ファン交 2013年:月例会のレポート
■1月例会レポート by 根本伸子
■日時:1月19日(土)
■会場:笹塚区民会館(京王線(京王新線)「笹塚駅」徒歩8分)
●テーマ:2012年SF回顧(国内・コミック・メディア〈アニメ〉編)
●ゲスト:森下一仁さん(SF作家、SF評論家)、日下三蔵さん(アンソロジスト、アニメ研究家)福井健太さん(書評系ライター)、V林田さん(咲-Saki-ファン)
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毎年恒例となった1月の国内SF回顧企画。
前半は、森下一仁さん、日下三蔵さんを中心に2012年の「国内SF」をふりかえりました。
まず、話題として挙がったのが、宮内悠介さんのご活躍ぶりです。囲碁、チェッカー、麻雀、古代チェス、将棋等の盤上ゲームの対局をめぐる短編集『盤上の夜』は、直木賞候補、日本SF大賞受賞となり、活躍が際立っていたとのことでした。結果、表題作「盤上の夜」は、創元SF短編賞の選考に際してどこまでSFとみるかといったSFの範囲が広がるなどSF界に影響力のあった作品だったそうです。
宮内さんに次いで昨年の話題をさらったのが、「カラマーゾフ」ものとのこと。日本SF大賞特別賞となった伊藤計劃×円城塔の『屍者の帝国』、高野史緒『カラマーゾフの妹』などカラマーゾフの兄弟を絡めた注目作として話題を集めたとのこと。
またこのほかに、『盤上の夜』と同じく日本SF大賞を受賞した月村了衛『機龍警察』近未来の警視庁特捜部の活躍を描いたもので、警察小説としてもがっちりしておりミステリーファンにもおすすめとのことでした。
そのほか森下さんが注目作として挙げられたのが野尻抱介『南極点のピアピア動画』ボーカロイド(初音ミク)とにこにこ動画の持つ可能性を描いた今年一番の明るいSFでとてもよかったとのことでした。また、樺山三英『ゴースト・オブ・ユートピア』も古今東西のユートピア小説を題材に人間のエロティズムや暴力的な面など人間性を描いた知的な短編集で、特に後半が面白いとのことでした。
日下さんのおすすめ作品として挙がったのが、池端亮『あるゾンビ少女の災難』。手違いで、偶然にも日本の大学で目覚めてしまったイタリア生まれのゾンビ少女が秘石を取り戻すべくやむを得ず、生き残りをかけ大学生とサバイバルゲームおこない悪気はないのに人間を殺してしまう……。ゾンビ少女の天然キャラと殺戮のギャップが面白いとのことでした。アニメ化や実写映画化も予定されているそうでそちらも期待できそうです。
そのほか、長谷敏司『BEATLESS』、山田宗樹『百年法』、藤間千歳『スワロウテイル序章/人工処女受胎』、瀬名英明『大空のドロテ』など、紹介できないほどたくさんの作品名が上がりました。例年以上に大作が多かった豊作の年となりましたね。
後半は、福井健太さん、V林田さん、日下三蔵さんのお三方に、林哲矢さんが加わり、コミック、アニメ部門の2012年をふりかえりました。
2012年の「アニメ」として、ゲスト全員より話題にあがったのが「戦国コレクション」でした。
女性化した戦国武将が現代にあらわれるモバイルゲームを原作とした、各回主要キャラの違うオムニバス形式のアニメ。「戦後コレクション」というタイトルからは想像できない自由さで、戦国武将以外に新撰組メンバー、ベートーベン、劉備などの歴史上の人物キャラが盛りだくさん。その上、人工衛星や宇宙船など、これまた自由すぎる世界設定と史実の歴史エピソードを随所に加えた、予想できないストーリー性が衝撃だったとのことです。林哲矢さんお薦めの回は、不思議の国のアリスを想起させる豊臣秀吉の回とのことでした。
そのほかのお薦めとしてあがったのは、『イナズマイレブン』と『ダンボール戦機』です。こちらは、コラボレート映画、『劇場版イナズマイレブンGO vs ダンボール戦機』も傑作とのこと。
また、『イナズマイレブンGO』に出てきて、SFの専門用語や世界設定を解説してくれるSF3級のマネージャーが主要物語の繰り広げられる画面の隅でSF設定に感動しているところが、SFファンのツボを刺激してくれるとのこと。
そのほかにも、『AKB0048』『超速変形ジャイロゼッター』『ToLOVEるーとらぶるーダークネス』『人類は衰退しました』などのタイトルがあがりました。
「コミック部門」で、一番話題に上がったのは、久正人『ノブナガン』です。
宇宙よりきた怪獣に対し歴史上の偉人のDNAをもとにした特殊能力を持った異能者とのバトルを描いた作品で、特にアクションシーンが素晴らしい。同じ作者の『「エリア51』も面白いとのことでしたが、それ以上とのこと。
またV林田さんからは、水木しげる完コピの画風のドリヤス工場『あやかし古書庫と少女の秘宝』や、「相撲SFにはずれなし」との名言が飛び出た西野マルタ『五大湖古バースト』など、V林田さんのトーンアップする口上を含めて、非常に気になる作品紹介もありました。
その他、技術者アクションものとして中平正彦『月ロボ』、星雲賞候補にお薦めの清水玲子『秘密 -トップシークレット-』、田舎のお堂に住む神様と子供の冒険譚オオカミうお『チロリン堂の夏休み』、ホラー短編集道満晴明『ニッケルオディオン』などなど、紹介しきれないほどたくさんの作品が上がりました。
今回もレポートにまとめきることができないほど、とても話題の尽きない楽しい例会となりました。ありがとうございます!
今年もまた、すばらしい作品に出会えることを願っています。
最後になりましたが。
SFファン交流会1月例会の配布資料として、書籍リストを提供してくださった星敬さんとゲストの皆さんに、お礼申し上げます。ありがとうございました!
