※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。 【4】 ゆっくりと、キスをする。 相手の感触を出来るだけ感じられるように。 二人共が、互いに相手を欲しがっている事を確認するように。 唇を深く合わせ、激しく舌を絡めたと思えば、その後には、ちゅ、と子供のような初々しいキスをする。それから顔を見合わせてくすりと笑いあって、見つめて、同時に呟く言葉は『愛してる』。 理由もなく笑みが止められないのはいつもの事で、特に今は寒いから、同じ上掛けにくるまっている為いつもよりも距離が近い。 「俺さ、フェズと会えたのが一生で一番の幸せだ」 「私も、ウィアと会えたのが一番の幸せです」 「本当に?」 「本当ですよ」 そんなやりとりだって、今までに何度もしてきた。返ってくる返事はいつも同じで分かりきっていたとしても、確認すればいつも心が暖かくなって、幸せだと感じられる。 二人してそんな事を繰り返して、けれども何度目かにウィアの頭が唐突に上掛けの中に潜る。ただそれはほんの一瞬の事で、すぐに顔を出したウィアはにっといたずらをした子供のような笑みを浮かべると、ぽいっとベッドの下に何かを落とした。 「ウィア?」 疑問に思ったフェゼントだったが、顔を出したウィアをよく見ればそれもすぐに分かる。 「まったく、器用ですね、貴方は」 ぷっと吹き出したフェゼントに、ウィアは得意げに返した。 「だってさ、寒いだろ?」 上掛けを剥ぐ事をせずにそのまま中で寝間着を脱いだウィアは、今度はごそごそと下着を脱いでいるらしかった。けれど、それもすぐ終わったようで、今度はフェゼントの寝間着を下から捲りあげてくる。 「フェズも脱がせてやるな♪」 フェゼントは苦笑して、夜具から出て起きあがろうとした。 「いいですよ、私はちゃんと起きてから自分で……」 けれど、起きあがろうとしかけたフェゼントは、ウィアが口を尖らせて言った言葉でまた夜具の中に潜り込み直す事になる。 「フェーズー、フェズが上剥いで起きたら俺も寒いんだぞー」 「……すいません」 それで結局上掛けの中でもぞもぞと動き回るウィアに脱がせてもらう事になってしまうのだから、フェゼントはちょっと恥ずかしい。 「ウィア……もしかして慣れてます?」 「そりゃー、ここにいた時はな、寒くなってくるとベッドの中で着替えまでしてたからなっ」 得意げなウィアの声はやけに楽しそうで、そうしているうちにフェゼントも寝間着を脱がされてしまった。 「……器用すぎです」 フェゼントの目の前に、今まで潜っていたウィアの顔がひょこりと飛び出す。 「だって寒いんだから仕方ないだろー」 言って抱きついてきたウィアと素肌同士がくっついて、素直にその感触を心地よいと思ったフェゼントは唇に笑みを乗せる。 「でもウィア、脱いだものをベッドの下に落としたら、終わった後は裸でそれを取りにいかないとならないんですよ」 得意げだったウィアの顔が、それで固まった。 「げ……そっか、前は着替えとセットだから服落としてもよかったんだった」 たまらずフェゼントは肩を揺らして笑う。ウィアはぷくりと頬を膨らませたものの、楽しそうな恋人の顔を見ていれば拗ねる気はなくしたらしく、ウィアもまた少しして一緒に笑いだした。 そうして、笑いが収まって、それからどちらともなく抱き合って、肌と肌をすりよせて互いの首やら耳元やらにキスをしあう。まだ汗を掻いていない肌はなめらかで、触れあわせればするすると滑る、その感触がとても心地良い。 けれども、体の奥にある欲望の熱はそんなやりとりの中でも確かに増していて、抱きついたまま自然と唇を合わせれば、それは先ほどと違って、より深く唇を合わせ、より激しく互いを求めて粘膜を絡ませあう事になる。 「大好き、愛してる、フェズ」 「私も、愛しています、ウィア」 唾液を絡ませて、ぬるぬると滑る舌を擦りあわせて。