日本語で読めるホームズ
パロディ&パスティーシュリスト
(海外編)
- ドイル傑作選I ミステリー篇
- アーサー・コナン・ドイル 著 北原尚彦・西崎憲 編 北原尚彦の解説
- 翔泳社 1999/12/5
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産みの親ドイル自身による正典以外のホームズ物の翻訳がまとめて読める貴重な本(ホームズもの以外の作品も収録されている)。日本独自の編集なので本の発行としては新しいが、原作者自身の番外編ということに敬意を払ってリストの先頭に置かせていただく。
中の「消えた臨時列車」は、「ソーラー・ポンズの事件簿」にある「消えた機関車」という作品の元とされており、これにそっくりのシチュエーションの事件を本作と違って探偵が解決するので、読み比べると面白い。
ほぼ同様の内容(ホームズもの小説以外の追加あり)で創元推理文庫から「まだらの紐 ドイル傑作集1」というのも出ました。
収録作品
- ヴァルモンの功績 (THE TRIUMPHS OF EUGENE VALMONT and Two Sherlock Holmes Parodies)
- ロバート・バー 著 田中鼎 訳・訳者あとがき 日暮雅通 解説
- 東京創元社 創元推理文庫 2020/11/27 (原書1892,1904,1906)
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ホームズのパロディとして「シャーロー・コームズの冒険」、「第二の分け前」が収録されているが、前者は「シャーロック・ホームズの災難〔上〕」に「ペグラムの怪事件」として、後者は「シャーロック・ホームズの栄冠」に「第二の収穫」として収録されている。
またメインのヴァルモンの「〈ダイヤの頸飾り〉事件」には名前は出て来ないがホームズらしき私立探偵が出てくる。
- ルーフォック・オルメスの冒険 (LES AVENTURES DE LOUFOCK=HOLMES)
- カミ 著 高野優 訳・訳者あとがき
- 東京創元社 創元推理文庫 2016/5/31 (原書2026)
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名前は知っていてもなかなか実際に読む機会は無かったパロディの古典の(訳者あとがきによれば)74年振りの全訳書。実に34編もの短編を収録。内容はハチャメチャナンセンスという感じ。
無理矢理日本語での駄洒落を入れているところは原文を連想させるところまで行かず少し残念(シュロック・ホームズの昔の方の訳し方が良い)だし、時々挿入される訳者コメントも余計な感じ。
収録作品
- 蜜の味 ホームズ引退後の事件 (A TASTE FOR HONEY)
- H・F・ハード 著 田口俊樹 訳 日暮雅通の解説
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫 1982/9/30 (原書1941)
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マイクロフトと名乗る謎の老人に振り回される哀れな男の話、とでも言えば良いのだろうか。いや、ちゃんと事件は起こるし、それをマイクロフト氏が解決もするのだが。どうも後味が悪い作品なので読む必要無し、と言ってしまおう。
- シャーロック・ホームズの災難〔上〕 (THE MISADVENTURES OF SHERLOCK HOLMES)
- エラリイ・クイーン 編 中川裕朗・乾信一郎 訳
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫 1984/12/5 (原書1944)
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ホームズパロディ&パスティーシュを集めたアンソロジー。基本中の基本と言えましょう。
上巻はモーリス・ルブラン、アガサ・クリスティーなどの「探偵小説作家篇」と、マーク・トウェイン、O・ヘンリーなどの「著名文学者篇」で構成される。
収録作品
- シャーロック・ホームズの災難〔下〕 (THE MISADVENTURES OF SHERLOCK HOLMES)
- エラリイ・クイーン 編 中川裕朗・乾信一郎 訳 中川裕朗の訳者あとがき
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫 1985/1/15 (原書1944)
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ホームズパロディ&パスティーシュを集めたアンソロジー。基本中の基本と言えましょう。
下巻はスティーヴン・リーコックなどの「ユーモア作家篇」と、「研究家その他篇」で構成される。
収録作品
- ソーラー・ポンズの事件簿 (THE CASE BOOK OF SOLAR PONS)
- オーガスト・ダーレス 著 吉田誠一 訳 戸川安宣の解説
- 東京創元社創元推理文庫 1979/8/3 (原書1945〜73)
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「プレイド街のシャーロック・ホームズ」ことソーラー・ポンズとリンドン・パーカー博士の冒険を13編収めた短編集。作品のピックアップは日本オリジナルである。「シャーロック・ホームズのライヴァルたち」の一冊(第二期)として刊行。
パロディと言うほどふざけておらず、かといって探偵がホームズ本人ではない(時代も少しずれる)のでパスティーシュとも言い切れないが、内容的にはほぼホームズものである。逆に、正典に縛られずに正典の事件と似たようなシチュエーションの再現も堂々と出来るのは、ホームズ本人ではないおかげかもしれない。
収録作品
- シャーロック・ホームズの功績 (THE EXPLOITS OF SHERLOCK HOLMES)
- アドリアン・コナン・ドイル&ジョン・ディクスン・カー 著 大久保康男 訳・解説 小泉信三の小文あり
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ 1958 (原書1952〜54)
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ホームズの生みの親ドイルの息子アドリアンとミステリ作家カーが協力して書いた短編集。正典で名前だけが出てくるいわゆる「語られざる事件」ばかり。
収録作品
- 地球人のお荷物 (EATHMAN'S BURDEN)
- ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン 著 稲葉明雄・伊藤典夫 訳 伊藤典夫の解説
- 早川書房ハヤカワ文庫SF 1972/9/30 (原書1957)
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テディベアそっくりの宇宙人ホーカ族たちの繰り広げるドタバタシリーズの一巻目。この中に収録の「バスカヴィル家の宇宙犬」(The Adventure od the Misplaced Hound)(1953)がホームズもの。他に西部劇やスペオペなどを熊さん達が演じてくれる。読んで面白いのはもちろん、挿絵をあの天野喜孝氏が他ではほとんど見られないファンシー調の絵柄で描いているのが貴重である。
- ベイジル ねずみの国のシャーロック・ホームズ (BASIL OF BAKER STREET)
- イブ・タイタス 著 ポール・ガルドン 絵 晴海耕平 訳・訳者あとがき
- 童話館出版子どもの文学●青い海シリーズ・27 2013/12/20 (原書1958)
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ホームズに憧れるねずみのベイジルとその友人のドーソン博士が、ベーカー街の地下室で暮らしながら、鮮やかに事件を解決していく。
過去にも邦訳は出ていた(本作だけでなくシリーズで)ものの、長らく入手困難になっているので、今回の出版は貴重。
- シャーロック・ホームズの私生活 (The Private Life of Sherlock Holmes)
- ヴィンセント・スタリット 著 小林司・東山あかね 訳・訳者あとがき
- 文藝春秋社 1987/12/25 (原書1960)
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この本は研究書であるが、短編「世界一の希覯本『ハムレット』にまつわる事件」が収録されているため、取り上げた。ただし、この話は他の短編集でも読めるけど。
- シャーロック・ホームズ ガス燈に浮かぶその生涯 (Sherlock Holmes of Baker Street. A Life of the World's First Consulting Detective.)
- W・S・ベアリング=グールド 著 小林司・東山あかね 訳・訳者あとがき
- 河出書房新社河出文庫 1987/6/4 (親本は講談社から1977/9) (原書1962)
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厳密には小説ではなく、伝記の形式でホームズの生涯を語ったもの。ホームズファンには必須の本の一つ。正典以外のパスティーシュからもエピソードが取り込まれている。事件の実際の順番やワトスンの結婚の回数などをこれで確認しよう(説だが)。
作者のベアリング=グールドが詳細な解説と注を付けた「シャーロック・ホームズ全集」(翻訳版全21巻東京図書刊)もいずれは揃えたい・・・と書いておりましたが、97年よりちくま文庫から刊行され、入手し易くなっています。
- 恐怖の研究 (A STUDY IN TERROR)
- エラリイ・クイーン 著 大庭忠男 訳 中嶋河太郎の解説
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫 1976/11/15 (原書1966)
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切り裂きジャックの事件を取り扱ったもの。現在のエラリイがワトスンの手記を読み進めながら推理を進めていくというもの。そのせいか、純粋にホームズの物語として楽しみにくいのが難。
- シュロック・ホームズの冒険 (THE INCREDIBLE SCHLOCK HOMES)
- ロバート・L・フィッシュ 著 深町真理子・他 訳 深町真理子の訳者あとがき
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫 1977/3/31 (原書1966)
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迷探偵シュロック・ホームズ氏とワトニイ医師の活躍を描いた短編集。読む方としてはツボにハマれば大笑いできるのだが、ハズしてしまうと最後まで読むのもツライかもしれないくらい強烈な作品。あ、考えようによっては英語の勉強にもなります(笑)。
収録作品
- シュロック・ホームズの回想 (THE MEMOIRS OF SCHLOCK HOMES)
- ロバート・L・フィッシュ 著 深町真理子 訳・訳者あとがき
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫 1979/5/31 (原書1974)
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その頭の痛さにもさらに磨きがかかります。それにしても、とてつもない勘違いが最後にはつじつまが合っているように思わせるのが見事。
収録作品
- シュロック・ホームズの迷推理
- ロバート・L・フィッシュ 著 深町真理子ほか 訳 木村仁良 解説
- 光文社光文社文庫 2000/3/20
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「英米短編ミステリー名人選集(VII)」ということでフィッシュの作品を集めた日本独自の編集の短編集ということになる。が、収録作品は「Schlock Homes:The Complete Bagel Street Saga」(1990)からシュロック・ホームズもののハヤカワ文庫に未収録のものが中心。重複は各一編しかないので安心して買える。
ただし、注釈や解説は従来の翻訳に比べて少ない。シュロックものは、これでもかというくらい注釈がないと日本人にはギャグの内容が通じにくいのではないか。みんなが英語や文化に詳しいわけではないのだから。
収録作品
- シャーロック・ホームズ17の愉しみ (SEVENTEEN STEPS TO 221B)
- J・E・ホルロイド編 小林司・東山あかね 訳・訳者あとがき
- 河出書房新社河出文庫 1988/10/4 (親本は講談社から1980) (原書1967)
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パロディ・パスティーシュだけでなく、研究・批評などを計17集めた本。
収録作品
- シャーロック・ホームズの優雅な生活 (THE PRIVATE LIFE OF SHERLOCK HOLMES)
- マイクル&モリー・ハードウィック 著 榎林哲 訳・訳者あとがき
- 東京創元社創元推理文庫 1974/7/19 (原書1970)
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同名映画(邦題は「シャーロック・ホームズの冒険」)のノベライズ。昔は良くTVで放送していたものです。映画らしく、ホームズとヒロインの仲が楽しめる、ネス湖を舞台にしたストーリー。なお映画には無い、ホームズがストラディバリウスを手に入れるエピソードが挿入されているが、これが非常に面白い(笑)。
- シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険 (THE SEVEN-PER-CENT SOLUTION)
- ニコラス・メイヤー 編(故ジョン・H・ワトスン博士 著) 田中融二 訳・訳者あとがき
- 立風書房立風ミステリー 1975/7/10 (原書1974)
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麻薬の使いすぎでおかしくなったホームズを心理学のフロイトが治療する、あまりにも有名なパロディ。映画化もされた。現在は扶桑社から文庫版が出ているので、そちらをどうぞ。
- ウエスト・エンドの恐怖 (THE WEST END HORROR)
- ニコラス・メイヤー 編(故ジョン・H・ワトスン博士 著) 田中融二 訳・訳者あとがき
- 立風書房立風ミステリー 1977 (原書1976)
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「…素敵な冒険」と同一作者の作品だが、直接の続編ではない。全体にちょっと暗め。これも扶桑社から文庫化されている。
- 犯罪王モリアーティの生還(上) (The Return of Moriarty)
- ジョン・ガードナー 著 宮祐二 訳 各務三郎の解説
- 講談社講談社文庫 1979/2/15 (原書1974)
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ライヘンバッハの滝での対決の後、実はホームズと同様生きていたモリアーティがロンドンに戻ってきた後の活動を描く小説。あくまでも悪党としてのモリアーティが描かれ、暗鬱とした作品である。そういうのが好きな方はどうぞ。裏の事情により、ホームズが立ちはだかるということは一切無いので、期待しないように。
- 犯罪王モリアーティの生還(下) (The Return of Moriarty)
- ジョン・ガードナー 著 宮祐二 訳 各務三郎の解説
- 講談社講談社文庫 1979/2/15 (原書1974)
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下巻である。ちなみにこの続編の「犯罪王モリアーティの復讐」も80年に上下巻で邦訳されているのだが、手に入らない。譲っても良いという方あるいは古本屋で見かけたよという方はぜひご連絡をお待ちしております。
- 犯罪王モリアーティの復讐(上) (The Revenge of Moriarty)
- ジョン・ガードナー 著 宮祐二 訳 各務三郎の解説
- 講談社講談社文庫 1980/6/15 (原書1976)
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とりあえず上巻のみ入手できました。
「…生還」の最後でいったん国外へ逃亡したモリアーティがロンドンへ帰還して活動を再開する物語。今回はちゃんとホームズもストーリーに参加します。
巻末の各務三郎の文章は解説と言うよりショートショート。どういう意図でこれが入っているのが気になりますが、下巻を読めば分かるのかもしれません。
- シャーロック・ホームズの復活 (A THREE PIPE PROBLEM)
- ジュリアン・シモンズ 著 新庄哲夫 訳・解説
- 新潮社新潮文庫 1976/10/30 (原書1975)
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ホームズ本人の物語ではなく、ホームズ俳優(本人もシャーロキアン)がホームズの真似をして事件の解決に当たるというもの。ミステリとしてはともかく、ホームズものが読みたい人には向かないと思う。
- シャーロック・ホームズの宇宙戦争 (SHERLOCK HOLMES'S WAR OF THE WORLDS)
- マンリー・W・ウェルマン&ウェイド・ウェルマン 著 深町眞理子 訳・解説
- 東京創元社創元推理文庫 1980/6/27 (原書1975)
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H・G・ウェルズの「宇宙戦争」(WAR OF THE WORLDS)で地球が火星からの侵略にあった時、当然ホームズも居合わせた筈だ、という発想の元に書かれた小説。同じくドイルの「失われた世界」などの主人公チャレンジャー教授がもう一方の主人公。全体の構成も、チャレンジャーの友人マローンの著作と、ワトスンの手記という風に分かれている。私としては好きな作品。
- 第2次宇宙戦争 (THE SECOND WAR OF THE WORLDS)
- ジョージ・H・スミス 著 杉山啓二郎 訳 宮田洋介の解説
- 久保書店SFノベルズ 1979/7/10 (原書1976)
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H・G・ウェルズの「宇宙戦争」(WAR OF THE WORLDS)の2年後、異次元の地球アヌンへの火星からの侵略の危機を知らせにH氏(ホームズ)とW博士(ワトソン)が訪れる。
ホームズ達はあくまでも主人公を助ける役割で、活躍も少なめ。
作品自体も、全体に説明が不足気味だし、それほど良い出来ではないと思う。
- ホームズ最後の対決 (Exit Sherlock Holmes. The Great Detective's Final Days.)
