求めるモノと偽りの腕
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【4】



 シーグルの体力と力では、捕まれば終わりな事は確定だった。
 すぐに他の男達の手も伸びてきて、シーグルの体から鎧や服を剥いでいく。素肌をべたべたと触られ、あちこちから引っ張られ、そうして手足の装備以外は外されて服を思い切り開いた状態で、シーグルは床に貼り付けにされるように四方から押さえつけられた。

「さて、足を持ち上げてくれないか」

 魔法使いが足の間に近づいてきながら言えば、両足を押さえつけていた男達がそれぞれ広げた状態のまま足を持ち上げて、魔法使いに向けて尻を少し浮かせるように固定する。全てを晒されたみっともなくも酷い格好に顔が熱くなるのを感じながらも、シーグルはそれでも魔法使いを睨んだ。

「無理矢理飲ませるのも面倒ですし、口には出来れば入れたくないですしねぇ、そうなるとここが一番良いでしょう?」

 言って濡れた冷たい手が尻に触れてきて、シーグルは思わず顔を顰める。濡れた感触は後孔の周りを撫でてきて、それからすぐに指が深く突き入れられた。

「ぐっ……」

 慣らすのではなくいきなり奥まで押し込まれれば、当然異物感が酷くて快感なんて少しも感じる訳がない。
 けれども変化はすぐにシーグルに訪れる。指がその場で乱暴に動かされ出せば更に、そこがじわじわと痺れるように疼き出し、熱が全身にまで回り出す。

「おやぁ、もうこんな物欲しげに締め付けてきてますね。……どうです? 効くでしょうこれは。貴方の為に特別に濃く調合したんですからねぇ」

 あの濡れた感触は、ただの潤滑油ではなく媚薬の類だったのだとそれはすぐに理解できたものの、なにしろ薬の効き目が早すぎた。

「う、く……ぐっ……」

 拒絶する意志はあっても身体がまったく追いつかない。中をかき回す指の動きに合わせて腰を揺らし、身を捩って喘ぐ事を止められない。

「うぁぁ……ふぁ、ぁ……やぁぁあっめ……」

 どうしようもない熱に翻弄されて、口を開いてもまともに言葉に出来ない。それどころか意識さえも濁ってきて、今自分がどこにいてどんな状況にいるのかさえあやふやで、どうでもよくなってくる。

「おっと、零してしまっては勿体ない」

 シーグルの中に指を入れている方でない魔法使いが、そう言って座り込むと、すかさずシーグルの口から溢れた唾液をなめとりながら口づけてきた。反射的にシーグルは口を開いて男の舌を受け入れ、自らその舌に自分の舌絡めさせて相手に自分から唇を押し付けた。
 ちゅく、ちゅくと、シーグルと男の唇の間から音が漏れる。それと同じ音が、シーグルの足の間で動く男の指に合わせて鳴る。

「おいっ、まだかよっ、早くやらせろよっ」

 目を血走らせた男達が、身を乗り出してシーグルの痴態を覗き込んでいる。シーグルを捕まえた男等、既に自分のイチモツを取り出して手で扱いている始末だった。

「もう少し待て、私も一度は頂いてからでないと」

 言うと同時に下肢に張り付いていた方の魔法使いは地面に這いつくばり、顔をシーグルの股間に近づける。そうして未だ指では中をかき混ぜながら、口でシーグルの雄を銜え込んだ。

「うんんんんんんっ」

 シーグルは何度も体を跳ねさせたが、しっかり顔を抑えられて塞がれている唇は声を出せずに唸るだけになる。下肢の魔法使いは、増やした指で激しく出し入れを繰り返しながらシーグルのものを唇で扱いて吸い上げてくる。薬で敏感な体がそれに長く耐えられる筈もなく、シーグルの体はびくびくと大きく数度背を跳ねさせると小刻みに震えた。
 魔法使いの喉が動く。

「あぁ、本当に素晴らしい」

 シーグルの股間から顔を上げた魔法使いは、満足そうに唇を拭った。
 それから立ち上がって、凝視してくる男達に言った。

「さぁいいぞ、約束通り、騎士様の穴の方は好きなだけお前達で犯すがいい」

 それに呼応するかのように興奮に吠えた男達の声が響き、シーグルの体はあちこちからまたひっばられる。未だに唇は魔法使いと交わったまま、腰を強く引かれて男の膨らみ切ったものが押し付けられる。焦りすぎて滑り、何度か尻に擦り付けられたソレがいきなり深くまで力任せに捻じ込まれる。

「おぉぉ、すげぇぞこれ」

 既に限界に近かった男は細いシーグルの腰を鷲掴みにすると、吠えながら乱暴に中を突き上げだした。シーグルは魔法使いの服の袖を持って体を支えながらも、男を受け止めるように自ら尻を突き出し、抽送の動きに合わせて腰を揺らした。別の男がシーグルの腕に曝した性器を擦りつけ、伸びてきたまた別の誰かの手がシーグルの胸を執拗に撫でた。

「ん……んく、ちゅ……んんぁう……」

 魔法使いと唇を合わせ、唾液とともに吸われる舌を相手の口の中で動かしながら、僅かに残った思考でシーグルは状況を打破する方法を考える。体の反応をなすがままに任せた分、頭だけは残った意志をかき集めて、どうにか正気の欠片を手繰り寄せる。

「おい、ちょっとだけ離してくれねぇか、皆も楽しめるように体勢をかえっからよ」

 シーグルに雄を突き立てている男が言えば、シーグルの唇から魔法使いの唇が離れていく。触れていた感触達も去っていけば、男はシーグルの腿を開いた状態で持ち上げ、上半身を起き上がらせた。

