嫌われ子供の子守歌
※この文中には一部(後半部)に性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【11】



 朝、予定の集合の時間より少し前。
 普段から兵舎にいる連中としては、いつもそこそこ早く起きてはいるし、昨夜は酒宴があった訳でもないのだが、やはり何処かだらけてあくびをしている者が目立つ。
 街で遊んできた連中もそこまで遅くなった訳じゃないだろうにと、やはり欠伸をかみ殺している相方を睨んでグスは思う。

「どんだけ遊び疲れてきてんだ、お前は」
「いんや、昨日はンな遊んじゃいねーよ。何せまともな時間内に帰って報告しなきゃなんなかったしな。いやもう、美人の娘さんにな、今晩はじっくりおじさまと二人っきりでお話したいわぁ、なんて言われたのにそれ断ってこなきゃなんなくてなぁ、もう涙を飲んでだなぁ……」
「わかったわかった、もういい」

 相変わらず、何処いっても手だけは早いおっさんだと、テスタの顔を呆れて見て、グスはため息をついた。
 けれども、そんな昨日と同じ平和に見える朝の風景の中で、グスは気づく。

「おい、そろそろ時間……だよな?」
「あー、確かに、そうか」

 となれば、自分達がこんなにだらだらしている筈がない。
 なにせいつもなら、一番早く起きて必ず時間前にいるシーグルがいて、既に出立の準備と点呼をしている筈なのだから。
 最初は、自分が出てきた段階で彼がいないことを珍しいものだと思っていたグスだったが、あの真面目な青年が時間になってもこないという事はありえなかった。
 他の者達も、シーグルがいつまでも姿を現さない事に不安を覚え、口々にどうしたのかと話している。
 そんな中、てっきりシーグルの傍にいると思っていたランが一人で姿を現した事で、グスは一気に嫌な予感を加速させた。
 出てこないシーグルを、それでも最初はそこまで気にしなかったのも、彼が傍についていると思っていたからこそだったからだ。

「ラン、隊長はどうした?」
「……」

 彼の無口は有名ではあっても、こういう時のだんまりを許すグスではない。しかも彼は、どこか後ろめたい事でもあるのか、妙に表情を固くして視線をそらした。
 グスは思わず舌打ちする。

「ラン、……いいか、隊長がこの時間にまだ来てないんだ」

 すぐに表情が変わった彼は、急いで辺りを見回してグスの言葉を確認すると、あきらかに血の気が引いた顔で呆然とする。

「ラン、何かあったのか? 隊長を最後に見たのはいつだ?」

 埒があかないと思ったグスは、そう言ってランに詰め寄る。事態にまだ頭が追いつかない彼は、目を泳がせて少しづつ言葉を返してくる。

「最後にみたのは……今朝方近く……」
「ずっと部屋の前にいたんじゃないのか、なんで離れたんだ?」
「……」

 黙る大男に、グスはこんなやりとりをしてる時間さえ煩わしく思う、だから。

「いやいい、その理由は後で聞く。とにかく、隊長の部屋いくぞ」

 そう言って彼の腕を掴んでひっぱろうとすると、ますます顔を青くしたランは、動かないままぼそりとつぶやいた。

「……隊長は、いない」
「なんだって?」
「今、俺は隊長の部屋によってから来たんだ。部屋には誰もいなかった」

 グスは思わず悪態をつく。

「くそったれめ、何があったってんだ」

 今は既に集合予定の時間を過ぎている。それでもまだシーグルが姿を現さないという事は、何かあったに違いない。部屋から外まで、誰かに呼ばれたとか、何処か寄ったとか、何か遅れるような事情が出来たなら、あの真面目な青年は必ずなにかしらの連絡を寄越す筈である。

「隊長に何かあったのか?」

 グスとランのやりとりをみていた他の者達も、不安そうに集まってくる。先ほどまでのだらけ具合もどこかへいって、眠気も一気に覚めた顔で、彼らは表情を強ばらせている。

「まだどうとも言えねぇ。とにかくわかるのは、隊長が今ここにいなくて、部屋にもいないって事だけだ」

 それで他の者達も、事態の深刻さを一気に理解する。

「おい、いくら早朝だっていっても、ここの連中でも起きてる奴はいんだろ。とにかく屋敷のモンに隊長の事を知らないか聞いてこい。それでもわからなきゃ事態が事態だ、バーグルセク卿を起こしてもらえ」

 途端、あわてて館へと走っていく隊の者達。
 だがグスは、皆と同じく館へと走っていこうとする大男の腕を掴んだ。

「ラン、お前にゃちと話がある。なんかおかしな事がなかったか? 何でもいい、何かひっかかることがあったら言ってみろ」

 だが、隊で一番の大男は表情を険しくして唇を引き結ぶ。グスは他の者がいないこの状況でもだんまりを決め込む彼に、呆れると同時に、そんなにマズイ事があったのかとますます表情を険しくした。

「だんまり決め込むなら、時間がもったいねぇ、隊長探しにいくぞ。……だがな、何か手がかりになるような事知ってるなら話せ」

 そうすればやっと、無口な男も口を開く。

「……おかしかった」
「なにが?」
「俺は、おかしかった。寝苦しくて、暑くて……気づいたら寝てる隊長の目の前にいた。もう少しで、俺は……」

 グスは考える。
 古参に入る彼とはそれなりに長いつきあいがあるから、彼に夢遊病の気があったりでもすれば今まで知らない事はない筈だった。そもそも、寝たまま立ち上がってふらふら歩くなんてのは、相当に酔ってるかそういう病気でもなければそうそうある事じゃない。