口の中に含み切れなくなった唾液が唇からとろりと零れ、それでもまだあふれてくるそれを飲み込む。いつしか、抱き合った体を擦り合わせるように肌を押しつけ合い、下肢の熱同士さえ互いに触れて絡ませるように擦れさせる。そうすればすぐに互いの熱はきつい程膨らんで欲望を溢れさせ、下肢に汗ではない液体の感触を感じさせる。 特にウィアは、これからの事を考えただけで胸がドキドキしっぱなしで、こうしている間にも達してしまいそうな程興奮している事を自覚していた。 だから、そっと、フェゼントを気遣いながらもやさしく手を彼の背から下へおろしていく。 「大丈夫ですよ」 ちらと伺ったフェゼントがそういって笑いかけてくれたから、ウィアはそっとのばした指を彼の後孔に触れさせる。途端、フェゼントの表情は一瞬だけ不安そうに強ばったものの、それでもまた笑顔を浮かべてくれたから、指を思い切って軽く中へ入れた。 「あ……」 目をつぶったフェゼントの唇に軽くキスをする。 ウィアは注意深く、焦る心を落ち着かせて、できるだけゆっくり彼の中を指で解す。念入りに、最初は入り口だけに指に絡ませたぬめりを押し込んで、それから少しづつ奥へと潜らせる。フェゼントの顔が少しでも顰められればその度にキスをして、ゆっくり、ゆっくり、彼ができるだけ負担なく自分を受け入れられる準備をする。 「大丈夫ですよ、ウィア。来てください」 フェゼントも、ウィアがどれだけ自分を気遣ってくれているのか分かっていたから、我慢して少し辛そうな彼にそう笑って言ってやる。 「じゃぁ、フェズ。挿れる……からな」 体勢を変えて、上になったウィアが、まるで思い詰めたような、泣きそうにさえ見える必死な顔でじっとフェゼントを見つめる。そんな顔にさえフェゼントは笑えてしまって、けれどもそのせいで、体にどうして残ってしまう緊張感も何時の間にかほぐれていた。 「大好きですよ、ウィア」 「うん、愛してるフェズ。すごく、すごく、愛してる」 自ら受け入れるように、フェゼントは足を開いてウィアの体を招き入れる。ウィアはその彼の足を更に開かせて、軽くベッドに押しつけ、自分の膨れきった雄の証を押しつけていく。 実のところ、ウィアは、男相手にこちら側をするのは今日が初めてだった。 女性相手は何度かあるし、男同士の行為自体は慣れているから、やり方に迷う事もないし、どうすれば相手が楽で、どうすると辛いかだって分かっている。だから、する事自体に迷う事はない。 けれども、そちら側をする感覚というのは初めてなので、フェゼントの中に少し入っただけで、その強すぎる締め付けと、一番欲しかった相手の中にいるのだという感動で、体も心も盛り上がりすぎそうになる。まだ入りきっていないのに達してしまう寸前までいって、それでも男としての意地で耐えたウィアは、フェゼントの胸に顔を押しつけて歯を噛みしめた。 「ウィア?」 「ご、めん、フェズ。ちょっと、まって……」 フェゼントの手がウィアの頭を撫ぜる。 それでまずいと思ったウィアは、そこで一気に彼の奥へと突き入れた。 「っあ……く……」 抑えても苦しげに聞こえたフェゼントのその声に、ウィアはすぐに顔を上げる。 フェゼントもそれで顰めていた顔に笑みを浮かべて、ウィアの顔を見返した。 「大丈夫です。そんなに心配しないで下さい。大好きです、ウィア」 ウィアは泣きそうになって、思わず顔を下に向けた。 「ごめん、フェズ」 そうして、もう抑えるのが辛かった体を求めるまま動かした。 「あん……は、ぁ」 ぎりぎりまで抑えていた分、動き出せば我慢が出来なくて、ウィアは少し乱暴とも思えるくらいの激しさでフェゼントの中を突き上げる。それでフェゼントも文句をいう事なく出来るだけ受け入れやすいように腰をあげて、ウィアの首に手をのばしてくる。 