※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。 【7】 シーグルは叫んだ。 嫌だ、嫌だ、誰か助けて――と。 ここは屋敷の敷地内で、少なくとも叫んだ声が聞こえるくらいのところには必ず誰かがいる筈だった。助けを呼べば、必ず誰かがくる筈だった。 けれども、いくら叫んでも助けがくる気配はなかった。 ならば恐らく、わざと誰も助けないのか、もしくはこの周辺に誰も近付かないように言われているか。 どちらにしろ、ならばこれは祖父が了承済みのことであるというのは確定だった。 祖父がシーグルを壊せと、それをこの男に依頼したというのは本当の事なのだ。 「ったくよぉ、やっとお楽しみの時間だぜ」 ワーナンの瞳は淀んだ光を浮かべていて、見ているだけでシーグルの中に恐怖を植え付けてくる。 剣を持って前に対峙している状況ならまだしも、圧倒的な太い腕に掴まれている今では、シーグルに逃げようはなかった。いくら振りほどいても僅かも緩みはしない、この強い腕から逃げられるとは思えなかった。 「や、だ……やめ……て」 恐怖に震える少年の体から、ワーナンは手際良く衣服を剥いでいく。 いくら暴れても効果はない。殴ろうとすれば両手を脱がし掛けた服でまとめられて簡単に地面に押さえつけられる。蹴ればその足から服を抜かれて膝で押さえられ、もう片方の足からも服を抜かれた上で、広げた状態でこちらも膝で押さえられる。 そうしてあっさり服を脱がされ、体を隠しようもなく広げられれば、シーグルの体は男の淀んだ瞳に全て晒される事になる。 「ったく、本当に細ぇなぁ」 この状態でまだ空いている男の右手が、言いながらゆっくりとシーグルの脇から尻のあたりを撫ぜていく。 それだけでぞわりと全身の肌を震わせたシーグルは、体全体までもが小刻みに震えだしたのを抑える事が出来なかった。 「や、だ……嫌、嫌……」 声さえ震えて、上手く言葉に出来ない。 そんな様子のシーグルを見て、男はさも楽しそうに喉を震わせてくる。 「は、可哀相になぁ、こんな細い身体にぶっこまれて、これから心も体も壊されちまうんだからなぁ」 殊更下品に笑いながら、ワーナンの手が尻の間の窄まりを撫でる。 何故そんなところを触るのか分からずに、シーグルは瞬間体を跳ねさせた。 「や……何??」 それにふと眉を曲げたワーナンは、だがすぐに何かあったのか、顔全体にまたにんまりと不気味な笑みを浮かべた。 「そっか、おぼっちゃんは、これからどうなるかちゃんと分かってねーのか」 くくくっと喉だけで高く笑った後、ワーナンの指が再び後孔に押し付けられた。 「男の場合はな、ここにつっこむんだよ。俺のをこの穴につっこんで、たっぷり中に吐き出してぐちゃぐちゃにしてやるからな。お前はそれに悦んでケツ振る雌になる訳さ」 シーグルは瞳を大きく見開く。それから、言葉を理解すると同時に嫌悪感でぞぞっと全身の肌の毛を粟立たせた。 まだ経験まではなくとも、さすがにこの歳で一般的なセックスが何かを知らないとまでは言わない。だが、自分が女の代わりにそんな事をさせられる事になるなど、シーグルには想像さえ出来なかった。 体の震えがますます酷くなる。 「嫌、嫌だ嫌だ嫌だっ……」 声の語尾が泣きそうに震えて、実際瞳の端に涙が浮かんだ。 そのシーグルの様子を楽しそうに見下ろして、ワーナンはシーグルの後孔を撫でていた指を一関節分だけ、中に入れてそこをかき混ぜるように動かした。 「ひ……や、ぁ、やぁ……」 びくんと体を硬直させたシーグルに、一見優しくも聞こえる声でワーナンは言う。 