望みと悪意の計画
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【10】



 身体の中に、他人が入ってくる。
 自分に覆いかぶさる男の影を半分瞑った瞳で見つめながら、シーグルは歯を噛みしめた。

「う……ぐ、うぅっ」

 最初はゆっくりと場所を探るように入ってきて、途中からぐんと一息に奥を突かれる。その度に漏れる声は耐えられなくて、受け入れる自分のそこの肉達がぎゅっとそれを締め付けてしまうのも止められなかった。

「……ぅ、ぅ……」

 相手が動き出せば背筋をぞくぞくと何かが駆け抜けていって、押さえつけられて動かせない足に思わずつま先まで力が入る。そうすれば足を押さえつけている手にも力が入って、よりいっそう足を大きく開かされた状態で押さえつけられた。

「っ……ん、う……ぁ……」

 掌を握り締め、歯を噛みしめても、ふいに奥深くを突かれれば口が開いて声が漏れる。自分に覆いかぶさる男の動きが速くなっていけばその動きに合わせて腰が揺れて、視界が揺れて意識が揺れる。相手の顔を見たくなくてシーグルは目を閉じて顔を横に逸らした。

「っく、ぅ、ん、ん、ん、ぁ」

 船を漕ぐようにゆっくりだった揺れはだんだんと速くなり、小刻みな震えのような揺れに変わって体の芯に熱く疼く快感が膨れ上がっていく。そうして、体の深い場所に他人の熱を注がれてその快感は弾ける。

「や……ぁあ……」

 暫く断続的に中でソレが震える感触があって、やがて唐突に抜かれていく。
 それで一度安堵の息が口から漏れるが、それが単なる一時の事ですぐに次がくる事がシーグルには分かっていた。

――どういうつもりなのか。

 はぁ、はぁと自分の荒い呼吸音だけが聞こえる中で、それでも呼吸を整えながら考える。シーグルにはサテラの意図がよく分らなかった。いや、こんな事をしている目的自体は本人が言っていた通り、自分の精神を衰弱させ、意識を飛ばさせる為という事なのは分かっている。問題は、それでどうしてこんなやり方をしているのかだ。
 現在シーグルは台の上に寝かされた状態で、腕は拘束具を固定されたままだが足の拘束具は外されて、代わりに左右にいる男に足を掴まれて開いた状態で固定されていた。想像したくない程無様な恰好なのはともかく、その状態で信者達が一人ずつ順番にシーグルを犯していた。

――やはりこいつらは操られているのだろうか。

 かつて魔法使いの『信者』としてシーグルを襲ってきた者達は、普通に自分の意志があって、自ら愉しむ為にシーグルを犯していた。それこそ、自分の欲のままシーグルをモノのように扱い、我先にともみくちゃにして己の欲を突き立てては吐き出していた。それで意識を飛ばした事は数えきれないし、嫌悪感で精神的におかしくなりかけた事もある。
 だが今シーグルを犯している者達は違う、彼らは事務的に自分の順番がくればシーグルを犯して次の者に変わるだけで、その間には言葉すらほぼ発する事はない。他の連中の時と同じように、休む間もなく犯し続けたほうがこちらの意識を削ぐには有効だろうに、どうしてこんなやり方をしているのか。
 ただ、それが操られているからというなら納得できる、ラークのように操られているのなら一度に何人にも操れないという理由があるのかもしれない。

「う……」

 また新しい男が体を貫いてきて、シーグルは嫌悪感に顔を顰めた。
 すぐ抽送を始められて、熱が身体に灯る。それでも歯を噛みしめて、シーグルは感覚に耐えた。
 耐えろ、耐えろ、早く終われ――こうして一人ずつなら待っていればそのうち終わる、例えすぐに次が待っていても終わるまで我慢すれば今の男は離れる。だから、嫌悪感に吐き気がしても、体が浅ましく疼いてもどうにか耐えられる。セイネリアが自分を見つけるまで、どうにか正気を失わないで耐えていなくてはならない。

「うっ……う、ぐ、ぅ」

 ぐぅっと深くにまで他人に入り込まれて、それだけで吐き気がする。口の中に冷たい唾液が一気に湧いて、溢れて、噛みしめた歯の間から零れていく。唇からだらっと液体が溢れていく。

「おや、さすがに苦しいかな。あのセイネリアの相手をしている割には随分初々しい反応じゃないか」

 サテラはずっと横で自分が犯される姿を観察していた。こうして時折話しかけてはくるが、シーグルはそれに返事を返す事はない。いや、正確にいえば返事など返せる余裕がない。

「それとも、最近は抱かれていなかったとか。どおりで最初の時にあれだけ辛そうだった訳だ。それでもさすがに4人目になれば大分ここもこなれていい感じになってきたかな」

 言って魔法使いは今男を受け入れているその周りをぐるりと指でなぞる。その感触にそこの肉がひくひくと蠢くのが自分で分かってしまったからこそ、シーグルは懸命に口を閉じて声を耐えた。