「あ、ごめん、な……」 我慢の寸前でそれだけをやっと呟いて、フェゼントの上に倒れ込むように深く突き上げたウィアは、そのまますぐに達してしまった。 そこからそのまま、フェゼントの上に被さるように倒れたウィアは、荒い息でほとんど声にならないながら、ごめん、とまた呟いた。 フェゼントの手が、そんなウィアの明るい茶色の頭を撫でる。 「いいんですよ、なにも謝る事なんかないです。大好きです……ウィア」 フェゼントの声も、撫でてくる手も優しくて、だからこそウィアはなんだかいろいろ悔しくて泣きそうになった。 自分が上をやるなら、相手を優しくリードしてやってたくさん感じさせてやろう――なんて事を常々思っていたのに、いざその時になったら、あまりの自分の余裕のなさには腹が立つ。これじゃ下やってた方が全然リード出来てたじゃないか、とウィアは思うものの、経験値的にいえばそれも当然の結果ではあるので仕方ないとしか思うしかない。 どちらにしろウィアは、後悔やら自己嫌悪でいつまでもぐじぐじ悩むような性格ではなかった。終わった事はいくら考えても結果が変わる訳ではない、仕方ないよな、で大抵終わる。 そう、どうせ考えるならこれからの事である。 「あのさっ」 顔をあげてウィアがフェゼントを見つめれば、それだけで何が言いたいかを即理解した長い髪の青年は、くすりと笑みを漏らした。 「いいですよ」 途端ウィアは顔一杯に笑みを浮かべて、フェゼントの唇に触れるだけの可愛らしいキスをした。 「よっし、今度はちゃんとフェズを感じさせてやるからな」 フェゼントが緩く抱きしめるように、ウィアの背に手を回す。 「大丈夫ですよ。相手が貴方なら、それだけで私は気持ちよくなれます」 その言葉に思わず感動して、一瞬動きを止めて浸ってしまったウィアは、ぎゅっとフェゼントに顔を押しつけてから噛み締めるように大切な言葉をいう。 「大好きだ、フェズ。愛してる、ずっとずっと、フェズが一番」 何度も言った事なのに、言う度に彼を好きな気持ちが増す気がする言葉は、それだけでウィアを幸せにしてくれる。 「私もです、ウィア」 返された言葉にまたキスをする。今度は、深く、舌を絡ませて、相手を求めるキスを。 最初からやり直すつもりで、ゆっくりと彼の口腔内を感じ、そうしながらも手で彼の肌を撫でる。胸、腹、腰、肌の上を滑るように手でなぞっていって、ピクリを反応を返した場所は少し意地悪く何度も撫でる。そうすれば、キスの隙間からフェゼントが小さく喘ぎ声を漏らして、うれしくなってもっとその周辺を優しくなぞる。 さすがに一度イっているだけあって、ウィアの方は余裕があったから、今度はフェゼントを感じさせる方を優先出来る。唇を離して、彼の顔、髪の生え際や目元耳元のあたりにキスを落とし、それから首、鎖骨、胸へと下りていく。胸の周囲に触れるだけのキスをしてから、その赤い頂をチロと舐めれば、不意をつかれたフェゼントが甘い声を漏らした。 「フェズ、可愛い」 「可愛い、じゃ……ありません……あ……」 ウィアはくすくすと笑みを漏らしたが、調子に乗って今度はそこを舌で強くつつきながら吸えば、途端、ぎゅっと下で締め付けられて、ウィアも息を詰まらせる。 「ちょ……フェズ、待って……」 それですっかり、自分の方もまた昂ぶってしまったから、あった筈の余裕もなくなってしまう。もう少し、彼を感じさせて反応を楽しみたかったのに、と思っても、それが出来る程自分が耐えられるとも思わないので、それはまた次の機会かと諦める事にした。 だから、せめて、自分よりは彼の方に感じてほしいと、フェゼントの耳元をくちゃりと唾液の音をさせて舐めてから、そのままそこに囁き掛けた。 「フェズ、動いていいかな?」 目を閉じて感覚を耐えていたフェゼントが、すぐそれに返す。 「えぇ……お願い、します」 切なげな声が、余裕なさそうに言うその言葉にウィアは満足して、ゆっくりと体を動かしだした。 