また当日は、せっかくいろいろ準備してくだった配布資料につきまして印刷ミスがあったり、いろいろ不手際が重なり、ゲストの皆さまには大変ご迷惑をおかけいたしました。まことに申し訳ございませんでした。
■2月例会レポート by 根本伸子
■日時:02月 16日(土)14:00-17:00
■会場:笹塚区民会館
(京王線「笹塚駅」より徒歩8分)
●テーマ:2012年SF回顧(「海外」「メディア」編)
●ゲスト:添野知生さん(映画評論家)、yama−gatさん (SF/マンガファン)、橋本輝幸さん(SFレビュワー)、林哲矢さん(SFレビュワー)
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2月例会も、「2012年回顧」企画としまして、添野知生さん、yama-gatさん、林哲矢さん、橋本輝幸さん、酒井貞道さんをゲストにお迎えして、「映画」「海外小説」について振り返りました。
1月例会と同様、たくさんの作品が挙がり賑やかな例会となりました。
前半は、2012年の映画について添野さん、yama-gatさんにご紹介いただきました。
まず、添野さんが、2012年アメリカを中心に全世界で大ヒットとなったアメコミ映画『アベンジャーズ』を取り上げました。
意外にも日本の映画業界では、歴史ある映画雑誌「キネマ旬報」でもベスト10に入らず、批評でもひとりの評論家しか話題に取り上げていないなど、思ったほど評価が上がらなかったことが残念だったそうです。一見単純なヒーロー映画のようですが、世界に対して核のあり方を再考察させるような抑止力を持った、深いテーマ性を秘めた奥深い作品なので、まだの方は是非観てくださいとのことでした。
次に、yama-gatさんより『パーフェクトセンス』をご紹介いただきました。
ある日突然、全世界で次第に五感を失っていくという感染症が蔓延した世界を描いた作品で、聴覚を失った世界で音楽ななくなるのか? といった、もし五感を失ったら世界はどうなるのかという世界観が表現されたエピソードが観どころだそうです。
ほかにも、血沸き肉躍る蛮勇映画観たっぷりの『ジョン・カーター』、『バトル・シップ』は異境観のある描写や卓上ゲームを映画化するというおバカなコンセプトなど、SFファンには作品の面白さを是非理解してほしい映画の紹介が続きました。
アニメ映画では、3DCGアニメーションの『モンスター・ホテル』が取り上げられました。世界中のモンスターが憩う5ツ星リゾートホテルのオーナーでドラキュラの父と娘、偶然ホテルにやってきた少年と出会いを描いた作品で、良質のハートフルコメディとしておすすめとのことでした。
永野護、「ファイブスター物語」ファン待望の『花の詩女 ゴティックメード』も7年かけて作った映画として感慨深いものがあったそうです。
その他未公開作からは、『Chronicle』が紹介されました。あることがきっかけで超能力を手に入れた3人の高校生がビデオカメラやiPhoneを使って、ひたすら自己を録画しつづけるという内容で見どころは、よくできた脚本と超能力を持つ男が自身の力でカメラに記録しているという設定を上手く使ったところだそうです。特に全映像がPOVによるものでヴァーチャルな共有感を持つ映像が良いとのことでした。
そのほか、『アタック・ザ・ブロック』『トロール・ハンター』『ザ・ウーマン』『ホビット』『流星からの物体X ファーストコンタクト』『コナン・ザ・バーリアン』『ルビー・スパークス』『アルゴ』などたくさんの海外映画をご紹介いただきました。
後半の海外SF長編部門を橋本さん、酒井さんのおふたりを中心に、短編部門には林さんを加えてお三方でご紹介いただきました。
初の試みとして、事前に大野万紀さん、岡本俊弥さん、山岸真さん、細井威男さん、鳴庭真人さん、林哲矢さん、橋本輝幸さん、酒井貞道さん、牧眞司さんより、2012年の注目作品をアンケートという形で挙げていただきました。
そのため今回は、ゲストからの推薦作品の紹介だけでなく、上記のアンケートデータをもとに上位作品の紹介もゲストの方々にしていただくことができました。
(なおアンケートでは、刊行時期等に詳細な制限を特につけなかったため、一部期間外の作品も挙っていました。また集計は、ひとり1票としてカウントし、各人の順位による得票の傾斜等も設けていません)
票数7票で第一位だったのがアンヌ・ライアニエミ『量子怪盗』です。
フィンランド生まれの作家で、チャールズ・ストロスに見いだされ、本作は、処女長編の三部作の一作目ということで今後も注目の作家とのことです。本書は遠未来の火星を舞台にした怪盗ルパンの奇岩城をイメージした作品で、怪盗と学生探偵イジドールとの対決の展開やなぜかボクっ娘として翻訳されているミエリ、船ペルホネンなどバラエティ豊かなキャラクターと最近めずらしいガジェットてんこ盛りでエンターテイメント性に優れた作品とのことです。
二位は、三部作の集大成ロバート・チャールズ・ウィルスンの『連環宇宙』とウラジミール・ソローキンの『青い脂』でした。『青い脂』は、未来ロシアでドフトエフスキーを元とした文人クローンから作品を生み出す際に葛藤から出てくる青い脂で世界のエネルギー問題を解決しよういう怪作とのこと。
四位は、フェリックス・J・パルマ『宙の地図』、チャイナ・ミエヴィル『都市と都市』。『空の地図』は、スーパービクトリア大戦といった雰囲気で火星人によってビクトリア朝ロンドンがどんどん破壊されていく描写が非常に素晴らしいとのことです。
その他、『アンドロイドの夢の羊』『北極』『世界樹の影の都』『シップブレイカー』『ホーンズ 角』『鷲たちの盟約』『夜のサーカス』『ロスト・シング』『鳥の王さま』等が紹介されました。
総括として、2012年は純粋な英語圏SFというよりは、フィンランドやフランス、スペイン等の世界の作家の作品に注目が集まった年だったのではないかというお話がありました。また、昨年もグラフィックノベルも多数出版され、今後も注目していきたいジャンルとのことです。
短編部門では、アンケートの回答者満場一致で『第六ポンプ』が第一位という結果になりました。パオロ・バチガルピの作品は、「SFマガジン」4月号の掲載作を最後に執筆作すべてが翻訳されたことになるとのことで、早めの新作の執筆に期待したいとことです。
二位は、イアン・マクドナルド『サイバラバード・デイズ』とロバート・チャールズ・ウィルスン『ペルセウス座流星群』、四位が岸本佐知子編『居心地の悪い部屋』、フリードリッヒ・デュレンマット『失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選』、R・Aラファティー『昔には帰れない』、ケイト・アトキンソン『世界が終るわけではなく』という結果となりました。
1月例会と同様に、レポートにまとめきることができないほど、とても話題の尽きない楽しい例会でした。2013年もまた、すばらしい作品に出会えることを願っています。
最後に、SFファン交流会2月例会の配布資料として、書籍リストを提供してくださった星敬さんと、アンケートにご協力いただいた大野万紀さん、岡本俊弥さん、山岸真さん、細井威男さん、鳴庭真人さん、林哲矢さん、橋本輝幸さん、酒井貞道さん、牧眞司さん、ゲストの皆さんに、改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
■3月例会レポート by 茅野隼也
■日時:03月9日(土)14:00-17:00
■会場:千駄ヶ谷区民会館
(JR「原宿駅」徒歩10分)
●テーマ: 「SFと超短編」/「募集超短編 作品選評」
●ゲスト:タカスギシンタロさん、松本楽志さん(超短編作家)、小野塚力さん(超短編評論家、同人誌「片影」主宰)
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ファン交三月例会では、五百文字以内で書かれた物語、超短編の魅力について、超短編作家のお二人をお招きし、【第一部】として、ダンセイニ、稲垣足穂から続くSFと超短編の繋がりを振り返りつつ、語っていただきました。
また【第二部】では、事前に募集した作品のお披露目も行い、選者賞と大賞を発表し、講評も頂きました。
【第一部】では、日本における超短編及びショートショートの歴史や条件、その特徴などについて作品の解説を交えながら、紹介していただきました。
まず城昌幸から始まり、星新一から江坂遊へと繋がるショートショートの代表的な作家の流れが中心にあるということ。
ショートショートの条件としては評論家オバーファストの「完全なプロット・ 新鮮なアイデア・意外な結末」が分かりやすく、またショートショートの創作における指標にもなるようです。
ショートショートは短いながらあくまでも一つの物語として完結しているということが超短編との最大の違いであり、ショートショートは中身をある程度重視し、小説として、誰が読んでも同じ印象を受けるよう作られているのだそうです。
逆に超短編の面白さは、情報の欠落にあり、それだけでは全ての情報が開示されておらず、読者が自分自身で情報を補完して物語を理解しなければならない部分であり、超短編を読むというのは文字そのものを見るということに近く、そのために同じ超短編小説でも読む人によって大きく印象が変わるものだそうです。
ただ同時に、超短編を読むためには読者の側にそれなりのリテラシーを求められる点、つまり超短編における欠落を埋める創作能力が必要であるというのが超短編を読むことを難しくしているそうです。
超短編の歴史については、稲垣足穂とその著作である「一千一秒物語」を例にあげ、物語がとても早いのであまり朗読に向かないことや、韻文にともなう跳躍性がなく、ゆっくりと歩むような印象を受けること、ダンセイニの著作「五十一話集」に影響を受けていたことを解説していただきました。
また忘れられていることが勿体ない作品として、河野典生「ペインティング・ナイフの群像」についても詳しく紹介して頂きました。
「ペインティング・ナイフの群像」は六十二編の物語を十二章に分けて組み合わせることで、ゆるかやな一つの長編のように見せている作品で、淡い叙情性があり、前後のつながりを匂わせるために一編一編は薄味なものの、全部読むと凄いそうです。また驚くことに月刊誌に連載されていたものだそうです。超短編を長編にするための方法論としても優れているとのことですが、各編をみると繋がりを維持するために独立した濃いものは混ぜにくいことが問題でもあるそうです。
