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※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。 【１４】 時折、セイネリアの唇だけが声を出さずにある言葉を形作る事を知っている。 愛してる――とその言葉通りに唇だけが動く事を知っている。 その度にシーグルは後悔する。彼にさせた約束を――自分の心を守る為、罪悪感に苛まれない為にさせたその約束を。 彼を愛しているが故、家族を裏切った自分が彼の愛情に浸るのが許せなかった。これは、そのために自分が作った心を守る為の壁。良心へ弁明する為の自分勝手な約束は、彼をどれだけ苦しめたのだろう。 全ては弱い自分の所為――だから、セイネリアがその言葉を口にしそうになる度、シーグルは彼に対する申し訳なさと弱い自分への怒りに苛まれる。 何故そんな約束をしてしまったのかと、過去の自分に後悔と共に問いかける。 「どうした？」 長いキスの後、呆けながらも彼の唇がその言葉を紡いで動くのを見て何も言えなくなってしまったシーグルは、セイネリアから声を掛けられてやっと意識を思考から戻した。 「いや……」 顔を振って彼の瞳から視線を外す。それに少し不満そうに彼がまたキスをしてきたから、今度は彼の肩に腕を回して自ら抱きつく。そうして、次に彼が唇を離した隙に顔を彼の肩に埋めて、その耳元に囁いた。 「ヤるならさっさとしろ。寝る時間がなくなる」 言えば彼は軽く笑って、自分から体を離すと体を少しずらしていく。彼の顔が視線の下にきて、暖かな濡れた感触が喉を伝って鎖骨へと降りていく。 「……ッ」 そこで彼が軽く歯を立てたから思わずびくりと震えてしまった。そうすれば彼の笑った気配が分って、そこが今度は唇で吸われる。顔を顰めながらこれは痕（あと）になるなと思って、けれどいつもの甲冑姿なら他人に見えはしないから、まぁ仕方ない、と諦めた。 鎖骨を抜けて、濡れた感触は胸へ降りる。いつもならじらして脇や筋肉の窪みに沿って舐めてくる彼の舌は今日はすぐに胸の尖りにやってくる。敏感な先端を擦られれば滑らかな筈の舌の感触がやけにざらついているような気がして、どんどんそこに熱が集まっていく。 「ん……ぁ」 そこに意識を集中していたら思わず声が出てしまって、シーグルは恥ずかしくなって顔を横に向けた。そうすればもう片方の尖りを指で擦られて、シーグルは反射的に膝を立てた。 「しつ……こいぞ」 じらさない所為か今日の彼はそこばかりを弄っていて、当然感じる場所なのだからいつまでもそうしていられれば困る事になる。自分でもはっきり体が興奮してきているのが分って、シーグルは抗議するように彼の髪の毛をわし掴んだ。 「あっ……馬鹿」 そうすれば彼の手が自分の股間、熱が集まってきている性器を掴むのだからシーグルの体はまたビクリと跳ねてしまう。 「ちゃんと感じているな」 「当たり前だっ」 セイネリアの声はやけに嬉しそうで、だからシーグルは余計に腹が立った。 怒鳴れば彼はくっくとはっきり喉を鳴らして笑ってきて、嬉しそうな顔のまま一気にこちらの股間まで体をずらす。そうしてこちらが止める間もなくそれを口の中に入れてしまって、シーグルは歯を噛みしめて出そうになった声を殺した。 「やめ、ろ……」 どうにかそれだけを言えば、彼はすぐに口からそれを引き出す。彼の事であるからまさか分ってくれたとは思えないが、口から出したそれは彼の手で支えられていて、自分でそれを見てしまってなんだか酷く恥かしくなった。 しかも彼はこちらが見たと分かった途端に、それはそれは愛し気に、まるで頬ずりでもしそうな所作で舌先を出してそれをすうっとなぞるように舐め上げた。 「ッ……」 シーグルは自分の顔がとんでもなく熱くなったのを自覚した。恥ずかしさの余り涙まで出そうになって、けれど彼はあの琥珀の瞳を細めたまま、舌を窄めて根本から先端まですうっと唾液の筋をつけるように舐め上げて見せる。逃げたくてもそこを手で持たれているのだから逃げようなどある筈がなく、しかも彼は益々調子にのって舐め上げた後でそのまま先端にキスをしてみせた。 「ばっ……お前……」 あまりにも恥ずかし過ぎてまともに言葉にさえならない。恥かしくて逃げたくてぶるぶると体が震えてしまえば、急にセイネリアは顔をこちらに向けて憎たらしい程嬉しそうな笑みを浮かべて聞いて来た。 「恥かしいか？」 「当たり前だっ」 そうすれば彼はまた喉を鳴らして楽し気に笑う。これは揶揄われているのだろうかと思っても、彼がやけに柔らかい笑みを浮かべているから判断に困る。更には――。 「すまんな、お前のモノだと思うといつまでも触っていたくなる」 それにはもう、怒鳴るよりも呆れすぎて顔が引きつった。 「勘弁してくれ……」 ヘタにこの男は巧いから、いつまでもそこで遊ばれると流石に困る。本気でこの男がいつまでもこちらのモノを触っていたら、一体どれだけ一方的にイカされるのか分かったものではない。 