画面上での廃村への旅はいかがだっただろうか。
筆者は実際に行かれた方よりも、一度も行かれたことがない方のほうが多いのではないかと思いながら記事をまとめている。
「一度行ってみたい」と思われた方がいるかもしれないが、廃村はいわゆる観光地ではない。廃村を訪ねるに当たっては、いくつか頭に留めておくべきことがあるので、ここにまとめて記す。
廃村では、管理上、防災上の理由などにより立ち入りが制限されている場合がある。「立入禁止」などの指示には従うのが大原則である。
クマやマムシ、ダニなどの危険動物には要注意である。足元にも川の流れや古井戸などの危険が潜んでいる。事故が起こると、関係者にも迷惑がかかる。事故がないように細心の注意をはらうことはとても重要である。
また、地域の方に迷惑をかけることがないよう、気を配る必要がある。廃村を探索するときは、「立ち入り制限がない」「事故に注意する」ことを前提とした上で、筆者が廃村探索において気を配っているのは次の4点である。
●1 廃村は地域の方のものであり、「見せていただく」という気持ちを大切にする。人が目の前にいない場合でも、その気持ちを具体的な形で示すことが望ましい。例えば、神社やお地蔵さんを見つけたら手を合わせるとよい。
●2 クルマやバイクに乗っていると顔が見えないため、地域の方を不安にさせる可能性がある。廃村をクルマやバイクで訪ねるときは、なるべく早く降り、徒歩で探索するよう心がける。
●3 廃村で地域の方と会ったときは、積極的にあいさつするよう心掛ける。このとき「学校跡を探しているのですが、どちらにあるのでしょうか」といった、明確な目的を示すと、コミュニケーションがスムーズになる。
●4 「ごみを捨てない」「ものを持ち出さない」などの基本的なマナーを守る。
同じ廃村へ出かけたとしても、訪ねた季節によって印象は大きく異なることがある。ありのままの自然があふれる廃村では、ありのままの季節感を味わうことができる。
筆者にとって、廃村探索のベストシーズンは4月から5月にかけてである。春の花が咲いており、雑草の茂みは薄い。日差しは長く、暑くも寒くもない。ただ、積雪地では残雪で行動を阻まれる可能性があるので、注意を要する。
逆に6月から7月にかけては、不向きな季節である。梅雨で蒸し暑く、茂みが濃くなっている。ハムシやダニも増え、マムシの動きも活発である。
真夏は暑さとの戦いになるが、木影や夕立の後に感じる涼しさは悪くない。10月から11月にかけては、日は短いが紅葉や黄葉が輝く風景はとても美しい。筆者が住む首都圏の日常とは大きく異なる真冬の雪国へ出かけるのもよいものである。
廃村にはさまざまな姿があり、その魅力を言い表すことは難しいが、あえて一言を選ぶとすれば、「訪ねたときのおどろき」ではないかと考えている。
「かつてあった村の姿」を伝えることはできているだろうか。お気づきの点があれば、お知らせいただけると幸いである。