「大丈夫さ、男のここの奥には気持ちよくなれる場所があってな、突っこまれてガシガシ擦られりゃ、その内気持ち良くなって自分から腰振って善がるようになっからよ。……まぁ、最初は痛いかもしれねぇけどさ、自分から欲しがって鳴くようになるまでたっぷり犯してやるからよ、安心しな」 何が大丈夫なのか、何が安心なのか、男の言葉が余計に恐怖を煽って、シーグルの心を追い詰める。ねっとりとした男の声とその威圧感に圧倒され、シーグルは暴れるのさえも忘れて震える事しか出来なかった。 ワーナンは口元を満足そうに歪めると、指を抜いて今度はその顔をシーグルの耳元へと落としてくる。微かな笑い事と共に、はぁはぁと粗い息を吹きかけてくる。 「いやぁ、面白かったぜぇ、お前が俺の事尊敬の目で見てりゃ見てる程、こうしてやる時のお前の顔想像しておっ勃ちそうでな、抑えるのに大変だった」 シーグルは嗚咽を耐える為に歯を噛みしめ、目をぎゅっと瞑る。体は恐怖で動かなくて、出来る抵抗はこれ以上無様に泣き喚かない事くらいしかなかった。 ぴちゃ、ぴちゃ、と耳元をわざと舐めてから、ワーナンの舌が顔の輪郭に沿って移動していく。通った後にたっぷり唾液の跡をつけて、ぬるりとした生暖かい感触が顔を伝っていく。 「へぇ、流石貴族さまだな、肌も極上品だが、ガキの乳臭さとは違ういい匂いがしやがる」 ちゅぷっとそこで肌を吸われて、ちくりと小さな痛みを喉に感じる。 舌が胸にまで下りればその動きは大胆になり、べろべろと犬のように胸全体を舐められ、更に手が濡れた上から乳首を抓る。 「うぅっ」 それに驚いて背を跳ねさせれば、肌に男の笑い声が掛かる。 「こっちでも感じて善がるようにしてやる。俺がお前を男につっこまれて犯されるのが大好きな体にしてやるからな」 「う、ぁ……嫌、ぁ、ぁ……」 とうとう瞳から涙が溢れてしまって、シーグルは空を見つめたまま目を見開いた。 空はこの状況が嘘に思える程澄んだ青色で、心が今を認めたくなくて逃げてしまいそうになる。 けれどもそこで、シーグルは思う。 このまま心だけ逃げて、体を諦めてしまったいいのか。 こんな男に体を好きにされるのを許してしまっていいのか。 ――そんな事、あってはいいわけがない。 「く、っそぉぉっ」 シーグルは再び暴れ出した。身を捩って男の舌から体を逸らそうとし、足をばたつかせてその拘束から逃れようとした。ワーナンの意識が丁度胸にいっていたというのもあって、片足は自由になり、シーグルは思い切り男の横腹に膝蹴りを入れた。 「こンの……」 流石に油断していたのか、蹴りが入った瞬間、ワーナンの動作が止まって彼の口から低い唸り声が漏れる。 ただ当然ながら、それで逃げられる事など出来る筈もなく、ワーナンはシーグルを憎々し気に睨むと、更に強くシーグルの手を地面に押し付けて腹を殴った。 「ぐ……」 息が止まって、シーグルは一瞬意識が遠くなりかけた。更には追い打ちでもう一発殴られて、苦しさにのたうち、咳が出る。息がうまく出来なくて、ひたすらに苦しい。 「おっと……やべぇ」 ワーナンの声が聞こえて、3発目の拳は止められた。 舌打ちを聞きながら、シーグルはどうにか回復した呼吸を必死に繰り返した。それでもまだ痙攣しているような喉は上手く動かず、シーグルはそのまま咳き込んだ。 「やべぇやべぇ、ヘタな怪我させたら契約違反だったな。ったくこれだからクソ弱いガキの体はよぉ」 呼吸がやっと回復してきて、シーグルはワーナンを見上げる。 かつて剣の師として尊敬さえしていた男は、忌々し気に自分の体を見下ろしていた。 まだ少しぼやけた視界に大きな手が伸びてきて、シーグルの髪を掴む。