古き者達への鎮魂歌
※この文には後半に性的表現があります。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【6】




 シーグルの居場所が分かるなら、例え化け物でも魔女にでも頭を下げてもいい――というのはグスの心からの気持ちだったが、いくら言葉を話せても異種族とのコミュニケーションというのは難しい、と痛感せざる得なかった。

「で、隊長は何処にいるのでしょう?」
「タイチョウ?」
「貴方がいうあの人、です」
「あの人は、ウロの中だよ」
「ウロというのは?」
「ウロは谷の力の源、心臓?」
「で、それは何処なんでしょう?」
「谷の大切なトコロ、だよ」
「その大切なところ、というのは?」
「谷に抱かれたウロにいるよ」

 ――いくら話しても堂々巡りである。若い隊員はキレるのを我慢して周囲でジタバタ足掻いていたが、グスも表情と声は取り繕っていたがいい加減限界を感じていた。この要領を得ない会話のやりとりを続けていると、なんだかシカ相手に頭を下げて敬語を使っている自分が馬鹿らしくなってくる。

「あー……ここは霧の谷、でいいのかね?」

 顔が引きつって次の質問に窮しているグスを見かねたのか、そこでテスタが代わりにシカに話しかけた。

「そうだね、そう呼ぶみたい」
「ウロへはどうやって行けばいいのかな?」
「ウロはトレムしか入れないよ」

 そこでざわりと周りが声を上げる。少なくとも新しい情報が入った事で、キレそうになっていた連中の顔に期待が広がる。

「トレムってのは何だ?」
「トレムはトモダチだよ、ずっと僕らのトモダチ」

 テスタはそこで少し考える。グスはもう長い付き合いの相棒にここは任すつもりだったから、へたに口出しせずに彼の言葉を待っていた。暫くして。

「トレムは……人か?」

 思い切ったようにテスタが聞けば、シカはあっさり、うん、と答えた。

「ならそのトレムが、綺麗な人を連れていった……のか?」
「うん、あの人がいれば谷は救われるからって、でも、それは良くない、こと」

 それには思わずテスタがこちらを見て来て、グスは顔を顰める。

「良くない事?」

 不穏な単語に嫌な予感ばかりが浮かび上がる。

「谷の為に仕方ないって。でもトレム、つらそう。僕らもつらい」

 グスは掌を握りしめる。いろいろ口から洩れそうになった言葉はあったが、ここでへたにあれこれ言ってしまったら会話がおかしくなる。だからじっと我慢してテスタの言葉を待つが彼も次に聞く言葉に迷って考え込んでいた。

「あの人をギセイ、するの、よくない」

 だが流石にそのシカの言葉には我慢が出来ず、グスも、他の連中も声を上げた。

「隊長を犠牲にするって事か?」
「犠牲って、隊長をどうする気なんだ」
「あの人を犠牲にしていいはずなんかないだろっ」

 皆が口々に言うからか、シカはそれに答えられず瞬きを繰り返す。テスタは頭を押さえながら、あー……と唸って皆の前に手を広げて言葉を止めた。

「どうして犠牲、なんだ?」

 テスタの言葉にシカは僅かに首を傾げた。

「ギセイ……魔力、欲しいから?」
「魔力があれば、谷は救われるのか?」
「谷、もう魔力残り少ない……から、あの人がいれば大丈夫、だって」

 そこでテスタはまた考え込む。それから皆が息を飲む中、慎重に聞いた。

「トレムってのは魔法使いか?」
「うん、そうだよ」

 テスタはため息をつく。そうして皆の方を向くと告げた。

「おそらくだが、この谷の魔力が枯れかかってて、ンで隊長から……もしくは隊長を使って魔力をどうにかしようって状況らしい。それをやろうとしてるのがトレムって魔法使いってことだな」

 魔法使いはシーグルを狙う、というのは分かっていたが、今回は魔法鉱石の話で魔法使いが関わってくる話ではない筈だった。

「……魔法使いか」
「文官殿がいりゃ良かったんだがなぁ」

 苦々しくグスが呟けば、テスタがまたため息交じりにそう返してくる。それは当然こちらも思う事だったがいない人物をアテにしても仕方ない。急いで駆けつけてくれる可能性はあるが、即来れるとは思えないし、そもそもここへやってこれるかも疑問だ。

「ともかく、今はいない人間をアテにする訳にもいかない。どうにかしてそのトレムってのを探して隊長を助け出すしかないだろ」

 グスの言葉に追従して、他の連中も賛同の声を上げる。
 だが、それを聞いていたテスタは、少し面倒そうに頭を掻くと口を開いた。

「まぁ隊長を助ける足掛かりくらいはどうにかなりそうだしな、文官殿を待つより行動したほうがいいだろうよ」
「足掛かりって、何か分かったのか?」
「……まぁ恐らくな」

