※この文中には少しだけ性的表現が含まれています。(でもあまりエロくないかと) 【12】 「シーグル、無理ならここまででもいいぞ?」 「うるさいっ、ここでやめたら意味がないだろっ」 そうしてシーグルは今度は目を閉じて、思い切りまた彼の雄を口内に引き入れる。ともかく早く終わって欲しくて、シーグルは懸命に彼の欲の証に刺激を与えていく。 セイネリアが笑っているのが伝わる振動で分かる。相変わらず彼の手は最中に髪を優しく撫でてくれていて、恥ずかしいやら嬉しいやらなんだかもうよく分からなくなって、とにかくシーグルは口と舌を動かすしかなかった。 そうしてやっと、口腔内のものが爆ぜる。だがシーグルはそれを勢いのまま半端に飲み込んでしまって、それでやはりまた噎せればセイネリアが声を上げて笑う。噎せたせいで喉がぐぅっと鳴る。飲み込むべきだと思うもののなかなかふんぎりがつかなくて、口の中に残っている彼の吐き出したモノをため込んだまま、シーグルはじっとその場で蹲っていた。 「本当にお前は馬鹿だな」 言われた言葉に、口をぐっと閉じて手で押さえながらも彼の顔を見上げれば、彼はまた楽しそうに笑って髪を優しく撫でてくる。 「無理に飲まなくていい、吐き出してこい」 ……とは言われても、シーグルにだって意地がある。なにせセイネリアは自分のものを飲むのに自分が吐き出せる訳がない。部下としても、対等の相手としても……彼がやってることをこちらがやらないのは許されない事だろう。 だから目を瞑って、思い切って飲み干す。それでやっと口が開けられて、シーグルは荒い息をついてベッドの上にまたつっぷした。 「全く、意地っ張りめ」 いう言葉の割に彼の瞳は柔らかくて、セイネリアは髪を撫でていた手で今度は頬を撫で、それから両手で体を支えて起き上がらせてくれる。 「……お前が飲んでるんだ、俺がやらない訳にはいかないだろ。それに、俺はいつもただ寝てるだけで……そういう一方的なのはよくない、だろ」 今度は少し驚いたようにセイネリアは目を開いて、それから静かに微笑んだ。 「別に構わん。気にするな。それに言ったろ、そもそも俺はお前に口でやらせる気はないんだ。なにせお前の顔がよく見えないから……つまらんだろ」 「そういう理由なのか?」 「そうだ、最中のお前の顔を見るのが楽しいんだからな、顔が見えないのはつまらん」 シーグルはそれで考える。確かにセイネリアはいつでも自分の顔をやたら楽しそうにじっと見てくる。飽きないのかと聞いたのも一度や二度ではない。 「それに、別にお前はへたくそのままでも気にしなくていいぞ。慣れてる連中のはいつもの事で面白くもない。お前は、その慣れなくて四苦八苦しているのがいいんだ」 それを言われれば身もふたもない、というか、シーグルとしては『あぁそうだろうな』としか思えない。セイネリアの情事相手の事情を想像すれば、ここで悔しがってがんばったところで無駄だというところまで予想出来る。 なんだか少し落ち込んで、かといってこればかりは意地でも上手くなってやる、という気にもなれずにシーグルはため息をついた。だが、そうして僅かに彼から目を逸らしたら、その隙に強引に引き寄せられて顔を彼の胸に押し付けられた。勿論、セイネリアは今裸であるからその素晴らしく筋肉が付いた胸に顔が押し付けられている訳で、それに驚いている間に腰も引き寄せられて抱きかかえられて共にベッドに倒れ込むことになった。 「セイネリアっ、何をっ」 早い話が抱きしめられたままベッドに二人で寝ている体勢になったのだが、焦るシーグルを無視してセイネリアはそのまま上掛けをひっぱり上げると、少し意地悪そうな笑みを浮かべて言ってきた。 「何って、少し寝るかと思っただけだぞ。どうせ夜までは部屋で休むと言ってあるしな、お前も付きあえ」 楽しそうな声の彼にベッドの上で押さえつけられ、シーグルは懸命に彼の腕から逃れようともがく。とはいえ、自力脱出は不可能だと判断せざる得ない。 「つ、付き合うのは構わないが、誰か呼びにきた場合に二人して裸は不味いだろ、何か着させてくれ」 「却下だ」 「セイネリアっ」 「俺を起こす役なんぞ、その辺りの腰抜け共がやりたがる訳ないだろ。帰ってきたカリンかエルが頼まれて来るに決まってる」 それを言われればその通りだろうと納得するしかないが、それでもシーグルはどうにか逃げる理由はないものかと考えてみた……みただけだが。 逃げようとするシーグルの体を抱え直すついでに思い切り引き寄せて、セイネリアはシーグルの耳元に顔を埋めた。 「ここまでで我慢してやるんだ、この程度で文句をいうな。お前もこの機会に休んでおけばいい」 「寝るだけなら……裸の必要があるのか」 「そこは重要だ」 何処までも楽しそうな声を聞いて、そこでシーグルは大きくため息をついて抵抗を諦めた。仕方なく彼によりかかって、彼の鼓動に耳を澄ます。 やがて聞こえてきた彼の寝息に苦笑して、シーグルも目を閉じてしまえばゆっくりとした睡魔が襲ってくる。 ――まったく、こうして裸で抱き合って寝てしまえば、こんな状況でもつい安心して寝てしまうではないか。 頭の中だけでこっそり抗議をしても、睡魔との戦いにはもう勝てない。薄くなっていく意識の中、既に彼の気配とこうしている事に慣れてしまった自分に呆れて、シーグルは自分に言い聞かせた。 それでも、自分が何のためにここにいるのかを忘れるな、と。 END. >>>> 次のエピソードへ。 --------------------------------------------- |