|
※この文には性的表現があります。読む場合は了解の上でお願いいたします。 【８】 どれくらいの時間が経っているのか、時間感覚を保っているのはシーグルにとって困難過ぎてもう分からない。 なにせ外がまったく見えない状態では夜か朝かもわからず、蔓達に嬲られている間は意識が途切れるから自力でカウントも出来る訳がない。普通の人間ならまだ腹の減り具合からでも予想出来るのだろうが、シーグルの食欲は普段からなさすぎる上にこういう状況になると更に食べる気がなくなる。数日たっている、という状況ではないというのが分かる程度だ。 ただ、蔓達に嬲られている時間それ自体は実際はさほど長くはなさそうではあった。 魔法使いはこちらを殺さないようにかなり慎重にやっているらしく、今のところは蔓達の動きとこちらの消耗具合を計っているようで、少しの間だけ蔓にかけては一度そこから退避させて様子を見ていると思われた。 ――多分、まだ一日経っていないとは思うが……なにせ記憶がとんでいるからな。 消耗は最初の時が一番酷くて、次の時はそれほどでもなかったが、その分始まってからすぐ意識がとんでいてその時の記憶がまったくないという状態だ。しかも薬でも使われたのか、こうして蔓達から離されていても身体の感覚がなかなか戻らない。あちこち感覚を煽られた所為なのか体はずっと火照った状態を持続していて、体を動かそうとして肌が上掛けや床に擦れては声が漏れそうになる。 体力的に動けないのもあるが、起き上がって歩こうとして体が痺れて動かすのが困難とだった。 ――どちらにしろ、この状況で逃げられるとは思わないが。 今いるこの場所も床以外の周囲はびっしりと蔓で覆われている。試しに少し動いてみれば分かるが、この蔓達はシーグルを常に監視していてちょっとでも逃げそうな素振りを見せれば動きだす。剣がないから斬る事も出来ない、体力的にも走って逃げられない。今のところは助けを待つ以外に選択肢がない状態だった。 ただ、こちらが動かなくても蔓達が動きだす事はある。 「やっぱりしぶといな、慣れてる所為か？」 蔓達が動いて壁の一部が開けば、そこから魔法使いが現れた。 「そうかもな」 嫌味返しのつもりでそういえば、魔法使いはくすくすと笑いながら近づいてくる。 周囲の蔓達がシーグルの体に纏わりついてくる、手足を拘束して体を持ち上げられれば、また嬲られるだけの時間が始まるのかと苦々しく思いながらもされるがままになるしかない。 「だよなぁ、ヤられてる時、あんたすごい気持ちよさそうでさ。相当経験あるのは分かるんだよな」 拘束されて動けない体の、蔓達の合間から見える肌を魔法使いの手が撫でていく。それに思わずぶるりと震えてしまえば、魔法使いは益々笑って尻から指を中に入れてくる。 「ン……」 「いかにも真面目な騎士様って顔してるのにさ、こことかとんでもない淫乱だよな。ちょっと指入れただけで滅茶苦茶欲しそうにひくついてるよな」 くち、くち、と中を指で突き上げられる。それだけで嘘みたいに体が熱くなって、拘束されたシーグルの足がもどかし気に空を掻く。 「う……ん……」 そこでシーグルは歯を噛みしめて声を耐えた。魔法使いは楽しそうに耳元へ話しかけてくる。 「もしかして一緒にいた連中のをいつでも銜え込んでたとか？」 「ふざ……けるな、彼らはそういう……っ」 魔法使いの手が胸を撫でてくる。乳首をつねってびくりと震えれば、やっぱりくすくすと魔法使いは笑う。 「へぇ……じゃぁ、特定の男がいるのかな？」 言われて一瞬、セイネリアの顔が浮かんでシーグルは目を開いた。それだけでなく体がぞくぞくと震えて、中にある指をやけに締め付けてしまうのが分かった。 「あれ、図星？ そっかぁ……ここに欲しい人がいるんだ、騎士様は」 魔法使いは指を抜く。それに一応はほっとしたものの魔法使いが歩き出して蔓がそれを追って自分を運んで行く。運んでいる最中も蔓達はこちらの体を撫でまわしてくるが、それ以上をしてくることはない。自分の体液を採取するのはあくまであの柘榴石に直で繋がっている者達しか許されていないから、それ以外は性器や顔周り、後孔に触れてはこない。 ……逆を言えば、石のある場所についた途端、彼らは我先にと争ってそこへ殺到してくる訳だが。 「あぅ……」 床に赤い石が見えたと思った途端、体の中に蔓が入ってくる。 それに反射的に足を閉じて拒絶すれば、逆に両足を引っ張られて広げられる。酷い恰好だと羞恥に顔が赤くなる中、今度は性器に集った蔓達が一斉にそこを擦り出して水音が聞こえてくる。中に入った蔓達が激しく抽挿を始めて体が揺れる。 「あ、ぅ……ぁ……」 そうなればもう頭は快楽に染まり出す。