超短編の魅力にはSFに通じるところもあるそうで、コードウェイナー・スミスの《人類補完機構》シリーズにおける独立した短編の分からなさと、その向こうにある自分の見えない部分に何か世界のからくりのようなものを感じる点や、SFにおけるごまかしの部分(壮大なハッタリと言い換えても良いですね)は超短編に近いものがあるそうです。また、超短編の場合はぼろがでるころには物語が終了しているため、そのようなハッタリをかますのに向いているとも言えます。
超短編の概念に近いものとして俳句があげられ、『千野帽子 著「俳句いきなり入門」』が超短編入門としても読める良書として紹介されました。
加えて、超短編は詩に近いものがあり、もちろん違いはあるものの、物語のような散文詩を書く方もおり、詩の中にも超短編みたいに読めるものがあるし、超短編を散文詩だと言う人もいらっしゃるという話でした。
また超短編やショートショートのような作品を発表する媒体が減っていることにも触れました。
特に超短編について、あまりに短いので一冊の本としてまとまって出版されることが少ない点、短すぎて作品自体を論じるのが難しいことをあげつつも、作品集単位でなら、テーマはそれぞれ関係なくとも、作品の傾向のようなものを論じることは可能ではないか、また新しい才能の発掘のためには誰か超短編の目利きが必要であるとのことでした。
【第二部】では、今回募集し集まった超短編を小冊子にまとめ、お披露目しました。
予想以上のご応募を頂きありがとうございました。
その中から特に優れた作品として大賞と選者賞を、スタッフとゲストによる投票で事前に決定し、発表しました。
超短編を募集してみると、オチがつかなければならないと思う人が多いためか、できのわるいコントのようなものが結構多くなるそうです。その点、今回の募集で集まった作品は、どの作品も概ね超短編として上手く形になっており、ゲストの皆さんも驚かれていました。(オチをつける書き方は超短編においては少々危険な考え方で、むしろ再読に耐えうるものを作るためには、オチにばかり頼ってしまうのは良くないとのこと。)
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◆大賞
・作品40「真紅の瞳」タキガワ
SF要素は薄かったものの、超短編らしい幻想的な文体で広く票を集めたのでしょう。
◆選者賞
[山下賞]
・作品22「アカシヤの夢の陲」山下清春
[松本賞]
・作品4「乾いた島」葉原あきよ
[タカスギ賞]
・作品40「真紅の瞳」タキガワ
[小野塚賞(スタッフ)]
・作品21「まほらの海」オギ
[平林賞(スタッフ)]
・作品31「遠くに行けないわけ」空虹桜
[牧☆みいめ賞(スタッフ)]
・作品36「果実」白縫いさや
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※募集は2013年2月17日(日)に締め切っています。
[募集要項]
山下昇平さん制作のオブジェを見てイメージした超短編を書いてください。
◆画像はこちら↓
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2013/01/post.html
・文字数は500文字以内(多少なら長くなっても可)。
・内容は広い意味でのSF。
・タイトルは自由です。
・選考はタカスギシンタロ、松本楽志、山下昇平、ファン交スタッフが行います。
・優秀作品を書いた人(1名)には、お題に用いたオブシェが進呈されます。
その他、各選者賞あり。
◆参考作品『入国審査』(タカスギシンタロ)
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2013/01/post-3e3f.html
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最後に。
今回の企画に当たって、募集作品のお題兼大賞賞品として幻想的なオブジェをご提供下さった山下昇平さん、「超短編マッチ箱 SFファン交流会出張編」のための参考資料及び投稿作品を集めた素敵な小冊子を作成、提供頂いたタカスギシンタロさん、松本楽志さんに、改めて感謝申し上げます。
■4月例会レポート by
■日時:04月20日(土)14:00-17:00
■会場:笹塚区民会館
(京王線「笹塚駅」より徒歩8分)
●テーマ:中村融スペシャル!
●ゲスト:中村融さん(翻訳家、アンソロジスト)
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中村融さんが関東を離れられることになりました。そこでファン交4月例会では、古参のSFファン、翻訳家、アンソロジストと様々な顔で活躍をされ続けている中村さんを徹底解剖して、お見送りしようという企画を三部構成でお送りしました。
<第一部 SFファンとして>
まずは中村さんの小学校時代にまで遡ってお話いただききました。
図書館にお勤めだったお父さんに大伴昌司氏の著作を面白いからと勧められ、それが初めてSFを意識した記憶とのこと。
小学生の頃は偉人の伝記を主に読み、マゼラン探検記など、ここではないどこかを想像させてくれるものが好きで、筒井康隆『SF教室』を参考にSF作品を読み進めていったそうです。
「SFマガジン」を初めて買ったのは1974年2月号の特大号で、お年玉で買ったそうです。この頃はまだ自分がSFファンであるという自覚はなかったそうです。
高校の頃は作家ではレ・ファニュやマッケン、ラヴクラフトを読んでいたそうです。最初から短編小説が好きだったそうで、ホラーは怪奇小説傑作集とその解説を手がかりに、手を広げていったそうです。この頃読んだアンソロジーの中に連続殺人の記事などノンフィクション系統のものが入っていることがあり、その影響のためか、現在でもエッセイなどノンフィクション系統のものをアンソロジーを組むときに混ぜたくなるのだそうです。
中央大学に入学して、初めて本格的にSFの話が出来る同年代の友人ができたそうです。
大学SF研の機関紙は、ただ小説が並んでいるだけで物足りなく感じて2号は編集から担当。「ミステリマガジン」を参考にしながら、小説ばかりでなくコラムや評論も載せて、雑誌らしい紙面作りを心がけたそうで、実際好評だったそうです。
翻訳自体は、翻訳本が出ないなら原書を読んで自分で訳すという流れで訳していたとのこと。今読むとダメな訳もあれば、現在とまったく同じに訳している文章などもあって、昔から感性は変わっていないと思うこともあるそうです。
ファンタジーサークル「ローレリアス」にも所属しており、そこのファンジンに翻訳を投稿したがなかなか出ないので、弟さんにイラストをお願いしてファンジンを出し始めたそうです。何人もの執筆者がいるように見えましたが、実はペンネームをいくつも使い分けて出した個人誌だったのには驚きました。
また、都内のSF系イベントでは、エルリックのコスプレもされていたそうで、是非そのときの写真をみてみたいと思いました。
<第二部 翻訳家について>
翻訳をする人と未訳作品を読むだけの人の違いとは? それは小説を書いたり、絵を描いたり、音楽をやったりするのと同じで、中村さんにとっては自己表現の一部であり、練習して技術が上達することそのものが楽しいし、人に紹介したいという気持ちもやはり大きいそうです。
ファンジン翻訳と商業翻訳の最大の違いは、翻訳者が訳したものをチェックする、しっかりとしたシステムがあること。中村さんが翻訳を始めた頃に、浅倉さんに校正をして頂いたことがあり、それが目から鱗の落ちる経験だったそうです。
中村さんがご自身で、翻訳のレベルがぐっと上がったと感じた作品があるそうで、それが「アンドリューNDR114」。この作品から翻訳のやり方が大きく変わったそうです。
<第三部 アンソロジストとして>
中学生の頃からアンソロジーが好きで、そればかりを読んでいたそうです。
読んだ本の目次をノートに書き写す習慣があるそうで、それは現在でも続けておられ、5点満点の評価、訳したときのページ数などをメモしているそのノートは、ご自身でアンソロジーを編まれるときにも重宝するそうです。
実際にアンソロジーを組まれるときには、収録作品を手がかりにつなげて読んでいって貰いたいという気持ちから、既存の手に入りやすいアンソロジーとの重複は避けるように気を配られているそうです。また、実際のアンソロジーが10篇だとしたら50篇の中から、というように、選んだものの5倍は常に候補にあるとのこと。
影響を受けているSFのアンソロジーは、ジュディス・メリルの年刊SF傑作集よりも、ドナルド・A・ウォルハイム、テリー・カーのワールズ・ベストとのこと。ほかにも浅倉久志編「世界ユーモアSF傑作選 1・2」にも強く影響を受けているそうで、上巻は初級編という感じでも、下巻にはテーマから想像できないようなひねくれたものが収録されていて、こういうものを入れるのもアリなのか、と学んだそうです。
今回、中村さんにお話しを伺い、その該博な知識と読書量に圧倒されてしまいました。とっていたメモの量だけでも、普段の例会のゆうに3倍以上になり、とても密度の濃い時間を過ごさせていただききました。お話をお聞かせ下さった中村融さんに改めてお礼申し上げます。
最後に。
5月3日開催の「SFセミナー2013」本会企画でも「ライブ版SFスキャナー・ダークリー」と銘打ち、アンソロジストとしての中村融さんに焦点をあて、実際にアンソロジーができるまでのことについて、詳しくお伺いする予定です。
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◆中村融さんのブログ「SFスキャナー・ダークリー」 ↓
http://sfscannerdarkly.blog.fc2.com/
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◆SFセミナー2013 ↓
http://www.sfseminar.org/
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■5月例会レポート by
■日時:05月03日(金)夜
■会場:鳳明館森川別館
●テーマ:これでアナタもSFスキャナー