- ロバート・リー・ホール 著 小林司・東山あかね 訳・解説
- 講談社講談社文庫 1980/6/15 (原書1977)
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生きていたモリアーティ教授とホームズの最後の対決。そして二人の驚くべき正体。ストーリーの都合上、途中で身を隠しているホームズに代わって成長した元ベイカー・ストリート・イレギュラーズのウイギンズが一時ワトスンの相棒を務めるのも良い。とても気に入っている作品の一つ。
- シャーロック・ホームズ対ドラキュラ あるいは血まみれ伯爵の冒険 (SHERLOCK HOLMES vs. DRACULA orTHE ADVENTURE OF THE SANGUINARY COUNT)
- ローレン・D・エスルマン 編(医学博士ジョン・H・ワトスン 著) 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 河出書房新社河出文庫 1992/4/4 (原書1978)
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当時、コッポラの映画「ドラキュラ」公開の話題に便乗して翻訳されたと思われる。内容は確かにキワモノだし、私はストーカーのドラキュラを読んでいないので比較は出来ないが、それでもなかなか面白いと思う。(その後、「ドラキュラ紀元」あたりの影響もあってストーカーのドラキュラも読みました)
- シャーロック・ホームズ対オカルト怪人 あるいは「哲学者の輪」事件 (THE CASE OF THE PHILOSOPHER'S RING)
- ランダル・コリンズ 編(ジョン・H・ワトスン 著) 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 河出書房新社河出文庫 1996/1/9 (原書1978)
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ホームズが全然ホームズらしくないのでつまらない。哲学やオカルトに興味のある人は、そちらのパロディとしては楽しめるかもしれない。
- ホームズ少年探偵団 (The Case of the Baker Street Irregular)
- ロバート・ニューマン 著 神鳥統夫 訳
- 講談社青い鳥文庫 1998/1/15 (原書1978)
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ロンドンに初めて出てきたアンドリュー少年が事件に巻き込まれる。イレギュラーズのウィギンズ一家と知り合い、やがて彼の事件はホームズの仕事とも絡み合っていく・・・という内容。元々ジュヴナイルなのではあろうが、児童向け文庫用の訳はかえって読み辛いかも(ランガムホテルの番頭はないだろう…)。大人向けの翻訳でも読んでみたい。
ウィギンズ(サム)の妹のスクリーマーがけっこう印象的だし、全体的にもなかなか面白い。しかし訳者が解説で誉めているほどの出来ではないと思う。これはシリーズで今後も続く模様。
なお、この作品は1981年に美山二郎訳で佑学社からも出ているはず。
- ホームズ少年探偵団2 さらわれた少女たち (The Case of the Threatened King)
- ロバート・ニューマン 著 神鳥統夫 訳
- 講談社青い鳥文庫 1998/3/15 (原書1982)
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アンドリュー少年を主人公とした2作目。しかし、ホームズは出てこない上にイレギュラーズの出番すらなく、アンドリュー個人(とワイアット警部とスクリーマー)の冒険となっています。さらにシリーズの続きも出るようですが、この調子だと読まないかもしれません。(追記:3作目も出ましたが買っていません)
- シャーロック・ホームズ対切り裂きジャック (The Last Sherlock Holmes Story)
- M・ディブディン 著 日暮雅通 訳・解説
- 河出書房新社河出文庫 2004/2/10 (原書1978)
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また随分と古いものを訳出してきたものだが、あいかわらず日暮氏の言うほど魅力ある出来とは思えない。
最後にもう一つどんでん返しがあれば面白かったかもしれないが、そのままバッドエンドなのでそこまでの持って行き方がもたもたしている印象しかない。この程度のネタであれば、短編で十分かも。
- ワトスン夫人とホームズの華麗な冒険 (MEMOIRES DE MARY WATSON)
- ジャン・デュトワール 著 長島良三 訳・訳者あとがき
- 講談社 1982/1/20 (原書1980)
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「四つの署名」を後のワトスン夫人メアリー・モースタンの視点から描いた異色作。恋する乙女のワトスンびいきは凄いもので、この作品でのホームズは単なる変人と化している。
- 世界SFパロディ傑作選
- 風見潤・安田均 編 安田均の解説
- 講談社講談社文庫 1980/6/15
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ジョナサン・スウィフト・ソマーズ三世(フィリップ・ホセ・ファーマー)作の「スカーレティンの研究」がホームズパロディである。探偵はラルフ・フォン・ヴァウ・ヴァウ。一応、彼の素性がSFとして収録された由縁か。
- ホームズ贋作展覧会
- 各務三郎 編・解説
- 河出書房新社河出文庫 1989/7/4 (親本は講談社から1980/7)
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純粋に国内で編纂された本だが、収録作品は海外ものばかりなので、こちらに分類しておく。他の本との重複もあるが仕方ないか。一時はドイルの真作と騒がれた「指名手配の男」が収録されているのがポイント。
収録作品
- シャーロック・ホームズを訪ねたカール・マルクス (MARX & SHERLOCK HOLMES)
- アレクシス・ルカーユ 著 西永良成 訳
- 中央公論社C★NOVELS 1982/11/30 (原書1981)
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探偵としてデビューしたてだった若き日のホームズの冒険の回想録なのだが・・・かなり?な内容。ホームズものらしさは期待しないように。
- ゴルファー シャーロック・ホームズの冒険 (SHERLOCK HOLMES THE GOLFER)
- ボブ・ジョーンズ 著 永田実 訳・解説 摂津茂和・小林司・東山あかね 献辞
- ベースボール・マガジン社 1987/3/16 (原書1981)
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実はホームズはワトスンに隠れてゴルフを愛好していた、という作品。これもイロモノの部類に入るかもしれないが、それなりに面白い。
- ゴルファー シャーロック・ホームズの新冒険 (SHERLOCK HOLMES SAVED GOLF)
- ボブ・ジョーンズ 著 小鷹信光 訳・訳者あとがき
- ベースボール・マガジン社 1991/11/20 (原書1986)
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ホームズはゴルファーだった、の続編。「最後の事件」後の空白期間を題材としている。
しかし、案の定と言おうか、まさかと言おうか、三省堂神田本店でミステリではなくゴルフ書コーナーに置いてあったのには・・・
- 知られざる名探偵物語 (The Great Detectives)
- ジュリアン・シモンズ 著 宇野利泰 訳 新保博久の解説
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫 1987/4/30 (原書1981)
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ホームズの話だけの本ではなく、ホームズの他ミス・マープル、ネロ・ウルフなど計7人の名探偵に関する作品が収録されている。ホームズに関しては「ホームズの隠遁生活はいかに妨げられたか?」という小説が収録されているため、取り上げた。タイトル通り、引退後のホームズの関わったある事件の話。
- 宇宙英雄ローダン・シリーズ<523> ロボット探偵シャーロック (PERRY RHODAN,IN DEN HOHLEN VON LOKVORTH)
- ペーター・グリーゼ&クラーク・ダールトン 著 嶋田洋一 訳・あとがきにかえて
- 早川書房ハヤカワ文庫SF 2016/6/25 (原書1981)
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いや、まさか何十年ぶりにかペリー・ローダンを読むことになるとは思わなかったよ。
内容的には観察、推理に強いロボットが愛称としてシャーロックと呼ばれているだけでそれ程ホームズものらしさは無い。事件のクライマックスのあたりではまったく出番は無いし。しかしラストで披露する真相解明の手腕や、妙に人間臭い性格はけっこうホームズっぽいかも(笑)。
- シャーロック・ホームズの謎 モリアーティ教授と空白の三年間 (SHERLOCK HOLMES:My life and crimes)
- マイケル・ハードウィック 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき 北原尚彦 訳・解説
- 原書房 1995/8/19 (原書1984)
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「最後の事件」の真相もの。ホームズとモリアーティが協力して(いやいやながら)ことにあたる。この件に関してはワトスンはかやの外で、ホームズ自身が語り手となる。
2009年に「シャーロック・ホームズ わが人生と犯罪」と改題して復刊。
- ヤング・シャーロック ピラミッドの謎 (Young Sherlock Holmes)
- アラン・アーノルド 著 宮脇孝雄 訳・解説
- 新潮社新潮文庫 1986/3/8 (原書1985)
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スピルバーグ製作の同名映画のノベライズ。少年ホームズのわくわくするような冒険物語の秀作である。この作品で不満な点があるとすれば、「緋色の研究」でのホームズとワトソンの「再会」について処理されていないことぐらいか。
- ヤング・シャーロック=ホームズ ピラミッドの謎 (YOUNG SHERLOCK HOLMES THE STORY BOOK)
- ピーター・レランジス 著 田中一江 訳・解説
- 偕成社偕成社ブックス 1986/3 (原書1985)
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スピルバーグ製作の同名映画のジュブナイル向けノベライズ。アーノルド版に比べて描写が簡略化されてたりするが、クライマックスの対決シーンなどはこっちの方が丁寧かも。
- 霧の殺人鬼 ・レストレイド警部の冒険 (THE ADVENTURES OF INSPECTOR LESTRADE)
- M・J・トロー 著 斎藤数衛 訳・訳者あとがき
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫 1986/8/31 (原書1985)
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スコットランドヤードのレストレイドを主人公とした推理小説。童謡集(マザーグースみたいなの)「もじゃもじゃ頭のピーター」を模した連続殺人事件を追う。ホームズやワトスンも一応実在の人物として出てくるが、ホームズ物語自体は半フィクションであり、実物はちょっと違うというように描かれている(ドイルもワトスンの出版代理人として登場)。レストレイド本人もホームズ物語で描かれる間抜けな警官ではなく、有能な警部として活躍する。ただ私の場合、犬アニメ「名探偵ホームズ」のレストレイドの顔を連想してしまうので本文中の描写とちょっとズレてる(笑)。好きな作品。
- クリミアの亡霊 ・レストレイド警部の冒険 (BRIGADE. FURTHER ADVENTURES OF INSPECTOR LESTRADE)
- M・J・トロー 著 斎藤数衛 訳・訳者あとがき
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫 1987/8/15 (原書1986)
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シリーズ第2弾。大勢の実在の人物が出るのと妙にレストレイドが女性にもてるのがこのシリーズの面白さである。連続殺人事件で、どうにも後手後手に回ってしまうのだが、そこがまたストーリーを盛り上げる。
- レストレード警部と三人のホームズ (LESTRADE AND THE HALLOWED HOUSE)
- M・J・トロー 著 後藤安彦 訳・解説
- 新潮社新潮文庫 1989/5/25 (原書1987)
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何故か三作目になって早川から新潮に移ってしまった。タイトルの三人のホームズとはシャーロック(本シリーズでは1作目で死亡している)、マイクロフトおよび彼らの従弟のオマールである。このシリーズの続編の翻訳も近日発行予定となっていたのだが、どうなったのであろうか。
- シャーロック・ホームズ・ミステリー ロンドンの超能力男 (THE ADVENTURE OF THE ECTOPLASMIC MAN)
- ダニエル・スタシャワー 編(故J.H.ワトスン博士 著) 日暮雅通 訳
- 扶桑社扶桑社ミステリー(文庫) 1989/6/23 (原書1985)
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実在した有名な奇術師ハリー・フーディーニとホームズの冒険。考えてみれば手品師にとってホームズの観察眼は忌々しい以外の何者でもあるまい。ほとんどフーディーニとホームズのかけ合い漫才状態である。またクライマックスの飛行機によるチェイスも盛り上がる。
- シャーロック・ホームズ 知られざる事件 (The Further Adventures of Sherlock Holmes)
- リチャード・L・グリーン 編 佐藤明子 訳・解説
- 勉誠社推理探偵文学館 1996/11/10 (原書1985)
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原書では11編の作品が納められているがその内の3編だけを選んで訳している。おまけにその3編ともが既に訳されている作品だというのがひどい。
「シェフィールドの銀行家」というのは「指名手配の男」の事で、次の「狙われた男」と共に「贋作ホームズ展覧会」に収録されているし、「消えた婚約者」は「知られざる名探偵物語」に入っている。この2冊を合わせてもこの本よりも安く上がるので、はっきり言って訳者の出版センスを疑わざるを得ない。
収録作品
- 新シャーロック・ホームズ 魔犬の復讐 (THE REVENGE OF THE HOUND)
- マイケル・ハードウィック 著 中田耕治 訳・訳者あとがき
- 二見書房二見文庫 1989/2/25 (原書1987)
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魔犬といっても「バスカヴィルの犬」とは直接は関係無い。わざわざ「新…」などとつけるからシリーズ化するのかと思ったら、これっきりであった。
- シャーロック・ホームズの新冒険〔上〕 (The New Adventure of Sherlock Holmes)
- M・H・グリーンバーグ&C・R・ウォー 編 高橋豊・山本俊子 訳
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫 1989/7/31 (原書1987)
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「緋色の研究」が出版されて百年を記念して書き下ろされたアンソロジー。上巻はまえがきと1編の詩、そして8編を収録。巻末の作家解説は斎藤数衛か?