そうして髪を掴まれたまま顔を持ち上げられて、男のどこか狂気さえ見える顔が近づいてくる。 「いいか、お前みたいな綺麗な顔してるガキはなぁ、冒険者の間じゃ女の代わりにされるのがお約束なんだよ。でもこの国の法律じゃ男がレイプされましたなんて犯罪扱いされねぇ、そのままおもちゃにされて、泣き寝入りしてぶっ壊れて人生終わりってのが末路さ。 だからじーさんはそうなる前に、さっさと壊れるなら壊して家に閉じ込めとけって思った訳よ。ま、なんならさぁ、一生家に閉じこもって言い成りになりますって叫んだら助けてくれっかもしれねぇぞ」 そこでシーグルは気がつく。 そうだ、これが祖父の命令というなら、どこかでこの姿を祖父が見ているのだろうか。無様に男のおもちゃにされて壊れていく孫の姿を、結局あの子供は人形にしかなれないと、見下した瞳で面白くもなさそうに見ているのだろうか。 ――約束したくせに。 身分に頼らず騎士になれたら、その褒美代わりに暫くの自由をくれると言ったくせに。その約束は、最初から守る気などなかったのか。守る気がなかったからこそ、母や兄弟にさえ会っていいと言ったのか? 今の自分の状況に対する恐怖さえ忘れて、シーグルの頭は怒りに支配される。 約束を守る気などなかった祖父に、結局自分は少しも期待されていなかったのだという事実に。 「――まぁ、ここまでやって、やめろって言われてもやめる気なんざねぇけどな」 男は笑いながら、舌を窄めて、つつくように胸の先端を舐める。何度も何度も、ぬめる舌で嬲られている内に、そこはぷっくりと立ち上がり赤く存在を主張していた。濡れそぼって光るその様が視界の隅に見えて、シーグルは思わず目を逸らした。 「そろそろこっちも反応してっか?」 面白そうに、言葉と同時に男はシーグルの性器を手に握る。 咄嗟に悲鳴が上がりそうになったシーグルは、唸った後、目を見開いたまま歯を噛みしめた。 「お、いっちょ前にちゃんと勃ってきたじゃねぇか。胸弄られてこんなになってるんじゃ、素質あんぞお前」 男の固い感触の手が、柔らかくまだ色素の薄いシーグルの男性器を握って扱く。 上では尚も舌で胸を嬲り、手は止まらずにシーグルの性器を擦る。 「ちゃんと精通してっかボーズ。それともこれが初めてかぁ?」 ひひひっと、高い声で男が笑ったと同時に、シーグルの性器から精が飛び散る。 カタカタと噛みしめた歯が悲鳴をどうにか押さえて、シーグルは必至に叫ぶのを耐えた。 「やっぱガキだからかね、薄いなぁ」 ぺろりと手についたものを舐める、男の瞳はシーグルを冷たく見下ろしていた。 「俺のは濃いぜぇ、なんせずっと我慢してたしよぉ。今からお前の中にたっぷり注ぎ込んでやるからなぁ」 恐怖で逸らしたくなる目を開いて、シーグルはじっと彼のその瞳を見返した。 まだ、諦めたくない、まだ、逃げるチャンスはあるかもしれない――だから、必死に相手を見る。 さっきのように男が油断をすれば、隙が出来る可能性はまだある。今度は何も考えず暴れるなんて事はせず、一発で男を動けなく出来る場所を狙わなくてはならない。 だって、もうすぐなのだ。 ずっとずっと、いつか家族とまた会える事だけを夢見てきて、騎士になれたらそれが叶うというのに。 例え最初から約束を守る気がなくとも、誇り高い騎士である現シルバスピナ卿は嘘をつかない。 もしシーグルがこの場をどうにかして騎士になれたなら、祖父は約束を守らざるえなくなる。堂々と、母や兄弟に会いにいける事は変わりない。 ワーナンは強い。 力では圧倒的に適わない。押さえつけられたら逃げ様がない。それは誰が見てもそう思う、彼自身もそう思っている、だからそこに油断が生まれる可能性はある。 