※この文は、性的行為そのもののシーンではないのですが、それを現す文章があります。 嫌いな方は注意した上でお気に障ったら読み飛ばしてください。 【9】 ――あぁ、彼はもう終わりだな。 シェン・オリバーは目の前の光景を、なんの感情も湧かない目で見ていた。 かつて彼の親友であった男とそっくりな、ただし少しだけ幼く、線の細い顔からは、今では生気と言える物が抜け落ちていた。整った容貌は何処か緩み、唇を閉じている事さえ出来ない。深い青の瞳には光がなく、虚ろに開かれているだけだった。それでもまだ十分に美しいと言える見目の分、男に揺らされ続けるその姿は憐れすぎた。 あの後、散々、アルスベイトに抱かれ続けたシーグルは、抵抗どころか体を動かすだけの気力も体力も全て奪われて、今では本当に人形のように、男にされるがままの状態になっていた。 感覚さえもう遠くなった彼は、抱かれていても殆ど反応を見せなくなった。時折、強い衝撃に顔が僅かに強張り、瞳から涙を流す様だけが、まだ辛うじて彼の意識が消えていない事を示してはいたが。 けれど、それさえも、早く手放してしまった方が彼にとっては幸せだろうとシェンは思う。 既に殆ど反応のないシーグルを、それでもまだアルスベイトは犯す事を止めなかった。彼の中に埋めたモノを抜く事さえせず、体にあった化け物のような体力のまま、何度もシーグルの体を引き裂き、その中に精を注ぎ込んだ。 更には今、途中で連絡役の部下がやってくると、話を聞くのに、無駄に豪奢な椅子に彼を抱き上げて座り、行為を続けたまま部下に報告をさせた。 体の大きな男の上で揺らされ続け、話を聞いている間の暇つぶしのように体を弄られる細い姿は、本当にただの玩具のようだった。 シェンの記憶の中にある、誇り高く、強く、優しい親友の男の姿が、男の慰み物に堕ちた青年の姿と重なる。 これが全ての結果で、自分の目指した復讐の終点だと考えても、沸く筈の感慨も興奮も、微塵も感じない事をシェンは不思議に思った。 ただ、あっけないものだ、としか思えない。 もう少し自分の手の内だけで楽しんでいればよかったかという思いも浮かんだが、けれどやはり、多少引き伸ばす程度の差しかないだろうとも思う。 「――そうか、セイネリアの奴が、応じると言ったんだな」 アルスベイトは顔に残忍な笑みを浮かべ、膝の上にいるシーグルの顔を無理矢理掴んで自分に向けさせる。 「良かったな、奴は余程お前の事が大事らしい。ならまだ、ここへ来た奴に見せ付けて泣き叫ぶ事が出来る程度にはしといてやろう」 生気のない、綺麗なだけの青い瞳がアルスベイトの顔を映す。 けれど、そのアルスベイトの言葉を聞いた途端、完全に感情の抜け落ちていたシーグルの顔が僅かに笑みを浮かべた。 「――ない」 「何?」 「来ない、あいつは」 だが、それにはアルスベイトの嘲笑が返る。 「いや、来る。来るそうだぞ、あの男は。俺が何度挑発しても歯牙にもかけなかった男が、お前を取り戻す為ならやってくるそうだ。……良かったな、愛されてるじゃねぇかよ」 しかしながらも、それに返すシーグルの顔も笑みを崩さなかった。 「来ない、来る筈がない……そうでなければ……あいつでは、ない」 意志の戻った青い瞳は強く男を睨みつけた。 --------------------------------------------- 話の区切りの関係で、前回長かったのに今回やったら短いという(==;; |