収録作品
- シャーロック・ホームズの新冒険〔下〕 (The New Adventure of Sherlock Holmes)
- M・H・グリーンバーグ&C・R・ウォー 編 斎藤数衛・坂口玲子 訳
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫 1989/7/31 (原書1987)
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「緋色の研究」が出版されて百年を記念して書き下ろされたアンソロジー。下巻は7編+あとがきを収録。スティーヴン・キングの「ワトスン、事件を解決す」が秀逸。
収録作品
- シャーロック・ホームズの気晴らし (Les Passe-temps de Sherlock Holmes)
- ルネ・レヴァン 著 寺井杏里 訳・訳者解説
- 国書刊行会 2014/9/25 (原書1987、1989)
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同著者のLes Passe-temps de Sherlock Holmes(1989)とLe Bestiaire de Sherlock Holmes(1987)という2冊の短編集の日本独自の合本。ただしそれぞれ3作しか収録されていない上に、後者は繋がったストーリーの連作的な要素が強いのに最後まで収録されていないため、非常に中途半端に終わっている。割と高価な本だけに残念な仕様である。
全ていわゆる「語られざる事件」を題材に取った作品。少なくともワトスンが語り手となっている作品についてはちゃんとしたパスティーシュとして出来上がっているし、少し風変わりな要素も盛り込んである。
最後の2作は語り手がホームズということもあるが、特色を作ろうとし過ぎたり、色々な要素を盛り込もうと頑張り過ぎたきらいが無いでもない。
収録作品
- わが愛しのホームズ (MY DEAREST HOLMES)
- ロヘイズ・ピアシー 著 柿沼瑛子 訳・訳者あとがき
- 白泉社 1993/3/25 (原書1988)
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ホームズとワトソンは愛し合っていた・・・という作品。挿絵が坂田靖子のソフトな絵柄でなかったら、ちょっとエグイかもしれない。ただ、不真面目に書かれているわけではなく、同性愛に対する偏見の強い時代の中での、ワトソンの苦悩がよく描写されている。
- シャーロック・ホームズの失われた事件簿 (The Lost Adventure of Sherlock Holmes)
- ケン・グリーンウォルド 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 原書房 2004/11/19 (原書1989)
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1940年代のラジオドラマをノベライズしたものだそう。そのため、正典とはちょっと違う雰囲気にはなっているものの、ノリは良い作品が多い。
収録作品
- シャーロック・ホームズの秘密ファイル (THE SECRET FILES OF SHERLOCK HOLMES)
- ジューン・トムスン 著 押田由起 訳 法月綸太郎の解説
- 東京創元社創元推理文庫 1991/5/31 (原書1990)
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7編の短編を収録。
収録作品
- シャーロック・ホームズのクロニクル (THE SECRET CHRONICLES OF SHERLOCK HOLMES)
- ジューン・トムスン 著 押田由起 訳 有栖川有栖の解説
- 東京創元社創元推理文庫 1993/6/25 (原書1992)
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「…秘密ファイル」の続編(つながる話がある)。7編の短編を収録。
収録作品
- シャーロック・ホームズのジャーナル (THE SECRET JOURNALS OF SHERLOCK HOLMES)
- ジューン・トムスン 著 押田由起 訳 栗須一の解説
- 東京創元社創元推理文庫 1996/10/25 (原書1993)
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7編の短編を収録。
三冊目の短編集で、これだけ続くのも珍しい。このシリーズの内容は基本的に非常にオーソドックス。安心して読める半面、意外な展開というのは少ない。
収録作品
- シャーロック・ホームズのドキュメント (THE SECRET DOCUMENTS OF SHERLOCK HOLMES)
- ジューン・トムスン 著 押田由起 訳 北原尚彦の解説
- 東京創元社創元推理文庫 2000/2/25 (原書1997)
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7編の短編を収録。
今回は、なぜその事件記録が公開されなかったかという理由にいちいち説明があって面白い。
ただし、北原の解説の女性作家作品に対する不当な評価はいただけない。自分の好みの問題をあたかも作品の出来そのものにすり替えているという自覚が無い。「ホームズを女にしてみた」作品の方が、私にとってはトムスンの一連の作品より好きだということは言い添えておく。
収録作品
- おやすみなさい、ホームズさん 上 アイリーン・アドラーの冒険 (GOOD NIGHT,MR.HOLMES)
- キャロル・ネルソン・ダグラス 著 日暮雅通 訳
- 東京創元社創元推理文庫 2011/11/25 (原書1990)
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上巻では語り手であるペネロピー・ハクスリー(ネル)とアイリーン・アドラーの出会いを描く。まだ舞台で有名になる前のアイリーンと共に、探偵のような仕事の依頼を請け、謎を追っていく。ゴドフリー・ノートンも登場する。
- おやすみなさい、ホームズさん 下 アイリーン・アドラーの冒険 (GOOD NIGHT,MR.HOLMES)
- キャロル・ネルソン・ダグラス 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 東京創元社創元推理文庫 2011/11/25 (原書1990)
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題材的にもっと新しい作品かと思って(カバーイラストのせいもあるが)いたら、1990年とジューン・トムスン作品と変わらない時期のものだった。シリーズもので8作目まで出ているようだ。
下巻では「ボヘミアの醜聞」の舞台裏とでも言うべき、アイリーン側から見た出来事が語られる。
- おめざめですか、アイリーン アイリーン・アドラーの冒険 (THE ADVENTURESS(GOOD MORNING,IRENE))
- キャロル・ネルソン・ダグラス 著 日暮雅通 訳
- 東京創元社創元推理文庫 2013/11/22 (原書1991)
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前作の後、パリ近郊で暮らすペネロピー(ネル)とアイリーン&ゴドフリー・ノートン夫妻が遭遇した事件の謎を追ってモンテカルロを訪れる。
死亡した事になってる割には偽名も使わず(結婚で姓は変わっているが)に、さすがに舞台には立たないけれど割と普通に暮らしているアイリーンとゴドフリー(こちらも本国で死亡している事は仕事の資格問題に支障は無いのか?)の夫婦仲は円満そう。
ホームズも一応出てくるけれど、ほとんど活躍は無いし、ちょっと間が抜けている?
- ごきげんいかが、ワトスン博士 上 アイリーン・アドラーの冒険 (IRENE AT LARGE(A SOUL OF STEEL))
- キャロル・ネルソン・ダグラス 著 日暮雅通 訳
- 東京創元社創元推理文庫 2019/6/28 (原書1992)
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今回は表紙に「アイリーン・アドラーの冒険」が無くなっているけれど奥付には書いてあるのでそのまま記載。
パリで再会したペネロピー(ネル)の知人の元英軍人がアフガニスタンで助けてくれた軍医のワトスンを探しているのを助ける話のはずが、それでロンドンに向かうだけでほぼ上巻を使い切っている展開の遅さ。緋色の研究が世に出る前なのか、なかなかあのアフガニスタン帰りの元軍医のワトスンに結び付かないし。
途中の話でも、蛇のいるところで蛇の毒で死んだ男に咬み傷が無いのが謎という話をしているのに、何故かもう1匹の蛇がいたのかもとかいう無意味な推理をしていたりするし。
- ごきげんいかが、ワトスン博士 下 アイリーン・アドラーの冒険 (IRENE AT LARGE(A SOUL OF STEEL))
- キャロル・ネルソン・ダグラス 著 日暮雅通 訳
- 東京創元社創元推理文庫 2019/6/28 (原書1992)
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本シリーズに出て来るホームズはどこかどうしようもなく間抜けなようだ。語り手であるペネロピー(ネル)の見方が偏見に満ちているというだけではなく、実際に不手際が目立つ。
それは別にしても、展開がまだるっこしくて無駄な装飾が多い。
- エドウィン・ドルードの失踪 (THE DISAPPEARANCE OF EDWIN DROOD)
- ピーター・ローランド 著 押田由起 訳 小池滋の解説
- 東京創元社創元推理文庫 1993/12/17 (原書1991)
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チャールズ・ディケンズの未完の小説「エドウィン・ドルードの謎」をホームズが解決するというものだが、どうも最後は納得がいかない。
- わが愛しのワトスン (My Dear Watson)
- マーガレット・P・ブリッジズ 著 春野丈伸 訳
- 文藝春秋社 1992/9/30 (原書1992)
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第10回サントリーミステリー大賞特別佳作賞。
こちらは同性愛ではなく、ホームズは実は女性だったという作品。モリアーティの娘がホームズへの復讐を果たす手段として選んだのは・・・
- ホワイトチャペルの恐怖・上 (THE WHITECHAPEL HORRORS)
- エドワード・B・ハナ 著 日暮雅通 訳
- 扶桑社扶桑社ミステリー(文庫) 1996/3/30 (原書1992)
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下巻参照。
- ホワイトチャペルの恐怖・下 (THE WHITECHAPEL HORRORS)
- エドワード・B・ハナ 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 扶桑社扶桑社ミステリー(文庫) 1996/3/30 (原書1992)
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切り裂きジャックの事件を扱った作品。ワトスンの視点ではなく三人称で書かれているのと、最後が…なのが不満な作品。
- リスト・オブ・セブン(上) (The List of 7)
- マーク・フロスト 著 飛田野裕子 訳
- 扶桑社ミステリー文庫 1995/1/30 (原書1993)
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これはホームズではなく、生みの親のコナン・ドイルを主人公としたフィクションなのだが、ホームズパロディとして読んでも面白い内容。ドイルがまだホームズを生み出す前にたまたま書いた小説が元で事件に巻き込まれる。そのドイルに力を貸すのがホームズを彷彿とさせる謎の男で・・・という展開。
解説では触れられていなかったけれど、タイトルは「四つの署名」に引っ掛けてると思う。
- リスト・オブ・セブン(下) (The List of 7)
- マーク・フロスト 著 飛田野裕子 訳 日暮雅通の解説
- 扶桑社ミステリー文庫 1995/1/30 (原書1993)
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この作品では一応ドイルがワトスン役を勤めているといえるのだが、観察力・推理力がホームズ役のジャックに決してひけを取っていないので、ドイルを主役とした冒険ものとして読んでも面白い。
ただ、個人的にはホームズものとオカルト(超自然)ジャンル(オカルト否定ものは除く)は相性が悪いと思うのだがどうだろうか。
- シャーロック・ホームズの恋 (SHERLOCK IN LOVE)
- セナ・ジーター・ナスランド 著 青木久恵 訳 河村幹夫の解説
- 早川書房ミステリアス・プレス文庫 1995/2/28 (原書1993)
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恋愛感情を否定する(女嫌いとは少し違うだろう)ホームズの恋愛を描いた作品はいくつもあるが、これはその中でもベストの出来と言って良いと思う。なお、老人となった現時点のワトスンも登場するが、少々ボケ気味なのがお愛敬である。
- シャーロック・ホームズ対フロイト (The Case of Emily V.)
- キース・オートリー 著 東山あかね・熊谷彰 訳・訳者あとがき 小林司 監修・解説
- 光文社光文社文庫 2006/6/20 (原書1993)
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主人公は原書のタイトルにもなっているエミリーで、ホームズもフロイトも脇役だし、二人の対面もほんのわずかで終わる。単に二人の著名人、キャラを利用しているだけでしかない。心理学者らしく、単にフロイトと絡めて架空の症例を書いてみたかっただけという程度。
- 虚ろなる十月の夜に (A NIGHT IN THE LONSOME OCTOBER)
- ロジャー・ゼラズニイ 著 森瀬繚 訳・訳者あとがき
- 竹書房竹書房文庫 2017/11/2 (原書1993)
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ロジャー・ゼラズニイは馴染みのある名前ではあるけれど、それほど多くは読んでいなかった気がする。そんな作家の作品が意外な時期に邦訳刊行。
正直、リストに入れて良いものか悩むところ。本作では他の有名作品のキャラが伯爵や博士といった肩書で登場するものの(教授は出てこなかった)、具体的な名前では出てこない。名探偵もおそらくはホームズだろうとは思われるものの、話の中では割と傍流のキャラである。なんといっても主人公(語り手)は一貫して犬(ホームズ作品とは関係無い)だし(笑)。
- 冬のさなかに ホームズ2世最初の事件 (IN THE DEAD OF WINTER)
- アビイ・ペン・ベイカー 著 高田恵子 訳 巽昌章の解説
- 東京創元社創元推理文庫 1996/2/2 (原書1994)
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ホームズとアイリーネ・アドラーとの間に生まれた娘、マール・アドラー・ノートン(つまり表向きの父親はゴドフリー・ノートン)とその親友兼記録者フェイ・マーティン・タリスの出会いと最初の冒険をつづった物語。ホームズとワトスンも出てきており、ラストでマールの正体を知ったホームズの反応が感動的である。続編もあるそうなので期待される。
- シャーロック・ホームズの愛弟子 (The Beekeeper's Apprentice/On the segregation of the Queen)
- ローリー・キング 著 山田久美子 訳・訳者あとがき
- 集英社集英社文庫 1997/6/25 (原書1995)
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物語の主役にしてホームズの弟子兼パートナーとなるのはメアリ・ラッセル。18才にして(ホームズとの出会いは15才)、時として老いたホームズを凌ぐ鋭さを見せる非常に魅力的な女性である。彼女に足りないのは経験とネームバリューのみ。
実際、ホームズの人間的魅力を描くにあたって、このメアリほど相応しいパートナーはこれまで無かったかもしれない。ホームズ並の頭脳を持ちながらホームズと敵対も競争もせず、謙虚にホームズの教えを受けることの出来る存在が今までいたろうか。
- シャーロック・ホームズの愛弟子 女たちの闇 (A Monstrous Regiment of Women)
- ローリー・キング 著 山田久美子 訳・訳者あとがき
- 集英社集英社文庫 1999/4/20 (原書1995)
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メアリ・ラッセルものの2作目。彼女も成人し、ホームズとの関係にも微妙な変化が現れたところから始まる。
第1次大戦後のイギリスを舞台にしているというのはホームズものとしては珍しく、このシリーズならではの楽しみと言えるかもしれない。正典のホームズの活躍していた頃の「次の時代」という印象を強く受ける。カルトというより社会活動・政治運動的な宗教団体を題材にしているところも興味深い。
この話のラストについては、前作の序文でのメアリの署名からいずれそうなるとは予想していたが、意外と早かったかなというところ。
- シャーロック・ホームズの愛弟子 マリアの手紙 (A Letter of Mary)
- ローリー・キング 著 山田久美子 訳・訳者あとがき
- 集英社集英社文庫 2000/8/25 (原書1996)
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今回は正直言って、メアリが主役とは思えない出来。「バスカビル家の犬」でホームズと別行動を取っていたワトスンを思い出させる。犯人が別な方が良かった。タイトルの手紙の扱いも物足りない。
- シャーロック・ホームズの愛弟子 バスカヴィルの謎 (The Moor)
- ローリー・キング 著 山田久美子 訳・訳者あとがき
- 集英社集英社文庫 2002/4/23 (原書1998)
-
ダートムアを舞台にしたり、ファンにはニヤリとさせる研究家で馴染みのあるベアリング=グールド(の祖父)の名前を出したり、客引きの要素はたっぷりとあるが、ホームズもメアリも活躍ぶりがパッとしない。また、特に最初の方に多い気がするが、「小説ではこうだったが(この作品内の)事実はこうだった」といういちいち正典ファンの神経を逆撫でするような要素を入れているのもいただけない。
このシリーズは進むほど、作品の何を楽しめば良いのか分からなくなって来る。
- シャーロック・ホームズの愛弟子 エルサレムへの道 (O JERUSALEM)
- ローリー・キング 著 山田久美子 訳・訳者あとがき
- 集英社集英社文庫 2004/8/25 (原書1999)
-
これはシリーズの時系列に沿ったものではなく、一作目の途中でパレスチナに退避していたときの話である。元々一作目ではこの部分の他に、出会い直後から大学に入るまであたりも大幅に端折られたりしていたため、この部分の抜け自体もさして気に留めるものではなかったので今更という感じも拭えない。
舞台も英国から遠く離れているため、ホームズでやる必要性の感じられない物語である。
- シャーロック・ホームズの愛弟子 公爵家の相続人 (JUSTICE HALL)
- ローリー・キング 著 山田久美子 訳・訳者あとがき
- 集英社集英社文庫 2006/9/25 (原書2002)
-
前作で共に旅をしたマフムードとアリーの実家の相続問題に関わる事件の物語。
ここ数作と違って、素直に捜査の物語として楽しめる。脇を固める登場人物にも魅力がある。ホームズが捜査らしい捜査を進められるのも良いが、何よりメアリが主役らしく(いくつかの点ではご都合主義的な幸運に恵まれて)ホームズを出し抜くような重要な発見をするのも良い。
ストーリー展開は満足できるのだが、クライマックスにもう少し紙量を割いて盛り上げて欲しかった気もする。
- シャーロック・ホームズの愛弟子 疑惑のマハーラージャ (THE GAME)
- ローリー・キング 著 山田久美子 訳・訳者あとがき
- 集英社集英社文庫 2010/2/25 (原書2004)
-
前作でちょっと持ち直したかと思ったのに、またまともな捜査らしい流れの無い、単に異国へ潜入したというだけの物語になってしまっている。キャラクターはいじり方次第で面白くなりそうな人物が多く出ているのに、活かしきれていない感じが残る。特にトマス・グッドハートが活躍し始めるのが遅くて残念。妹のサニーは印象的な別れも無く途中で消えるし。
また、わざとらしく些細な部分で思わせぶりな謎も残しているのが嫌な印象を残している。次作への伏線?