●ゲスト:東茅子さん
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5月例会は、SFセミナーの合宿に出張しました。
今回のテーマは[これでアナタもSFスキャナー]ということで、「SFマガジン」の「SFスキャナー」「Magazine Review〈 アナログ〉誌」等で海外SFを紹介している東茅子さんに、「SFスキャナー」執筆者になるまでの道のりをお聞きしました。
東茅子さんのお話の前に、まず「SFスキャナー」の歩みについて牧眞司さんにご紹介していただきました。
「SFマガジン」の海外紹介欄のあゆみとしては、古くは60年2月号の「SFライブラリー」がスタートで、内容は、福島正実さんなど編集部が中心となって翻訳出版予定の洋書の紹介をしていたそうです。そこから、64年に「マガジン捜査線」というSF界の動向を伝えるコラムが伊藤典夫さんの手により始まり、65年2月号より「SFスキャナー」と名を替え、海外のSF界の動向を交えつつ単行本の紹介を中心のコラム記事という形になったそうです。ちなみに第一回では、カート・ヴォネガット・ジュニア『タイタンの妖女』が紹介されているとのことでした。
その後、70年11月号より鏡明さんや浅倉久志さん、荒俣宏さんに交代となり川又千秋さん、風見潤さん、野田昌宏さんなどが加入し、次いで安田均さん、深見弾さん、大野万紀さん、黒丸尚さん、米村秀雄さん等と執筆者が増えていったそうです。輪番制となった初期は、伊藤氏が一回一回、ひとりずつ編集部に紹介するというルートで執筆を依頼し、その当時は伊藤さんのやり方を継承し各々の個性が表出したエッセイ風の紹介スタイルの記事でしたが、82年くらいからは、作品紹介だけに内容が限定され、ページ数も少なくなっていったようです。
現在は、新たな執筆者は、ひとづてに紹介される形で、年に一回の受賞作特集のみとなってしまったため、各賞の受賞者作を読んでいそうな人が選ばれるそうです。
「SFスキャナー」のことが少しわかったところで、東茅子さんがいかにしてSF者になり、「SFスキャナー」執筆に至ったのかという経緯とSFレビュアー等の海外SF紹介者になるために必要なノウハウ等をお聞きしました。
中学校時代の東さんは、ソノラマ文庫やコバルト文庫を愛するふつうの文学少女であったそうです。時代はまさに新井素子の全盛期ということで、新井素子にあこがれ、彼女を意識した小説を書いてご家族に見せるなどしていたとのことでした。
そんな東さんが海外SFと出会ったのは、お父様の海外赴任に同行したことがきっかけだったそうです。そこで、偶然手にしたE・E・スミスの作品が、ロマンスもあり楽しかったこと。三島由紀夫氏の『美しい星』に衝撃を受けて、日本のSFは怖いという誤解をしたことが、深層心理に影響し、現在の海外SF好きにつながっているのではないかとのことでした。また当時、お母様より『渚にて』と『ジャッカルの日』と(モンゴメリの)〈エミリーシリーズ〉をプレゼントされて創元SF文庫と出会ったことが、その後L・Mビジョルドとの運命の出会いにつながったそうです。
高校生の頃は、文芸部部長として、年に一度部誌を発行する創作メインの活動をされていたそうです。大学に入学し、他大のコンピューターサークルを経てお茶大のSF研に入部し、会誌「コスモス」に小説を書き、ひそかにビジョルドの新作目当てに洋書を読んでいたところ、部の先輩に誘われ「パランティア」に入会し、SFレビュアーの道に入られたそうです。
山岸真さんの紹介で「SFスキャナー」を書くことになったそうで、一番最初の記事は、1997年1月号の『オールタージョン・ウィリアムズ』の作品紹介で、掲載をお母様は大変喜ばれたそうです。
最後に、情報誌「アナログ」や「ローカス」をどのように活用されているのかといったお話やそのほか雑誌ごとの取り上げ内容の違いなどスキャナーになるための細かな実用的なお話をお聞きすることができました。
以前「SFマガジン」の記事に「アナログらしい」と表現あり、私は「アナログらしい」ってどういうことなのか? 興味があったのですが、アナログ誌は、他の雑誌に比べて、サイエンス要素が強いということを今回知ることができました。
また、「SFスキャナー」になるために一番重要なことは、情報発信だそうで、「こんな本を読んでいます。」とか、「この作品が面白かった」等の洋書のレビューを継続的に発信し続けていることで、SF界の誰かがそれを見つけ、紹介してくれるはずとのお話でした。ちなみに、東さんはアナログレビューを継承してくれる若者を募集中だそうです!!
今回の例会は、合宿企画ならではの打ち解けた雰囲気の中、東さんの軽妙洒脱で魅力たっぷりの語りと文学少女がSF者になるまでのハートウォーミングなエピソードに癒されながら、参加者のみなさまと和気藹々と和やかな時間を過ごすことができました。
■6月例会レポート by
■日時:06月29日(土)14:00-17:00
■会場:笹塚区民会館
(京王線「笹塚駅」より徒歩8分)
●テーマ:とにかく、ラファティ
●ゲスト:牧眞司さん(SF研究家)、柳下毅一郎さん(翻訳家)、林哲矢さん(ファンサイト「秘密のラファティについて」主宰) 、 橋本輝幸さん(SFレビュアー)、鳴庭真人さん(海外SF紹介者)、魚さん(ラファティファン)
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6月のSFファン交流会は、「とにかく、ラファティ」と題しまして、ゲストに、牧眞司さん、柳下毅一郎さん、林哲矢さん、 橋本輝幸さん、鳴庭真人さん、魚さん をお招きして、ラファティに対する熱い思いを語って頂きました。
例会に先立ち、世界で2番目にラファティに詳しい(牧さん談)らっぱ亭さん謹製の、ラファティ同人誌(カラー版5部)争奪じゃんけん大会を行いました。
とても盛り上がり、熱気ムンムンのまま例会がスタートとしました。
前半は、ゲストのみなさんに、自己紹介とともに「マイファーストラファティ」を紹介していただくところから入り、引き続いてラファティ作品の魅力についてお話していただきました。
牧さん、柳下さんともに、中学生のころジュディス・メリル『年刊SF傑作選』収録「七日間の恐怖」、林さんは、中学生のころ『九百人のお祖母さん』収録「カミロイ人の初等教育」、鳴庭さんは大学3年の頃英文学の授業で「町かどの穴」、魚さんが小学校高学年か中一くらい『九百人のお祖母さん』、橋本さんも小学校高学年か中一『どろぼう熊の惑星』だったそうです。
新刊の長編『蛇の卵』『第四の館』の魅力について、橋本さんは、「今度のラファティは、かっこいい!」とキャッチフレーズをつけたい、『蛇の卵』はアドベンチャー小説、『第四の館』はハードボイルド小説の魅力があり、どちらの作品もリーダビリティも高くラファティの長編の入門書にはぴったりとの熱く語ってくださいました。
魚さんは、『蛇の卵』は、とにかく、ラファティらしい面白ガジェットや面白いキャラクターなどがどんどん出てきて盛りだくさんで飽きにくい反面、自分はどこを読んでいるんだとうっかり話の筋を見失いやすい面があるため、『第四の館』の方が、いろいろな勢力が絡んでとても楽しいし、話の筋が明確で、サスペンスありロマンスあり読みやすいので入門には、こちらがおすすめだそうです。
鳴庭さんは、「『第四の館』一冊だけを読んだら、ラファティは、なんていうカルト作家なんだ!! と思ってしまいましたが、まぁ、国書刊行会から出ているんだからそうなんだろうと思います(笑)」とハードSF好きの鳴庭さんらしいコメント炸裂でした。「カルト満載だからといって反知性的かというとそうでもなく、登場人物の演説や主人公が医者とする狂気と正気の違いの議論など切れ味の鋭い論点など、お! と思わせる部分がある反面、何を言っているのか! っと突っ込みを入れたいシーンがありました。」とラファティ節に翻弄されたようでした。
後半は牧さん、柳下さん、林さんに、新刊についてお話しをしていただきました。
まずは柳下さんより、『第四の館』についてお話いただきました。
『第四の館』の魅力は、ストーリーがシンプルでわかりやすい中にも世を憂いてラファティがかなり本気で黙示文学として書いているように見え考えさせられる反面、全部ギャクとして書いているようにも見えるという多面性にあるのではないかというお話がありました。
牧さんには、『蛇の卵』を中心にラファティの作品の面白さについてお話していただきました。
ラファティの小説は近代文学の枠組みを超えているようところがあり、登場人物が自由意志で運命と向きあう物語ではなく、むしろ受難劇と考えたほうがわかりやすい。しかし、それを真剣に突きつめるのではなく、ユーモアによって微妙にずらしていく。そこがラファティ独特の面白さではないか。
井上央さんが指摘していたように、ラファティの小説にはとてつもなく大きな物語を切り出して一つひとつの作品になっているのだと捉えると腑に落ちる。きっとラファティ・ワールドのようものがあって、そこから人や物語がとっかえひっかえ出てくる。個々の作品の完結はあまり重要ではなく、それに先行してラファティ・ワールドがあると考えると納得できる、とのお話がありました。
林さんには、『昔には帰れない』を中心に短編の魅力をご紹介していただきました。
入門短編集一つを読むならわかりやすいユーモア短編でラファティには珍しくオチがある『九百人のお祖母さん』がおすすめだそうです。ラファティの魅力は、ちょっとずらした会話やはるか先の事にすでに突っ込みがあるなどの文章の面白さにあるその面白さに取りつかれると面白くなっていっていくそうです。
柳下さんより今後の翻訳についてインディアンの英雄についての歴史小説Okla Hannali が面白い等ご紹介がありました(国書刊行会の樽本さんより、『第四の館』がもっと売れれば次は…… いうお話も)。
今回の例会も、翻訳家である井上央さんからもメッセージが届いたお話など、書ききれないお話がたくさんあります。本当に密度の濃い、あっというまの3時間でした。
ゲストの皆さん、例会の配布物として小冊子をご提供してくださったらっぱ亭さん、そして、メッセージを送ってくださった井上央さんに、改めてお礼申し上げます。
最後に。
事前にTwitterなどで盛り上げてくださった多くのSFファンのおかげもあり、定員いっぱいの参加者となりました!
