強くなるための日々
シーグルがセイネリアから離れて修行中の時の話
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【11】



「キス、はだめだ」
「……分かりました」

 残念そうな顔をしたがあっさり引き下がったアウドにシーグルは急いでいう。

「前に言っただろ、あいつ以外にされてると思うと……それだけで体が拒絶反応を起こすんだ」

 別にアウドが悪い訳ではない、と言いたかったのだが、彼を拒絶しているのには違いないのかとシーグルは思いなおして口を閉じる。アウドはそれに溜息を返す。

「それでキスもだめなんですか?」
「おそらく……長くなければ大丈夫、だし、お前なら我慢できると思う、が……」
「いや、我慢するくらいならいいですよ。それとも酒が必要ですか?」

――あぁ、確かにその手があるか。

 とは思っても、確かにセイネリア以外が相手なら酒があった方が気楽だが、飲めば翌日に頭が怠くなるのは問題である。それに最後までやらないのならそこまでしなくてもとも思うのだ。

「多分、最中に匂いとか、気配とかが……だめ、なんだと思う」
「どういう事ですか?」
「そういう事をしている最中に、抱きしめられたり、圧し掛かられたり、近くにあってあいつ以外だと実感してしまうとすごい拒絶反応がきて……耐えられない」

 言うとアウドは考えだした。暫く考えて、それから顎に手を当てて呟く。

「成程、ようは顔の近くに行くのを避けて、部分部分を触るくらいなら大丈夫でしょうか」

 それを受けて今度はシーグルが考える。考えて考えて……実際試してみるしかないのだが、最悪だめだと感じたらアウドは止めてくれると考える。……我ながら酷いなと思いながらも。

「……多分」
「分かりました」

 いうとアウドは床に跪き、シーグルの手をまるで貴婦人の手を取るように恭しく持ち上げた。それからやはり貴婦人にするように手の甲にキスをする。

「これは大丈夫ですか?」
「あぁ」

――いや流石にそれくらいで問題があったら日常生活で困るだろう。

 思わずそういいたくなったが、アウドが慎重に確認しているだけだから文句を言うべきではないと思いなおす。
 するとアウドはにこりと笑って、今度は手首にキスをする。なんというかこれでは本当に女性扱いではないかと思って恥ずかしくなるが、アウドは確認しているだけだとシーグルは自分に言い聞かせた。
 するとアウドはそこで舌を出し、手首からすいっと腕までを舐めていく。それにはぞわりとして思わず体を引いたシーグルだったが、手首はアウドに掴まれている上に引っ張られて逃げられない。

「お……い」

 それにアウドは返事をしない。代わりに脇の傍の腕を吸って、ちゅ、という音を鳴らす。それにもぞわぞわとしてしまって、シーグルは息を飲んで目を閉じた。

「くすぐったいですか?」
「くす、ぐったい、というよりも……」

 吸った肌を今度は舐められる、腕を掴んでいない方のアウドの手が脇腹から腰の辺りを何度も撫でている。それにも背筋にぞくぞくとしたものがあがってきて、シーグルは思わず体をぶるりと震わせた。

「ア、ウド……これは……」

 ちょっと恥ずかしすぎる、と言おうとしたら彼に捕まれていた手首が離された。急だったから手を引いていた勢いで体が後ろへ行ってしまって、そうしたらそのままアウドに体を押された。

「おい、ちょっ……」

 焦ったものの、完全に後ろへ倒れ込む前にアウドが一度離した手を掴み、背に腕を入れて受け止めてくれた。それからゆっくりベッドの上に下ろしてくれると、アウドは体をひいてにこりと笑った。

「では、暫くは、俺に任せて大人しく寝ていてください」

 何か言おうかと思ったが、その言葉が何を言いたいのか、彼がこれから何をしようとするのかは分かったから、シーグルは葛藤の末に諦めて視線を彼から離して天井を見た。
 ぎしりとベッドが音を鳴らして、アウドがベッドの上に乗り上げたのを振動で感じる。それから気配が近づいてきて……。

「あっ……」

 胸の頂きを舐められてシーグルは思わず声を出した。直後に恥ずかしくて手で口を押さえたら、舐めなかったもう片方の胸の尖りを摘ままれてまた声が出そうになる。それからアウドはまた乳首を吸って、甘噛みしてから舐めてきた。黙って耐えれば体にじんわりと熱が広がっていく。シーグルは口を手で押さえたままぎゅっと目を閉じたが、そこで彼の気配が一度離れたからおそるおそる目を開いた。

「もし……貴方が、俺に一方的にさせるのが悪いと少しでも思って下さるのでしたら……声くらい聞かせてくださいませんか?」

 アウドの顔は悲しそうで……だからゆっくり、シーグルは口を押さえていた手を離した。

「狡い言い方だな」

 それでも少し悔しかったからそう言えば、アウドは笑う。

「えぇ狡いのは分かってますよ。でもその程度の役得はあってもいいじゃないですか。俺相手に恥ずかしがる必要なんかありません、俺は貴方の僕ですから」

 アウドの顔がまた胸に下りていく。シーグルは大人しく目を閉じた。







――正直をいうと、貴方が抑えようとするから余計こっちも楽しかったりするんですけどね。

 本人に言ったら相当に嫌な顔をされそうな事を考えながら、大人しくなったシーグルを眺めてアウドは苦笑する。

「下も、脱がしますね」
「あ……あぁ」

 一応断ってから、アウドはシーグルの下肢の服を緩めて脱がしていく。流石に他所を見てこちらを見ないようにしていたが目の下は赤くなっていて、彼が今恥ずかしいのだというのは分かる。着替えや体を拭く時はアウドに肌を晒しても恥ずかしがったりはしないくせに、こういう時だとやけに気にするのはこちらの視線の意味が違うのが彼も分かるからだろう。

