※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。 【8】 顔中を唇で触れて、そうして最後に、目を閉じてされるがままの彼の唇に触れる。 すぐに舌同士が触れて、唾液を絡ませて、熱を絡ませる。体をすり合わせながら抱き合って、唇を何度も重ね直す。そうしていれば彼の肌を感じたくなってしまって、治療後の薄着の彼の衣服の中に手を入れてしまうのは仕方ない。 「ア……」 溜め息のような甘い彼の吐息をすぐ傍で聞けば、それだけで耐えるのが辛いくらいには体が彼を欲しがる。だが今ここでそのまま彼を抱くわけにはいかない――かろうじてそれで抑えようとしていたセイネリアだったが、唇を離したあとの彼が、こちらの肩に顔を埋めながら言った言葉でその箍も外れることになる。 「いいぞ。このまま……やっても」 「嫌じゃないのか?」 「いい。今は……そういう気分なんだ。お前にその気がないというならいいが」 「まさか」 セイネリアは嬉しくなって体を起き上がらせ、彼の上に被さった。 「但し加減はしろよ、キリシ神官様にあまり動くなといわれてる、特に左足は出来るだけ動かすなと」 「分かってる、これ以上なく優しくやってやるさ」 言って改めてキスをすれば、彼の手が再び首に回される。セイネリアは口付けたままシーグルの服の裾から手を入れて、胸を撫でながらそのまま服を捲り上げた。口腔内で舌を絡ませて、それに合わせて指で彼の胸の尖りを転がせば、口内に彼の甘い声が響き、震えて逃げそうな舌をセイネリアが吸い取る。 「ふ……ぅン……」 そうすれば、こちらに回された腕に力が入って引き寄せられるから、セイネリアは唇の角度を変えてあわせ直し、更にぴったりと隙間なく唇同士を密着させた。 「ンン……ぅ」 シーグルの声は少し苦しそうで、実際眉も苦しげに寄せられている。それでも鼻から抜ける声は高く、甘く、唇を開放してやれば薄く開かれた唇が更に熱い吐息を漏らす。うっすらと赤味の差した目元が白い彼の容貌の中で映える。感じているくせにやっぱり耐えようと目をきつく瞑る彼のそんな仕草が堪らなくて、セイネリアはその目元にキスをして、それから彼の足を広げてそこに自分の体を割り込ませた。 そうしてから、改めて曝された彼の肌に舌を這わせる。 散々指で弄っていたせいで既に硬くなっていた胸の赤い突起を舌でくるみ、わざと音を立てて吸って軽く甘噛みをしてやる。それから今度はわざと顔を離し、舌だけを伸ばしてその先端だけを撫でるように舐めてやる。 「や……」 嫌がるようにシーグルの手が頭に置かれて、けれど本気で引き離そうとする程には力の入っていないその感触にセイネリアは笑う。 触れていなかったもう片側の尖りも同じく舌で嬲って、離した方はまるで唾液を塗り込めるように指で転がしてやる。甘い吐息が漏れると同時に、彼の腰が緩く揺れて、もどかしげに足が自分の体を挟むように動かされる。だからセイネリアは手を滑らせて、脇腹から腰へ、彼の体をなぞりながら手を彼の股間まで下した。 「ッ……」 握れば、彼は更にぎゅっと目を瞑って唇さえもきつく閉じてしまう。 ゆっくりと触ってやれば、その閉じた瞼がぴくぴくと震える。 その様を見て、耐えるな、といつも通りに言おうとしたセイネリアだが、状況を考えてそれを止めた。その代わりに……。 「今日は暴れないで耐えてろ、お前はまだ安静だそうだからな」 ぎゅっと閉じられていた目が開いて、宝石のように濃い青の瞳が自分を見てくる。 「分ってる」 目元の赤味が先ほどより増していて、自然とセイネリアは笑ってしまう。 「それに布一枚向うにカリンもいるからな、聞かれたくないんだろ?」 「それも、分ってるっ」 更に顔を赤くして少し涙目になっている彼の顔は子供っぽくて、黙っていればきつい系の美貌の普段の彼とのギャップが楽しい。