最終話とエピローグの間の話。アウグで旅している最中あたりの二人。 ※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。 【4】 セイネリアはシーグルと行為に至る時にいつでも思う。 ――何故こいつはいつまでも慣れないんだ? 毎回毎回、無理矢理だというならまだしもきちんと合意の上での行為である。というか彼は、自分以外が相手なら絶対嫌で自分以外には許さないのだから、現在彼にとって自分は唯一のそういう行為の相手な訳である。 なのに何故――これだけ回数を重ねているのに、未だに彼は慣れないのか。どう考えてもこれは不思議以外の何物でもない。 とはいえ、一応セイネリアだって分かってはいる。 シーグルは経験的な問題もあって性的な事や恋愛関連には昔から拒否反応をしめしていたからそのせいで未だに抵抗があるという事。男としてのプライドとして女役になる自分が許せない事。 彼が少なくとも正気であるうちは快楽に流されないのは、上記の理由に彼の頑固さと我慢強さ、そして意思の強さが合わさった結果だとはわかるのだが、それにしてもシーグルのこの慣れなさは奇跡的ともいえるレベルである。 ただ当然ながら、セイネリアはそれが嫌な訳ではない。 ぎりぎりまで耐えて慣れない様子の彼はセイネリアにとっては却って楽しいくらいであり、だからこそ自分も彼に飽きるなんて事はありえなくていつでもどれだけ彼を感じていても足りない気持ちになるというのもある。 更に言えばそうして彼が我慢して我慢して……けれど意識が飛んだ辺りで素直に自分にすがってくれる時の満足感というか幸福感は何物にも代えがたい。 ……まぁ彼が耐えられる理由の中に、耐えようとする彼をセイネリアが見たいから彼が耐えられるくらいにセイネリアが加減をしている、というのもあるのだが。セイネリアは快楽に喘ぐシーグルは見たいが、快楽に狂うシーグルを見たい訳ではないのだ。 という事なので、セイネリアが彼を愛撫するのは、愛しくてたまらないという気持ちと、彼が恥ずかしがって耐えようとするのを見たいというためにやっているのである。シーグルの場合、実際の性器等、感じると分かっている部分を弄るだけではなく、それを想像させるような音を聞かせたり、舌を出してゆっくり舐めるような様を見せるだけで無茶苦茶耐えようと緊張するから面白い。精神的には抵抗があっても、体は実際慣れているから反応するのを止められなくてきついのだろう……と、ここまでの考えを正直にシーグルに話したら絶対当分は一緒に寝てもくれなくなる、という自覚はある。 ただ実際、彼の心はともかく体が慣れているのは事実で、単純に彼の体にかかる負担は減っている上に反応も良くなっているからセイネリアもより楽しめている。 「ぐ……」 入る瞬間のシーグルはいつも歯を噛みしめて目をきつく瞑るのだが、今日は唇を合わせているから歯を噛みしめられない。その代わりにこちらの肩をきつく掴んでくる。だから強張って緊張している舌をくるんで宥めてやって、少し緊張がほぐれたところで彼の中に入っていく。慣れた体はきついもののこちらを引き込むように蠢いて、セイネリアの雄はまとわりつくようにぴったりと彼の肉壁に包み込まれる。それだけでも極上の感覚だから暫くはそれをじっくり味わって、それから彼の胸をそっと撫でて指に当たる突起を摘まんでやる。 「ン……」 口の中に彼の出した声の振動が伝わってくる。舌がまた緊張に強張っているから、また絡めとって宥めてやる。そのまま彼の胸を弄ってやれば、肉壁がびくびくと震えてこちらを柔らかく絞って来て、セイネリアもそれに合わせてゆっくりと浅く動いてやる。そうすれば今度はその刺激に彼の肉壁が大きくうねって奥に引き込もうとするから、一度深くを突いた。 「ふぅっ……」 びく、とシーグルが首を逸らしたせいで唇が離れる。それを追いかけてまた合わせる。奥に入れたままそこで何度か突いてやる。その度に掴んでいる彼の足に力が入って、口の中に彼の声が籠って、彼の中が締め付けてくる。……明らかに、これは慣れた体の反応だ。 そのころにはもう、彼の理性もかなり飛んできていて、ゆっくりと腰を揺らしてやればそれに合わせて彼も自ら腰を動かす。先ほどまで逃げる舌を追いかける事が多かったのだが、彼の方から舌を合わせて強請ってくる。 だから逆に、唇を離して、無意識にものたりなそうな表情になる彼を見て満足してから、セイネリアは彼の足を岩に押し付けて今度は腰を引いてから奥を一気に突き上げた。 