- シャーロック・ホームズ リオ連続殺人事件 (O XANGO DE BAKER STREET)
- J・ソアレス 著 武者圭子 訳・訳者あとがき
- 講談社 1998/12/8 (原書1995)
-
ストラディヴァリウス盗難の捜査を依頼されブラジルに赴いたホームズが連続殺人事件に巻き込まれる。
正直言って出来の悪いドタバタギャグだと思わないと読み続けられない。あとがきの褒め方なんか理解できないし(連続殺人とオチの件の類似性なんか、かなり早い段階で気付くよ)。こういうのも訳してくれるのはありがたいですが、わざわざハードカバーで出さないでよ、と言いたくなりました。
物語の世界(というか周囲の状況)とホームズ自身のキャラクターのどちらか一方が狂ってる(シュロック・ホームズとか)のなら、そのギャップを楽しめるのだが、両方だと逆にひねりが無くなってしまうだけ。
- 短編集 シャーロック・ホームズのSF大冒険 上 (SHERLOCK HOLMES IN ORBIT)
- M・レズニック M・H・グリーンバーグ 編 日暮雅通 監訳・監訳者あとがき
- 河出書房新社河出文庫 2006/9/10 (原書1995)
-
SFまたはファンタジー要素を絡ませた作品ばかりのこの本のための書き下ろし短編集。
過去、現在、未来、死後とジャンルを分けてあるがやはり過去編の量が多く、上巻に収まりきらないほどある。ホームズの正体ものと言うか、正典とは違う実像ものが目に付く。
収録作品
- 短編集 シャーロック・ホームズのSF大冒険 下 (SHERLOCK HOLMES IN ORBIT)
- M・レズニック M・H・グリーンバーグ 編 日暮雅通 監訳・監訳者あとがき
- 河出書房新社河出文庫 2006/9/10 (原書1995)
-
SFまたはファンタジー要素を絡ませた作品ばかりのこの本のための書き下ろし短編集。
現代編、未来編ではAIで再現されたホームズというネタが多い(しかも95年頃の視点)のは仕方ないか。ソウヤーの「未来からの考察−ホームズ最後の事件」は90年代SF傑作選[下]収録の「ホームズ、最後の事件ふたたび」の別訳。この短編集への収録が原典。
収録作品
- シャーロック・ホームズ クリスマスの依頼人 (HOLMES FOR THE HOLIDAYS)
- ジョン・レレンバーグ 編 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 原書房 1998/12/2 (原書1996)
-
クリスマスシーズンを題材にした短編集。ほとんどのものがワトソンの手記という正統派なスタイルを取っていて安心して読める。ふざけすぎのパロディは無いが、ひねりの利いたものも多く楽しめる。
また、わざわざ原書の編者が日本語版のための序文を書き下ろしていて、好感が持てる。
収録作品
- シャーロック・ホームズ 四人目の賢者 −クリスマスの依頼人II− (MORE HOLMES FOR THE HOLIDAYS)
- ジョン・L・レレンバーグ他 編 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 原書房 1999/11/29 (原書1999)
-
今回も安心して読めるクリスマスのホームズです。
あいかわらずクリスマス・キャロルネタもあるし、実在有名人登場ものも多い。「第二のヴァイオレット」のストレートなオチは好き(ひねるかと思っていたので)。
収録作品
- ワトスン君、もっと科学に心を開きたまえ 名探偵ホームズの科学事件簿 (THE STRANGE CASE OF MRS.HUDSON'S CAT)
- コリン・ブルース 著 布施由紀子 訳・訳者あとがき
- 角川書店 1999/6/30 (原書1997)
-
簡単に言うとあれである。ジョージ・ガモフの「トムキンスの冒険(不思議の国のトムキンス)」。トムキンス氏の役をワトスンがやっていると思えばいい。なんと適役なのであろうか。
ホームズと共に科学的事件に遭遇したワトスンが、ホームズはもちろんマイクロフトやあのチャレンジャー教授の導きを受けて知識を広げていく。
本来の発見者を差し置いてチャレンジャー教授たちが色々と重要な理論を打ち立てていくのに若干の違和感はあるが、話としては分かりやすく面白いので、物理は苦手という人にもぜひ読んで欲しい。
角川文庫から「ワトスン君、これは事件だ!」と改題されて文庫化されてます。
収録作品
- まただまされたな、ワトスン君! (CONNED AGAIN WATSON!)
- コリン・ブルース 著 布施由紀子 訳・訳者あとがき
- 角川書店 2002/5/30 (原書2001)
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「ワトスン君、もっと科学に心を開きたまえ」の作者の数学・確率編。ギャンブルや詐欺ネタなど、ひっかけられやすい題材を使っているので、前作より抵抗が少ないかも。
収録作品
- フライジング条約事件 マイクロフト・ホームズの機密ファイル (Against the Brotherhood)
- クイン・フォーセット 著 仁木めぐみ 訳・訳者あとがき
- 光文社光文社文庫 2007/9/20 (原書1997)
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マイクロフトの秘書を主人公(語り手というより主人公)とした話。シリーズものらしい。
ジャンル的にはスパイものになるかと思うのだが、フリーマントルの「…息子」といい、スパイものってどうして緊張が続くばかりで盛り上がらずにつまらないんだろう・・・
- シャーロック・ホームズの大冒険(上) (The Mammoth Book of New Sherlock Holmes Adventures)
- マイク・アシュレイ 編 エドワード・D・ホック他 著 日暮雅通 訳・訳者あとがきと解説
- 原書房 2009/7/31 (原書1997)
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上巻には26編中13編を収録。ホームズの活躍年代別にまとめているのが特徴。その意味では正典のホームズ史に組み込めそうな正統派的な作品ばかりでトンデモ系は無し。
収録作品
- シャーロック・ホームズの大冒険(下) (The Mammoth Book of New Sherlock Holmes Adventures)
- マイク・アシュレイ 編 スティーヴン・バクスター他 著 日暮雅通 訳・訳者あとがきと解説
- 原書房 2009/12/28 (原書1997)
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下巻には26編中13編を収録。ホームズの活躍年代別にまとめていて下巻は一八九〇年代の続きから始まる。正統派的な作品がほとんどだが、本巻ではSFっぽいものや猟奇っぽいものもある。また最終部にはちょっと正典とは雰囲気の違う作品が多いかも。
収録作品
- ハイド氏の奇妙な犯罪 (LE CRIME ETRANGE DE MR HYDE)
- ジャン=ピエール・ノーグレット 著 三好郁郎 訳・訳者あとがき
- 東京創元社創元推理文庫 2003/10/31 (原書1998)
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「ジキル博士とハイド氏」の物語をハイド氏の視点から語ったという趣向の作品。四つの署名のジョナサン・スモールとそれを追うホームズ達が途中に絡むが、メインの話ではない。しかも事実が四つの署名で語られたものと違うように描かれている。
- シャーロック・ホームズ七つの挑戦 (Sette sfide per Sherlock Holmes)
- エンリコ・ソリト 著 天野泰明 訳・訳者あとがき
- 国書刊行会 2009/9/25 (原書1998-2004)
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翻訳書としては珍しいイタリアの作品。ただし原書の単行本(短編集)そのままの翻訳ではなく、五冊の短編集の中から訳者が独自にピックアップし、書名も独自に付けている日本オリジナルの短編集。
イタリアを舞台にしてものは一編しかなく、それも最大の共演者がアメリカのマーク・トウェインなので、それほど英米圏の作品との違いは意識されない。パスティーシュとして普通に楽しめる。
収録作品
- シャーロック・ホームズの失われた冒険 (The Mandala of Sherlock Holmes:The Adventure of the Great Detective in India and Tibet)
- ジャムヤン・ノルブ 著 東山あかね・熊谷彰・小林司 訳・訳者あとがき 石濱裕美子 解説
- 河出書房新社 2004/3/20 (原書1999)
-
いわゆる大空白期もの。しかし後半はホームズものというより伝奇ものかインディ・ジョーンズズみたいになってしまっている。解説者等はチベットものとして褒めているが、政治情勢みたいなことばかりで現地風俗みたいなことの描写は少ないし。
- 千里眼を持つ男 (THE GREAT GAME)
- マイケル・クーランド 著 吉川正子 訳・訳者あとがき 日暮雅通 解説
- 講談社講談社文庫 2004/6/15 (原書2001)
-
モリアーティを主役にした物語。ホームズも主要人物として登場する。
モリアーティは裏社会にも通じているようだが、正典で言うところの犯罪界のナポレオンという位置付けではないらしい。ただし今作を読んでいるだけではよく分からないけど。どうもこれはシリーズものの3作目らしいです。
実際に事件が動き出すまでの序盤が異様に「たるい」ですけど、その後はけっこう面白いです。
- シャーロック・ホームズ ベイカー街の殺人 (MURDER IN BAKER STREET)
- エドワード・D・ホック他 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 原書房 2002/12/24 (原書2001)
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流れとしては「クリスマスの依頼人」から繋がる短編集だが、今回はクリスマスのテーマ限定は無いので、このリストではシリーズとしては扱わなかった。
小説以外にドイル自身の自伝の一部も含めたエッセイも3本収録されているが、特にこの短編集に収録する必要性は感じられない。
収録作品
- 患者の眼 シャーロック・ホームズ誕生秘史I (THE PATIENT'S EYES)
- デイヴィット・ピリー 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 文藝春秋文春文庫 2005/7/10 (原書2001)
-
コナン・ドイルとホームズのモデルと言われるジョゼフ・ベル博士を主人公にした邦題テレビドラマシリーズ「コナン・ドイルの事件簿」の小説版。あとがきからではどちらが原作かが曖昧だが、発表順だけ考えるとこちらがノベライズなのか? ともかく、伝記ではなくフィクション。「リスト・オブ・セブン」に近いがオカルトまではいかない。
ベル博士とドイルの関係が微妙なため、すっきりと楽しめる作風ではない。また、あちこちにホームズものの要素(の元ネタっぽいもの)がわざとらしくちりばめてあるのが逆に鬱陶しく感じるかもしれない。
- 90年代SF傑作選[下] (THE BEST SCIENCE FICTION OF NINETIES)
- 山岸真 編・解説
- 早川書房ハヤカワ文庫 2002/3/31
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日本独自の編集の短編集で、ロバート・J・ソウヤーの「ホームズ、最後の事件ふたたび」(You See But You Do Not Observe)(1995)が収録されている。
- シャーロック・ホームズ ワトスンの災厄 (Murder,My Dear Watson - New Tales of Sherlock Holmes)
- アン・ペリー他 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 原書房 2003/11/7 (原書2003)
-
割とオーソドックスなパスティーシュが多いが、有名なホームズ役者ウィリアム・ジレットを主役にしたものと、ドイルとは違う架空の作者の語るホームズ物語誕生の秘密を語ったものが風変わりで面白い。
後半の作者紹介の何人分かが同じ内容になっている校正ミスはいただけない。(重版で直るか?)
あまり面白くないエッセイが3本収録されているのは「ベイカー街の殺人」と同じ。
収録作品
- シャーロック・ホームズ 東洋の冒険 (The Oriental Casebook of Sherlock Holmes)
- テッド・リカーディ 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 光文社光文社文庫 2004/8/20 (原書2003)
-
これもいわゆる大空白時代もの。ホームズの旅した、あちこちでの話をワトスンが聞き取るかたちでまとめているため、事件そのものにはワトスンが絡んでいなくても普段の冒険に近い印象で読める。ただ、いくつかの語られざる事件もこの時期のものとしてしまっているのは、ワトスンが一緒に体験していないという点では残念。
収録作品
- シャーロック・ホームズの息子 (上) (THE HOLMES INHERITANCE(vol.I))
- ブライアン・フリーマントル 著 日暮雅通 訳
- 新潮社新潮文庫 2005/10/1 (原書2004)
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題名の通り、ホームズの息子を主人公として第一次世界大戦前夜を舞台としたスパイもの。
- シャーロック・ホームズの息子 (下) (THE HOLMES INHERITANCE(vol.II))
- ブライアン・フリーマントル 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 新潮社新潮文庫 2005/10/1 (原書2004)
-
スパイものであっていつもの推理小説のようなノリはない。
それにしてもライヘンバッハの滝の出来事の直後に生まれた息子にモラン大佐と同じセバスチャンと名付けるセンスはどういうものか。
- ホームズ二世のロシア秘録 (THE HOLMES FACTOR)
- ブライアン・フリーマントル 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 新潮社新潮文庫 2006/10/1 (原書2005)
-
「…の息子」の続編。ホームズの行動はあくまでもおまけ程度なので、大したことは無い。
そもそもスパイもの好きな人にとって、こういう作品って面白いんでしょうか。
- シャーロック・ホームズ最後の解決 (THE FINAL SOLUTION)
- マイケル・シェイボン 著 黒原敏行 訳・訳者あとがき
- 新潮社新潮文庫 2010/2/1 (原書2004)
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作中にホームズの名前は無いものの、あまりにもあからさまなので名前を出さない意味が分からないほど。邦題に原題に無いホームズを付けたのもそのため(かつ、でないと売れないから)だろう。
事件の解決もなし崩しっぽいし、解決後にホームズによる説明も無いので、すっきりしない。同じく引退後の名乗らないホームズを出した「蜜の味」と同じくらいかそれよりひどいと感じる出来。訳者があとがきで言っているような“正典そのまま”っぽさはまったく感じられない。
視点が章ごとに変わる(誰の視点なのか曖昧な章もある)のも、その狙いが不明なので単に落ち着かないだけだし、オウムの視点の章まであるとあっては、ミステリーじゃない気がしてきてしまう。
- シャーロック・ホームズ メアリ女王の個人秘書殺人事件 (THE ITALIAN SECRETARY)
- ケイレブ・カー 著 山川美千枝 訳 ジョン・レレンバーグ あとがき 小林司・東山あかね 解説
- 学習研究社 2006/12/12 (原書2005)
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「ベイカー街の幽霊」でエッセイも書いているカーの作品。元々はそちら用に依頼したが「短編は小説の長さにまでなっていた」ために独立したらしい。
レレンバーグの「あとがき」はもちろん(編者あとがきという意味でもなければ)あとがきではなく解説である。作者本人のあとがきは「謝辞」として載っている。そこを「あとがき」としてしまうのは自分達の文を「解説」としておきたい小林・東山の意向だろうか。「緋色の『習作』」といい、そんな翻訳センスの人たちだ。
作品そのものはオカルトかと心配させておいてそうでもなく、悪くなかった。しかしクライマックスが大味なアクションもどきになった上に余計なエピローグも入っている(元々の依頼のためか)のが残念。タイトルの秘書(原書でも)の件も別にホームズが謎解きするわけでも何でもないので、そちらのセンスも疑問だ。
- ベイカー少年探偵団1 消えた名探偵 (BAKER STREET BOYS 1 THE CASE OF THE DISAPPEARING DETECTIVE)
- アンソニー・リード 著 池央耿 訳・訳者あとがき
- 評論社児童図書館・文学の部屋 2007/12/20 (原書2005)
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『BBCが一九八三年に放映したテレビドラマ』がベースだそうです。
児童書として見ればほとんど文句無く面白い作品。ニューマンの「ホームズ少年探偵団」はもちろん、真瀬もとの「ベイカー街少年探偵団ジャーナル」みたいに余計な伏線を張りすぎることも無く、気持ち良く読める。
少年たちに対するホームズの態度も暖かく見えるし、名探偵のピンチに少年探偵団が活躍するというシチュエーションは、児童書としては最高ではないだろうか。