いつもありがとうございます!!
★★★ 追記 ★★★
井上央さんからのメッセージをここに紹介させていただきます。
★-------------(ここから)--------------------------------------------------- ★
井上央です。
その場にいて一緒に盛り上がれないのが残念です。
少しでも話題づくりに貢献できるかどうか分かりませんが、最近浮かんだ思いつきを一つ。
ファンタジィの一亜種としてのサイエンス・フィクションを考える時、二つの分派がある。
(1)「魔法は仮面をつけた科学である」とする“マリノフスキー派”。
(2)「科学は仮面をつけた魔法である」とする“チェスタトン派”。
もちろんラファティは二番目のチャンピオンですね。
またラファティと比べれば有益な結果を生む一群の作家というものがあると思います。
私はラファティを知らないクリスチャンの同僚にラファティ作品を説明する際、ラファティって「アクの強いC.S.ルイスみたい」という言い方をします。
どなたかが、『蛇の卵』がナルニア国物語『朝びらき丸』の巻を思い出させたとコメントされていたのを見た記憶があります。ナルニア国物語のあくまで明るいファンタジィが、その明るさのゆえに、かえって“夢まぼろし”を思わせる一方、深い影もふんだんに宿したラファティのファンタジィは、その影の刻印のせいで、いっそう確かな“実在感”を帯びているようです。
ファン交に素晴らしい時があらんことを!
★ --------------------------------------------------(ここまで)------------- ★
■7月例会レポート by
■日時:2013年7月27日(土)14:00-17:00
■会場:神宮前区民会館
(明治神宮前駅徒歩2分、原宿駅徒歩8分)
●テーマ:大森望☆てんこ盛り!
●ゲスト:大森望さん(アンソロジスト、翻訳家、書評家)
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7月のSFファン交流会は、大森望さんにお越しいただき『オール・クリア2』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ))が刊行されたばかりのコニー・ウィリスの〈オックスフォード大学史学部〉シリーズと、10巻まで刊行された『NOVA』シリーズ(河出書房新社)について語って頂きました。
翻訳家、アンソロジスト、書評家、評論家、編集者と様々な側面から語って頂き、まさに「大森望☆てんこ盛り! 」な内容でした。
まず前半は、コニー・ウィリス〈オックスフォード大学史学部〉シリーズの魅力と、翻訳についての裏話をお聞きしました。
コニー・ウィリス自身も当初はこんなに長く続くシリーズとは思っていなかったようです。<オックスフォード大学史学部>シリーズの魅力といえば、タイムトラベルミステリーですね。コニー・ウィリスは、タイムトラベルを「歴史(過去の事実)は知ることが出来ても変えられない」というスタンスで、タイムトラベルミステリーを創りあげているとのことです。ただ、猫は絶滅してもタイムマシーンはある22世紀と過去を行き来するため、完璧に整合性のある設定にはなっていないとのことです。
そして、最新作『ブラックアウト』『オール・クリア』の二部作で舞台をロンドン大空襲にしたのは、<9.11>後に「絶望的な状況下で、それでもベストを尽くす人々」を描くためとのことです。〈オックスフォード大学史学部〉シリーズでは、ヴィクトリア朝時代の話し方を、時代背景と読みやすさのため、内田百*けん*[門構えに月]の文体を参考にしているとのことでした。
会場からは「翻訳するとき資料収集のコツは?」という質問がありました。
大森望さんは、「だいたいはWEBで著者のブログなどを読んで、著者が参考にした文献などを探し用語や時代背景を調べている」とのこと。大森望さんは、コンスタンスに毎日訳すタイプではないとのことですが、様々なお仕事のひとつである〈オックスフォード大学史学部〉シリーズだけでも、超人的な翻訳量です。
後半は、7月に全10巻で完結した『NOVA』シリーズ(河出文庫)についてお話していただきました。
会場では、大森望さんから頂いた、『NOVA10』に残念ながら収録されなかった理山貞ニさんの「ノヴァ休報」をファン交限定で配布させていただきました。
また、ファン交流会がTwitter上で行った「あなたの選ぶNOVA掲載作ベスト3」集計結果も配布しました。
ファン交ベスト投票で2位につけた、法月綸太郎「バベルの牢獄」は意外だったようです。「バベルの牢獄」は電子書籍にできない作品。「pdfで頒布しても自分で製本しなくては」となれば、2巻を買うしかないですね。
『NOVA』は、大森望さんの責任編集として、はじめから「原稿の依頼や執筆者への催促、ゲラチェックに質の保証も」河出書房から引き受けていたとのことです。
第1巻は、大森望さんと同世代(1960年前後)の代表的SF作家に、mixi経由などでお声かけ。第2巻からも、大森望さんから直接、各作家に原稿を依頼し、宮部みゆきや伊坂幸太郎の作品も収録。さらに寄稿される作品の選定も行い、『NOVA6』で新人作家特集にも繋がったそうです。
新人作家特集以外は、各巻のテーマを設けず、同じ枚数の作品でもまとめなかったとのこと。さらに、収録作全てが「五色の船」のようではかえってアンソロジーとしてのバランスが悪くなるため、脱力系の短編も織り交ぜているとのこと。アンソロジストとしての大森望さんは、中村融さんもおっしゃっていた「緩急のあるアンソロジー」と、水鏡子師匠の「重石がないと」というアンソロジー感を意識しているそうです。
『NOVA1』は10巻でひと区切りしましたが、売上の問題ではなく「仕切り直しにいい巻数」だからとのことです。
今年だけでもSFのアンソロジーは「SF作家倶楽部から5冊、『NOVA』が2冊、「原色の想像力」の2巻目(年内予定)、年間傑作選に、SF宝石で2冊」の計11冊以上も刊行されます。さらに伴名練『皆勤の徒』などの短篇集も続々と出版されるほど。これもSFファンは、どの作品もTwitterやFacebookで噂になるからとか。皆さんこれからも、応援したい作品についてどんどん発信していきましょう。
最後に会場からは、「お父さんがカツオ漁船に乗っていたのは本当か?」という質問も。なんとこの質問当たらずも遠からず、大森望さんのお父様は、高知新聞記者として、赤道まで延縄漁法の取材でマグロ漁船に半年ほど乗っていたそうです。
大森望さんからは、最後にこの夏早川書房からフィリップ・K・ディックの短篇集が出版されるとの情報をいただきました。ディックの作品は、早川書房から長編が(改訳含め)4冊されるとのことです。短篇集も4冊出版され、「浅倉久志訳はこれで全部」揃うとのことです。
大森望さんのお仕事は翻訳家、アンソロジスト、書評家、評論家、編集者……etcと幅広く、どのお仕事もこれからが楽しみです。
そして、SFファン交流会をはじめ多くのイベントで読者とお話下さり、SFファンとして活躍される側面も大森望さんの魅力です。今回もご多忙のなかのご出演、ありがとうございました!