「あぁぅっ」 彼が大きく喘いでこちらにしがみついてくる。 そのまま彼の中を何度も強く突き上げていけば、益々こちらを掴む彼の腕に力が入る。さすがにこの状態で唇を合わせたままだと歯が当たって彼の口腔内を傷つけかねないからそれは諦めて、突き上げる度に彼の顔のあちこちにキスしてやる。 「あぅ、あ、は、あ、ん、あ、あ……」 奥を突き上げる度に彼の口からは声が漏れて、それがどんどん高くか細くなっていく。白い彼の体が目の前で波打って、筋肉がピクピクと揺れる。 「やぁっ、は、あ……」 やがて彼はこちらに完全にしがみついて顔もこちらの肩口に埋めてしまったから、その顔が見えなくなって仕方なくセイネリアはその耳元にキスする。 彼の声が小さくなる、背が丸まっていく、掴んだ足が逃げようとする。 それから間もなくびくびくと震えて、彼の体から力が抜けた。けれど彼の中はそこから大きく蠢いて締め付けてきたから、セイネリアは彼の両足を持ち上げて彼の体を岩の上に持ち上げる勢いで押し付けるとそのまま彼の中に激しく打ち付けて貪った。 「や、あ、だめ、だ、あぁぁっ」 泣きそうな彼の声を心地よく聞いて、満足して。 ……ただそれは少しやりすぎだったようで、終わった後で背中が痛かったとシーグルに文句を言われる事になったのだが。 セイネリアは約束を守る。 だからその後はちゃんと約束を守って体を洗い直したあと、シーグルが火にあたってる間に手際よく料理を作ってゆっくり食事をして、残った肉の一部は塩漬けにしたりもしてからヘンな悪戯もせずに彼を抱きしめるだけで満足して眠ったのだ。 そして翌日。 流石にこの日はさっさと朝食を済まし、準備をしてここを発つ事にしたのだが、着替えの時に少しばかり言い合いがあった。 「お前が着ないなら俺だって別に着なくてもいいだろう」 「いや、お前は着ろ。その方がいい」 「何がいいんだ、こんなところじゃそうそう人に会う訳もないし」 これが何の話かといえば鎧の事だ。 セイネリアは旅の最中、鎧を着ないことも多かった。特にこういう森を狩りしながら行く場合は、鎧を着ていないほうが足音を消して歩きやすい。だがだったら自分も着なくていいだろとシーグルが言い出した訳だが、セイネリアはそれを許さなかった。 ちなみに鎧を着ていない場合は例の魔法空間の倉庫に入れるだけだから、勿論着ないと荷物になるという理由ではない。 「ともかく、その鎧を着ているだけでかなりの危険から身を守れるんだ、常に俺の手が届く距離にいてくれるならいいが、そうでないなら着ていろ。もともとセニエティにいるときは常時着ていたんだ、今更着ているのが苦痛でもないだろ」 「それはそうだが……」 それでしぶしぶながらもシーグルは鎧を着る。 言うまでもないがシーグルの鎧は魔法鍛冶製で、こと主を守る事に関しては他の鎧とは比べようもない程の高性能である。単純な防御力の高さは物理面でも魔法面でも当然として、外気温が極端に高くても低くても鎧が調節して快適な温度を保ってくれるし、重さだって体感はかなり軽い。それらの機能は主の魔力を使って実現している訳だが、シーグルの場合セイネリアを通して黒の剣の魔力が流れ込んでいるからほぼ無尽蔵だ。おまけに彼の顔を隠せるし、実は鎧を着ていた方が外から見える彼の魔力が高くなるから離れていても見つけやすいという利点もあった。 ……まぁ結局、セイネリアとしては少しでも彼の危険を減らせるのならどんな保険でもかけておきたいという事で、兜をとる程度は許していても彼にはいつも鎧を着ているように言っている。 「そうやって俺だけ鎧姿でお前が鎧を着ていないと、この間みたいにお前は俺の従者だと思われるぞ」 「別に構わん、思いたい奴には思わせておけ」 確かにそれは実際あった事だが、シーグルの見ただけで立派すぎる鎧を見ればそう見えて当然だ。むしろ、それならそれで堂々とセイネリアはシーグルの護衛としてふるまうだけだから問題ない……のだが。 「俺は嫌だ。お前が軽んじられるようなのは見たくない」 その発言には笑ってしまって、思わず彼を引き寄せてキスして……ちょっと出発が遅れるくらいの事態になって怒られる事になったのは、セイネリアとしては仕方のない事だった。 END. --------------------------------------------- ってことで旅の途中のいちゃいちゃ&セイネリアの思惑、な感じのお話でした。 |