 全てを晒されたシーグルの体を見たくてアウドは少し体を離す。
 体が完全に大人になり切る直前で成長が止まってしまった彼の体は、鍛えているのもあって少年のような柔らかさはないのに、その細さと体毛の薄さもあって男臭さやごつごつとした感じがない。無駄な肉一つなく引き締まった筋肉だけを纏った体と滑らかな肌はまるで石膏像のようで、その白い肌のところどころがほんのり赤味を差しているせいでそれが生きている人なのだと分かる、……と同時にそれに得も言えぬ艶を感じてしまう。

 久しぶりに全身を見れた、一番愛しく尊い存在の体はやはり綺麗だという感想しかなくて、アウドはうっかり暫くただ見とれてしまった。

「いつまで……見てるんだ」

 そう言われて初めて自分が呆けたように固まっていた事に気付いて、アウドは自嘲で唇を歪めた。ちょっと気を抜いたらこのままこの体を強引に貪ってしまいそうだから、アウドはそこでシーグルに聞こえないようにゆっくりと深呼吸をする。それから彼の足を片方だけ持ち上げ、もう片方は少し外へ開かせてから、その間に膝をついた。

「ふ……」

 持ち上げた白い足が綺麗で、見たらその肌に口づけていた。それだけでなくその内腿を唾液の後をつけながら伝って足の付け根まで辿る。

――今なら人前に出さない箇所は俺が跡を付けてもいいですよね。

 将軍府がいる時にやったらどんな罰を受けるか分からないだろうが、今はあの男に見られる事もない。というか、あの男自身からお許しが出てはいるのだ、許される範囲で楽しませてもらってもいいだろう。

――望み過ぎはしませんから。

 それだけは心に留めて。自分は僕として、この尊い人に触れられるだけで十分だからとその肌を撫でて、舐めて肌を味わって、足の付け根から腹、へそ、下腹部周辺に触れていく。
 けれどまだ、彼の雄には触れてやらない。

「ん……ぁ……」

 それでもビクリ、ビクリと肌が揺れる。見ている先で、愛しい人の欲望が膨らんでいくのが分かる。下腹部を執拗に舐めながら、横目で欲望をためていく彼の雄を見つめていたアウドは、そこでそうっと手で彼の薄い茂みをかき分けてからそれの根本を撫でてやった。

「あ……ふ……」

 腹が大きく上下する。持ち上げている足が一瞬動く。そっとゆるく、掴むというより撫でるようにその根本から先端までを軽く擦れば、びくびくと腹が震えてその振動にアウドは笑う。
 男の自分が他の男のものを見て楽しくなる日がくるんだからな、なんて自嘲しかないが、それがこの綺麗な人のものであると思えば愛しく思えるのだから面白いものだ。
 だから今度は、少し強く擦って。

「あぅっ」

 大きく腹が動いたところでアウドは彼の雄を口に入れた。

「ば……いや、そこまで、しなくて……も」

 シーグルの手がアウドの頭を掴んでくる。とはいえ勿論力はそこまで入っていない。アウドはそれを根本深くまで咥えてから、唇で扱くようにして先端まで動かして一度口から引き出した。

「んんっ」

 それから先端にわざと息が掛かるように言う。

「大人しく感じててください」

 そうして指を自らの口に入れてたっぷり唾液を含ませてから、その先端を撫でてまたそれを口の中に入れる。同時に、濡れた指でシーグルの尻肉を割っていく。

「アウド、そっち、は……」

――でも、ここに本当は欲しいのでしょう?

 シーグルは焦って足を揺らすが、指が触れた孔はそこに刺激が欲しくてひくついている。少しでも指を入れれば締め付けてきて中に引き入れてくる。そこにもっと確かな質量が欲しいのだと肉が絡みついてくる。

「あ……や……あぅ……ん、ん……」

 こちらの頭を掴むシーグルの手に力が入る。口の中にある彼の雄はもうはちきれそうで、アウドは舌で少し強く先端を擦ってやる。それだけでなく、入口で浅く出し入れを繰り返していた指をぐっと根本まで入れた。

「ふ……うっ」

 びくん、と彼の腰が浮く。背が撓ってアウドの口の中に綺麗の彼の欲望が吐き出される。アウドはそれを飲み干すだけでなく、吸いだす勢いで舐めてやった。
 浮いていた彼の腰がベッドに落ちる。
 っはぁ、と彼のため息が聞こえる。
 アウドは口を離した。




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 とりあえず最初はいつものいちゃいちゃぶりをお楽しみ下さい。
 



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