 グスが即聞き返せば、不良中年といつも呼ばれる相方はにんまりと笑う。彼に皆の視線が集中する中、不良親父はシカに顔を向けるとゆっくりとした声で聞いた。

「なぁ、あんたが俺たちに声を掛けたのは、トレムって奴を止めて欲しいからなんだろ?」

 シカはそれにも、うん、と即答した。








 白い肌を蔓が登っていく。足元から伸びて行った蔓達は青年の白い足に絡まりながら上を目指し、足の付け根に達すると、彼の性器に絡まるものと、彼の尻の窪みに潜り込もうとするものの二手に別れ、我先にと場所を奪いあう。

「う……あ、やぁっ」

 勢いをつけた一本が彼の中へ入っていき、すぐさま二本目がそれに続く。それで他の蔓は諦めて、その周囲を撫でたりさらに上へ登って肌に纏わりつこうとする。

「う、う……ふ、ぐ……」

 口の中に入ってこようとした蔓に気づいて青年は歯を噛みしめたが、下肢で中に入り込んだ蔓が激しく出し入れを繰り返して暴れれば声が漏れて唾液がこぼれる。それを争って舐めとりにいく蔓達が集まって、彼の口の周りで蠢く。

「あぁ、あぁぁっ」

 両足に絡んだ蔓がぐっと膝を持ち上げて足を広げる形になり、自然と体重が掛かって蔓が深く彼の中を抉る。それに思わず声を上げてしまえば、口の周りにいた蔓が一斉に中へ殺到しようとして、けれども先に二本が入れば他は諦めて体を這う方に戻った。

 ……ともかく、どうにかこちらの言う事は守ってくれているのが分かってトレムは少し安堵した。

「早く……堕ちてよ」

 祈るように呟いて、彼の足元で赤く光る柘榴石に目を移す。
 普通の人間には見えないが、魔法使いであるトレムにはその石の魔力が見える。初めて見た時は眩しい程の魔力の輝きを放って見えた石は、今では石の中でろうそくの火のように魔力の揺らめきが見える程輝きを失くした。

 この青年がどうしてこんなに魔力を垂れ流しているのなんか知らない。彼自身の魔力量とは別に体から溢れる魔力は無尽蔵ともいえる程で、体液から採取し続けても減る事はない。この谷を支えるのに必要な魔力量からすればそれでもまだ僅かに足りないが、彼の話だと満月はもっとはっきり溢れるそうだからその時に貰えれば十分足りそうだと思われた。

「ん、んんっ、ふ……」

 蔓達が青年を犯す水音に混じって、苦し気な彼の声が混じる。
 その声はまだ完全に快楽に染まり切っていなくて、耐えようとしている意志が残っている。

「感じてるんだろ、もう全部諦めてくれないかな」

 言いながらトレムが彼の胸に手を伸ばせば蔓が場所を開けてくれて、指で彼のすっかり赤く尖って存在を主張している乳首を弾く。びくん、と彼の体が撓って興奮した蔓が更に激しく彼の中で暴れた。

「んんっ」

 涙に蔓が殺到する。でもちゃんと目の中に入るような事はしない。蔓達は行儀よく、この青年の体を貪っている。
 トレムは指で彼の乳首の周囲をくるくると撫でる。それから少し強く摘まんで、その先だけをまた指で擦って潰す。その度にびくびくとゆれる体と、いやらしく蠢く腰を見つめて、二本の蔓が激しく出入りを繰り返している秘所にもう片方の手で触れると指を一本更に入れる。

「んっ……う、う……」

 激しく暴れる蔓達に合わせて指で中を突き上げる。彼の中の肉たちはびくびくと蠢いて指を締め付けてくる。とろとろとこぼす彼の性器に群がっている蔓達は争ってそれを舐めとろうと縋りつく。
 ふと思いついてトレムは彼の乳首を撫でていた手を離すと、彼の口で動いている蔓達に手を伸ばし、それをそっと抜いてやった。

「は、あ、あん、あぁ、い、や、ぁ、あぅ、ん……」

 解放された口は甘い声を漏らし、快楽を受け入れて揺らめく腰の動きも相まって男のくせにとてもいやらしい。

「相当慣れてるんだね、ここは相当男を加えた経験があるのかな」

 言いながらトレムが更に突き上げる指を乱暴に動かせば、それに合わせて蔓達も彼の中肉を擦り上げるように速い抽挿を繰り返す。

「いや、あぅ、あぁ、ぁ……」

 白い体が大きく撓って強張れば、次にびくびくと小刻みに揺れて彼の性器に群がった蔓達が激しい水音を鳴らす。それで一度ぐったりと力を失った体だが、蔓達は容赦なく粘液を擦りつけながら這いまわる。トレムが手を彼の口から離せばまたそこに蔓達が入っていって、唾液を啜りだす。
 後孔からも指を抜けば、蔓は少し余裕が出た分左右に揺らしながら中を突き上げる。力ない体同様、力ない反応しか出来なかった彼の体が再びびくびくと震えて快感に反応していく。暴れる蔓を受け止めようと、細い腰が揺れて上半身が反り返り身を捩り出す。

「ふぅ、ん……ん」

 目を閉じて快楽に身を揺らめかす美しい青年を見つめて、トレムはもう一度、切実とも言える声で呟いた。

「諦めて……堕ちてよ」



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エロはこれから小刻みに入る感じ……かな。



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