「あ、ぁん……ウィア……」 すぐにフェゼントはウィアに抱きついてくる。それが嬉しくてまたその顔の中にキスを何度か落とし、ゆっくりとした動きで彼の中の感触を味わう。一度出しているから動く分には最初よりもずっと楽で、きつい締め付けでも滑らかに中を擦ることが出来る。強烈すぎた少し痛いくらいの締め付け自体も、今度は滑りに助けられて、柔らい肉で包まれる純粋な快感だけを感じられる。 「あ、あ、はぁ、ん……」 目を閉じて薄く唇を開いて頬を快感に染めるフェゼントの顔を見て、それに思わずドキリとする。それが下肢にも伝わってしまったのは、肩にあるフェゼントの手に力が入った事で分かる。そしてまた、ウィアにもヤバイ波が押し寄せてきて、思わず軽く唸りながら、一旦動きを止めてしまった。 「ウィア……」 目を開いて、快楽に潤んだ空色の瞳が見つめてくる。 熱に浮かれたその顔は何処か不安そうで、けれどもその所為で余計に艶めいて見える。ウィアがそれですぐにまた動き始めれば、安心したようにフェゼントは目を閉じて感覚におぼれようとしてくれる。 「はぁ、あ、大丈夫、です、から……」 だからウィアも、より強い感覚を追う為に、腰を強くフェゼントの中に押し付けた。 おそらく、自分よりも余裕がないフェゼントは、荒い息の中でも甘い声を上げ続け、必死にウィアにすがりついてこようとする。互いに腰が止まらず、だんだんとそのリズムが早くなってくるにあわせ、荒い呼吸同士さえもがいつのまにかほぼ同時と感じる程に重なっていた。心臓の鼓動さえ同じになったのではないかと思えるくらいの一体感の中、汗に濡れた肌同士が擦れ鳴らす音と、繋がった部分から溢れる水音が、行為の淫らさを教えてくれる。 大きく緩やかな動きが小さく早い動きへと変わる中、早くなる水音と泣きそうなくらい高くなっていくフェゼントの声が、ウィアの思考を吹き飛ばす。 「あ、あん、ウィア、ウィア……」 名を呼ばれて、押さえている彼の足が宙を蹴って、そうして彼が大きく背を逸らせば、直後に一際強い締め付けがウィアを襲った。 「フェ、ズ……」 フェゼントが前を爆ぜさせるとほぼ同時に、ウィアも彼の中で再び吐精した。 それでも、こっちのほうが少し後だったよな、なんて事を考えながらそれに満足したウィアは、やっと安堵したかのように倒れ込んだまま、フェゼントの肩口に顔を埋めた。 「すっげ良かった。大好き、フェズ」 「私も、とても幸せでした。大好きです、ウィア」 その体勢のまま、互いの頬をすりあわせて、くすくすと笑って。それからウィアはやっとフェゼントの上から退いて、そのまま隣へとくっつくように寝転がった。 「これからは、俺もいっぱいフェズを愛してやるからな」 「私も、これからもウィアをたくさん愛してあげるつもりですよ」 二人、顔を見合わせて、それから吹き出すように笑う。 「これからは、お互いにどっちもだな」 「そうですね」 互いに笑顔で見合わせて、そのまま軽く唇をあわせる。 けれど、一度唇を離して目があった後、ウィアは少しだけ意地の悪い笑みを浮かべてフェゼントに言った。 「あ、でもさ。次もっと暖かいとこでやる時はさ、一回は俺に上やらせてくれな。今回ずっと上掛けの中でやってたから、色っぽいフェズの姿をちゃーんとみれなかったんだよな。顔はみれたんだけどさー、もっとちゃんとフェズの体見てやりたいな、俺っ」 フェゼントはそれに目を一度大きく見開いて、それから顔を赤くして軽く俯いた。 「わかりました……」 「絶対な、約束なっ」 そうして、二人は手を繋いで、何度目かわからない程になったキスをした。 --------------------------------------------- うーーーーん、エロくない(TT。 出だしは仕方ないとして、最中もどうなんだろ……。 |