』を貰えれば、まず大抵の出来うる限りの労力をつぎ込んでも釣りがくるくらいに満足出来る。

 それこそが人を愛するという事なのだと、それを実感してまた満たされるのだが。

「愛してる」

 彼にこんな言葉を言うだけで簡単に心が満たされる。そんな自分の単純さが面白い、馬鹿みたいだと思うのに、この幸福に溺れたくて彼を求める。以前は溺れすぎるのに恐怖を感じたが、今は溺れる時は好きなだけ溺れた方がいいのだと考えられるようになって余計満たされるようになった。
 肌を密着させて彼の体温と存在を思うまま感じ、彼の髪に鼻を埋めて彼の匂いに包まれる。聞こえる彼の呼吸の音で安心する、じっとりと汗ばんで余計体がくっつく感覚にも喜びを感じる。

 ただ、この時がいつまでも続いてほしいと思う反面、貪欲にもっと彼を欲しいとも思ってしまうから最後は彼に言ってしまう訳だが。

「挿れてもいいか?」

 言われてシーグルの体に力が入るのが分かる。それでもすぐため息をついて、彼は呆れたように言ってくる。

「嫌だと言ってもいいのか?」
「それは困る、今日は絶対に」

 彼が笑う。最初は軽く吹き出して、それから喉を鳴らして。

「だめだったらここまで大人しく付き合わないだろ。……ただ、加減は頼む。ちゃんと抑えてくれたら……協力してやるから」
「了解した」

 セイネリアも笑って彼の頬にキスすると、一度彼をベッドに戻した。
 正面から見るのが嫌なのか、挿入の瞬間はいつも目を逸らして横を向くシーグルの耳元に軽くかじりついて、耳たぶを吸って唾液の音を鳴らす。

「ん……」

 そんな事で顔を赤くして首をすくめる彼の足を掴んで、広げて、彼の強さを知るからこそ笑えるくらい細すぎる腰を持ち上げる。女からすれば頼りないほど小さな尻は固い筋肉だけで出来ていて、尻の谷間を指でなぞればその指さえ挟みそうな勢いに笑ってしまう。
 そのまま指で肉をかき分けて、彼の後孔を撫でてから指を入れる。勿論彼をベッドに寝かせた時に指には香油を付けてあるから、くち、と小さな音と共に指は彼の中にすんなり入っていく。

「う……」

 彼が呻くと同時に、指を締め付けていた肉が緩む。だから思い切って根元まで入れれば、持ち上げられたままの彼の足がびくんと大きく揺れた。くちくちと水音を立てて、セイネリアは指を出し入れさせる。すんなり指で抽挿が出来るようになったらもう一本入れる。更に激しくかき混ぜて何度も出し入れさせれば、一度萎えた彼の雄がまた膨らんでいく様に笑ってしまう。

「や、は、ぁ……」

 慣れた彼の中が指の動きに合わせて収縮する。奥に入れればぎゅっとしめつけ、その直後に緩んだところで引き抜けば肉が縋り付いてくる。

「あ、う……」

 シーグルが口を開けてシーツを掴んだのを見て、これでイカせたらまた怒られるなと思ったセイネリアは指を引き抜いて、そこへ自分の膨らみきった性器を押し付けた。

「うぁっ……」

 指を使って先端を押しこみ、そこからは腰で押し込む。彼の体にも力が入るから、空いている手の方で彼の雄を掴んでやって、そこで彼のナカが収縮したのを狙って中ほどまで進める。そこからは手を離して、上半身を下して彼に口付ける。

「んぅ……ン、ン……」

 締め付けられながらもだんだん奥へと進んでいく感触にセイネリアも眉を寄せる。シーグルが首に手を回して縋り付いてきて、セイネリアはそこで一気に奥へと押し込んだ。

「あ、あ、ん……」

 唇がわなないて声を上げる彼を見下ろし、唇からこぼれた唾液を舐めとる。目をぎゅっとつぶって耐えているその瞼にキスをして、一度腰を引き、それから今度は一気に突き上げる。

「あぅっ」

 毎日ではなくともさんざん犯され慣れた彼の中はそれでも強く締め付けてきて、セイネリアの唇からは満足そうなため息が漏れる。未だにきつく目を閉じて耐えているシーグルの顔を眺めてから、そのまま唇を軽く舐めて、セイネリアは本格的に腰を揺らしだした。

