※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。 【3】 ベッドに下してすぐ自分の服を脱いだセイネリアは、まだ半分ぼうっとしているシーグルの上に乗り上げていくと唇を合わせた。体を擦り合わせながら口の中で舌を擦り合わせて、そうしながら彼の服を脱がせていく。いくら言っても彼は寝間着を着ようとするが、セイネリアがいて朝まで無事に着ていられた事はほぼなく、何もせずに寝た時だっていつも朝になる前にセイネリアが脱がしていた。それでも寝る前に律儀に着ているのは、こちらに対するちょっとした反抗のようなものなのだろうか。 服をまくりあげるついでに腿から体を掌でなぞって、脇腹からすっと撫であげて胸の突起を摘まむ。そうすれば条件反射のように彼の膝がくっと上がるから、そこに手を入れて足を持ち上げた。 「あ……や……」 ぼうっとしていたシーグルだが、そこでふと正気になり掛けて持ち上げた足に力が入る。けれどもそう簡単に正気になど戻してやらない。セイネリアは上から被さるように深く唇を合わせたまま、持ち上げて広げた彼の足の間に股間を押し付けた。 「ン……や、ぁ……」 少し必死になって、彼が唇を離そうとする。漏れる声がやけに甘く響いて、セイネリアが思わず笑ってしまったのを彼は知らない。 そのまま股間同士を擦り合わせてやれば、自分のモノ、彼のモノ、両方の変化がよく分かる。すっかり硬くなって存在を主張し始めれば、互いのモノが擦れるというよりぶつかり合うようになって、手を添えてやらなければ上手く擦れあってくれなくなる。こういうところが女と違って繋がるように出来ていないと思うところで、だがそうして手の中で反発し合うのを無理矢理擦り合わせるのも嫌いじゃなかった。彼のモノだと思えば尚更。反発しない彼なんて面白くない。 ――それでも。 手の中で互いのモノをこすり合わせれば、やがて手にぬめりがついて水音が聞こえるようになる。滑りが良くなれば手の動きも良くなる。腰を揺らして擦りつけて手で握ってやればやがて彼のものが限界を迎える。それを手で受け止めてやったセイネリアは、そこですこし体を浮かせて起き上がると、手についた彼のものを舐めた。 シーグルがこちらを睨んでいる。 正気になってしまった彼の瞳が、嫌そうにこちらを睨んでいるのを見て、セイネリアは楽しそうに言ってやる。 「お前のだからな、美味いぞ」 言いながら殊更美味そうに舌を伸ばして手のものをなめとれば、彼の顔は顰められたままかっと赤くなって……それから彼は額を軽く押さえ、ため息をつきながら言ってきた。 「お前……怒ってるのか?」 セイネリアはそれに嫌がらせのように大きく口角を上げて笑ってやる。 シーグルの顔が益々顰められる。 彼が大人しく自分に甘えてこないことも、素直に望む言葉をくれないことも分かっている。それでも、自分は一人でも大丈夫だと、こちらがいなくても生きていけると、それを匂わせる態度を取られるとムカつく。こちらが彼がいない事など考えたくない程必要としているのに――それを分かっているくせに、未だに自分と離れてもいいという態度を取る彼には苛立つ。 だからセイネリアは彼の片足を大きく持ち上げて、ついでに彼の体の半分も持ち上げて起き上がらせると、横になっている体勢の彼のそこへ指をつっこんで広げつつ自分のソレを押し付けていく。 「おいっ、少し待て」 「嫌だ」 焦る彼をその一言で黙らせて、セイネリアは腰を押し付けると彼の中、浅い位置で慣らすように出し入れを始めた。 「う、あ……ぐ、ぅ、ぅ……」 辛そうな彼の声が聞こえて、噛みしめた彼の白い歯が見える。 それでも今日は優しくしてやる気になれなくて、セイネリアはそこで一気に彼の奥深くまで入り込んだ。 「うぁ、あ……ぐ、ぁ……」 この体勢がシーグルにとって苦しいものである事は分かっている。分かっているが、腰を深く進めて奥を突き上げてながら、セイネリアは彼に覆いかぶさっていって無理矢理唇を合わせる。強張る舌を絡めとってなだめて、それから唇を離して彼の耳に囁いた。 「愛してる」 彼の体に僅かに力が入る。彼の中が収縮して締め付けてくる。 「愛してる、シーグル」 言ってそのまま耳たぶを甘噛みして、耳の中も軽く舐める。肩を上げて耳を守ろうとする彼にはまた笑ってしまって、そのまま耳の中に何度も囁く。 「愛してる、愛してる……」 下肢はまだゆっくりとした動きに留めて、その分じっくりと彼の体を撫でて耳の周囲を嬲る。 目をきつく瞑って口を閉ざして耐えとする彼は、その反面腰を自ら揺らしてこちらをきつく締め付けてきて、すっかり体は快楽に落ちている。 「愛してるシーグル、俺はお前だけだ……」 言うと同時に乳首を少し強く摘まんで擦る。それだけで彼の中が激しく動いてセイネリアもその快感に熱い息を漏らす。