「は、あぁぁぁっ」

 自由になった口が感じるままに声を上げる。奥深くまで銜え込んだ男を、自分の肉がびくびくと締め付けてるのを感じ、苦しさと共に込みあがる快感に残った思考の欠片が飛ばされそうになる。
 けれど、どこかへ座ったらしい男の腿の上に座らされて、足を広げて前の男達にみせつけるように突き上げられる体勢になって、先ほどまで塞がれていたシーグルの視界が開けた。
 そうして見えた、散乱した自分の装備とその傍に落ちていたものを見て、シーグルの思考が一瞬だけクリアになる。腰ベルトにくくり付けていた皮袋から零れた赤い石を見ると、シーグルは男に揺さぶられながら自らも激しく腰を動かし出した。

「あぁぁぁんっ、はぁっ、あぁっ、あんっ、はぁっ」

 快感に全てを投げ出すように、瞳は濁り、唇はただただ喘ぐだけで唾液を溢れさせる。待ちきれずに自分で腰を揺らし、歓喜の表情に緩むその顔を見て、周りの者達は皆、この美しい青年がついに『堕ちた』のだと確信した。

「おぉっ、やべぇっ」

 突き上げる男は顔を真っ赤にして、ラストスパートとばかりに激しくシーグルの中を突く。体全体を上下に揺さぶられて、されるがままに頭や腕が振り乱れるシーグルの姿はまるで人形のように見えた。

「あぁ、零れてしまう」

 魔法使いが急いでシーグルの頭を支え、溢れる唾液を舐め取ろうとする。
 もう一人の魔法使いはシーグルの前に跪き、その雄に手を絡め、とろとろと零れるものを掬いながら期待の視線でそれが爆ぜる時を待つ。
 そうして男が吼え、シーグルの体の中にその欲を吐き出すと、シーグルもまた身を捩って派手に喘ぎながら達した。動きが止まればすぐに唇と性器は魔法使い達の口にふさがれ啜られる。

「ははっ、まるでエサにがっつく犬畜生だな」

 じゅるじゅると音を立てて必死にシーグルの体液を吸おうとする魔法使い達を見て、男の一人が笑った。

「おいっ、早く代われよっ」

 だが、魔法使い達を笑う余裕もない、既に下肢の服を開いている男達は、勃ちあがったそれを手で持ちながら我先にとシーグルの体に手を伸ばす。
 けれど、男達の手がシーグルに触れる前に、シーグルは唇を啜っている魔法使いにだらりと抱きつくように倒れかかった。

「ん、んぅ、ふぅんっ」

 激しく合わさる唇はそのままでも、突然のことにシーグルの体を支えそこなった魔法使いは倒れ、男達の手が間に合わずに、魔法使い毎シーグルは床に転がった。
 身体に力が入らないのもあって、シーグルは文字通り床に投げ出される。

「あぁっ、はぁっ、はんっ、やぁっああっ」

 言葉にならない喘ぎ声を発しながら、シーグルは藻掻くように腕をばたつかせて床を叩いた。
 男達はそのシーグルの体に今度こそ手を伸ばし、方々からやってきた手達がシーグルを起き上がらせ、身体を開かせる。

「早く欲しくてたまンねぇんだろ、たっぷり遊んでやるぜ」

 そうして誰かの男根が再び勢いよく押し込まれて、シーグルは歓喜の声を上げた。
 瞳に残る正気で、今自分が暴れたせいで砕かれた床の赤い石達の欠片を確認してシーグルは今度こそ全ての思考を手放した。

「あンっ、やぁっ、はぁっ、あぁっ」

 正気を失ったシーグルの声が響く。
 あちこちから伸ばされた手やら男達の性器が、身体のあちこちを擦って、堪らない熱を与えてくる。それらを全て受け入れてシーグルはただ喘ぐ。深い青の瞳には意志の光はなく、緩んだ口元は唾液を零しながら閉じられる事はなく、ただ与えられる感覚に反応を返すだけの人形のように。
 魔法使いがまた口を塞いでくる。シーグルはそれを受け入れる。
 誰かの雄が突き込まれれば、腰を揺らして快感を追う。汚れた男の手が、汚らわしい男達の欲の体液を塗り込めるようにしながら肌を撫でまわす。細く白い身体が、押し合う男達の薄汚れた手や体の中で揺れて、跳ねる。

「くっそ、口にも入れてぇ」
「仕方ねぇだろ、そっちは奴らのなんだからよ」
「早くしろよ、もう我慢できねぇ」
「てめぇ、こっちに飛ばすなよ。掛けンなら騎士様にぶっかけろ」

 男達の怒声が飛び交う。水音と、肉と肉のまぐわう音が聞こえる。はぁはぁと荒い息遣いがそれらの音にリズムを刻み、意味のないただの音としてシーグルの耳に流れ込む。
 不快な臭いなど分からない、声など誰のものか分からない。いや、声は他の音との区別がつかない。五感は全て快感に塞がれている。
 ただされるがまま、感じるまま、シーグルは揺れる。
 口を塞いでくる男に手を伸ばし、抱きついて、求める。
 何も抑える必要はない、何も考えなければ、ただ求めればいい。
 思考が動かなければ、まるでそこは夢の中のようで、だからシーグルはただ求める。
 快感を、体温を、感触を、ただ自分を抱いてくれる腕を。

 本当はずっとずっと欲しかった、欲しくて堪らなかった、自分を優しく抱きしめてくれる腕を、守ってくれる温もりを、自分だけを愛してくれる誰かを。そして、それを与えてくれるだろう、あの男を。

 思うまま、ただ求めればいいのだ、セイネリアと――その名を唇でなぞって、それが誰の名で誰を求めているのか、思考の消えたシーグルには理解できなかったが。





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次回は助けようとあたふたしてる人達と……シーグルのシーンももしかしたらあるかも。



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