「そんなにここに銜えるのが好きなら、私がこの体を貰ったら我が信者達と毎日まぐわってあげようか。君の精神をすり減らすのにも効果的だろうしね」

 そうして笑いながら、サテラの手は今度はシーグルの胸を弄(まさぐ)る。胸の尖りを指で弾かれ、指の腹で擦られれば、体が勝手にびくびくと震えて今自分を貫く肉を締め付ける。そうすれば男の吐息が荒くなって、より興奮して膨れた雄が自分の中を乱暴に突き上げてくる。

「う、……ん……ぅん、あ」

 犯している男が身体を倒してきて、目の前までその顔が下りてくる。獣のような荒い息が近づいてくるのが嫌で顔を背けても、勿論逃げ切れるものではない。ぐん、と奥を突かれてそれに声が上がったところで無理矢理唇を合わせられた。途端に鼻から男の臭いが入ってきて、シーグルは嫌悪感に涙ぐむ。

「ん、ぅ……んぅ」

 男の唾液が口の中に注ぎ込まれてくる。顔を振って逃れようとしても、唇は追いかけてきて上から被さってくる。唾液が唇の端からだらだらと流れていって、目からは涙が筋を作る。口の中では無理矢理舌を合わせられてぬるぬると擦れあい、絡ませられる。

――早く、終われ、終われ、終われ……。

 彼らが操られている、と言い切れないのは時折こんな風に興奮して乱暴に犯してくる事があるからだ。基本的には事務的にこちらの中に突っ込んで中を擦って吐き出していくだけの連中だが、時折興奮してキスをしてきたり胸を舐めたくってきたりしてくるのだ。だから、意志のないただ操られているだけの木偶、というには疑問が残る。

「ん、ぅー」

 男の吐息と荒い鼻息の音が耳にこびりつく。
 この男は体を密着させて腰を振ってくるから胸を男の服で擦られ、乳首の先が擦れてやけに敏感になる。更に男はより密着させてくるから、自分の雄がその間に挟まれて擦られて嫌なのに体が感じて男を中でよりいっそう締め付けてしまう。

「おやおや、相当君の体は良いらしい。こんなに夢中になっている」

 サテラの声と共に更に足が引かれて尻が浮く程持ち上げられる。そうすれば興奮した男の動きは更に激しくなって、抜く程引いてから一気に深くへ落すように中を抉る。

「うあっ、あ……ぐ、ぅぅっ、ぐっ……うあ、うあっ」

 動きが激しくなった所為で口は解放されたものの、出る声は喘ぎでもなく悲鳴にしかならなくて、シーグルは口から自分のものか男のものか分からない唾液を溢れさせながらただ声を上げる事しか出来なかった。

――耐えないと。あいつがくるまで正気でいないと。

 耐えていればいつか終わる。少なくともこの男の番は終わる。犯される事なんて慣れている、もっと酷い目にもあっている――逃げ出しそうな心を押さえつけて、吐き気と体の震えに耐えて、ともかくシーグルは耐えろと自分に言い聞かせた。
 そうすればやはり体の奥に男の精を叩きつけられて、けれどもう入りきらなくて溢れたものが尻全体を濡らして垂れるのが分る。ぐじゅ、ぐじゅと音をさせながら男の肉棒がそこでまだ名残惜しそうに動いているのを感じる。

――終われ……はやく抜いてくれ。

 人形のように放心した顔で揺らされるままでいるシーグルは、終わった筈なのになかなか抜かない男に向かって心でそう唱える。そうすればやっと抜かれて男の体が離れていって、次の男が現れるまでの時間が与えられる。

「どうだい? 今の者のは相当に善(よ)かったようだが」

――黙れ、何が善いものか。

 声に出せない代わりに心で答えて、シーグルは考える。
 こうして話しかけてくるのは、こちらがまだ正気かを探ってでもいるのだろうか。もしかしておかしくなったふりでもすればサテラはこちらに魂を入れる為の準備を始め、そうしてこちらが実はまだ正気である所為でそれは失敗して、彼の魂がどこにもいけず自滅する――そんな可能性もあるのではないか。思いついたその考えが果たして相手に通用するか考えてみるが、そう都合よくいくと思える程シーグルも楽天家ではなかった。

「さて、信者達はまだまだいるのでね、君もたくさん楽しむといい。こうして大勢にヤられるのは慣れているそうだが、一度に何人までを相手したことがあるのかな?」

 不気味に笑う狂気に塗れた男の顔を睨んで、シーグルは歯を噛みしめた。





>>>>>END.

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 最後の襲われエロにしてはあっさりじゃない? って思ったかもしれませんが、本番(?)は次のエロで。
 とりあえずこのエピソードは次回の解決編に続きます。



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