それにこの男は、自分にヘタな怪我をさせるわけにはいかない。押さえつけるにしても殴るにしても、やり過ぎる事は出来ない。 ならきっと隙はまた出来る。 「さて、そろそろぶっこんでやるか」 ワーナンがごそごそと片手を自分の下肢に伸ばす。ベルトの外れる音とそれが傍に置かれる音がすれば、彼が自分の衣服を緩めているというのは分かる。そしてこの状況でそんな事をしているのなら、その目的だってすぐに分かる。 「おら、もうこんなだぜ、散々我慢してたからなぁ」 すっかり昂ぶり切ったものを出して、シーグルに見えるようにワーナンは軽く体を上げた。見たくなかったのに見てしまったシーグルは、正直、見た瞬間に、心が折れそうになった。 片手を添えて出されたワーナンの男性器は明らかに想像以上に大きく、腹や腿の肌以上に色が濃いのも相まって酷く醜悪に見えた。それを自分の中に入れられるのだと考えただけで、体の震えが止まらない、怖くて仕方なかった。――最悪、犯されても壊れなければ祖父は約束を守る筈などという事も直前までは考えてもいたが、そんなものは見た途端吹き飛んだ。 ――あんなものを自分の中に入れられるなんて絶対に嫌だ。あんな男に体を征服されるなんて絶対に耐えられない。 声はどうにか抑えたものの、血の気が引いたシーグルの顔を見て、ワーナンは体を倒してくるとそれを押し付けてくる。とはいえ、押し付けて感触を感じてすぐに、男は舌打ちをして、代わりにおそらく指を入れてくる。 「いっ……」 痛い、と叫びそうになったのを飲み込んで、シーグルは固く目を瞑った。 指は中をかき混ぜるように無茶苦茶に動かされて、その度にシーグルは痛みを感じた。 「ったく、これじゃ濡れがたんねーか。仕方ねぇ、こっちももう我慢してられねーしな」 言うとワーナンは起き上がり、シーグルの腕を離して今度は足を持った。しかも片手でシーグルの足首をまとめて掴んで上へ持ち上げる。つまりシーグルは、仰向けに寝て足を揃えて上げているような状態にされた。 相手が何をするのか分からないシーグルはそこで困惑するが、男が閉じた足の間の隙間にその醜悪なものを入れてきたことで理解する。そうして即座に、そこへ擦り付けるように動き出した事で、嫌悪感どころか吐き気がしてくる。 そんな場所で男が動けば、当然、シーグルのまだ若い性器が男のものとこすれ合う。腿と自分の性器が、擦れ合う男のものの感触を伝えてきて、それがたまらなく嫌だった。 「うぐ……ぐ、うぅ……」 気持ち悪いのに、これ以上なく不快なのに。吐き気を、脱がしかけた服で纏められたままの手で抑えて必死で耐えているのに、擦られれば自分の性器も熱を持つ。最初は肌に引っかかるように感じたその感触が、だんだんぬめりを帯びて動きが速くなり、やがて水音さえ含みながら足の間で熱を膨らましていく。 そうして、体が揺れる程乱暴にそこを突き上げられて唐突に止まれば、腹に生暖かいものが掛かる。どろりと腹を汚す白い液体をシーグルは見ていられなくて、目を閉じてしまいそうな程に細めた。 男の満足げなため息が頭の上に掛かる。 「よし、こんだけありゃいいだろう」 腹の上にぶちまけられた体液を、男の指が集めるようにして拭っていく。 そうっと男の顔を見れば、それは醜い歪んだ笑みを浮かべていて、実際喉を震わせた微かな笑い声も耳に届いた。 「今度はお前ン中に出してやるからな」 --------------------------------------------- 最初から寸止めいってますから次の展開は予想出来ますよね、いいとこだったのに、とか思った方は謝っておきます……って事で次回はシーグルの反撃です。 |