東京徒歩旅行(2) 〜沖縄居酒屋編〜 その9 目黒区・自由が丘「なんた浜」


「なんた浜」のスタッフ一同です。三線を持っているのが店主の前浜さんです。



10/16/2002 自由が丘「なんた浜」

[牛込神楽坂 → 信濃町 → 表参道 → 渋谷 → 青葉台 → 都立大学 → 自由が丘 (快晴)]

# 9-1
お散歩にはちょうど良い10月の徒歩旅行は,「なるべく明るいうちの到着を目指そう!」と,中旬に実行することになりました。
目的地の目黒区自由が丘の沖縄居酒屋「なんた浜」には,1月中旬に東急線沿線に住む古い友人(kingyoさん,Kashipanさん)と3人で飲みに行っていて,下見はその時に済んでいます(9か月も前の話なのですが・・・)。
今回の設定も待合せ付き。お相手はやはり東急線沿線在住のShichimiさん。幸い天気も良く,仕事の〆めの切れも良く,軽やかな気持ちでオフィスを出発しました。

# 9-2
昼食は,東京に出てきた頃(平成2年頃)にたまに足を運んでいた大久保通り沿い,南山伏町の喫茶店「かうひいかっぷ」のランチ。事務所が神楽坂商店街の近くに近距離移転したため,最近は全然行っていません。「東京の店は狭いなあ」という印象を持ったお店は,バブルがはじけて10数年経ってもやはり狭いままでした。
お店を出て,大久保通りから裏路地に入ると,二十騎町,納戸町という小さくて古っぽい名前の町が続きます。市谷加賀町の大日本印刷は住宅街の中としては異様に大きな工場ですが,敷地の真ん中を渡ることができます。歩道が陸橋になっているので,とても特徴的です。


# 9-3
大日本印刷を過ぎると,さらに大きな陸上自衛隊の市ヶ谷駐屯地。東西に600mも広がっているので,散歩の足にはすごい障害物です。まっすぐ西に向かって,たどり着いたのは外苑東通り,市谷仲之町交差点。通り沿いはスズカケノキ(プラタナス)の並木が印象的です。
靖国通りを曙橋(陸橋)で渡り,裏路地に入った荒木町は,ネコがのんびりしているのが似合う落ち着いた街並み。新宿通り,四谷4丁目辺りに良さ気な飲食店街(車力門通り)があるのは,初めて知りました。続く左門町の裏路地では「鶴の湯」というレトロな銭湯を発見。信濃町に創価学会関係の施設が密集しているのも初めて知りました。

# 9-4
JR信濃町駅を過ぎて,陸橋を渡ると広大な明治神宮外苑。この日は国立競技場でサッカー「日本対ジャマイカ戦」があるらしく,外苑は青い日本代表ユニホームのシャツを来たサッカーファンがいっぱいいます。絵画館の前で一服していると,広い視界の中に小さな子供がサッカーボールを追いかけて走り回っていました。
神宮球場(明治神宮野球場)を過ぎると,有名な外苑のイチョウ並木。植林されたのは大正12年とのこと。黄色く色付くのは11月中旬らしく,その頃に行われるイベントのポスターが貼られていました。

# 9-5
青山通り,外苑前から表参道,渋谷駅にかけては車道も歩道も幅広く,しゃれたお店もたくさんあって,散歩にはもってこいの道。ただし,あまり男ひとりで歩くには向きません。まして季節は秋。
南側の裏道を入ると「ホテル・フロラシオン青山」。ここで結婚式を挙げたのは平成6年の春。妻とは表参道交差点近くのレストランや「紀伊国屋」には,よく一緒に足を運んだものでした。
「いつか笑顔で歩けるようになりたいもんだ」と思いながら青山通りを陸橋でまたぐと,日影はぐんぐん大きくなっていました。

# 9-6
休憩がてら宮益坂の途中,渋谷郵便局の近所の文具屋で平成15年の手帳を買うと,携帯にメールの着信。「誰からかな?」と確認するとShichimiさんからで,今日は風邪のため行けそうにないとのこと。今回も三拍子(仕事・天気・待合わせ)は揃いませんでした。
ほどなく明治通り,越えてJR渋谷駅前のスクランブル交差点。渋谷はこのところ縁の薄い町で,この日は1月以来でした。
渋谷駅を背にして玉川通りを越えて,真新しいセルリアンタワーから桜丘町の小道に入ると,急になじみのない静かな住宅地になりました。それでも南平台町,聖ヶ丘教会とかいうと,どこかで耳にした名前で,この辺りの街の雰囲気をよく表しています。