「あ……んぁ……はぁ……」

 突き上げる度に声がこぼれ、顎がくっと持ち上がる彼の姿を見ながらセイネリアはゆっくりと彼の中を突き上げる。本当はすぐにでも思うさま彼を貪りたいと思う感情を制して、彼に負担を掛けないようにじっくりと味わっていく。
 協力する、と言っていた所為かシーグルもこちらの動きに合わせてゆっくりと腰を揺らし、呼吸も動きに合わせているのが音で分かる。更には呼吸に合わせて彼の中も緩んでは締め付けてを繰り返すから、セイネリアもそれに合わせて動いて互いの呼吸音が重なっていく。
 だが、目を閉じてその音を心地よく聞きながら、肉の壁に挟まれ、絞られる下肢の感触を味わっていれば、こちらに抱き着いていた筈の彼の手が片方外れてセイネリアは目を開いた。

「セイ、ネリア……」

 彼の手がこちらの顔、頬から顎にかけてを掴む。
 引っ張られるその手に任せれば、彼が首を伸ばして口づけてくる。セイネリアはそれを受け止めてすぐに深く合わせたが、次第に顔がにやけてしまって唇が笑ってしまうのを押さえられなかった。
 これはやられたな、と思いながらも嬉しくてたまらないのだから自分は相当に色ボケをしているとなと思う。それでもその程度の事があり得ないくらい幸せなのだから困る。
 動きながらの口づけはその動きに合わせて度々唇が離れるが、逆にその都度何度も口づけし直すから、その度に角度を変えたり、舌から触れ合わせたり、唇を舐めてみたりといろいろ楽しめる。
 ただ、当然ながらそうしていれば体の方を抑えている事が次第に苦しくなってきて、いつまでもこの状態を続けていたいと願う心を欲望が追い越してしまう訳だが。
 ゆっくりとした動きにあわせてゆっくりと宙で揺れる彼の足を、セイネリアは掴んでベッドに押し付けた。

「あ、やぁっ」

 繋がりが深くなった事で彼が悲鳴のような声を上げる。また両腕でしっかりとこちらにしがみついてくる。

「は、ぁ、あぅ、ぁ、あ」

 今度は少し速く動けば、動きに合わせて彼の声が上がる。
 そのまま動きを速めていけば、彼の声が更に高く、甘くなる。それに引きずられて自然とセイネリアの動きも速さを更に増していく。動きが激しくなっていけば肉が肉を打つ乾いた音が小刻みにリズムを刻み出す。小さすぎる彼の尻に自分の凶悪な肉が出入りする様に興奮して、セイネリアの口元が笑みに歪んだ。後はもう、彼の足を押さえて、広げて、思さま彼に突き立てる事しか考えられない。

「あ……っぁ……うん、あ……」

 こちらにしがみついてくる彼の腕に力が入る。
 中がきゅうっと締まってセイネリアを絞り上げる。びくびくと彼の中と体が震える。
 その後に力を失ってぐったりベッドに倒れ込んだシーグルだったが、セイネリアがそこで終わりに出来る訳もない。

「悪いな、もう少しだけだ」

 だから、ぐったりとした彼の顔の傍でそう囁いて、セイネリアは彼の足を抱えると一気に彼の中を強く、速く、突き上げた。

「や、あ、あ、あ……」

 力ない彼の悲鳴のような声に、少しばかりの罪悪感と大きな満足感を感じながらセイネリアは最後に思い切り彼を貪った。






 終わってから、ぐったりとしてぼうっと天井を見ていたシーグルに『風呂に入るか』と聞いてみれば、『入る』と答えたからそこから二人で湯あみをした。
 ここを将軍府に建て替える時、二人で入る為に大きな風呂を作ったのもあって、シーグルも二人では嫌だとは機嫌が悪い時以外は言わなくなった。彼もなんだかんだと合理主義ではあるから、普通の風呂に大人の男二人が入るのは理由をつけて断れても、二人で入った方が効率がいいくらいの風呂なら文句を言う理由がない。
 ただ勿論。

「風呂で余計な事はするなよ」

 とは毎回言ってくるが。

「俺にとってはどれも余計な事ではないが」
「なら訂正する、風呂は体の汚れを落とすところだ、それ以外をするな」

 そんな彼のいつもの調子に笑ってしまいながら、それでも今日は彼の言う通りに大人しくしている事に決めていた。

「分かった、約束する」

 なにせ今日は気分がいい。
 だからこのまま彼の機嫌を損ねないようにして、この幸せな気分のまま眠るのもいいとセイネリアは思っていたのだ。
 ただ……彼としてはセイネリアのそんな態度が不気味に見えたようで、こちらの様子を不審そうにずっと見続けていたが。




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 セイネリアさんご満悦。
 



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