- ベイカー少年探偵団2 さらわれた千里眼 (BAKER STREET BOYS 2 THE CASE OF THE CAPTIVE CLAIRVOYANT)
- アンソニー・リード 著 池央耿 訳・訳者あとがき
- 評論社児童図書館・文学の部屋 2007/12/20 (原書2005)
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劇場を舞台に千里眼の少女を助けるために奔走する少年探偵団の活躍。伏線の張り方も上手い。
ホームズ不在時の事件ということでホームズ色が無くなるのではないかという不安もあったが、そんなこともなくラストではちゃんとホームズも顔を出して彼らしい手際も見せるので安心できる。
ただ、このシリーズは大空白期以降の時期とされているのに、ホームズ不在の理由がバスカヴィル家の犬事件というのはちょっと引っ掛かる(マニアだけでしょうが)。
- ベイカー少年探偵団3 呪われたルビー (BAKER STREET BOYS 3 THE CASE OF THE RANJIPUR RUBY)
- アンソニー・リード 著 池央耿 訳・訳者あとがき
- 評論社児童図書館・文学の部屋 2008/4/20 (原書2006)
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インドの藩王国の王子と知り合った少年探偵団が、彼を取り巻く陰謀に立ち向かう。
今回も良く出来ています。先を予想しながら読むのも楽しい。小間使いのアニーが良い感じで活躍しますね。
ただこのシリーズは各章の題の付け方がちょっとセンス無いかな。
- ベイカー少年探偵団4 ドラゴンを追え! (BAKER STREET BOYS 4 THE CASE OF THE LIMEHOUSE LAUNDRY)
- アンソニー・リード 著 池央耿 訳・訳者あとがき
- 評論社児童図書館・文学の部屋 2008/8/20 (原書2007)
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花売り娘たちの連続行方不明事件、そして少年探偵団の一員であるロージーまでも誘拐されてしまう。
相変わらず頼りたい時には不在のホームズ(笑)や警察の助けも得られないまま、ライムハウスを舞台に少年探偵団は中国人犯罪組織を追う。タイトル(邦訳の方)の言葉の本当の意味なんかも面白い。
ところで、さらわれる花売り娘たちの名前(51ページ)がみんな花に関係した名前なところに意味があるかと思ったけど、ただの言葉遊びだった模様。
- ベイカー少年探偵団5 盗まれた宝石 (BAKER STREET BOYS 5 THE CASE OF THE STOLEN SPARKLES)
- アンソニー・リード 著 池央耿 訳・訳者あとがき
- 評論社児童図書館・文学の部屋 2009/1/20 (原書2008)
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ティアラ窃盗の濡れ衣を掛けられた召使いの少女の疑いを晴らすため、調査のため探偵団のクイニーが代わりの召使いとして事件の起きたお屋敷へ潜入する。
今まであまり前面で活躍することの無かったクイニーの役割が大きいことも嬉しいし、ウィギンズの推理の部分での働きが今までで一番きれいに決まっているのではないだろうか。その分、ホームズの登場が唐突でちょい役っぽいけど。
しかし真犯人が、盗み自体はともかく、罪を小さな少女に押し付けようとするほどの悪人には見えない。決して子供が嫌いという風でも無さそうだしなぁ。
- ベイカー少年探偵団6 地下牢の幽霊 (BAKER STREET BOYS 6 THE CASE OF THE HAUNTED HORRORS)
- アンソニー・リード 著 池央耿 訳・訳者あとがき
- 評論社児童図書館・文学の部屋 2009/4/30 (原書2009)
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以前にも舞台となったマダム・デュポンの蝋人形館で守衛のサージが幽霊を見たことが発端となって、探偵団がスパイ事件に関わっていく。
今作がシリーズ完結編。イギリス本国に先駆けての出版だそうです。今回のクライマックスシーンはドラマで見たくなります。ゲストキャラとしてはルーバが良い味を出してますね。
- ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件 (A SLIGHT TRICK OF THE MIND)
- ミッチ・カリン 著 駒月雅子 訳・訳者あとがき
- KADOKAWA 2015/3/30 (原書2005)
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第二次世界大戦後のサセックスでのホームズの生活と、その少し前の占領下の日本での旅の回想、そして一九〇二年の『グラス・アルモニカの事件』の回想の3つの物語が並行して語られる。とはいうものの、全体的に静かに淡々と進む話ばかりなのでとても地味。イアン・マッケラン主演で映画化されるけれど、盛り上がるのだろうか。
特に『グラス・アルモニカの事件』はホームズとしては「異様」と言っても良い話になっているので、エピローグも含め、なさけないホームズというものを見せられるんじゃないかと不安になる。
- シャーロック・ホームズ ベイカー街の幽霊 (Ghost in Baker Street)
- ジョン・L・ブリーン他 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 原書房 2006/8/22 (原書2006)
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他の本のところでも書きましたが、ホームズとオカルトものは相性が悪い。オカルト否定ものなら良いんですが、この本に収録されている作品は否定ものであっても何らかの超自然の余韻を残していてスッキリしないものが多い。
相変わらずあまり面白くないエッセイも3本収録。(エスルマンのは少しマシですが)
収録作品
- エノーラ・ホームズの事件簿 〜消えた公爵家の子息〜 (The Case of the Missing Marquess)
- ナンシー・スプリンガー 著 杉田七重 訳・訳者あとがき
- 小学館ルルル文庫 2007/10/7 (原書2006)
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ホームズの妹が主人公。児童図書のせいか推理面ではそれほど大した内容は無いけれど、ストーリーや主人公の魅力の点では悪くない。しかしマイクロフトの描写が正典からかけ離れているのは納得しがたい。ホームズを鬱病としてあるのは児童ものとして薬物中毒の代用か。
シリーズ化するのであれば、出来ればワトスン役となるようなキャラも出しておいて欲しかった。まぁ語りが探偵役の一人称となるのは児童ものとして推理の過程まで辿らせるために仕方ないかもしれないが。
エノーラが「緋色の研究」を読んでいる割にはレストレードと出会った時に思い出さないのはちょっと残念。
- エノーラ・ホームズの事件簿 〜ふたつの顔を持つ令嬢〜 (The Case of Left-Handed LADY)
- ナンシー・スプリンガー 著 杉田七重 訳・訳者あとがき
- 小学館ルルル文庫 2008/7/6 (原書2007)
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第二弾ですが、ホームズの扱いが前作より随分改善されているような気がします。マイクロフトは相変わらずだけど(笑)。
事件の真相はちょっと現代風かもしれない。エノーラの生活は相変わらず安定しないようだ。
- エノーラ・ホームズの事件簿 〜ワトスン博士と奇妙な花束〜 (The Case of the Bizarre Bouquets)
- ナンシー・スプリンガー 著 杉田七重 訳・訳者あとがき
- 小学館ルルル文庫 2009/3/8 (原書2008)
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前作のラストから、序盤はエノーラがしばらくうじうじしていてもたつく感じだが、捜査が本格的に動き出すと調子が戻ってきて活躍してくれる。しかし今回のホームズは役に立たなすぎだよ・・・(笑)。
- エノーラ・ホームズの事件簿 〜令嬢の結婚〜 (The Case of Peculiar Pink Fan)
- ナンシー・スプリンガー 著 杉田七重 訳・訳者あとがき
- 小学館ルルル文庫 2009/6/3 (原書2008)
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2巻目に登場したセシリー・アリステアが意に沿わぬ結婚をさせられそうになっているのを知り、エノーラが助け出そうと奔走。
正直、キャラの再登場としては早過ぎて懐かしさも嬉しい驚きも無いのだけれど、今回はセシリーの母親の依頼を受けたホームズと一緒に動く場面もあり、楽しめる。
母親ネタはちょっと引きずり過ぎではないだろうか。
- エノーラ・ホームズの事件簿 〜届かなかった暗号〜 (The Case of the Cryptic Crinoline)
- ナンシー・スプリンガー 著 杉田七重 訳・訳者あとがき
- 小学館ルルル文庫 2009/10/6 (原書2009)
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エノーラの下宿の主人ミセス・タッパーに届いた脅迫状とそれに続く誘拐事件。あのナイチンゲールに絡んだ事件を追うことになる。
ミセス・タッパーがエノーラの普段の怪しげな行動に気付いていたり、序盤でうっかりつぶやいてしまった本名を読み取ってそう(耳が不自由だと読唇がうまくなるよね)だとか面白そうな人ではあるものの、その後の展開にはあまり活かされず、最後はちょっと頼りない人で終わってしまったので残念。
エノーラ達の母親は実はロンドンの上流階級婦人の間では有名人らしいので、こちらはシリーズの終わりまでには何か活躍してくれないだろうか。あとホームズが前巻で妹の自立を認めかけてたかと思ったのだけれど根本的なところでは考えが全然変わっていなかったことが判明。ある意味王子様役であるだけに、やや失望。
- シャーロック・ホームズ外伝 〈カラス同盟〉事件簿 (The Raven League:Sherlock Holmes is Missing!)
- アレックス・シモンズ/ビル・マッケイ 著 片岡しのぶ 訳・訳者あとがき
- あすなろ書房 2008/2/20 (原書2006)
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これもウィギンズを主人公としたイレギュラーズものの一つと言えそうだが、作中で《ベーカー街不正規隊》そのものは始まってすぐ舞台から消えてしまう。新たに仲間達を作りながら、敵に捕らえられたホームズを助けて事件を解決する。ウィギンズ達に対するホームズの接し方が他の作品との違いか。
続きそうな感じではあるが、どうだろうか。
- 荒野のホームズ (HOLMES ON THE RANGE)
- スティーブ・ホッケンスミス 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ 2008/7/15 (原書2006)
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なりきりホームズものではあるものの、ストーリーや人物描写の面白さと、ちょっとしたところで正典の世界と繋がってたりといったところが面白いので、このリストに入れておきます。
西部のカウボーイで文字も読めないのに、弟に読んでもらったホームズ物語がきっかけでホームズのような名探偵ぶりを発揮する兄と、ワトスン役の弟のコンビが活躍する物語。これ以前にミステリマガジンで短編が翻訳されたことはありますが、本作は同じシリーズのそれらとは別の長編デビュー作です。
- 荒野のホームズ、西へ行く (ON THE WRONG TRACK)
- スティーブ・ホッケンスミス 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ 2009/6/15 (原書2007)
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兄弟が今回は鉄道会社に雇われて列車で旅する中で事件に遭遇する。しかし一貫して肝心の兄の体調が悪いままなので、作品自体もスッキリしない感じ。クライマックスが少しだけ活劇になっているのが救いか。
- 壊れやすいもの (FRAGILE THINGS)
- ニール・ゲイマン 著 金原瑞人・野沢佳織 訳 金原瑞人 訳者あとがき
- 角川書店 2009/10/31 (原書2006)
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収録作でホームズものと言えるのは「翠色(エメラルド)の習作」一作のみ。このためだけに3千円近い本を買うのは少々厳しい。2004年にヒューゴー賞を受賞したこともあり、SFマガジンに訳が載ったこともあるのでそちらを持っていれば不要かも。
どうせなら初出のアンソロジー『ベイカー・ストリートを覆う影(Shadows Over Baker Street)』という本の方を翻訳出版して欲しいもの。
- シャーロック・ホームズ&イレギュラーズ・1 消されたサーカスの男 (SHERLOCK HOLMES and the Baker Street Irregulars,Case Book No.1,THE FALL of the AMAZING ZALINDAS)
- T・マック&M・シトリン 著 金原瑞人/相山夏奏 共訳
- 文溪堂 2011/09/ (原書2006)
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タイトルの通りイレギュラーズもので、ウィギンズの他、ホームズを感心させるほどの推理力を持った少年オジーが主役扱い。児童向けであるイレギュラーズものにしてはいきなり人死にのシーンから始まるのは珍しいか。
モリアーティの出し方も大げさになりすぎずうまいし、作品としては十分楽しめるのだが、あとがきや解説が何もなしというのが残念。2巻目と同時に訳書が出たのでシリーズだということは一応分かるものの、これ以降の予定とかも分からない。
- シャーロック・ホームズ&イレギュラーズ・2 冥界からの使者 (SHERLOCK HOLMES and the Baker Street Irregulars,Case Book No.2,THE MYSTERY of the CONJURED MAN)
- T・マック&M・シトリン 著 金原瑞人/相山夏奏 共訳
- 文溪堂 2011/09/ (原書2009)
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イレギュラーズものにしては2巻目になってもホームズが不在にならず、ちゃんと物語に絡んできているのは良いところ。お得意の変装も多い。オジー以外のイレギュラーズの面々も機転が利いて行動力があるところが描かれている。ただワトソンをイレギュラーズに対して冷たく当たるような役目にしているところは残念。せめて怪我をしたイレギュラーズの手当てをするとか医者としての見せ場でも作ってくれないと、ただの役立たずである。
ラストでオジーが旅立ってしまい、あたかもシリーズ終了のような雰囲気なのだが・・・
- シャーロック・ホームズ&イレギュラーズ・3 女神ディアーナの暗号 (SHERLOCK HOLMES and the Baker Street Irregulars,Case Book No.3,IN SEARCH of WATSON)
- T・マック&M・シトリン 著 金原瑞人/相山夏奏 共訳
- 文溪堂 2011/11/ (原書2009)
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オジーが旅から帰ってくるものの、ホームズとの関係はぎくしゃく。またイレギュラーズ内部も元メンバーのこと等でぎくしゃくしていつもの調子が出せない感じ。秘密好きとはいえホームズのやり方もホームズらしくないし、あんな手に引っかかるモリアーティとも思えない。またオジーの出生の秘密には、ホームズだけでなくモリアーティも絡んでいる可能性がありそう。
タイトルの女神ディアーナは通常日本ではダイアナか英語読みでもディアナにすることが定着していると思うのだが、わざわざ別の表記にするのは鼻に付く。また作中に出てくる暗号も別に女神そのものとは関係無いから頓珍漢。タイトルが頓珍漢といえば原題の方もそこは話の中心じゃないだろうというものだけれど(笑)。
- シャーロック・ホームズ&イレギュラーズ・4 最後の対決 (SHERLOCK HOLMES and the Baker Street Irregulars,Case Book No.4,THE FINAL MEETING)
- T・マック&M・シトリン 著 金原瑞人/相山夏奏 共訳
- 文溪堂 2012/01/ (原書2010)
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このシリーズとしては初めて、正典にある事件である「最後の事件」の時の物語。正典では触れられないイレギュラーズの面々が参加する。これが最終巻。
本巻のストーリーそのものは良く出来ていてシリーズ中最高といっても良いと思うが、オジー関係の謎は色々と残されたままになってしまっている。「最後の事件」でホームズが死んだと思われたとはいえ、イレギュラーズがあっさり解散してしまうというのも残念であるし。
- シャーロック・ホームズの栄冠 (The Glories of Sherlock Holmes)
- A・A・ミルン他 著 北原尚彦 編訳・解説
- 論創社 2007/1/20
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日本オリジナルの短編集。古い作品の中から未訳のものや既訳でも単行本に収録されていないもので編まれており、大変貴重な本。「シャーロック・ホームズの災難」と合わせてぜひ読んでおきたい。