投票受付から集計まで短い期間にも関わらず、Twitterでのベスト3投票して下さったSFファンの皆さまありがとうございます。
また、投票やイベントの情報を広めていただき、いつもありがとうございます!
■付録■
投票用に作成した「NOVA」シリーズ全収録作品リストは公開中です。よろしければご覧下さい。
なお、集計は #nova_best のついたツイートをカウントしたものです。
URL:http://www.din.or.jp/~smaki/smaki/SF_F/akai/20130727.html
■8月例会レポート by
■日時:08月17日(土)14:00-17:00
■会場:笹塚区民会館
(京王線「笹塚駅」より徒歩8分)
●テーマ:〈天冥の標〉フリー読書会
●進行:ファン交スタッフ
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8月の例会は、夏休み特別企画として〈天冥の標〉読書会を開催しました。
2009年にハヤカワ文庫JAで始まった小川一水の〈天冥の標〉シリーズ。小川一水がデビュー以来溜め込んだネタを全て出すと宣言した本シリーズは、折り返しの六部までですでに計8冊にのぼります。なかなか感想を話しあう機会がない本シリーズ。
そこで、「夏休みといえば読書」というファン好スタッフ達の「この辺りで人と感想を話しあって整理したい!」という呼びかけから、8月例会企画は始まりました。
当日は炎天下にもかかわらず、10人ほどご参加下さり、皆さんとケーキを食べながら語り合うことができました。
読書会の進行用に、書誌や年表、6巻巻末の用語・キャラクター表をまとめた冊子も好評でなによりです。既刊を全巻読んでいる方も多く、読書会は1巻から順に内容を思い出しつつ、重要な出来事をマッピングしつつ、各エピソードの魅力を話し合いました。
1巻の舞台となるメニー・メニー・シープは、舞台を絵に描くと以外と狭いのが印象的。しかし、この1巻が実は年表では一番未来の29世紀。そのため、2巻からは、出てくる設定やキャラや用語がどんどん他の巻にリンクしていく楽しみを味わえます。2巻が数年後の日本を中心にしたパンデミックシミュレーション。3巻が23世紀から24世紀の宇宙戦と、各巻ごとにSFにある内輪のジャンルの垣根を飛び越えていくのも読者の贅沢です。
散りばめられたエピソードは、どれもそれだけで面白い話ばかり。聖公会率いる宇宙開拓団の受難を先祖にもつ、自分たちを宇宙生活に適応させた、ノイジーラント大主教国の〈酸素いらず〉。彼らが、「アーヴに似ている」という感想に同感。6巻PART1冒頭でヒロインが唱える食事の祝詞に、救世群の出自が語られているという指摘にびっくり。アステロイドベルトで「奇跡のりんご」を造る宇宙農家一代記と、サンゴ人など地球外生命体や星間生命体の悠久の宇宙の覇権争いが一緒に楽しめる5巻も大人気。さらに、1巻のとある二人組がまだ他の巻で出てこない新勢力と判明し、「7巻以降の新たな鍵なのでは?」という発見も。
1巻から最新刊まで順をおって話していても、エピソードを重ねるごとに自分がどの巻の話をしているかも、このレポート同様徐々に怪しく……。時間の都合で、最後は駆け足になり、「もっと話したい」「話し尽くせなかった」という濃密な例会となりました。書ききれないほどの宇宙叙事詩を、読者の視点を変えつつどんどん読ませてしまうリーダビリティとアイデアの宝庫が、小川一水の魅力です。皆さんも、晩夏のお供に、秋の夜長に是非〈天冥の標〉を読んで、またどこかでお話しましょう。
追記:〈天冥の標〉の設定や、小川一水へのインタビューなどは、『SFマガジン2012年1月号』20011.11,(早川書房)が詳しい。
■9月例会レポート by
■日時:09月21日(土)14:00-17:00
■会場:笹塚区民会館
(京王線「笹塚駅」より徒歩8分)
●テーマ:ポスト〈リアル・フィクション〉作家の魅力
●ゲスト:新城カズマさん(作家)、井出聡司さん(早川書房編集部)、縣丈弘さん(映像系ライター/SFファン)、
kanadaiさん(ライトノベルファン)、志村弘之さん(SF折り紙の人/SFファン)、鈴木力さん(SF研究家/SFファン)
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今回のSFファン交流会は、ライトノベル周辺の媒体で活躍していた作家を中心に、早川書房から発信されてきた〈リアル・フィクション〉のこれまでを振り返りつつ、現在のライトノベルからSFに通じる面白さを発見していこう、という企画のもとで開催された。
〈リアル・フィクション〉と冠された作品は、2003年の〈マルドゥック・スクランブル〉や小川一水『第六大陸』などを端緒として順次刊行され、その多彩な作品群から〈リアル・フィクション〉とは何なのか、という議論がこれまでも再三にわたって行なわれてきた。
新城さんの『サマー・タイム・トラベラー』が発表された2005年当時のファン交や京フェスでも企画が組まれ、東浩紀さんによる「〈リアル・フィクション〉の実体は存在しない」という発言や、当時「ファウスト」など他社でのヤングアダルト向け展開のムーブメントを意識していた塩澤編集長が、「新人作家が登場するときのラベリングとして用いた」と述べたことで、下火になったり、再燃したりを繰り返してきたとも言える。
新城さんは当時を振り返って、「『リアル・フィクションを書いてくれ』」と言われた記憶はない。SFを書いてくれ、と言われて書いて本が出たら〈リアル・フィクション〉とついていた。しかもそれがほかの人の本にもついている」と言いつつも、それに連動して「すごい作家が出てきたな、という実感はあった」と語っていた。
井手さんは担当編集者のひとりという立場から、「なるべく新しい作家に新しい価値を見出してもらいたい」として、自身と同世代かそれ以下の作家に対して積極的なアプローチをとってきたという。基本的には一冊もので、「アイディアを小出しにせず、面白いことは全部投入して書いて欲しい」という方針を続けてきたと。
いまや早川書房の看板シリーズとなった月村了衛〈機龍警察〉シリーズについて、〈機龍警察〉については「これは完全に月村さんの力」と述べて、もとは小説家志望だった月村氏の、知合いの編集者を通じて早川から出すことになったこと、持ち込まれた時点でかなり完成した小説原稿としてあったことなどを明かしてくれた。
ライトノベルに対する意識を聞かれた井手さんは、既存のライトノベルとハヤカワJAの方向性は「違う」と明言した上で、「面白いものが書ける、と思っている人たちは積極的に紹介していきたい」「作品本意でジャンルが作られていくのだから、1本1本面白いものを出していくことが前提だ」と語った。
ジャンルのレギュレーションが先行するのではなく、作品ありきで展開をしていくことに関しては、新城さんも「『ライトノベルを書いてくれ』と言われたこともない」と振り返った上で、『15×24』の執筆時にはかつて編集者に「面白ければ何をやってもいい、全責任は俺が取る。ただし金は出さん(笑)」と言われ、Twitterなどで宣伝活動を行なったことを明かしていた。
さらに新城さんは、以前ハヤカワ文庫JAの刊行予定に掲載されていた『.49ers Point-Forty-Niners』がもうじき完成予定であることや、さらに「『こういうところに私も住みたい』と思わせられるようなディストピア小説」を進めていると語って会場を沸かせていた。