やはり何か薬のようなものを使われているのか、どんどん始まってから感じ過ぎて意識が怪しくなるのが早くなってきた。だめだ、だめだと自分に言い聞かせて耐えようとしても、身体は既に自分から蔓達を受け入れて腰を揺らしている。 「そういえば言ってなかったかな、俺はね、幻術系の魔法使いなんだ」 唐突に魔法使いがそういって杖をこちらに突きつけてくる。 「だからさ、あんたが心置きなく気持ちよくなれるように、少しサービスしてやるよ」 快楽に既に意識がぼうっとしていたシーグルは、その後に現れた人物の姿を見て目を見開いた。 シーグル、と苦し気に呟く男が顔を近づけてくる。 黒い髪に琥珀の瞳の最強の男に唇を塞がれて、その手が優しく頬を撫ぜてくる。舌を絡ませて、中に彼を感じて歓喜に震える体をシーグルは抑えられなかった。 愛してる――そう呟くセイネリアの姿に、シーグルは耐える事を止めた。 蔓と蔓が折り重なって守っているように見える場所。魔法使いがそこへ近づけば蔓達が動いて彼の為に穴が開いていく。 だが、穴から洩れた赤い光に気を取られるより、蔓が動くのに気付くより早く、聞こえた声にアウドは歯を噛みしめた。 「あ……あぁ、あぅ、ん……うん……」 グスとテスタは多分すぐには分からなかったろう。普段と違う声だし、まさかという思いがあるから、これがあの人の声だなんてすぐにピンと来ない筈だ。だがアウドにはすぐに分かる。分かるからこそ、このまま向うの二人には見せないで気づかないままにしてやってほしいと願う。 ……それが無駄な願いだとはわかっていても。 「手遅れ、の理由を見せてやるよ」 穴が更に大きく開いていく。赤い光の中、蠢く蔓達に埋もれながら白い肌が揺れている。美しい銀色の髪が、粘液に塗れて彼の頬やら額に張り付いているのが見える。 「んぐ……ん、ぅん、ん……」 濃い青の瞳は殆ど閉じられ、そこに生気は感じられない。開かれた唇には蔓がぬるぬると出入りを繰り返し、たまに抜けて他の蔓と入れ替わる時に甘い声が漏れる。白い肌の上には無数の蔓達が場所を争うように這いずり回り、特に下肢に群がっている蔓達は激しく動き回っていた。彼の尻の辺りで一際大きく動いている蔓が何をしているかなんて言わなくても分かってしまう。 歯を噛みしめたアウドは、そこで思わず目を逸らした。 それでも音は防ぐ事は出来ない。 蔓が這いまわる音が、彼の中を突き上げる水音が、そしてなにより理性のタガが外れた彼の嬌声がアウドに罪を思い出させる。 ――くっそぉ……なんでこの人はこういう目に……。 魔法使いがシーグルを狙う理由で何故こういう事態になるのかは知らない。だがキールは知っていた。あの発言はだからこそというのは当たっていたのだろう。 「な、手遅れだろ。あんた達の大切な騎士様はもう完全に堕ちてしまったのさ。あとは快楽だけを追って幸せな夢の中で生きていくだけだ、これはこれで彼は幸せなんだからさ、あとはあんた達が諦めて帰ってくれればいいだけだ」 その声に、アウドは頭を上げて魔法使いを睨んだ。 「ふざけんな、この人にとってこれが幸せな筈ねぇだろがっ」 自分の責任も大切な人も全てを忘れて快楽に溺れるなんて、そんな事彼が一番望んでいない事は分かってる。どんな目にあっても諦めずに足掻いて、自分が苦しむ道を選んできた彼がこれで幸せなんて思う筈がない。 「その通りだ、あんたのいう幸せなんてこの人はこれっぽっちも感じちゃいねぇ」 「無理矢理貶めた癖に、自己正当化たぁ性質が悪ィぜ」 呆然として暫く何も言えずにいたグスとテスタもアウドの声で我に返ったのか、魔法使いに向けて次々なじりの声を上げる。 だが魔法使いは動じない。それどころか冷ややかな笑みを浮かべて言い返した。 「……あのさ、見て分からないか。今の彼はどう見ても自分から喜んで体を差し出して腰を揺らして快楽を求めてる。うっとりとした顔で、気持ちよさそうだろ？ 答えは簡単さ、俺の術で騎士様は今夢を見てる」 「夢……だと？」 言われてアウドは思わずシーグルを見てしまう。中を突き上げる蔓に合わせて揺れる腰、うねる体。自らもっと快楽を貪ろうとするかのように身を捩り、腹から波打つように腰を振る。開いた足は突き上げられる度に何かにすがろうとするかのように空を掻き、唇にやってくる蔓を自ら口に受け入れる。 「あ、はぁぁあっ」 びくり、びくりと体が痙攣するように震えて、彼の体からがくりと力が抜ける。けれど蔓達はその動きを止めることはない。それどころかまるでエサに群がる魚のように、我先にとシーグルの下肢に殺到し、水音を響かせて貪る。 「あ……ぅ、ぁ、ぁ、ふぁ……」 イった後で力の入らない声で小さく喘ぎながらも、力が抜けた体はそれでも時折びくん、びくんと反応する。