収録作品
- XX・ホームズの探偵ノート1 名画「すみれ色の少女」の謎 (THE SHERLOCK FILES 1,THE 100-YEAR-OLD SECRET)
- トレーシー・バレット 著 こだまともこ 訳・訳者あとがき
- フレーベル館 2010/11 (原書2008)
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XXはダブルエックス。ホームズの子孫である主人公の姉弟、ジーナとザンダーのイニシャルから。
ホームズが残したノートの未解決事件を追っていくという趣向。今回は行方不明の名画の行方を追う。未解決と言っても今回のはたまたま他の事件で手を取られて放ったらかしになっただけで、ホームズもほとんど解決に迫っていたようだけれど。
二人をこの道に巻き込んだSPFD(名探偵保存協会)がまだ組織としての活躍をほとんど見せないので、存在意義があるのかまだ疑問。
- XX・ホームズの探偵ノート2 ブラックスロープの怪物 (THE SHERLOCK FILES 2,THE BEAST OF BLACKSLOPE)
- トレーシー・バレット 著 こだまともこ 訳・訳者あとがき
- フレーベル館 2011/3 (原書2009)
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ジーナとザンダーの姉弟が今回追うのは、田舎の村に出没する怪物の正体。
ホームズが未解決で残した理由は不明。今回のSPFD(名探偵保存協会)は出番が無く、ちょっと鑑識係の役目を果たしただけ。
- XX・ホームズの探偵ノート3 消えたエジプトの魔よけ (THE SHERLOCK FILES 3,THE CASE THAT TIME FORGOT)
- トレーシー・バレット 著 こだまともこ 訳・訳者あとがき
- フレーベル館 2011/7 (原書2010)
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今回ホームズが未解決で残した理由は、中止命令があったというだけでその理由までは不明。別に(見つけることで)外交問題に発見しそうな感じもしないけど。
親が厳しくて思い切った捜査ができないところがストレスだなぁ。ホームズゆかりのエピソードとかが挿しはさまれるわけでもないし、SPFD(名探偵保存協会)の他の探偵(の縁者)が活躍するわけでもないし、そろそろ読まなくても良い頃合いかもしれないなぁ。
- XX・ホームズの探偵ノート4 いなくなったプリンセス (THE SHERLOCK FILES 4,THE MISSING HEIR)
- トレーシー・バレット 著 こだまともこ 訳・訳者あとがき
- フレーベル館 2012/7 (原書2011)
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今回はホームズが未解決で残した理由が、推理は出来ても当時では証明が出来なかったというはっきりした理由があり納得。
春休み中の出来事ということもあって捜査にストレスが少ないのも良かった。子供だからと無理解な警察官というのもジュブナイルのお約束だし。
ところでアリスの手帳にあった「ジの誕生日!!!」(多分原書ではJなんだろう)は結局誰のことだろう。関係者にジ(J。ジーナはXだけど)が多すぎる。アリスの今は亡き母親も、昔の養育係のミムジーさんの家族までそうだもんな(本人(ユージニア)の綴りも怪しい)。
- ライヘンバッハの奇跡 シャーロック・ホームズの沈黙 (THE SHADOW OF REICHENBACH FALLS)
- ジョン・R・キング 著 夏来健次 訳・訳者付記 北原尚彦 解説
- 東京創元社創元推理文庫 2011/7/15 (原書2008)
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ウィリアム・ホープ・ホジスン作の幽霊狩人カーナッキの若い頃とホームズの共演もの。最後の事件の真相やモリアーティの過去を描く。もちろんオカルト探偵カーナッキを絡ませているだけに、その方面の要素が折り込まれているが、意外とホームズとの相性は悪くない。ホームズ本人の見解は期待通りだが(笑)。
ホームズ本人は記憶喪失に陥っているため、全体的には青年カーナッキの方が主役っぽい。最後はなんとなく、しばらく二人で組んで仕事をしそうな雰囲気で終わる。続編はあるか。
- エドワード・D・ホック のシャーロック・ホームズ・ストーリーズ (THE SHERLOCK HOLMES STORIES OF EDWARD D.HOCH)
- エドワード・D・ホック 著 日暮雅通他 訳 日暮雅通 解説
- 原書房 2012/6/26 (原書2008)
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2008年に亡くなったエドワード・D・ホックのホームズものを集めた短編集。
初訳は2作だけだが、既訳のものも雑誌で訳されただけのものや、短編集収録時に原文自体に大幅な加筆修正があったものもある。
収録作品
- シャーロック・ホームズ アメリカの冒険 (Sherlock Holmes in America)
- ローレン・D・エスルマン他 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 原書房 2012/2/2 (原書2009)
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基本的にアメリカを舞台とした短編集。アメリカならではの歴史に絡めた事件もあれば、別にアメリカではなくても語れそうな事件もあり。意外な真相ものという点で「緋色の研究」に絡んだ「ユタの花」が楽しめた。
相変わらず最後にドイルのスピーチを含むエッセイを3本収録。
収録作品
- ヤング・シャーロック・ホームズ1 死の煙 (YOUNG SHERLOCK HOLMES:DEATH CLOUD)
- アンドリュー・レーン 著 田村義進 訳 東山あかね 解説
- 静山社 2012/9/10 (原書2010)
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少年時代のホームズの物語を「ヤング・・・」としてしまうのは、どうしてもまずあっちの映画を思い出させるのであまり良いネーミングとは思えないのだが・・・
それはさておき、ホームズがまだそれ程鋭い観察眼や推理能力を身に付ける前の話(その師匠となるような人物あり)なので、それ程ホームズものらしさが無くアクションもの寄りになっているとはいえ、まぁまぁよく出来ている。ただ本当に児童書として書いたのか?という疑問が残るほど人がポロポロ死んでいくし、敵の姿がかなりグロテスクなのが気になる。もっともそのグロテスクも映像化したらギャグになって台無しになりそうだが(笑)。
相棒役が浮浪児の少年なので解説で触れられているハリー・ポッターよりもトム・ソーヤとハックルベリー・フィンの方を思い出すんだよな。ベッキーはバージニアほど活動的ではないだろうけど。
- ヤング・シャーロック・ホームズ2 赤い吸血ヒル (YOUNG SHERLOCK HOLMES:RED LEECH)
- アンドリュー・レーン 著 田村義進 訳
- 静山社 2012/11/15 (原書2010)
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相変わらずホームズものらしさは少ないとはいえ、今回はさらわれたマティの追跡劇として、相棒役をバージニアに代え、楽しめる。ただやはり相変わらず人が死んでいくし、敵ボスも相変わらず五体満足ではなかったり、変な癖のあるシリーズである。
今回副題となっているヒルは、前作のように犯行の道具を表しているわけではないので、雰囲気を出すための小道具以上の意味は無かった。
元々一癖ありそうだったバイオリンの師匠は次作以降にも続けて登場しそうで、さらに色々と裏がある重要人物となりそうである。
- ヤング・シャーロック・ホームズ3 雪の罠 (YOUNG SHERLOCK HOLMES:BLACK ICE)
- アンドリュー・レーン 著 田村義進 訳
- 静山社 2013/11/13 (原書2011)
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なかなか続きが出ないから、もう邦訳は止まったかと思ってたよ(笑)。相変わらずあとがきや解説は何も無いからその辺の事情もまったく分からないし。
今回はグロテスクさはあまり無くて、せいぜいロンドンでの逃亡劇のところでの不気味さくらいか。とはいえ、マティやバージニアとの冒険もまったく無いので児童書っぽさも薄いんだけど。
サブタイトル(原題/邦題共。まぁ原題のは最初の凶器のことかもしれないけど)からすると本当ならメインの舞台になりそうなロシアに行くまでに時間が(ページ数が)かかり過ぎて、行った後があっという間。バイオリンの師匠も引き続き登場したけれど、正体はあっさり明かされるし、それほど大きな活躍も無し。クロウ先生がロシアには同行できなかったんだから、その代わりになるくらいやってもらわないと物足りない。
- ヤング・シャーロック・ホームズ4 炎の嵐 (YOUNG SHERLOCK HOLMES:FIRE STORM)
- アンドリュー・レーン 著 西田佳子 訳
- 静山社 2018/10/11 (原書2011)
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なんと5年ぶりの続刊発行。原書はすぐ出てたっぽいのに。訳者も変わってる。一体何があったかと思うけれど、相変わらず解説も何も無い。
サブタイトル(原題/邦題共)はまだ序盤の事件のことか? エディンバラに行く話になってからは関係無いし。
今回はマティとの冒険という意味では元の路線という感じ(悪党や事件のグロテスクさも)だけど、ストーンはほとんど役に立たなかった。かといって捕まった割には人質としての価値はバージニアのおまけ程度だし。バージニアも児童書としては気持ちを行動に表し過ぎ(笑)。
エピローグは何だろう。緋色の研究とグロリア・スコット号に繋げるつもりか? それにしても唐突過ぎ。
- ヤング・シャーロック・ホームズ5 蛇の毒牙 (YOUNG SHERLOCK HOLMES:SNAKE BITE)
- アンドリュー・レーン 著 西田佳子 訳
- 静山社 2019/2/13 (原書2012)
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前巻までの間の空き方に比べて割と短期間だったので、出ていたのをしばらく見落としてた。
メインの事件が始まるまでが長かったような気もしたけれど、本の分量的にはそうでもなかった。でも上海に着いてからがなんか短い印象なのはなぜだろう。しかも結局、誘拐された理由が推測の域を出ない。今回の敵もちょっとグロテスクさはあるものの、どうにも小者。その手先は四つの署名っぽいオリジナリティの無さ。
エピローグは酷いな。長い月日ったって一年も経ってないのにそれかよ。というか船の名前まで分かっていながら、ボロ船より先回りして待ち受けるくらいのことがなぜできない、マイクロフト。敵組織の物でもないボロ商船相手に、軍艦なんて最初から要らんのに。
- ヤング・シャーロック・ホームズ6 霊界の城 (YOUNG SHERLOCK HOLMES:KNIFE EDGE)
- アンドリュー・レーン 著 西田佳子 訳
- 静山社 2019/7/17 (原書2013)
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バージニアのことよりもなし崩し的に次の事件に入っていくところがどうも。結局後で会うけれど。
降霊会ネタならドイルやフーディーニを呼んで欲しいところだけれどなぁ。他はともかく3回目の降霊会のトリックが大がかり過ぎる上に時代的にそんなの作れたのかよ的な疑問の方が大きく納得感が薄い。いくら軽石ったって重いだろ。
以前の敵の再登場はあるも、1人はそんな奴もいたな、もう1人は誰だっけ?レベルの記憶しかないや(笑)。
- ヤング・シャーロック・ホームズ7 盗まれた遺体 (YOUNG SHERLOCK HOLMES:STONE COLD)
- アンドリュー・レーン 著 西田佳子 訳
- 静山社 2019/11/12 (原書2014)
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前作ラストのバージニアとのことは何だったんだよ。
タイトルになっている遺体泥棒の件は手間をかけた割に説得力の無い真相な上、実は本巻メインの事件ではなかったという。寮の雑用係の刺青の話がパーツ集めの伏線かと予想していたけど全く関係無かった。そして事件の方は始まるのが遅い上に一昼夜くらいですぐ終わる。黒幕も正体にもまったく説得力が無い上に、関係者に見た目がグロテスクなキャラが出てくるのもマンネリ。
事件にはルイス・キャロルも関わらないし、最後に財宝が何だったのかすら出て来ない。相変わらず雑な印象が拭えないシリーズ。いつまで続ける気なんだろう。そろそろ見捨て時か。
- ヤング・シャーロック・ホームズ8 決闘の河 (YOUNG SHERLOCK HOLMES:NIGHT BREAK)
- アンドリュー・レーン 著 西田佳子 訳
- 静山社 2020/4/14 (原書2015)
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珍しく変なプロローグがあったけれど、大した効果無し。本編も前作同様見せ場のエジプトに行くまでが遅過ぎ。かといって学校生活や寮の仲間との話も無いままだし。
実家はマイクロフトが長男設定なのか。けっこう珍しいかも。
傘を取りに戻って姿を消したジェイムズ・フィリモア氏の話をこんなところで使うか。後年ホームズがワトソンに話すとも思えないが。ラスト、フィリモア兄弟はしばらく忙しくなりそうだけど、それに付き合おうともしないどころか姉のことも考えてないよな、ホームズ。
- ブックマン秘史(1) 革命の倫敦 (THE BOOKMAN)
- ラヴィ・ティドハー 著 小川隆 訳・訳者あとがき
- 早川書房ハヤカワ文庫SF 2013/8/25 (原書2010)
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モリアティもアイリーンもマイクロフトも、そしてホームズ本人も出るけれど、ホームズものっぽさは無し。別の歴史を辿った世界でキム・ニューマンの「ドラキュラ紀元」みたいな感じだが、ホームズ本人が名前だけでなくちゃんと登場するところはあっちよりマシか。
タイトルの割には後半の主要なイベントはロンドン以外で起きてる気がする。三部作らしいけれど次作は舞台がフランスになりそうな感じなので、ホームズ関係者はほとんど出てこないかも。
- ブックマン秘史(3) 終末のグレイト・ゲーム (THE GRATE GAME)
- ラヴィ・ティドハー 著 小川隆 訳・訳者あとがき
- 早川書房ハヤカワ文庫SF 2014/4/25 (原書2012)
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シリーズ2巻目はあまりにも関連が薄そうだったのでパスしました(笑)。今回は(元)英国情報局の人間が主人公なので読みましが、あいかわらずホームズものっぽさは無し。ホームズ本人は名前こそ直接的には出ないけれどあからさまに分かる形で、少しだけですがちゃんと出ます。でもそれだけ。
- シャーロック・ホームズ 絹の家 (THE HOUSE OF SILK)
- アンソニー・ホロヴィッツ 著 駒月雅子 訳・訳者付記
- 角川書店 2013/4/30 (原書2011)
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コナン・ドイル財団公式認定というのを強調しているけれど、他の幾多のパスティーシュと比べて突出して秀でているという程でもない。正典に出ている他の事件にやたらと触れたがるとか、とにかくモリアーティを出してみるとかいうのは下手くその典型だし、これまで公表できなかった理由である事件の真相も下衆な部類だし。実は綴りが違うんだというオチもひどい。
唯一、少しは珍しい要素といえそうなのはうかうかと敵の罠にはまるホームズくらいたけど、その脱出方法もご都合主義的だしなぁ。
角川文庫にて文庫化済み。
- シャーロック・ホームズ 神の息吹殺人事件 (Sherlock Holmes:THE BREATH OF GOD)
- ガイ・アダムス 著 駒月雅子 訳・訳者あとがき
- 竹書房竹書房文庫 2014/10/2 (原書2011)
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この作品もまたオカルト絡みである。しかもホームズにもトリックを暴けた部分と否定しきれない部分が混在し、そのせいか最後のガス満載の電車の処理方法など投げやりである(そのせいで被害が広まるにもかかわらず)。
ワトソンもラスヴニー卿の事件で悪魔の足の根のことを連想した直後にもかかわらず、自分が幻覚に襲われた時もその後もまったくそのことを考えないという馬鹿っぷり。
ちなみにクロウリーともカーナッキとも共演済みである。
- シャーロック・ホームズ 恐怖!獣人モロー軍団 (Sherlock Holmes:THE ARMY OF DR MOREAU)
- ガイ・アダムス 著 富永和子 訳・訳者あとがき
- 竹書房竹書房文庫 2015/6/4 (原書2012)
-
「神の息吹殺人事件」の続編。シリーズ化するなら何か独自のシリーズ名を付け欲しいところ。
前作同様、失われた世界等のチャレンジャー教授やペルシダーシリーズのアブナー・ペリーといった他作品の有名人は出すものの大した活躍も無く、またそれぞれの冒険を経験する前のことなので本当に出しただけでで終わっている。
またこれも前作同様、クライマックスのアクション場面が雑。いきなりワトソン以外の人物の視点を入れ始めたけれど、あまり効果は得られていないし。あ、最後をマイクロフトで締めたところだけは成功してます(笑)。
- モリアーティ秘録 上 (PROFESSOR MORIARTY:THE HOUND OF THE D'URBERVILLES)