元は表情が乏しい彼が、こうして自分の言葉一つで表情をいろいろ変える様を見るのが楽しくて、嬉しいのだ。 楽しい、嬉しい……心から実感として湧くその感情は、彼がいなければ自分にはあり得ないものだったろう。 拗ねて顔を逸らしたシーグルを見て、少しやりすぎたかとセイネリアは体を伸ばして彼の目元と耳元に何度もキスを落した。キスされる度に目を瞑っていた彼は、やがて根負けをしたようにこちらを向いて、嫌そうにため息をついた。 「俺に暴れるなというより、お前が気をつける事の方が問題だろ。お前が調子に乗りすぎなければ、俺は抑えられるんだ」 睨み付けてまでそう言ってくる彼に、セイネリアは少しだけ目を見開いて、そうして笑う。 「確かに、それは否定できないな。元々お前は耐えるのは得意だったな」 ――だがシーグル、俺が自分で自分を抑えられない事などお前に対してだけなんだ。 だから見せつけるようにゆっくりと彼の肌を撫でて更に服を捲り上げ、丁寧に体を支えてやりながら脱がせてやる。シーグルも大人しくされるがままになっていて、それもまた嬉しくて、セイネリアは彼の顔にまたキスをする。 そうして、彼の服を全て脱がし終わった後で改めて寝かせた彼の上に覆いかぶさって唇を合わせれば、抱きつくようにこちらに腕を回していたシーグルの手が、セイネリアの服をひっぱった。 「俺だけ脱がせるな、お前もさっさと脱げ」 不機嫌そうに睨んでくる彼にまた苦笑して、セイネリアは了承を告げると服を脱ぎだす。鎧を着ていない今なら、脱ぐだけならすぐに済む。シーグルは黙ってそれを見ていたが、セイネリアが裸になると、急に起き上がってそっと背に手を触れてきた。 「どうした?」 「……いや」 触れてきた彼の顔がやけに真剣で不安そうだった所為で、セイネリアもそこで察してしまった。 「まさかお前、まだ俺が怪我をしてないといったのを疑ってたのか?」 途端、彼の顔がなんともいえない気まずそうな表情になって、それからまた拗ねたように目を逸らして床に背を付ける。 「普通は疑うだろ、あの状況じゃ。……お前が本当に無事かどうか確認するのは部下としては当然だし……本当に怪我しててもお前なら平然としてられそうだし……俺が、気にしないように……だし、お前は……」 だんだんと小さくなっていく声は最後には殆ど聞こえなくなったが、そんな彼の顔を見ているいるだけで、セイネリアは自分の口元が笑ってしまって仕方がなかった。 「言っておくがもし怪我をしていたとしてもだ、これだけ時間があれば治癒を受けて治ってる、というのも考えなかったのか?」 言えば彼は今気づいたように目を丸くしてこちらをむいてから、少し顔を赤くしてまたそっぽを向いた。 「……だが、酷い怪我ならあとが残ってるかもしれない……じゃないか……」 本当に子供が拗ねてるようなその言い方に、セイネリアは耐えられずに喉を鳴らして笑ってしまう。流石にそれには何も反論せず黙って背を向けているシーグルに、だから今度は少し優しい声で尋ねてみる。 「まぁいい……つまり、まだ俺の事が心配だったという事なんだな?」 そうすればシーグルはすごい勢いでこちらを向いて、睨み付けてから顔を真っ赤にして怒鳴ってくる。 「当たり前だっ、そもそもなっ、俺が無茶をした事に文句を言う以前に、お前の立場であんな無茶していい筈がないだろっ。今のお前には何人が命を預けてると思ってるんだっ」 拗ねた表情のまま怒ってくる彼の顔を見ていても、笑いが止められなくてセイネリアは困る。この状況では彼が怒れば怒る程楽しくなってしまって仕方がない。 「なら、その俺の命運を握っているのがお前だと、ちゃんと自覚しておけ、そもそもな」 言えばやっぱりその顔のまま彼は黙る。 彼の顔は相当に顰められているしこちらを睨んでいるのだが、セイネリアとしては笑えてしまって仕方ない。