# 9-7
旧山手通りを渡ったところにある特徴のある建物は「実証の超宗教」神霊教。なぜか今回は,宗教関係の施設がよく目に止まります。ほどなく西郷山公園という丘の上の見晴らしの良い公園に着きました。案内板によると西郷従道公(西郷隆盛公の弟)の屋敷跡らしいです。
渋谷区から目黒区に入って,坂道を下った青葉台は都内でも屈指の高級住宅街。小綺麗な菅刈公園は,JRの集合住宅跡を再開発したそうで,平成13年開園とのこと。南部橋で目黒川を渡ったときには,すでに陽はすっかり翳っていました。自由が丘まではまだ相当な距離(6km強)があります。目黒川沿いはサクラ並木が綺麗らしいですが,秋のサクラ並木はうら寂しいものですね。


# 9-8
山手通りを渡った東山1丁目からは,まったくなじみのない東京です。烏森という新橋界隈を連想させる名前の小学校を過ぎると,蛇崩川緑道に到着しました。徒歩旅行には川跡の緑道は欠かせません。
蛇崩(じゃくずれ)というコワモテな名前は,「昔大水の際,崩れた崖から大蛇が出たこと」に由来するそうですが,緑道沿いには住宅が密集していて,とてもヘビが出てきそうな雰囲気はありません。
蛇崩下橋で緑道を離れて,しばし進むと道の真ん中に葦毛塚。下馬とか駒沢とか,この辺りには馬に由来する地名がたくさんあります。

# 9-9
下馬(世田谷区)と五本木(目黒区)の区境の間には,1km強の直線状の道があり,どんな道なのか興味深かったのですが,そこそこクルマが走っていたため,下馬のほうに入って,狭いながらも直線状の道をひたすら自由が丘をめざして歩きました。
柿の木坂1丁目で環七通りを越えて,東急東横線の都立大学駅に着いたときには,すっかり夜になっていました。
都立フードセンターという泥臭い名前の商店街は,東横線の高架下。2階に上がってみると「きじむなあ」という予定外の沖縄居酒屋があり,「ここで止めようかな」とも思ったのですが,6時前にしてお店は休業中。縁はありそうでなさそうです。

# 9-10
都立大学−自由が丘間は,踏切が残るのどかな住宅街。踏切のたもとの案内板によると,東横線の自由が丘−渋谷が全通したのは昭和7年。線路は「竹林を切り開いて」引かれたそうです。
自由が丘の街並みには,午後6時頃に到着しました。その昔「お菓子のホームラン王」と王貞治が宣伝したといわれる「亀屋万年堂」の本店があったので,耳なじみのある「ナボナ」を買いました。
自由が丘は23区の外れとしては,いちばんおしゃれで活気のある町。そのせいか,到着の安堵感はあまりありませんでした。

# 9-11
「なんた浜」は自由が丘駅南口からほど近く,マリークレール通りに沿ったビルの4階。到着したのは午後6時17分。店主の前浜敏さんは,9ケ月ぶり,2度目のお客を覚えていてくれました。
うるまガイドによると,「なんた浜」は昭和46年(1971年)創業,座席は38席(カウンターは10席ほど)。お店には30周年を祝うとの旨の八重山毎日新聞が飾られていました。
記事によると関東地方には500を超える沖縄居酒屋があるそうです。うるまガイドの数字(261店)の倍もあります。

# 9-12
注文はビールと八宝菜のような「なんた炒め」。前浜さんは竹富島生まれで石垣島育ち。石垣では中華料理屋を営んでいたとのこと。石垣島といえば泡盛は「八重泉」と「請福」。久しぶりなので,「請福」の三合瓶を頼みました。
そのうちに三線を抱えたおじさん(末山さん)登場。「流しの三線」との異名を持つ末山さんのレパートリーは1000曲を超えるとのこと。 酔いが回るうちに歌いたくなってきたので,定番の「安里屋ユンタ」から「島唄」,「花」,「十九の春」と,末山さんの三線をバックに気持ちよく歌いました。さらに「肝がなさ節」,「てぃんさくの花」と,渋めの唄も歌わせてもらいました。

....