「触ってるだけでいいなら、最後までヤらなくていいんだな」 だからそう言って睨み付ければ、セイネリアは笑いながらも少し眉を寄せた。 「それは困る」 「知るか、お前に付き合って一方的にイカされてたら最後まで俺の体力がもつ訳がない」 そうすればやっと彼はやれやれと言った顔で一度体を浮かせて起き上がり、改めてこちらの上に伸し掛かってくると片足を掴んで持ち上げた。 「仕方ない、お前がへそを曲げる前にしないとな」 「お前は遊び過ぎだ」 「遊んでなどいないぞ」 「なら何だ」 「お前に触れていると楽し過ぎてやり過ぎるだけだ」 それにはもう返す言葉がなくて、シーグルはため息をつくしかない。それでもセイネリアは楽しそうに笑って、持ち上げたこちらの足の２、３か所にキスをしてからそれを肩に置いて体を倒してきた。 「少しだけ我慢しろ」 言って、彼の指がぬる、と何かのぬめりを借りて体の中に入ってくる。 浮かれて手順を飛ばしているように見えて、こうしてちゃんと準備をしているのだから本当に憎らしい。ただ『我慢しろ』と言った通り、いきなり指を奥まで入れて、中をぐるりと一、二度かき回してぬめりを押し込んだらすぐに抜く。それからこちらが心の準備をする間もなく、彼の大きな質量がそこへ押し付けられた。 「おま、え……」 抗議して睨み付ければ、彼は苦笑して額にキスを落してくる。 「悪いが俺も限界だ、きついだろうが我慢してくれ」 「ふざけるな」 「すまんな」 呟いて、それで彼は足を開かせると中に入ってくる。流石に無理矢理ではなく巧くタイミングを見図りながら入ってくるから裂けたりはしなかったものの、受け入れたそこの肉がつっぱってぴりぴりと痛みを訴える。入り込んだ質量が腹を圧迫して苦しい。それらを歯を噛みしめて耐えながら、シーグルは彼の肩に置いていた手にぐっと力を入れた。 「きついか？」 聞いて来る彼の声も少し苦し気だった。 「当たり前……だ、苦しいに決まって……る」 睨み付ければ彼は困ったように眉を下げて、顔をこちらの肩に埋めて耳元へ囁いてきた。 「悪いついでに頼みがある……このまま、抱きついていてくれ、お前を強く感じられるように」 その語尾には少しだけ自嘲の響きがあって、本当にこの男は狡いとシーグルは思う。普段の傍若無人ぶりを分っているだけに、こうして自分にだけには弱いという部分を見せられるとつっばね切れない。それが計算だけの行動だったら無視してやれるのに、本心だと分かるから余計に性質が悪い。 それでシーグルが彼の体にしっかり腕を回して抱きつけば、セイネリアは明らかに嬉しそうに笑って目元にキスをしてきた。 「……お前を……」 けれどそこで言いかけた言葉は途切れて、彼は無言で動きだす。ずる、とまだきつい中を動かれると、内臓をかきまわされているようでかなり苦しい。 「う、ぐ、ぁ……」 「辛ければ、俺の背を叩いても引っ掻いてもいいぞ」 ゆっくりと動きながら、彼が顔にキスをしながら言って来て、シーグルは必死にしがみついた。 「ふ……う、ひっかいても……お前は、すぐ、治るん……だろ」 歯を噛みしめながらそういえば、彼は顔のあちこちに唇で触れながら答える。 「そうだな……だが、お前の痛みを多少は感じてやれる」 本当に、こういう台詞を聞くとこの男は優しいのか我がままなのか分らなくなる。こういう時の彼の瞳はやけに優しいから、普段の誰よりも強い彼を忘れてしまいそうになる。 「う、ぁ……ん、ん、ぅ、ぁ、あぁ」 彼の動きが速くなる。腹の中を圧迫してはそれが去る状態が繰り返される。視界が揺れて、彼の顔が揺れる。セイネリアの唇は動いているが、声が小さすぎてそれを音として聞き取れない。ただ体の中に響く肉の交わる音だけが聞こえる全てで、ぐぷ、ぐぷ、と押しつぶされる空気の卑猥な音に身体（からだ）が熱くなる。あれだけ苦しいと思えていた感覚もいつの間にか気にならなくなっていて、代わりに下肢に溜まる快感の疼きはどんどん大きくなっていく。もどかしい、けれど熱く膨れ上がるその感覚を耐えるのはきつくて、シーグルはひたすら目の前の男の体に抱きついた。 「シーグル……」 名を呼ばれて腕の力が緩めば、彼の顔が見える。 こちらの方が辛いのに、何故か少し悲しそうな目で見てくるその顔に腹が立って、シーグルは片手を彼の顔に伸ばすとその頬に触れた。 あ・い・し・て・る。 それは声に出来なかったから、唇を動かすだけで。けれどそれを見てすぐに彼は口付けて来る。それは最初から深く、舌同士を絡ませ合い、擦り合わせ、下肢の交わりのように粘膜の中で熱く交わる。舌の動きと下肢の動きは同調し、更に速くなり、やがて彼の吐き出した熱い流れが体の中に注ぎ込まれた。 「ふぁ……ぁん、セイ……ぁ」 唇を塞がれながらも出した声は、彼の口腔内に包み込まれた。 --------------------------------------------- シーグル、セイネリア相手だと割とちゃんと喘ぐようになった……ようです。 |