※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。 【2】 「う……ぐ……」 また体の中で男が果てて、慣れた暖かさが身体の深くに届くのが分る、男が去って液体が体の中からどろりと零れていくのが分る。 「さて、まだ正気かな?」 そう聞かれても声を出すのが億劫で、シーグルは返事の代わりに魔法使いサテラを睨み付けた。 「ふむ、確かに大勢を相手するのにも慣れているというのは本当だったね。何せこれだけ相手してまだ感じていられるんだから」 薄い笑みで見下ろされてそう言われれば、僅かにシーグルの頬が朱く染まった。 「そういえば、君は私が何の魔法使いかはまだ知らないだろ? 私が得意なのは精神操作でね、いわゆる暗示系魔法使いという奴だよ」 暗示を使う魔法使い……それでシーグルがどうにか思い出せたのはかつてヴィド卿と組んで人間の生気を食らっていた魔女エルマだった。彼女は暗示で人を操っていた。シーグル自身も術で体が動かなくなったり、彼女の言う通りに操られたこともあった。 「魔法使いの中でも暗示系の術を使う者は特に制約が厳しい事で有名でね、理由は簡単さ、『堕ち』やすいからだよ。なにせ我々にとって人を操る事は簡単でね、そうなれば『信者』を増やしやすい――簡単に魔力を補充する方法が分っていて尚、堕ちないのは難しいから厳しく縛るのさ」 ――成程、お前やエルマのようにか。 声に出す気力はないから頭でそう思って口元を皮肉に歪める。いくら厳しく制約を掛けても守らないのでは意味はない、そう呆れて魔法使い達の罰則というのはどうなっているのかと考える。 シーグルは多くの魔女堕ちした魔法使いに会っていた。ギルドの方針がシーグルを守るという事になっている以上、黒の剣の魔力が欲しくて狙ってくるのが魔女堕ちした者ばかりだからというのはあるだろうがそれにしても数が多い。魔女になった魔法使いというのは実は結構な数がいて、魔法ギルドでは魔法使い達を制御しきれていないという事ではないだろうか。 「さて。では私が暗示を得意とする魔法使いであるというからどうなんだというとねー―そう、例えば君は既に私の術の中で、今君が見えているモノは現実ではないとしたら……どうかな?」 疲労の所為で少し思考がぼやけだしていたシーグルは、それを理解して一瞬にして意識がクリアになる。思わず辺りを見渡して、今見えているものが現実かどうか考える。 「無駄だよ、いくら目を凝らしたところで今の君には本物か偽物かなんて判断出来ない。君はもう既に私の術に掛かっているんだ、私の魔力と繋がった私の信者達からたくさん身体の中に私の魔力を注がれただろう? 今の私は君を操ることだって可能なんだよ」 見えているものが現実ではないとしたら、ここは一体どこだというのだろう。……いや、ここへ連れて来られるまでは術に掛かっていなかった筈、犯される前まで見えていた物は本物だというなら何が違って見えているのか――考えても分からない、いっそただのはったりではないかとも考えてみるが……それを否定する出来事がシーグルに起こる事になる。 「ほら、まだまだ次の相手はいるよ、たっぷり楽しむといい」 その言葉と同時に新しい男がシーグルの目の前に現れる。既に開いて固定されている足を更に掴んで持ち上げて、すっかり濡れてびしゃびしゃになっているシーグルの中へと自分のものを押し込んでくる。ぐち、と液体が自分の中から押し出される感覚と共に新たな肉塊が押し入ってくれば、反射的に体に走る感覚にシーグルは小さく呻いた。 「本当に体はとても淫乱なんだね、どれくらい感じるものなのか是非君の体を手に入れたら試してみたいものだ」 中にいる他人が動きだす。男の荒い呼吸の音と魔法使いの笑い声が上から降り注いでくる。シーグルは目を閉じて掌を強く握り締めた。 「ただ、一つ言っておくとね、君を犯していた者達なんだが……彼らは全員人間だったと思うかい? ほら、よく見てみるといい、今君を犯している者の顔を」 言われて咄嗟にシーグルは目を開いた。そうして思わず息を飲む――目の前に見える男の顔、こちらに圧し掛かって挿れてきた瞬間は確かに生気のなさそうな男の顔だと思っていたソレは、今は一つ目の青白い化け物の顔になっていた。更には見ている内にその体さえ膨れ上がって、人間の形さえ留めずに変わっていく。 「どうだい、暗示で人間だと思っていたモノの正体が分かっただろ」 二本の手が倍に増え、胸や性器をぺたぺたと触ってくる。