- キム・ニューマン 著 北原尚彦 訳
- 東京創元社創元推理文庫 2018/12/14 (原書2011)
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「ドラキュラ紀元」のキム・ニューマンの描くモリアーティとモランを主役にしたピカレスクパロディ(パスティーシュとは言えないと思う)。
上巻は「第一章 血色の記録(A Volume in Vermilion)」、「第二章 ベルグレーヴィアの騒乱(A Shambles in Belgravia)」(分かり辛いけれどボヘミアの醜聞)、「第三章 赤い惑星連盟(The Red Planet League)」、「第四章 ダーバヴィル家の犬(The Hound of the D'Urbervilles)」を収録。タイトルから分かる通り、それぞれ正典に対応する元ネタあり。
- モリアーティ秘録 下 (PROFESSOR MORIARTY:THE HOUND OF THE D'URBERVILLES)
- キム・ニューマン 著 北原尚彦 訳・訳者あとがき
- 東京創元社創元推理文庫 2018/12/14 (原書2011)
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「ドラキュラ紀元」のキム・ニューマンの描くモリアーティとモランを主役にしたピカレスクパロディ。
下巻は「第五章 六つの呪い(The Adventure of the Six Malediction)」、「第六章 ギリシャ蛟竜(The Greek Invertebrate)」(分かり辛いけれどギリシャ語通訳)、「第七章 最後の冒険の事件(The Problem of the Final Adventure)」を収録。
モリアーティ三兄弟が揃うのが面白い。最後になってようやくホームズ(あえて名前は出されない。ワトスンはそのまま出るのに)たちが絡んでくる話になる。
- ブラッド・フィールドのギャング −新シャーロック・ホームズ(1) (The Bradfield Push -New Sherlock Holmes 1)
- ヒュー・アシュトン 著
- マクミラン ランゲージハウス REad Smart Readers[レベル別]英語ポケット文庫 2013/11/30 (原書2012)
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すみません、これは「日本語で読める・・・」ではなくなってしまうのですが、読み解くための単語辞書(リスト)も付いているし、ボリュームも少なく(短編1編)それほど難しい内容でもないので、他に邦訳が見当たらない(この出版社のWEBサイトに掲載されているそうです)こともあって掲載することにしました。
英語では文章のニュアンスまで分からないよという人でも、ホームズものを読み慣れていれば会話の調子や事件の展開は大体想像がつくと思いますので、けっこう大丈夫なのではないでしょうか(笑)。
オチでつい苦笑してしまいました(笑)。
- ラッフルズ・ホームズの冒険 (R.HOLMES & CO. AND SHYLOCH HOMES STORIES)
- J・K・バングス 著 平山雄一 訳・訳者あとがき
- 論創社論創海外ミステリ 2013/2/28 (-)
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名探偵ホームズを父に、ドイルの義弟E・W・ホーナングの生んだ泥棒ラッフルズを祖父に持つラッフルズ・ホームズの冒険と、シャイロック・ホームズの黄泉の国での冒険を描いた、それぞれのシリーズを収録。
収録作品自体はこのリストのトップ近辺に置いても良いくらい古いものだが、短編集としては独自にまとめたもののようなのでどこに置いたら良いのかも微妙なため、素直に本書の発行で決めました。
内容的には皮肉の利かせ方が好みです。
収録作品
- シャーロック・ホームズとヴィクトリア朝の怪人たち1 (ENCOUNTERS OF SHERLOCK HOLMES(Vol.1))
- ジョージ・マン 編 尾之上浩司 訳 北原尚彦 解説
- 扶桑社扶桑社ミステリー(文庫) 2015/9/10 (原書2013)
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パスティーシュ短編集。原書では14本収録の1巻本だそうだが日本語版では2冊に分けており、その1冊目。実在の人物・事物や他作品との関わりについては北原さんの解説を参照のこと。各作品の作者の他作品のことはあまり知られていないだろうし。
誤字脱字が若干多いような気がするのに加え、日本語訳が粗い印象。ワトソンの一人称が、会話文でならともかく、地の文で「ぼく」になってるのには違和感が拭えない。
収録作品
- シャーロック・ホームズとヴィクトリア朝の怪人たち2 (ENCOUNTERS OF SHERLOCK HOLMES(Vol.2))
- ジョージ・マン 編 尾之上浩司 訳・訳者あとがき 北原尚彦 解説
- 扶桑社扶桑社ミステリー(文庫) 2015/11/10 (原書2013)
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日本語版では2冊に分かれた2冊目。こちらでは他の有名人との関わりは前巻ほどではない感じ。
面白かったのはハドソン夫人の話くらいかなぁ。
収録作品
- 数学ミステリーの冒険 (Professor Stewart's Casebook of Mathematical Mysteries)
- イアン・スチュアート 著 水谷淳 訳・訳者あとがき
- SBクリエイティブ 2015/7/1 (原書2014)
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数学クイズの本(それもけっこうボリュームのある)なんですが、3〜4割の問題が探偵ヘムロック・ソームズとドクター・ジョン・ワツァップの登場するエピソードによって展開されます。しかもソームズの暮らすのが名探偵の向かいの222B番地という。
実は本当に純粋に数学クイズの本だとだけ思って購入してしばらく積読状態だったんですが、読み始めたら前記のような内容だったので、自分の引きの良さに驚きましたよ(笑)。
でも肝心の数学的な内容の方はどうでしょう。作者としてはこれで素人にも楽しめるように十分噛み砕いたと思ってるのでしょうが・・・「まただまされたな、ワトスン君!」の方が楽しみやすかった印象。
本当なら目次のリスト(収録作品)を付けるべきなのですが、多過ぎる上に半分以上がソームズものではないので、省略させていただきました。
- モリアーティ (MORIARTY)
- アンソニー・ホロヴィッツ 著 駒月雅子 訳・訳者付記
- KADOKAWA 2015/11/30 (原書2014)
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例のコナン・ドイル財団公式認定とやらの「・・・絹の家」と同じ作者の作品だが、内容的には直接の関係は無い。というか最後の種明かしの内容を信じるとすれば同じ世界の話ではない。
まず何より種明かしに至るミスリードのやり方が姑息である。自分でフェアだと言っている内容そのものが嘘だし。中でもアセルニー・ジョーンズの見た目を変えたのが、もっともらしい理由を付けているとはいえ、一番姑息である。
結局、元々ツッコミどころ満載のワトスン製「最後の事件」よりもっと穴だらけの物語にしかなっていない。もちろん、正直に書かれているという必然性などカケラも無い設定に逃げ込んでいるわけだが。
巻末には本編とは別に「三つのヴィクトリア女王像」(THE THREE MONARCHS)という六つのナポレオン像だか三人ガリデブだか分からないようなタイトルの短編も付属しているが、こちらもなんだかなーとでも言うしかないような出来。
- シャーロック・ホームズの事件録 芸術家の血 (ART IN THE BLOOD)
- ボニー・マクバード 著 日暮雅通 訳・解説
- ハーパーコリンズ・ジャパンハーパーBOOKS 2015/10/25 (原書2015)
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依頼人の女性の息子捜しとニケの彫像の行方を追う2つの事件を、ホームズともう一人のフランス人探偵が追う。
ホームズが依頼人に妙に惚れこんでるみたいだけれど、最初の方ではともかくフランス人探偵が絡んできたあたりであまり賢明とは思えなくなり、終盤で息子を見付けた後は報復の念に捕らわれて肝心の息子の安全を考えないような振る舞いをするようになる愚かな人なので、どうかと思う。フランス人探偵も自分の手柄優先のチンピラだしなぁ。
犯人の正体もひどい印象。
- シャーロック・ホームズの事件録 眠らぬ亡霊 (UNQUIET SPIRITS)
- ボニー・マクバード 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- ハーパーコリンズ・ジャパンハーパーBOOKS 2019/6/20 (原書2017)
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前作の翻訳は早かったのに今回は間が空いてしまって前作の内容もほとんど忘れてしまっていた。覚えてない理由は間が空いたからだけではないけれど(笑)。
無駄にグロテスクな要素(「うみねこのなく頃に」かよ)を入れ込んだり、ホームズに勝手な生い立ち要素を付け加えたりと、いかにも中二病的な出来。前作のフランス人探偵も再登場させる程の奴かよ。ヒロインも魅力が無い上に、正体が分かってから振り返っても行動に説得力が無い。
日暮さんは訳の腕は良いと思うのに、趣味は悪いと言いたくなる。
- シャーロック・ホームズの事件録 悪魔の取り立て (THE DEVIL'S DUE)
- ボニー・マクバード 著 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- ハーパーコリンズ・ジャパンハーパーBOOKS 2022/12/20 (原書2019)
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相変わらず説得力に欠ける出来。相変わらずフランス人探偵は出て来るが役には立っていない。特に前半でのワトスンの行動が馬鹿過ぎて腹が立つほど。まぁそれに劣らずホームズのワトスンに対する態度も雑なんだけど。
ヘフィというちょっと魅力的そうな少女も出て来るものの、その活躍場面が直接的に描かれることもほとんど無い。
最後の事件の真相の説明も物足りない。殺害手段(HOW)のところにこの犯人ならではという要素があんまり感じられないというかそもそも説明されてないというか。
- シャーロック・ホームズ アンダーショーの冒険 (The MX Book of New Sherlock Holmes Stories Part1,Part2,Part3,Part4)
- デイヴィッド・マーカム 編 日暮雅通 訳・解説
- 原書房 2016/12/26 (原書2015,2016)
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いくら原書が4巻もあるからといって、抜粋で1冊にまとめるとは日暮さんの仕事にしては残念。逆に残りを読む機会を奪っているようなもの。1巻目だけを訳出するとかすれば人気次第で残りも出せるかもしれないのに。
入ってる作品がたまたまなのか、元々の編集方針のおかげで残りも同様なのかはわからないけれど、オーソドックスなパスティーシュばかりであまり捻ったものは無い。それにしてもわずかにピックアップした作品の中に2つも「無政府主義者」を入れることもないだろうに・・・
「アーカード屋敷の秘密」は、本文中では屋敷名も人名も、タイトルの原語での綴りでも「アーカート」なのに、なんでタイトル(目次や本文ページ上の表示も含む)でだけ「アーカード」のまま放置なんだろう(笑)。
収録作品
- ホームズ万国博覧会 中国篇
上海のシャーロック・ホームズ
- 樽本照雄 編訳・あとがき(おそらく作品解説も)
- 国書刊行会 2016/1/20
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日本独自での編集本なので特定の原書は無し。各作品にも原題はあるが正確に表記できる自信が無いので収録作品リストでは省略しました(笑)。
採録された作品は清朝末期から1919年あたりまでとのことで、あとがきを読むと中国では正典の翻訳はともかく贋作ホームズは文学史的に無視された存在らしく、集めるのも苦労した模様。
中国っぽさなのか時代なのか、文章が大げさで持って回った例えが多かったりするのが味ではありますが、読み辛いという面もあるので複雑。あとなんかホームズが事件解決に対してのんびりしてる気がします(笑)。
収録作品
- ホームズ万国博覧会 インド篇
ホームズ、ニッポンへ行く
- ヴァスデーヴ・ムルティ 著 寺井杏里 訳・訳者あとがき 序文 カルヴァート・マーカム 解説 平山雄一
- 国書刊行会 2016/9/20
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中国篇に続くインド篇ですが、今回は多様な作品収録ではなく表題作(原題はSHERLOCK HOLMES IN JAPAN 原書2013)の長編1本のみ。ならば単独で訳出すればい良いだけで、本シリーズに組み込む必要は無かったのではなかろうか。
内容も「ニッポンへ行く」と言いつつ日本へ着くのは終盤で、ほとんどは日本へ向かう旅の道程。しかもその旅自体も最後の推理の披露(調査結果報告)のための移動のためであり、事件を追う旅ではない。つまり最初にワトスンが登場した時点でメインの事件は実質的には終わってしまっているわけです。(まぁ考えてみれば「最後の事件」の構成も似たようなものですが)
度々入る訳注が作者の間違いを指摘するようなものばかりなのも気になってしまう。ワトスンがホームズの論文執筆癖になんか恨みを持ってそうなところはつい笑ってしまいましたが。
- ホームズ万国博覧会 ロシア篇
ホームズ、ロシアを駆ける
- 久野康彦 編訳・編訳者解説
- 国書刊行会 2017/8/20
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今回はロシア篇。翻訳の出来が良いのか割と正典に近い文章の作品もあれば、アクション主体になってしまうありがちな海賊版風のものもあり。もちろん後者では登場人物のリアクションがいちいち大げさになりがちである(笑)。
前半ではライバルキャラにモリアーティ教授(なぜか本作ではマルティーニ教授になっている)並みと言われる悪党がいるのだが、そもそもその最初の犯罪が借金で首が回らなくなって遺産目当てに親戚を殺害するという情けないものなので、そんなに悪の才能があるとは思われない。
後半はライバル探偵ナット・ピンカートンとの捜査競争。作風は違えどウィステリア荘のベインズ警部とのやり取りを彷彿とさせる。
収録作品
- 女子高生探偵 シャーロット・ホームズの冒険 上 (A Study in Charlotte)
- ブリタニー・カヴァッラーロ 著 入間眞 訳
- 竹書房竹書房文庫 2016/9/7(原書2016)
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ホームズの子孫(女子)とワトスンの子孫(男子)の話という、まぁ物珍しくは無い子孫もの。タイトル(邦題)通り高校生なんだけど、出て来るネタが日本なら大学で無いと無理目なものが続々と。さすが英米、進んでるというか堕落してるというか。
ワトスン一族で子供にジェームズと名付けるセンスは、息子にモランと同じ名前を付けるホームズに負けず劣らず無神経だよな(笑)。
- 女子高生探偵 シャーロット・ホームズの冒険 下 (A Study in Charlotte)
- ブリタニー・カヴァッラーロ 著 入間眞 訳・訳者あとがき
- 竹書房竹書房文庫 2016/9/7(原書2016)
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お話として面白いかどうかはともかくとして、本作のホームズは細かい点では観察・推理に長けているものの、事件解決に繋がる本質的な部分での推理や犯人逮捕のための行動がほとんど出来ていない気がする。敵の思い通りに動いてしまっているパターンが多過ぎる。犯人に辿り着いたのもワトスンの方が先だったし、兄頼みの面が強過ぎるし。しかも最後になってのデレっぷりが異常だ(笑)。
またメインの事件の真犯人でもないのに、極端過ぎる行動を取る脇役が多くて、というかそんな奴ばかりで、異常者しかいないのかこの世界はと思ってしまう。
- 女子高生探偵 シャーロット・ホームズの帰還 <消えた八月>事件 上 (The Last of August)
- ブリタニー・カヴァッラーロ 著 入間眞 訳
- 竹書房竹書房文庫 2018/1/18(原書2017)
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事件が始まってベルリンに行くまでの序盤が長い上に、全編通してワトスンの愚痴を延々と聞かされているだけという印象が強くて、事件の捜査が記憶に残らない。大体、登場人物のほとんどがホームズかモリアーティか僅かなワトスンばかりで、物語上の役割だけでなく血縁関係まで覚えるのも面倒臭いし。
- 女子高生探偵 シャーロット・ホームズの帰還 <消えた八月>事件 下 (The Last of August)
- ブリタニー・カヴァッラーロ 著 入間眞 訳・訳者あとがき
- 竹書房竹書房文庫 2018/1/18(原書2017)
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あくまでもワトスン視点からであるものの、ホームズがどういう捜査をしようとしているのかさっぱり見えないと思っていたら、オチまで来て呆れた。
原題に無いタイトルを付けるなら付けるで、冒険の次は帰還じゃなくて回想にしようよ。前作でいなくなったわけでも無いし。
- 女子高生探偵 シャーロット・ホームズ 最後の挨拶 上 (The Case of Jamie)
