選んだ未来と捨てた名前
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【6】



 服を脱いだ彼が、ベッドの上に上がる。
 薄暗い部屋の中で浮かび上がるその白い肢体を見つめていれば、思わず彼の尻を押して急かしたくなる。

「早く上がれ」
「――っ、何を急かしてるんだっ」

 シーグルが後ろを振り返って睨み付けてくる。そんな彼を奥へ押して、セイネリアもベッドに乗り上げた。

「そろそろ俺の我慢がきかなくなる、優しくやって欲しければ俺の余裕のある内でないとお前が辛いぞ」
「なんだその理論はっ」

 言いながら怒って上掛けをひっぱりあげ、そのままくるまろうとしたシーグルだったが、セイネリアはそれを阻止して彼の体の上から邪魔な布を取り去った。

「ちゃんとお前を見せろ」
「寒い」
「寒いと感じるなら出来るだけ俺に抱きつけばいい」

 言えば、シーグルががくりと項垂れて顔を下に向けた。

「……恥ずかし気もなくそういう事をいうな」

 アッシセグは首都に比べれば暖かいが、それでも秋に入った今は裸で部屋をうろつける程暖かくはない。逆に冬より、まだ暖炉がついていない今の方が部屋の中は寒いかもしれないくらいだ。
 それは分かってはいるものの、折角の彼の姿が隠されるのではセイネリアにはつまらない。目の前の彼を見つめて、彼に触れて、余すところなく彼を感じたかった。
 ベッドの上に体を預けた彼のその体を挟むように両膝を置いて、セイネリアはその上に被さっていく。見下ろして正面から見つめ合えば、彼が少し気まずそうに目を逸らしたから有無を言わさず口づけた。体勢的に上から押し付けるように唇を合わせて、舌を絡ませて、離して角度を変えて口付ける。何度もそれを繰り返せば、やがて彼の手がこちらの背に回される。それに引き寄せられるようについていた膝を伸ばし、体を彼の上に下していく。肌が密着し、お互いの体温を直に感じる。胸と胸、下肢と下肢が触れて互いの熱を伝え合う。

「セイネリア……」

 唇が離れた合間にシーグルが小さく自分の名を呼んだ事に、セイネリアの唇は自然と笑みを浮かべていた。彼が愛しくて、彼が欲しくて、彼を確かめたくて、感じたくて――彼の顔中のいたるところにキスをする。

 愛してる、愛してる、愛してる。

 声には出せない分、心で呟きながら、触れているだけで嬉しくて堪らない彼に触れる。
 それと同時に体を擦りあわせて、そろそろ我慢が利かなくなっている自分の欲望を彼に知らせてやる。

「は……」

 股間同士を擦りあわせて、彼の性器に自分の性器を押し付けてやれば、彼の顔が赤くなって小さな声を上げる。だから今度は腰を浮かせて、彼と自分のソレを纏めて掴んで擦ってやれば、こちらの背に回された彼の腕にぎゅっと力が入った。

「やめ……」

 恥ずかしそうにそう呟く声をキスで止めて、それからすぐ唇を離して彼の耳元に言ってやる。

「抑えるなよ、ちゃんと感じてろ」

 それと同時に互いのものを擦る手の動きを速くする。特に彼の先端を強く擦ってやれば、彼の膝が反射的に持ちあがって、背中の手が自分を引き寄せるように強く引っ張ってくる。

「や、ぁ、あっ……」

 そうして達してしまった彼の吐き出したぬめりを手で受け止めて、セイネリアは抑えきれない笑みを浮かべながらまた彼の両方の目元にキスを落した。

「声を抑えるな。素直に喘いで、俺に聞かせろ」

 そうすれば疲れた顔をした彼の目が丸く開かれて、それから嫌そうに顰められて彼が呟く。

「馬鹿をいうな……俺は女じゃないし、それに……こういうのは……」

 声はだんだん小さくなっていって、最後は唇が動くだけになって聞こえなくなる。視線を逸らしたその顔の目元が赤くなっているのを見れば楽しくなってしまって、ついそこをまた唇で触れてしまう。