彼が今感じている怒りも不安も、全て自分の為だと思えば嬉しくて仕方がないのだ。 だから顰めている彼の唇に口づけて、彼の頬を撫ぜながら、髪に指を入れながら、彼の中の熱い粘膜を舐めとって彼と口腔内で繋がる。 溢れる程の唾液の中でとろとろになった口内で舌を擦り合わせ、そのぬめりを吸って飲み込む。早く彼が欲しいのだと裸になった体を擦り合わせ、その感触を肌で味わう。 長い口づけから唇を離せばシーグルの顔はもう怒ってはおらず、すこしぼうっとした表情の中、あの深い青の瞳に情欲の色の浮かべて、誘うように熱い吐息を吐きながら自分だけを見つめていた。 愛している、と今そう声に出せない事に少し胸が苦しくなって、それでもセイネリアはシーグルの額にキスをすると、彼のモノを本格的に握って擦ってやる。 「や、あっ……」 呆けていた顔が途端、耐えるように顰められる。 それでも今回は止める事なく、彼のものが爆ぜるまで強めに刺激を与えてやる。彼の方も既に相当興奮していたらしく間もなくその時は訪れたが、彼がそれでほっとする間もなくセイネリアは彼の精を受け止めた手で彼の後孔を解しにかかる。 「ま、て……これ以上なく優しくするんじゃないのか」 「待てないな、こっちがどれだけ辛いと思ってる」 そうしてどうにか指が奥まで入る事を確認すれば、セイネリアは彼の右足だけを持ち上げて自分の性欲の証である肉塊を押し付ける。 「う……あ」 歯を食いしばったシーグルに少しだけすまなそうに苦笑して、それでも彼の中の肉壁の動きを感じて、タイミングを見計らって奥まで進める。 「う、ん……あァッ」 一気に入れてしまえば、シーグルが小さく喘ぐ。 セイネリアは深くで繋がったまま、持ち上げた彼の右足から彼の右半身を浮かせてやって、左足を踏まないように気を付けて体勢を返させた。そうして彼の横から繋がるカタチまで持って行ってから動き出す。最初は、彼の負担を考えながらゆるく、それからゆるいながらも大きく、深く。やがて彼と自分の息が荒くなってくれば、その動きは速く、小刻みに、奥をひたすら突くようになっていく。 「い、や……ぁ……ぁ……く」 耐えているシーグルは目を閉じて、歯を噛みしめ、シーツをぎゅっと掴んでいる。 それでも時折細く目が開かれて、涙に濡れたその青色が光る。 そんな時は唇も薄く開かれて、耐えきれなかった声が上がってこちらの下肢に響く。 愛しくて、愛しくて。触れたくて、触れたくて。 確かに今抱いている彼を感じたくて、この腕の中に彼がいる事を実感したくて、彼ともっと深く繋がりたくて、腕と下肢に力が入る。 肉が肉を叩き、汗が跳ね、耐えて掠れた喘ぎ声が寝台の軋みと共に耳を満たす。 今まで何人もと何度も寝てきたセイネリアであるのに、今自分が貪っている相手が彼であると思えば簡単に理性など消え失せる。快感と、信じられない程の幸福感が思考を全て奪い去っていく。ただ体と心を満たす感覚に溺れていく。 「シーグル……」 けれど、何より愛しい名を呼んで、その後に続くべき言葉を言おうとすれば熱の外にいる思考が冷静にそれを止める。溺れきれなかった心の中に冷たい影が落ちてくる。 だからセイネリアはそこで唇を噛みしめて、完全に熱に溺れている彼の右足を掴んで更に大きく持ち上げる。そうして、激しい動きを受け止めきれず体を丸めていく彼の上に覆いかぶさって、その耳元と目元に何度も唇で触れた。 その度に、愛していると心だけで呟いて、下肢を激しく彼に打ち付ける。 最後の瞬間は彼の中には出さず、代わりに彼を抱きしめて彼の耳元に顔を埋めた。 「ふ……は……ん、ぅん」 その所為で、耐えて耐えて小さくなった彼の声を、セイネリアは僅かに聞く事が出来た。 --------------------------------------------- ひさびさのエロでした。基本甘いんですけどセイネリアサイドにすると実はちょっと……。 |