- ブリタニー・カヴァッラーロ 著 入間眞 訳
- 竹書房竹書房文庫 2020/9/3(原書2018)
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今回はワトスンの一人称だけでなくホームズ視点の章が交互に出てくる。というか少しは章題に工夫しようよ。ずっとおんなじって・・・
巻頭に載っている家系図も読むのに全く役に立っていないと言って良い。というかワトスン家の方が欲しい。
- 女子高生探偵 シャーロット・ホームズ 最後の挨拶 下 (The Case of Jamie)
- ブリタニー・カヴァッラーロ 著 入間眞 訳・訳者あとがき
- 竹書房竹書房文庫 2020/9/3(原書2018)
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何が嫌だと言って、出てくる大人がことごとく子供たちのことより自分のこと優先って感じがすることか。しかも具体的な金銭等の利益ならまだしも、承認欲求に振り回されてる感じがガキのよう。かろうじて大人らしいのは2人の刑事と寮母さんくらいという。
エピローグもメールのやり取りにしたせいで蛇足感があるしなぁ。
- 名探偵ホームズとぼく 愛犬行方不明事件! (THE GREAT SHELBY HOLMES)
- エリザベス・ユールバーグ 著 中村佐千江 訳
- KADOKAWA 2017/2/25(原書2016)
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ニューヨークに越してきた11歳のジョン・ワトソン少年が、同じアパートに住む9歳のシェルビー・ホームズと知り合い、事件の捜査に当たるという話だが、特に子孫といった要素は出てこず、正典との関連の有無は不明。しかしワトソンの母は元軍医だったりアパートの大家がハドソンさんだったりレストレード刑事が出てくるのでシチュエーション置き換えものかと思ったら、1か所だけ「ぼくらはまるで、シャーロック・ホームズとワトソンみたいじゃないか。」というセリフがあるのは逆に謎。正典が存在する世界なのに、誰もそのネタに反応しない。
ストーリーの元ネタはシルバーブレイズだが、登場人物の反応は子供ならではというところが多くて面白い。
- シャーロック・ホームズの失われた災難 (The Missing Misadventures of Sherlock Holmes)
- ジュリー・マキューラス他 編 日暮雅通 訳・訳者あとがき
- 原書房 2018/1/31 (原書2016)
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なんとあの「シャーロック・ホームズの災難」でエラリイ・クイーンが収録できなかった作品(のほとんど)を収録した本である。しかも商業出版ではなくホームズファン団体の大会の記念品(221B(部)限定)だというから、それが簡単に手に入るようになった日本は、原書の国も含めて世界中のファンから羨ましがられるんじゃなかろうか(笑)。
そういう経緯の本なので、収録作品はリストのトップ近辺に置いても良いくらい古いものばかりだが、本の出版時期に合わせて配置している。本書未収録作も含め対象作の既訳の有無等については訳者あとがきを参照。
短編主体だからか、時代もあるのか、基本的にはパロディというかコントのような迷探偵ものばかりで、パスティーシュや真面目な別名探偵ものは無い。しかも本の約半分が「十一個のカフスボタン事件」という長い話なのは正直キツイ。
収録作品
- ベイカー街の女たち ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿1 (The House at Baker Street)
- ミシェル・バークビイ 著 駒月雅子 訳・訳者あとがき
- KADOKAWA角川文庫 2020/5/25 (原書2016)
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タイトル通りハドスン夫人とメアリー・ワトスン、それに一部ではアイリーン・アドラーも加わる上にイレギュラーズの協力も得て、謎の強請屋を追う物語。
訳者は好意的に捉えているようだけれど、正典を連想させる要素が多過ぎてパロディ的に感じてしまう面もあるが、犯人(実際には・・・だけど)に振り回されながらも様々な冒険を繰り広げる女性たちの物語は楽しめる。
しかし通気口のことをはじめとしてホームズが鈍過ぎる気がする。少なくともアイリーンが訪ねてきて以降は密かに動き始めていて当然なのに、いくつかのことに気付きながらも最後まで関心を持って調べ始めてすらいなかった様子なのはどうなのよ。そりゃクライマックスで救援に駆け付けていたりしたら台無しだったけど。
それと切り裂きジャック事件への関与について何回も匂わせていながら、しかし犯人はいまだに野放しらしい言及があるのは、ダメな思わせぶりパターン。
- ベイカー街の女たちと幽霊少年団 ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿2 (The Women of Baker Street)
- ミシェル・バークビイ 著 駒月雅子 訳・訳者あとがき
- KADOKAWA角川文庫 2020/12/25 (原書2017)
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ハドスン夫人とメアリー・ワトスンの冒険譚の2作目。
今回は、世間的にはともかく個人的にはダメミステリな、散々間違った手掛かりを追いかけた末に唐突に真犯人に行き当たる、というパターンであまり楽しめなかった。
ホームズがハドスン夫人達を鍛えようと事件を回すというのも違和感が拭えないし、トレースしている気配も無い無責任さも気にかかる。
前作で気になった切り裂きジャックの件も少しだけ言及があるが、中途半端。
- シャーロック・ホームズとシャドウェルの影 (THE CTHULHU CASEBOOKS:SHERLOCK HOLMES AND THE SHADWELL SHADOWS)
- ジェイムズ・ラヴグローヴ 著 日暮雅通 訳・解説
- 早川書房ハヤカワ文庫FT 2022/8/25 (原書2016)
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ホームズがクトゥルー神話に絡んだ事件に遭遇するというだけでなく、ワトスンと出会った探偵生活の初期からずっぽりとその世界にはまり込んでいたという設定の話。三部作の1作目。
ホームズもまだ若くてちょっとだけ血気盛んだったり、モリアーティもそれに合わせて正典での登場に比べればまだまだ若かったり、マイクロフトが目の前で起きている超自然的なことになかなかついていけなかったりと、面白い点はある。他のオカルト絡みのホームズものに比べればホームズとオカルトの相性は悪くない方。
解説によるとこの作者のホームズものは少なからずありそうだけれど、何故か邦訳はほとんど無い。「シャーロック・ホームズとヴィクトリア朝の怪人たち2」収録の「堕ちた銀行家の謎」くらい。
ところで「シャドウェルの影」の原語の「SHADWELL SHADOWS」は韻というか語呂合わせなのだろうか?(笑)
- シャーロック・ホームズとミスカトニックの怪 (THE CTHULHU CASEBOOKS:SHERLOCK HOLMES AND THE MISKATONIC MONSTROSITIES)
- ジェイムズ・ラヴグローヴ 著 日暮雅通 訳・解説
- 早川書房ハヤカワ文庫FT 2023/7/15 (原書2017,2018)
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ホームズがクトゥルー神話絡みの事件に挑む三部作の2作目。前作の15年後だが、ずっとその手の事件に対応していたらしい。
ホームズがその道の専門家になってしまっているのもどうかと思うし、ホームズものらしさを感じられるかというと厳しい。15年も一緒にやってきた割にはワトスンの知識もなんか中途半端だし。
- シャーロック・ホームズとサセックスの海魔 (THE CTHULHU CASEBOOKS:SHERLOCK HOLMES AND THE SUSSEX SEA-DEVILS)
- ジェイムズ・ラヴグローヴ 著 日暮雅通 訳・解説
- 早川書房ハヤカワ文庫FT 2023/11/25 (原書2018)
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ホームズがクトゥルー神話絡みの事件に挑む三部作3作目。タイトルの件はちょっとしたストーリーの転換点に過ぎなくて、脅威としてはそれほど大きくないので何故これをタイトルにしたのか。
これで一応終わりだけれど、結局ホームズとオカルトはやはり相性が良くなかったかもしれない。
- メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち (THE STRANGE CASE OF THE ALCHEMIST'S DAUGHTER)
- シオドラ・ゴス 著 鈴木潤・他 訳・訳者あとがき 北原尚彦 解説
- 早川書房新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 2020/7/25 (原書2017)
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有名人・有名キャラ(の子孫等)大集合ものというのも、いい加減新味も感じられず飽きてきたところ。ホームズに絡めるというと人物・作品も似たようなのが多くなるし。まぁ今回は相手にする人数に対してホームズの出演量としては十分だったけど、基本的には他所のはせいぜい1〜2作品くらいに抑えておいた方が良い気がする。
文章にされたものが全て(作品世界内での)事実とは限らないというのはワトスンもやっていたこととはいえ、それを繰り返し意識させて混乱させる(というか素に返らせる)茶々入れのスタイルははっきり言ってウザい。これだけ序盤からドラキュラを匂わせる要素(この時代のこの場所で女教師のミス・マリーといったら・・・)満載のくせにドラキュラを出さないまま終わるとかのもったい付けもうんざりするし。
せめてヒロインの名前をメアリ(モースタンを連想させる)ではなくヴァイオレットにしておいてくれればホームズの態度も納得がいったのに。いやジキル博士とハイド氏に娘が出てくるのか知らないけど(笑)。
- メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行 Tウィーン篇 (EUROPIAN TRAVEL FOR THE MONSTROUS GENTLEWOMAN)
- シオドラ・ゴス 著 原島文世 訳
- 早川書房新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 2023/1/25 (原書2018)
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今回はヴァン・ヘルシングということでいよいよ吸血鬼ものになって来るが、相変わらずドラキュラは出て来ない。というかヘルシング教授自身も話だけで出て来ないけど。ミス・マリーはもちろんミナだった。ホームズは序盤で少し出て来ただけで活躍は無し。アイリーンは準主役級だけど。
素に返らせる茶々入れスタイルも相変わらずウザい。
- メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行 Uブダペスト篇 (EUROPIAN TRAVEL FOR THE MONSTROUS GENTLEWOMAN)
- シオドラ・ゴス 著 原島文世 訳
- 早川書房新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 2023/2/20 (原書2018)
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ようやくドラキュラは出て来たがホームズは出て来ない。最後にホームズ関係のキャラは出るけど。というかドラキュラとカーミラが味方側ってどうなのよ。アッシャにも元ネタはありそうだけど解説は無し。H・R・ハガードの「洞窟の女王」というのがあるようだが。
なんか周りの頭の良い人&情報を持ってる人&行動力のある人に引きずられて動いてる割合が大きくて、主人公が主体的に行動してない気がする。
- メアリ・ジキルと囚われのシャーロック・ホームズ (THE SINISTER MYSTERY OF THE MESMERIZING GIRL)
- シオドラ・ゴス 著 鈴木潤 訳 中野善夫 解説
- 早川書房新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 2023/12/25 (原書2019)
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モリアーティの扱いがこんなに軽いホームズものは(コメディにはあったかもしれないが)初めて見たよ(笑)。今巻は解説が付いていて、アッシャの元ネタはやはり「洞窟の女王」でいいらしい。テラ女王はブラム・ストーカーの作品かららしい。アーサー・マッケンにいたっては知らんわ。
ホームズとメアリの関係がそんなことになってたというのも前振りがそんなに無いまま急展開。2巻目の始まる時点ではもうそうだったはず(それ以来ほとんど会っていないから)なんだけどね。しかもその後のことはほぼ描かれない。あと、ほぼ完璧な幻影を操る相手と戦ってる時にやっちゃいけない行動ってあるよね(笑)。
- 探偵コナン・ドイル (A KNIFE IN THE FOG)
- ブラッドリー・ハーパー 著 府川由美恵 訳・訳者あとがき
- 早川書房ハヤカワ・ミステリ 2020/3/15(原書2018)
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タイトル(邦題)の通りホームズではなくコナン・ドイルの話な上に、ホームズのモデルになっているベル博士と一緒に事件の捜査に当たるとなると、ドラマにもあったようなありがちなシチュエーション。さらに原題から分かるように題材は切り裂きジャックの事件。とはいえ、完全にフィクションなので本物のジャックの正体に迫ろうという話ではない。
と書いてくるとアイデアにオリジナリティが無くてつまらない作品と思ったみたいなようだけれど、意外と面白かった。ただ終盤での犯人の正体があんまり面白くないのと、犯人が分かってからの行動が間抜けなのはいただけない。それにやはり実在の人物であるマーガレット・ハークネスのキャラを勝手に作り過ぎな気がするのもマイナス点。架空の人物にしても問題無かったと思う。
- シャーロック・ホームズ 10の事件簿 (SIY SHERLOCK HOLMES CASE BOOK)
- ティム・デドプロス 著 日暮雅通 訳・解説
- 二見書房 2023/1/20 (原書2018)
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原題の“SIY”は“SOLVE-IT-YOURSELF”の略で、まぁ自分で謎を解いてみろというところ。昔あったゲームブックものと違って、一応ワトスンが書いたという体裁の文章がある程度あった上で、ホームズの推理の根拠を当てる問題になっているので、リストに収録。
ただ、あくまでもクイズっぽいというレベルで実際の事件の推理にするには根拠が弱いものが多い。証言のおかしい点の指摘は良いのだけれど、意図的な嘘とは限らず単なる勘違い記憶違いの場合もあるだろうし、嘘を言ったからといって当該事件の犯人や共犯者とは限らないというのは最初の方の事件で実際にあるにもかかわらず他の事件では決め付けている。また物的な証拠も状況証拠レベルじゃないかというのが多い。酷いのになると本文では読み取れない情報を根拠にしてるものもある。全般的に動機の解明や手段の証明まではせずに解答編で触れて済ませているし。
収録作品
- 新シャーロック・ホームズの冒険 (THE NEW ADVENTURE OF SHERLOCK HOLMES:The Back To Front Murder)
- ティム・メジャー 著 駒月雅子 訳・訳者あとがき 北原尚彦 解説
- KADOKAWA角川文庫 2022/8/25(原書2021)
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邦題に原題のサブタイトルまで入れておかないと、今どきこんな雑なタイトルは無いだろうと思われるよ。アンソロジーならともかく、長編1本よ、これ。
内容はストーリー以前にワトスンが最近他ではなかなか見ないくらい迂闊で軽薄なのが気になってしょうがない。余計なことばかり口にする。またこれくらいワトスンに対して冷ややかなホームズというのも同様。
女依頼人は散々傍若無人に振る舞った上に、唐突に去って戻って来ないし。おかげで解決編の話がつまらないこと。あれも正典の挿話と違って、そもそもホームズの推理からのシミュレーションみたいなものの割に一人称の感情描写が多くてげんなりする。というか、犯人ではなく被害者の視点の方をいくら語られても事件の真相は見えづらいよな。
- 新シャーロック・ホームズの冒険 顔の無い男たち (THE NEW ADVENTURE OF SHERLOCK HOLMES:The Defaced Men)
- ティム・メジャー 著 駒月雅子 訳・訳者あとがき 若林踏 解説
- KADOKAWA角川文庫 2023/6/25(原書2022)
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ワトスンの迂闊さと、ワトスンに冷たいホームズという構図は前作のまま。
ホームズがワトスンに情報を出さな過ぎて、途中の新たな展開がそれまでとの関連が分からな過ぎてついて行き辛い。結果として最後のタネ明かしが情報量多過ぎで解決の爽快感が無くなっている。そもそも実在の人物といってもマイナー過ぎて出て来たことに全然ワクワクしないし。
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