もう少しじらしてやろうと思っていたその考えを撤回して、彼の足を更に持ち上げて抽挿を速めていく。 「や、あ、ぁ、……は……」 横にされている体勢で、シーグルの手はシーツを掴んで手繰り寄せる。白い布が引っ張られて線を描くそれを見ながら、セイネリアは本格的に彼の中を蹂躙しにかかる。一度抜きかけて、そこから奥を思い切り突いて、そのまま奥近くで小刻みに動かす。 「あ、あ、あぅ、あぁ」 目を強く瞑って、けれど今度は口だけは開けて、だんだんとシーツに突っ伏すようにシーグルの頭は下りていく。それを許さず抽挿を益々速めながらも無理矢理口づけて、顔を掬いあげて上に向かせる。 「んぅ、う、ぅ……」 苦しいのか彼の目尻からは涙がこぼれていた。 それを唇で吸い取って、再び唇を合わせて、下肢の動きに合わせて舌をこすり合わせる。 「うぁ、あぅっ」 一際大きく彼が叫んだのに合わせて唇を離し、力が抜けた彼を支えながら覆い被さって耳たぶをまた吸う。それから後はひたすら彼の耳元に囁きながら、彼の中の深いところを突き上げ続けた。 「愛してる、愛してる、愛してる……」 最後にイク時は彼の中から抜いて、手で掴んで彼のものと再び重ねる。そうして、吐き出した自分の液体が互いのものをどろどろにする感触を楽しんだ。 「愛してる、シーグル」 ぐったりと動く気力のないシーグルに言いながら何度も口づけて、セイネリアの濡れたままの手は再び彼の尻の間に入っていく。 「愛してる」 呟いて、また指を入れてそこをかき混ぜれば、彼が小さく呻いた。 窓からは明るい光が差し込み、薄暗い室内を照らしている。 朝の眩しい陽射しを浴びながら、一人残されたベッドの上でシーグルは考えていた。 ――どういう事だ? 昨夜はあのままセイネリアに抱かれて、いつも以上にしつこく『愛してる』と何度も囁かれて……一番の問題は自分が何度イったのか彼に何度されたかの分からない事で……とにかく、久しぶりに気絶してそのまま眠りつく、という事態になった。だから朝も怠くて起き上がれないでいれば、彼は逆にさっさと起きて、今日もタニア嬢に付き合う事にしたからお前はここで事務仕事をしていろ、と言って部屋を出て行ってしまった。 ただ彼は最後に、自分にキスをすると言ったのだ。 『いいかシーグル、少し考えろ。俺がお前以外の人間にこうしてキスをして、愛していると言って抱いていたなら、と』 セイネリアは怒っていた、と思う。 それはおそらく昨日のやりとりの所為だ。彼が結婚するというのを自分が肯定したのが彼は気に入らなかったのだろう。 「なんだあいつは、俺に女みたく嫉妬してほしいとでも思っているのか」 呟いてみてから顔を顰める。 それから考える。 自分はセイネリアを愛している。けれど家族も愛している。兄弟、妻も息子も、リシェの民も、元部下達も、仕事仲間だった人たちも、クリュースの皆を愛している。それぞれの愛の形は違って、特にセイネリアへの愛はまったく違っていて他にない。 けれどセイネリアは自分しか愛していない。 それは嬉しくて、けれども少しシーグルとしては悲しくもあった。彼に自分以外の大切な者が出来たら彼の心はもっと強くなれるのではないか、自分に何かあった事を考えて彼が感じる不安が少しは軽減されるのではないかと――彼の結婚に対して、そう思ったというのもあったのだ。 それは間違った感情なのだろうかとシーグルは思う。 考えても答えは出ないが、セイネリアの言葉をもう一度思い出す。 「あいつが、俺以外にキスをして愛してる、と言う……か」 そんなの今更じゃないか、と思う。セイネリアがどれだけの相手と関係を持ってきたなんて話は呆れるくらい聞いている。元団の連中だけに限定したって、セイネリアと寝た事があるとハッキリ言っていた人間は片手どころか両手でも済まない。愛している、なんて言葉だって完全にこちらで遊ぶつもりだったころからあの男は言っていた、他にも言っているのは確実だろう。キスだってあれだけ慣れた男がしたことがないなんてありえない、なのに……。 考えたら頭にきたが、それを怒ろうと思わない一番の理由を考えてシーグルはため息をついた。 「馬鹿め、俺が結婚しているのにお前にするなとは言えないだろ……」 それに結婚したからと言って、セイネリアがシーグルを捨てる筈はないと分かっているというのもある。彼の時間に付き合えるのは自分だけ、あれだけの愛情を注いでくれる彼があっさりそれを投げ捨てる筈などない――それは信頼でもある。 「何が不満なんだあいつは」 呟いて、けれども彼の言った言葉を思い出せば何故だかイラつく自分がいて、シーグルはやっぱり今ここにいない男に向かって悪態をつくしかなかった。 --------------------------------------------- 久しぶりのエロ。セイネリアとシーグルの噛み合わなさ(==。 |