ここから先は:「樽の中」さんの物語です
宇宙人は振り返った。
僕に跳ね飛ばされた彼はやさしく穏やかで、
敵対心などどこにもなさそうだった。
こちらは命を手放す覚悟までしたというのに。
そっと手を伸ばすとそのきぐるみ宇宙人はやけに軽く、
手ごたえがなく、遠く感じられた。
同じ格好をした自分がずいぶんと不恰好で味気ない生き物の
ような気がして泣きたくなる。
話し掛けたら、失礼な奴だと思われるだろうか?
いったい彼らは地球人とコンタクトすることを望んでいてくれるのだろうか?
沈黙が耐えがたく、目をそらす。
いつのまにか宇宙人は空からふわふわと降ってきていた。
限りなく、一面に降り積もっていた。
大量生産のキャラクター商品のように思っていたけれども
ずいぶん個体差があることがそれでわかる。
たとえばぼくの目の前のこの人は、
他の宇宙人よりすこし紫がかっているようだ。
頭のスポンジがすこし右にかたよってつめてあるようにも見える。
顔立ちも知性に恵まれて見える。
やっぱりはなしかけなくっちゃ。
ぼくはこの人と友達になりたい。
- 「あ、あのう〜」
(この分岐より先「ティティ」さんの物語です。)
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