「まぁいい、そういう意地を張ってるお前の顔もイイからな」

 ついでに耳元に囁いてやれば、すぐに怒った彼がこちらを向いて怒鳴る。

「なんだそれはっ」
「言い方を変えれば……どんなお前の顔でもこうして傍で見られれば俺は嬉しいという事だ」

 それに反論しようとして口を開き掛けたシーグルだったが、セイネリアの手が彼の尻を軽く持ち上げて、濡れた指がするりと中に入った事で声が出る前に閉ざされる。
 思い切って指を届くぎりぎりまで奥に入れれば、ぎゅっと目の前の彼の目がつぶられて、それに合わせるように中もセイネリアの指をぎゅっと締め付けてくる。それに笑いながらセイネリアが指を出し入れをさせれば、シーグルの眉がせつなげに寄せられていき、唇が薄く開いていく。

「ふ……ぅ、ぁ……」

 瞳が閉じられて、甘い息が漏れてくるのを聞いて、セイネリアは思い切って指を増やす。それから今度は少し乱暴に中をぐちゃぐちゃと音を鳴らしてかき混ぜる。そうすれば耐えきれなかった彼の唇が大きく開いて、その背が丸く曲がる。

「や、あ、ぁぁっ」

 こちらに抱きついてきた彼の目元に、セイネリアは宥めるように何度もキスをする。キスしながらも指は止まらず、彼の中を指で犯す。

「やめ、やぁ、くそ……」

 泣きそうな顔のくせに悪態をついて、そうして更にぎゅっとこちらにしがみつく腕の力を強くしていた彼は、唐突に顔を上げて睨んできた。

「馬鹿っ、もういいから、早くしろっ」

 それに目を見開いたセイネリアだったが、すぐに指を引き抜くと体を起き上がらせ、シーグルの足を開かせながらその細い腰を持ち上げる。余分な肉がない固い太ももの足の付け根を押さえつけ、尻朶を掴んで広げれば、赤く熟れたその入口がひくりと蠢くのが見えて、セイネリアは堪えきれずにそこに自分の雄を押し付けた。
 体を倒しながら、彼の中へ入っていく。
 入りやすい角度を探って、ぐんと一気に奥まで押し込めば、見下ろした彼は歯を噛みしめて声を耐えていた。それに呆れた笑みが湧いてしまって、けれど少しつまらなくて、セイネリアはわざとそこで数度荒々しく突き上げてやった。

「う、あぁっ、あ」

 そうすれば思惑通りシーグルが耐えきれず声を上げて、セイネリアは動きを止めて笑いながら上体を起き上がらせる。少し涙目になった彼が見上げて来て目が合えば、途端彼は睨み付けてきてまたセイネリアは笑ってしまう。

「もう、少し……加減、しろ」
「悪いな、俺も我慢が出来なかった」
「ふざけるなっ、わざとだろっ」

 怒っている彼の顔も愛しくて、そんな彼と繋がっている今が幸せで、セイネリアは今の自分のあまりの『らしくなさ』に苦笑してしまう。自分の心がこんなにも満たされる日が来るなどとは想像できなかったと、彼の顔を見下ろし、彼の白い肢体を見下ろし、その騎士にしては細すぎる腹から腰をそっと両手で辿りながら思う。

「嘘じゃない。こうしていると、自分が抑えられないのは本当だ」

 下肢は動かさないまま、手で彼の体中をなぞる。肩を、首筋を、頬を撫ぜて、胸を、腹を……そうして最後に腰を両手で今度はぐっと掴んで、そこに思い切り下肢を打ち付けた。

「はぅっ」

 シーグルの体がびくんとゆれて、体に力が入る。中の肉がセイネリアを締め付けて、引き込むように蠢いている。
 セイネリアはまた体を倒して彼の上に覆いかぶさり、今度は止める事なく腰を動かしだした。

「う、ぁ……ぅ」

 しがみついてきたシーグルの腕が強くこちらを引き寄せる。
 首にしがみつくように抱きついて来た彼の耳元や目元にキスをして、下肢の動きを速めていく。それでも必死で耐えるシーグルは歯を食いしばってあまり声を出してくれなくて、セイネリアは彼の耳元に囁いた。