甘い声を漏らしていればまた別の蔓が唇を犯しにきて、彼は目をうっとりと閉じてそれを受け入れる。まるで何者かとキスをしているかのように蔓に舌を絡めて、何かを掴もうとするように手を伸ばして。 そうしているうちに、一旦動きを止めていた彼の尻のあたりの蔓達がもぞもぞと動いて去っていく。男にしては頼りない細い腰とそれに続く白い尻が見える。けれどすぐにそこへは別の蔓達が登っていき、尻肉を割って粘液でてらてらと光る彼の赤い窄まりを数度撫でると一気に中へ入り込んだ。 「う、んんんんぅぅっ」 途端、シーグルの体が跳ねて支えている蔓の塊ごと激しく揺れる。彼の後孔で暴れるように抽挿を始めた蔓の横に他の蔓が突っ込んでいく。その中の一本だけが彼の中に入れたようで、シーグルの体はまた衝撃にびくびくと数度跳ねた。 「う、ん、ぅ、ぅ、ぅ……」 喉を鳴らすだけの喘ぎは甘く、細い腰が揺れる様は酷く艶めかしい。ゆったりと波打つ腹から腰の動きの下では狂ったような速さで蔓達が彼の中を突き上げている。赤い彼の後孔が蔓達の動きによって広げられては様々な形に変形し、ひくひくと蠢きながら凌辱者を受け入れている。 アウドは我知らずごくりと喉を鳴らしていた。 彼の体を知っている、あそこへ自分の肉を突きいれた時の感覚を知っている。それがどれだけ甘美な快楽であるか、喘ぐ彼を組み敷く事でどれだけ雄の悦びが満たされるのか――。 「うあぁあっっっ…………ぁぁ、あんっ、あ、あぁっ」 その声でアウドは正気に戻った。シーグルが衝撃に顔を逸らして、一度口から蔓が抜けたらしい。すぐにそこへは他の蔓が集まってくるが口の中へ入るのは数本だけで、他は悔しそうに彼の体を乱暴にはい回っていた。 ――だめだ、見てたら不味い。 それでもアウドは目を離せない。 蔓達はシーグルを犯し、彼は歓喜の声を上げる。 大きく背を逸らしたまま、彼の体が下から押し上げられて揺れていた。ぐちゃ、ぐちゃ、と水音を派手に響かせて蔓達が彼の中を出入りする。彼が蔓を受け止めて腰を揺らす。白い腰がもどかし気に捻られて曲がる。快楽に背筋を震わせて、鼻にかかった声を上げて……そうしてまた、蔓が抜けた拍子に彼の唇が僅かに言葉を漏らした。 「あ……セイ……」 夢とはそういう事かよとアウドは理解する。そうしてやはり、それを幸せだなんて勝手にほざく魔法使いにカっと頭が熱くなる。 「この騎士様はどうやら体は相当慣れてるらしかったからさ、あんた達の誰かと出来てるか、それとも全員ととっかえひっかえやってるのかと思ってたんだけど……どうやら違うみたいだな」 あぁ本当に……したり顔でそんな事を言う魔法使いにムカついて仕方がない。 貴様にこの人の何が分かる――と心の中で叫んでから、アウドは歯を噛みしめて魔法使いをまた睨み付けた。だが怒りが強すぎて、言いたい事があり過ぎて、何も言えずにいる間に先にグスが声を上げた。 「……これ以上、この人を侮辱する事は許さない。この人の事情も何も分からない貴様が分かったような口きくな」 静かな怒りを孕んだ声に、魔法使いでさえ一瞬表情をこわばらせた。 それを見たアウドも、頭を一旦冷やしてから口を開いた。 「なぁ……あんたがこれをこの人にとって幸せっていうのは、自分の中の罪悪感を誤魔化す為だろ。あんただって自分がやってる事が罪だってのは分かってる、分かってるがあんたの都合的にこれは必要な事で……だから誤魔化したんだろ、これはこれでこの人は幸せだってな」 魔法使いの表情に動揺が走る。図星だというのがそれで分かって――だからこそ、この魔法使いが根っからの悪人ではないというのも察する。察するが、アウドには許す気も、同情する気もまったくなかった。 「あのシカ……シャーレって言ってたな。あいつはな、俺達にあんたを止めて欲しいと言って来たんだぜ」 それを言ったのはテスタだ。 途端、それまで黙って聞いているだけだった魔法使いが、表情を歪ませて叫んだ。 「黙れっ」 そうすればその声に呼応するかのようにシーグルのいた場所を見せていた穴がふさがっていく。見えなくなっていくその姿にグスが叫んだ。すぐにテスタも、そしてアウドも一緒に叫んだ。 「隊長っ、聞こえますか、隊長っ」 「隊長、俺ですっ」 「シーグル様っ」 けれど穴は完全に塞がれ、蔓に犯される青年の姿は見えなくなる。それでもしばらく彼らは叫んでいたが……今度は急に足元に穴が空いて、全員その中に向けて落とされた。 --------------------------------------------- 久しぶりにかなりエロがんばった……つもりです。 |