早川書房からの〈リアル・フィクション〉関連の準備中の企画についても折々に語られる上で、前半の部は終了した。
休憩を挟んで後半では、〈リアル・フィクション〉を愉しんできたSFファンに読ませたいお薦めのライトノベルを、ゲストが各自紹介していく、というかたちで進行した。
資料として配付されたkanadaiさん作成のリストを中心に話題が進められたが、掲載作品を制覇している読者は会場には1人もいない、あるいは1冊も読んでいない、という参加者も多いことがわかり、ゲストの紹介にも熱が入った。
志村さんは川崎康宏『ありすとBOBO』『蒸気帝国騒動記』などを挙げ、豊富なSFガジェットの魅力を語りつつも、「まあ、そのSF的な説明は実際に計算すると全部ウソなんですけどね」とハードSF読みのこだわりを見せて会場の笑いを誘っていた。
また、一迅社文庫のパロディタイトル作品の話題も出、『ペンギン・サマー』で話題になった六塚光『迷い猫オーバードライヴ』や、早矢塚かつや『これからの正義の話をしよっ☆』から、スタッフや参加者のお薦め作品が挙げられ、参加者の間でもよく読まれていた田中ロミオ〈人類は衰退しました〉のシリーズならではの多数の仕掛けの魅力を再確認したりと、参加者も含めて盛り上がった。
鈴木さんは「私は森田季節担当」と名乗ってから、『魔女の絶対道徳』の下ネタと残酷なダークファンタジィの極端な振れ幅や、毎日新聞の歌壇欄でも取り上げられた短歌×カードバトル『ウタカイ』を、川又千秋『幻視狩り』に近いと絶賛するなど、様々な魅力を語ってくれた。
また、大樹連司『オブザデッド・マニアックス』と同時期に邦訳が刊行されたコリイ・ドクトロウ『リトル・ブラザー』が「外部からの脅威によって管理社会ができてしまう点で対になっている」と、ヤングアダルト層に提示する社会の描き方が奇しくも似通っていたことを指摘していた。
縣さんは餅月望『小学星のプリンセス』での「小学生」というキーワードに拘った各種設定や、「エレキテル・パンク」とも言える手代木正太郎『柳生浪句剣』の江戸時代を舞台とした改変歴史SF的な面白さについて語った。そこから、今後JAで〈リアル・フィクション〉の書き手として登場してもらいたい作家へと話題が移り、石川博品(『耳刈ネルリ』『ヴァンパイア・サマータイム』)については、会場に来ていた出版社員から「透明な文章が素晴らしい」「JAで書ける作家ですね」と太鼓判が押されていた。
kanadaiさんはメディアミックスの一環でありながら本格的なハードボイルドを意識した陸凡鳥『武装神姫 ノベライズ』や、アニメの前日譚である海法紀光『翠星のガルガンティア 少年と巨人』などノヴェライズ作品に加え、ボカロPでもある泉和良作品を取り上げ、作品単体からより大きなコンテンツに触れていく面白さの広がるセレクトだった。
ゼロ年代に入ってオールタイムベスト級の良質な国内SFが数多く登場してきたが、それらの作品はいつも新しい書き手やフィールドから生まれたものでもある。ならば、今回ゲストの方々が推薦した作家たちが、今後更なる優れたSFやリアル・フィクションをものしていくだろうことも容易に想像できる。読者としての興味が大きく広がる時間であった。
最後に。
SFファン交流会9月例会の配布資料として、書籍リストを提供してくださった kanadaiさん、追加記入してくださったゲストの皆さんに、改めてお礼申し上げます。
ありがとうございました。
◆使用したリストのひとつは、↓下記のURLにて公開中です。
http://book.g.hatena.ne.jp/kanadai/20130923/1379935327
■10月例会レポート by
■日時:10月12 日(土)夜
■会場:京都・旅館さわや本店
●テーマ:『有頂天家族』アニメ化記念! 森見登美彦×京都観光地図を作ろう!
●ゲスト:大森望さん(書評家、翻訳家、アンソロジスト)、船戸一人さん(京大SF研OB)、魚さん(京大SF研OB)
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10月の例会は、SF秋の風物詩「京都SFフェスティバル」の合宿企画にて行いました。
今回は、待望の新作『聖なる怠け者の冒険』(朝日新聞出版)出版、さらに『四畳半神話大系』に続き『有頂天家族』のアニメ化を記念し、「森見登美彦×京都観光地図を作ろう!」と実際に「森見登美彦×京都観光地図を作成しました。そして、京大SF研OBの大森望さん、船戸さん、魚さんの御三方に、地図上で刊行案内をしていただきました。
今回の地図は、googlemapで作成し、現在も下記アドレスで公開中です。皆さんぜひご利用下さい。
■「森見登美彦×京都観光地図」 by SFファン交流会
https://mapsengine.google.com/map/edit?mid=zbvx1Zoqfdpw.kTDucSfev88k
この↑「京都×森見」観光地図には、『太陽の塔』から『有頂天家族』まで森見作品でお馴染みのスポットを(赤ピンで)マッピングしてあります。また、京大SF研OBの正木さんからは、おすすめごはん処マップ(黄緑ピン)を提供していただきました。京大生の食事事情の一端がうかがえますね。さらに、森見ファンの大澤ご夫妻から聖地巡礼写真も提供していただき、スライド上映をさせていただきました。
スライドとともにゲストの御三方が登場し、まずは、京フェス会場の「京都教育文化センター」と「旅館さわや本店」のある京大の南端エリアからスタート。
京大を北上し、中央図書館や文学部など、『四畳半神話大系』や『夜は短し歩けよ乙女』でもお馴染みの大学構内や周辺のお食事処など。『夜は短し歩けよ乙女』の最後のシーンでようやく恋の外堀を埋めるのを終えた「私(先輩)」と「黒髪の乙女(後輩)」が初めて2人きりでコーヒーを飲んだ喫茶店「進々堂」は今や観光客にも大人気。
鴨川デルタでは実際に京大生が新歓・花見シーズンに盛大なコンパを催し、花火を上げる輩も絶えないとか。『有頂天家族』の舞台でもある出町商店街がある、鴨川の反対側は「おしゃれな同志社大生のテリトリーだから」なんてお話も。
森見作品に登場する観光スポットは数あれど、ゲストの御三方一押しは、「関西電力(株)夷川発電所」。
『有頂天家族』では、「裏に偽電気ブラン工場がある」この発電所は水路に囲まれ、趣き深い様子。また、森見作品には登場しないものの、水路の先には「京都国立近代美術館」「京都市美術館」「京都市動物園」もあり、デートや散策にもってこいとのことでした。京フェス会場からも程近く、「明日にでも行ってみたい」との声も。会場では、プリントアウトした地図も配布しましたが、皆さん翌日どこか行かれましたか?
さらに、大森望さんの大学時代の下宿先や、学生時代のデートスポットも掲載。これには、大森さんも「どこから」と苦笑い。
企画部屋には京大SF研関係者のみならず、同志社大SF研OBの方や、京大や京都に馴染みのある参加者も。皆さんそれぞれに思い出のスポットを語って下さいました。
地図の作成段階からゲストの御三方に加え、正木さんや大澤ご夫妻など今回も多くの方にご協力いただきました。当日も京フェス合宿ならではの、みんなでゆるふわななかで語り合えました。
皆さま、ありがとうございました!