「シーグル、耐えるな。今だけはすべてを忘れろ。お前にとっては俺が、俺にとってはお前が、今求めている相手だとそれ以外はすべて忘れろ。ただ俺だけを感じろ」

 そうしてセイネリアは更に乱暴に彼の中を突きあげる。

「あぁっ、はぁっ、あぅ、あ、あ、あ」

 シーグルが口を開けて、大きく喘ぐ。その声を耳の近くで聞いて、強く抱きつかれる感触を感じながら、彼の中の肉が絡まって自分の雄を締め付けてくるその感覚にセイネリアは酔う。

「忘れて、ただ俺を求めてくれ」

 呟いて、彼の足を更に開かせ、その奥の出来るだけ深いところを求めて何度も自分の雄を突き立てる。

「あ、やぁっ、セイネリアぁっ」

 ぎゅぅっと締め付けられる感触と共に、シーグルの掠れた声が叫ぶ。
 その呼ばれた声を受け取るように、セイネリアは彼の唇に唇を押し付けると、彼の中に包まれたままその中に吐き出した。

「は……ふ……」

 力を抜いて、彼の体の上に覆いかぶさったセイネリアは、荒い息を吐く彼の声を聞きながらも、自分の息も乱れている事を自覚する。
 大きく上下に動く胸と胸、腹と腹が触れあって、とくとくと早いリズムを刻む心臓の鼓動を感じる。
 本当に自分は彼とだと余裕がないらしいと自嘲しながらも、そんな感情に振り回される感覚を心地よいと感じる。この感覚こそが幸せ、満ち足りているという事なのだろうとセイネリアは思う。

「フ……クク……まったく、な……」

 どうにも笑ってしまえば、荒い息のままのシーグルが聞いてくる。

「何を、笑ってる……んだ」

 その声が彼らしく不機嫌そうで、見なくても彼の表情が想像出来て、余計に笑い声が止まらなくなる。だから丁度肩のあたりにある彼の顔を抱き込んで、その髪に顔を埋めて、笑いながら彼の髪を何度も撫ぜた。

「笑うなっ、笑うと……響く」

 そんな事を言われればまた更に笑いが止まらなくなって、セイネリアは中に入ったままの性器を悪戯に数度動かして奥を突いた。

「嫌だな、ずっとこのままでいいくらいだ」
「おいっ、セイネリアっ」
「このまま眠ったらいい夢が見れそうだ」
「ふざけるなっ、重いんだぞ俺はっ」

 それで本当で怒ったらしい彼が逃げようと動き出したから、セイネリアは今度は本気で腰の抽送を開始する。そうすればすぐにシーグルは余裕がなくなって自分にしがみついてくることになる。

「う……やめっ、あ、あっ、あぅっ、はぁっ」

 今度は加減なく、最初から激しく中を抉る。セイネリアの吐き出したもので満たされた彼の中は、一度目とは違って多少無茶に動いても傷つく事はない。だから思い切り、彼の体全体が大きく上下に動くくらい激しく突き上げて、彼の肉壁の感触を存分に味わう。その締め付けを、その暖かさを存分に味わって、ひたすら彼を感じる、彼と繋がっているという事を実感する。

「や……ぁ、ぁぅ……ふ……」

 彼の喘ぎ声はだんだんと力を無くし、こちらに抱きつく腕にも力が無くなっていく――そうして、完全に気を失った彼に、またセイネリアは自分の精を注ぎ込んだ。

「シーグル……」

 聞こえなければいいか、と思いつつもそれ以上は口を閉ざして言おうとしていた言葉を飲み込んで、セイネリアは完全に気を失ったシーグルの顔を見下ろして苦笑する。
 そうして彼の目元に軽く唇を押しつけると、満足そうにその横に寝転がってか彼を抱きしめた。




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はい、エロでした。このエピソードはあと2話くらいかな〜。
それにしてもセイネリア、楽しそうだな……。



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