「……操られてたって可能性がある、か」

 眠る者を操るといえばアルワナの神官だが、魔法使いなら、その手の術を使う者もいるかもしれない。
 呟きながらも、グスはこれは自分の失態だと思う。
 相手が魔法を使う何者かではないか、という予想はシーグルとグス共通のものだった。とにかくシーグルの身の為にランを傍に置いておいたものの、ちゃんとした魔法対策のない者を傍に置いても大した役にはたたない。そう、頭では理解していても、彼を傍に置いてしまったのはグスだ。
 グスはランの肩を叩くと、彼に言ってやる。

「お前が何しようとしちまったのかは聞かねぇよ。だが、その様子なら何かする前に気がついたんだろ? ンな落ち込むな、お前さんは多分、操られてたんだよ」

 こうなれば、魔法を使う何者かが、邪魔なランをどかした後、シーグルに手を出したと考えていいだろう。

「ラン、とにかく隊長探しにいくぞ。もう一度部屋行って手がかりないか探したら、次はここの息子探しだ」

 最初から気に入らなかったあの子供。彼がシーグルを見る目は、歳とか関係なく、獲物を狙う獣のそれだった。シーグルに何か起こったとすれば、あの子供が絡んでいるのは確定だとグスは思う。
 あのガキは何か企んでいる。
 見た時からずっとそう思っていたそれは、今では完全に確信になっていた。








 はぁ、と熱い息を漏らして、シーグルは体の中に注がれた感触にぶるりと身を震わせた。

「ふふ、シーグル様の中とっても気持ちいい……」

 そのまま、シーグルの体の上に倒れてきたネイクスは、荒い息に上下するシーグルの胸に手を這わせ、舌で胸の汗を舐める。そこから、尖った胸の頂をぐるりと舌でなぞり、ちゅ、という音をさせて軽く吸う。

「ん、本当にシーグル様っていやらしいなぁ、まだ欲しいって僕を締め付けてくるよ」

 言いながら、少年はまた楽しそうに笑うと腰を揺らし出す。ぐんと押し込まれたそこから、彼がたった今出した液体が押し出されて、どろりとなま暖かい感触が足の付け根を伝っていく。

「あぁ、シーグル様すごい……僕のもの……」

 熱で浮かされたように潤んだ瞳で、少年は腰を強くたたきつけてくる。ぐんっ、ぐんっと奥に届く度に、シーグルの唇が甘い息を漏らす。シーグルもまた、かろうじて意識は残しているものの、下肢からせり上がる甘い疼きに体中の感覚を浸食され、自ら少年の雄を受け入れようと足を広げて腰を動かしていた。

「あ……ぅ……ネイ、クス……だめ……」

 どうにか彼を止めようとして言葉を出しても、その苦しそうでも艶のある声が少年の欲望を更に膨らませるだけにしかならない。
 ぐぷ、ぐぷ、と少年がシーグルの中を行き来する音が響く。少年も快楽に悩ましげな声を上げ、声を抑えようとしているシーグルも、動きに併せて甘い吐息が鼻から抜けるのを止められない。
 そうして、また、体の奥に熱い液体の流れを感じて、シーグルはそれを受け止めるように腰を上げ、ひくひくと体を痙攣させた。

「どうだいネイクス? 彼が淫乱だって事はよく分かったろ?」
「うん、エネルダン様、シーグル様のここすっごくいやらしくて気持ちいいんだ」

 今、シーグルの体を拘束しているのは腕に絡まったシーツの布だけで、足は既に解放されていた。それでも、体中が熱に犯されて、布が肌を擦る感触だけでも快感を感じてしまうシーグルは身動きがとれなかった。

「ではネイクス、この淫乱な騎士様をもっと満足させてあげよう」

 言いながら、シーグルと繋がったままのネイクスを倒れさせ、代わりに魔法使いは自分もベッドに乗り上がると、シーグルの体を起きあがらせて後ろから支える。
 今はネイクスがベッドに寝た状態で、シーグルがその上に乗り自ら受け入れているような体勢になっていた。より体の深くへと埋まった少年の欲望が再び質量を取り戻していくのを、締め付けた感触でシーグルは感じていた。

「ネイクス、そんなにいいのかい? またこんなにして……」

 シーグルを支えながら、魔法使いの指が繋がったそこに無理矢理ねじ込まれる。そこが更に広げられた感触に、シーグルは体をびくんと揺らして、下肢で指と一緒に納まった少年のものを締め付けてしまう。

「ネイクスのだけじゃ、淫乱な君は満足できないだろ?」
「っあっ……」

 言いながら指がもう一本中に入ってくる。
 広げられる瞬間はぴりりとした痛みを訴えてくるものの、薬で熱をもったそこは入ってくるものを嬉しそうに締め付けてしまう。
 けれども、魔法使いは後ろからシーグルの耳たぶをしゃぶると、小さく囁く。

「まだ、足りないだろ?」

 同時に、指が一気に引き抜かれる。
 だが代わりに、そこに別の暖かい肉の感触が触れて、まさかと思った時にはその質量が入り込んできていた。

「ぐ……う、あぁ、ぁ、ぁ、ぁ……」

 目を見開いたシーグルは、悲鳴にもならない叫びをあげた。
 二人分の雄を受け入れたその苦しさに、シーグルの意識が薄れ掛ける。
 それでも、二人が動きだし、体が慣れていけば吐息は再び熱を持ち、体はそれを快感だとシーグルにしらしめる。

 今度は三人分の熱い吐息が、部屋の中を満たした。



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次回はまた騎士さん達の話から。
……そしてその次はラストのエロ続き……いつまでやるんだこれ……。


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