大きく裂けた三日月のような口から、人ではありえない量のよだれがぼたぼたと胸に落ちてくる。 「うぁ……あぁぁあああっ」 シーグルは叫ぶ、耐えようとか抑えようとか考えている暇もなかった。反射的に恐怖で体が竦み、固定された腕を引っ張る、押さえられている足を動かす。 「今更じゃないか。さっきから君を犯していたのは信者だけではなく、君から溢れる剣の魔力が欲しくて食いついていた魔物たちも混じっていたのさ、こちらの仲間に召喚士がいたのは知っていただろ?」 一つ目の魔物に表情なんてない。だらだらと涎をシーグルの体の上に落としながら、乱暴にシーグルの中を犯してくる。ぐち、ぐち、と身体の中を一定のリズムで擦りあげてくる。 「い、や……あ……やだ、やめろっ、嫌……ぁぁ、嫌だ、いやぁ……」 不気味な一つ目を凝視したまま、シーグルの表情は凍り付いていた。それでも身体は快楽を受け入れ、化け物の動きが速くなればびくびくとそれを包む肉がひくつきだす。びくん、びくんと時折体を走る甘い疼きにさえ恐れるようにシーグルは顔を振る。 「や、やだ……やめて……あ、あ、ぁああああああ」 どくどくと放たれる化け物の精を体の深くで受け止めて、シーグルは身動き出来ない体をそれでも精一杯動かして逃れようとした。勿論逃げられる訳などなく、自分の上に覆いかぶさりながら痙攣するように震える化け物の精は尚も注がれ続けている。それが苦しくて、辛いのにいつまでも終わらない事も恐怖となる。このままいつまでも化け物に注がれ続けるのではないかと恐くなる。 「もう……やだぁ、離れろ、やめろ……」 うわ言のように呟いて、そこにある感触を否定する。きっとこれは現実ではない、暗示で見える偽の風景なのだと、自分に言い聞かせようとしても目の前の化け物の顔は変わらなかった。 それだけでなく長い射精の後、やっと離れていった化け物が遠ざかると同時に見えたのは自分の足を押さえつけている男達の姿で、だがそれさえもが人の姿をしていなかった事でシーグルは悲鳴を上げる。 「やぁ……離せっ、はな、せぇぇっ」 何が現実で何が偽物か、そんな事を考えるだけの思考も動かない。ただ今のシーグルに見えるものは自分を貪りにくる化け物達の姿で、それを否定するだけの強い意志も殆ど崩れ落ちてしまっていた。 「さて次は……はは、これは随分とでかいな、壊れてしまうかもしれないね」 そうして開かされた足の間に現れたのは人とは思えない程の大男で、男が自分の性器を取り出した途端シーグルは歯を噛みしめたままその歯ががちがちと音を鳴らし出すのが分かった。 「やめろっ、やだ、やめろ、いや、嫌……だ……」 人の腕程は楽にあるだろうそんなものが自分の体に入る筈がない。無理矢理いれれば体が引き裂かれてしまうだろうそれに、意識せず歯だけではなく体までもが震え出す。 ――だめだ、だめだ、死ぬ……死ねない。 シーグルは必死に暴れる。逃げないと、とにかく今はもうそれしか頭になかった。冷静に考えれば自分を殺す筈などないと思えただろうが、今のシーグルは既に暗示に掛かっている為思考がまともにできなくなっていた。 「うわぁぁぁぁあああっ」 大男が足を掴んでその大きすぎる性器をおしつけてくる。生暖かく、柔らかく、それでも恐ろしい質量があるそれが無理矢理体の中へ入ってこようとするのを、シーグルは全力で暴れて拒絶しようとする。 そこで、ふいに、腕の枷が外れた。 足で思い切り蹴りつければ、自分の中へ入りかけていたソレは出て行き、今まさに上に覆いかぶさってこようとした大男の体も後ろへと倒れた。起き上がって、思い切り足を伸ばしてまた蹴れば、足を掴んでいた化け物達もその手を離して倒れていく。 ――逃げないと。 自分を拘束していた全てがなくなると、シーグルは台から転がり落ちるようにして降りた。ずっと開かされていた足は立ち上がろうとしても力が入らない、それでも今自分が寝かされていた台に手をついてどうにか立ち上がった。どろりと体の中から大量の液体が溢れ、足を伝っていく感触に背筋が震えてもそれに顔を顰めている余裕さえない、ただ逃げたいという思いだけでどうにか歩きだす。だが――台のある祭壇からおりようとしたシーグルは、その下で自分を待っている集団を見て立ち止まった。 --------------------------------------------- またもや『ここで切る?』ってとこで終わってすみません(==;; |