最後になりましたが、京都SFフェスティバル実行委員会の皆様、お疲れ様でした。
今年もファン交参加スタッフ一同も楽しませていただき、ありがとうございました。
来年もまた京フェスでお会いしましょう。
■11月例会レポート by
■日時:11月16日(土)14:00-17:00
■会場:笹塚区民会館
●テーマ:SF読書サロン 第二回 お題「小さい」
●進行:スタッフ
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11月の例会は、一年ぶりにSF読書サロンと題しまして、ブックトークの会を開催しました。
ゲストは立てず、例会参加者の方から、テーマに関するおすすめの本をご紹介いただくという、無茶振り企画! 今回のお題は、秋といえば、「小さい秋みつけたぁ~。」ということで、「小さい」テーマでご紹介いただきました。
今回は、これぞSFといった作品から、漫画、ライト・ノベル、児童書、同人誌までたくさんジャンルの本の話題が出て、最後は懐かしのアニメを語り合うというとってもほのぼのした例会となりました。
全体の傾向としては、テーマが「小さい」と漠然としていたおかげか、スタッフがぼんやりしていたおかげか、「小さい」というテーマに反し、話題はどんどん取り留めなく広がり、参加の方も少しずつ増え、ワイワイと拡散していったという印象がありました。
中性子星を舞台とした「竜の卵」や「フラックス」などのお話が一番盛りあがりました。熱い語りに、やっぱりみんなSFが好きなんだなぁとしみじみ感じ嬉しかったです。
変わりどころで面白かったのは、[同人誌]『まんがいままで図鑑にのっていなかったいきもの図鑑』にのっていた量子こびとのお話。こびとに「あなたよりも小さいこびとを紹介してください」と頼んで、たどり着いた35人目が量子こびとだそうです。どうやら量子こびとは、手に網のようなものを持って、魚を捕るような姿をしているらしい・・・(笑)。
普段の例会では、なかなか表に出ない皆さんの熱いSF魂(ソウル)を感じる楽しい例会でした。 ご協力いただいた皆さまに深く感謝申し上げます。
SFファン交流会では、これからも今回のような、本を持ち寄ってSFを語り合う交流会を開いていきたたいと考えております。そのときもまた、変わらずご協力いただけると嬉しいです。そして、「こんな面白い本があるんだよ。紹介させてくれ!」という方、ファン交はいつでも待っています!
以下ご紹介いただいた、「小さい」おすすめの本一覧です。
スタッフの記憶の都合上、書名のみ複数ご紹介いただいたものに関しては割愛させていただきました。お気づきになりましたことがありましたら、スタッフにお知らせいただけると幸いです。
・アレックス・シアラー『スノードーム』求龍堂
・フィッツ・ジェイムズ・オブライエン『金剛石のレンズ』東京創元社,創元推理文庫
・ジョン・アーヴィング『オウエンのために祈りを』[上・下]新潮社,新潮文庫
・[未訳短編]P.K.ディック"Prize Ship"
・早見裕司<水淵季里シリーズ>
・ロバート・L・フォワード『竜の卵』早川書房,ハヤカワSF文庫
・オノレ・ド・バルザック『あら皮−欲望の哲学』<「人間喜劇」セレクション第10巻>藤原書店
・[同人誌]『まんがいままで図鑑にのっていなかったいきもの図鑑』オオクリヒデト編発行
・秋山亜由子『虫けら様』青林工藝舎
・秋山亜由子『こんちゅう稼業』青林工藝舎
・佐藤さとる『コロボックル物語(1)だれも知らない小さな国』講談社[シリーズあり]
・<宇宙英雄ペリー・ローダンシリーズ>032「時の牢獄」[スヴォーン人]
・<宇宙英雄ペリー・ローダンシリーズ>085「星のジャングル」[シガ聖人]
・ジェイムズ・P・ホーガン『ミクロパーク』東京創元社,創元SF文庫
・宮内悠介「トランジスタ技術の圧縮」「アレ!FREE」vol.8
・田中ロミオ『人類は衰退しました』小学館,ガガガ文庫
・笹公人『叙情の奇妙な冒険』早川書房,ハヤカワSFシリーズJコレクション
・P.K.ディック「小さな黒い箱」[池澤夏樹編『短編コレクション1』河出書房新社]
・エドモンド・ハミルトン『フェッセンデンの宇宙』河出文庫
・スティーヴン・バクスター『フラックス』早川書房,ハヤカワSF文庫
・トマス・M・ディッシュ『いさましいちびのトースター』早川書房,ハヤカワSF文庫
・ミクロ・マナラ『ガリバリアーナ』パイインターナショナル
・C・M・コーンブルース「小さな黒いかばん」
・R・A・ラファティ『九百人のお祖母ちゃん』早川書房,ハヤカワSF文庫
・アルフ・プリョイセン『小さなスプーンおばさん』学習研究社
■12月例会レポート by
■日時:12月21日(土)14:00-17:00
■会場:笹塚区民会館(京王線「笹塚駅」徒歩8分)
●テーマ:「祝★〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉第二期スタート!!」
●ゲスト:内田昌之さん(翻訳家)、清水直樹さん(編集者)、橋本輝幸さん(SFレビュワー)、林哲矢さん(SFレビュワー)
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12月のSFファン交流会は、〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉第二期スタートを記念し、早川書房の清水直樹さん、翻訳家の内田昌之さん、SFレビュワーの橋本輝幸さんと林哲矢さんをお招きして、〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉の魅力をとことん語っていただきました。
〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉は、海外SF小説の叢書として2012年にスコット・ウエスターフェルド著『リヴァイアサン クジラと蒸気機関』を皮切りに、第一期にはオール新作全12冊が出版されました。続く第二期も11作のラインナップが発表され、12月には早速、グレッグ・イーガン著『白熱光』が出版されています。ゲストの皆さまには、第一期刊行作を一作ずつ振り返っていただき、さらに、第二期ラインナップの作品をいち早くご紹介していただけました。
第一期の作品については、SFファン交流会でもWEB上で事前に人気投票を行い、計18名の方々からご回答頂きました。その結果、パオロ・バチカルピ著『第六ポンプ』、チャイナ・ミエヴィル著『言語都市』、クリストファー・プリースト著『夢幻諸島から』に人気が集中。ゲストの皆さまにとっても、どれもおすすめの作品ばかり。中でも内田さんの翻訳された『言語都市』は、二つの言葉を同時に話すことでしか音声コミュニケーションのできない異星の世界を描いたもの。原著で分数(−)の上下に分かれた文体を、英語版kindleでは画像で埋め込んでいたものを、訳文の日本語版kindleでは文章として組み込み、「設定を変えてもフォントが崩れず改行もされる」のはすごいです!
第二期の作品についても、会場では原著の実物を交えての紹介となりました。内田さんが翻訳されたジョン・スコルジー著『レッドスーツ』は来年2月には刊行予定。すでに訳も上がったというこの作品、原題の” Redshirts”と原著表紙でピンとくるトレッキーも多いメタスペースオペラ。日本で言う「第三艦橋のクルーたち」のこっそりとした大活躍が楽しみです。
さらに第二期の核は、フランスSF界期待の新鋭ロラン・ジュヌフォールが紡ぐ「オマル」シリーズの壮大な叙事詩、ブランドン・サンダースンの(物理的にも)超大作の「王たちの道」シリーズ。円城塔が翻訳することでも話題のチャールズ・ユウ著『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』は、橋本さんも一押し。家族の物語としてのアメリカ文学にSFジャンル小説のエッセンスが詰まったとなれば円城塔訳はしっくりです。
第二期は、グレッグ・イーガン『白熱光』に始まり、物理法則を根源的にひとつ異にする宇宙が舞台の新三部作の一作目『クロックワーク・ロケット』で終了予定。しかし、もちろんイーガンの続刊、ハンヌ・ライアニエミの三作目、さらに新たな海外SFの叢書として続いていくとのこと。林さんの「銀背の318冊を超えないと」という応援のように、旧銀背のように末永く愛されるシリーズになることを願っています。
最後に、〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉のトリビアを。外見の特徴は銀背を踏襲したカバーデザインに、ビニールカバーと茶色の小口。小口の色は印刷会社で塗られており、ポケミスの黄色よりも色ムラが出やすく職人技の賜だとか。叢書の名前は、〈ハヤカワ・SF・シリーズ〉通称「銀背」から受け継いだものの、〈新・ハヤカワ・SF・シリーズ〉では「・の数が多すぎて見栄えが悪」く、代わりに記号を使うことにしたとのこと。記号には他にも「◎」や「★」といった案もあったのにはびっくりです。
来年2月には内田さんの翻訳された『レッドスーツ』の出版、さらに来年2014年には「SFマガジン」「ミステリーマガジン」ともに記念すべき700号を迎え、ゲストの皆さまも裏に表にご活躍の模様。12月例会には師走の忙しいスケジュールを縫って、ゲストの皆さまと多くの参加者の皆様にお集まりいただけました。
今年も皆さま、最後までありがとうございました!