# 9-13
前浜さんの三線の弾語りを聴かせてもらったりしまがら,4時間半ほど飲んで歌ってのお勘定は5,500円。ノリの良さを考えると,ちょうどバランスが取れた額です。
自由が丘からの南浦和までの帰途は,東急大井町線,大井町経由,京浜東北線。大井町で大宮行きに乗ると,ほどなく記憶が途切れて,気が付いたらジャスト南浦和に到着していました。なかなかの運の強さです。しかし,ぎりぎりのところで,部屋に戻るのは午前様になってしまいました。

●歩行距離  16.3km
●時 間     5時間02分 (昼食・喫茶休憩を除く)

最高気温 (平年) 最低気温 (平年) 湿度
27.1℃ (21.5℃) 15.7℃ (15.0℃) 33%


時間 距離  ポイント 区名 備考
12:10 0.0  牛込神楽坂駅 新宿区 都営大江戸線・大久保通り
12:20/12:55 0.5  南山伏町「かうふいかっぷ」 新宿区 大久保通り
13:19 1.6  市谷仲之町 新宿区 外苑東通り
13:28 2.5  曙橋駅 新宿区 都営新宿線・外苑東通り・靖国通り
13:44 3.7  四谷4丁目東 新宿区 営団丸の内線・外苑東通り・新宿通り(R.20)
14:06 4.2  信濃町駅 新宿区 JR中央線・外苑東通り
14:35 5.2  青山2丁目 港区 青山通り(R.246)
14:41 5.6  青山3丁目・外苑前 港区 営団銀座線・青山通り(R.246)・外苑西通り
15:00/15:05 6.7  表参道駅 港区 営団銀座線・半蔵門線・千代田線・青山通り(R.246)
15:22 7.6  宮益坂上 渋谷区 青山通り(R.246)
15:48 8.1  渋谷駅 渋谷区 JR山手線・埼京線・東急東横線・田園都市線・京王井の頭線・
営団銀座線・半蔵門線・明治通り・青山通り(R.246)
16:15/16:21 9.5  西郷山公園前 渋谷区 旧山手通り
16:28 10.0  青葉台2丁目 目黒区 山手通り・目黒川
16:40 10.9  烏森小学校 目黒区  
16:56 11.8  蛇崩下橋 目黒区  
17:25 13.3  下馬6丁目西 世田谷区 駒沢通り
17:33 13.9  柿の木坂1丁目 目黒区 環七通り
17:46/17:58 14.7  都立大学駅 目黒区 東急東横線・目黒通り
18:17 16.3  自由が丘「なんた浜」 目黒区  
  (16.4)  自由が丘駅 目黒区 東急東横線・大井町線




【Column 09】 三線の魅力

  • 沖縄居酒屋に入り浸っていると,三線(さんしん)が身近な楽器になってきます。「なんた浜」では末山さんの三線で気持ち良く歌わせていただきました。平成12年頃から「弾けたらいいなぁ」と思っていたこともあり,自分でも弾きたくなるのは素直な流れでしょう。
  • 三線は名前の通り,三本の弦で演奏する楽器で,大きく分けて棹と胴からなります。棹は硬質でゆがみにくい木でてきており,胴に張られる蛇の皮はニシキヘビです。だからといって蛇皮線(じゃびせん)というとウチナンチュから白い目で見られます。

  • 種類を胴で分けると,人工皮,本皮二重張り,本皮の3種類があり,音では本皮が,強度では本皮二重張りが,安さでは人工皮がお勧めです。初心者用三線本体の値段は20,000円から50,000円ぐらいが相場です。高級三線は,棹の材質が良いものになるそうです。
  • 本体にバチ(爪),ウマ(駒),ケース,教本といったセットが揃うと,三線の世界への扉が開きます。私はいろいろ考えた結果,金町「かりゆし」の方を窓口にして,「宮城克年三線店」でゆし木棹(漆塗り)の本皮三線のセットを45,000円で購入しました。



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