びわ本舗
(株)ティー・エス・アイ
当社は「びわの葉療法」関連商品の全国総発売元です。
これまで30年以上にわたり、「びわ商品」一筋に取り組んできました。

(もぐさ)あれこれ


(モグサ)とは
「もぐさ」は漢字で「艾」と書きますが、この文字は「よもぎ」とも読みます。
ヨモギはキク科の多年草で、本州、四国、九州の山野に普通に自生していて、春の若い葉を摘んで餅に入れ草餅を作るので誰もが知っている野草の一つと言えるでしょう。
ヨモギの葉は表面が緑色で、裏面は白っぽく見えますが、よく見ると裏面には白い毛が密生しています。
この毛を集めた綿のようなものがモグサなのです。
モグサは大変燃えやすく、昔は火打ち石から火をとる火口(ほくち)にも使われました。
燃えやすいと言っても炎を上げずに燃焼し、温度があまり高くならない(つまり熱さが少ない)のでお灸に使われるのです。

わが国ではモグサの原料としてヨモギ(写真)のほかオオヨモギも使われます。オオヨモギは文字通りヨモギより大きく、近畿地方から北の本州、北海道、千島、サハリン等に自生しています。
ヨモギ類の葉から綿毛を採る一番てっとり早い方法は葉裏を何かでこそげ取れば良いわけですが、これでは大量生産はできません。
どうするかと言うと、ヨモギまたはオオヨモギの葉をパリパリになるまで乾燥させ、石臼で粉砕します。すると葉の大部分は粉末になりますが綿毛はそのまま残っているので、これを(ふるい)にかけると綿毛を分離することができるのです。
この段階の綿毛にはまだ不純物が含まれているので、粉砕篩過(しか)を2〜3回繰り返し、最後に特殊な構造のモグサ用唐箕(とうみ)(※)で精製することで上質なモグサに仕上げます。
※モグサ用の唐箕は農業用の唐箕よりも大きな装置で、円筒形の大きな容器の中でモグサを回転させながら攪拌し、円筒の周囲に設けた簀の子状の篩で不純物を分離する構造になっている。


乾燥したヨモギ
7〜8月頃、ヨモギやオオヨモギを刈り取り、葉を採集して天日で乾燥する。

荒びき
乾燥した葉を石臼でひく。葉肉、葉脈は砕けるが綿毛(モグサ)は残る。

粗製モグサ
(ふるい)で粉末を除くと粗製のモグサができる。

仕上げびき
さらに石臼でひき不要物を徹底的に粉砕する。


反復
粉砕篩過を2〜3回繰り返す。

高級モグサ
最後に唐箕で数時間精製すると高級モグサができ上がる。

艾(モグサ)とお灸の歴史
灸治療の起源をインドとする説もありますが、はっきりしているのは中国・秦の時代で、湖北省から出土した竹簡(竹に書いた文書)には灸に関するものがありました。約2,200年前のものです。
灸法は仏教と同じ頃、朝鮮半島を経て日本に伝来したようで、欽明天皇の23年(562)、高麗から呉の人、知聡が帰化した時医書をもたらし、その中に鍼灸の明堂経が含まれていたと言います。従って1,400〜1,500年ほど前のことになります。

灸治療は最初のうち貴族社会に限られていたようですが、鎌倉時代になって武家や庶民にも普及していきました。12〜13世紀の作とされる『鳥獣戯画絵巻』の中の双六の図には裸の男の背に灸の痕らしいものが認められます。
室町時代、安土桃山時代になると灸は鍼とともに盛んになりました。この時代の名医とされる曲直瀬道三の『鍼灸集要』(1563)にはモグサの製法が具体的に書いてあります。その概要は「ヨモギの葉を三月三日または五月五日に採りよく乾燥して貯蔵する。古くなったものがよい。これを臼に入れ搗き、篩で屑を除去し、また搗き、篩過(しか)を繰り返す・・・」ということです。

やがてモグサと言えば「伊吹モグサ」とされるほど伊吹山周辺での生産が有名になりました。元禄四年(1691)の『日本賀濃子(かのこ)』には近江の名物として伊吹蓬艾(もぐさ)が挙げられており、これから後の出版物には伊吹モグサの名前がたびたび登場します。
現代でも続くモグサの老舗として、東の「釜屋もぐさ」(東京都日本橋小網町・1659年創業)、西の「亀屋左京商店」(滋賀県坂田郡山東町柏原・1661年創業)が挙げられます。どちらも伊吹モグサの販売で業を成しました。 (ちなみに、当社の「もぐさ入りカセット」には亀屋左京商店のモグサを用いています。)
  • 釜屋もぐさ
    右図の大釜を看板にしている。この大釜の銘文によれば、この店の初代は近江辻村(滋賀県栗東町辻)の出身で万治二年(1659)、江戸に来て鍋釜・穀物・醤油等とともに伊吹艾の商売を始めた。その後モグサ専業に変わったが、家の前に大釜を置き天水用をかねて看板にしたという。
  • 亀屋左京商店
    寛永元年(1661)の創業と伝えられ、徳川時代後期には「江州柏原伊吹山の麓亀屋左京の切艾」と俗謡にも歌われ、江戸でも有名だったらしい。
    柏原の店は広重の『木曽街道六十九次』(右図)にも描かれ、この版画の右端に見える大きな福助像は今でも店内に残っている。

しかし、モグサの主産地については、1700年代には近江(滋賀県)から美濃(岐阜県)、越前(福井県)に移り、明治の初め頃は富山県、昭和初期には新潟県が主産地となり、現在高級モグサについてはほぼ100%が新潟県で製造されているようです。

また、近年お灸については、素人が使いやすいよう、また熱さを和らげかつお灸の痕が残らないように工夫された間接灸用モグサが販売されるようになりました。 モグサと皮膚との間に空間を取るように工夫したり、粘着性の台座に切艾(きりモグサ)を組み合わせて皮膚に確実に固定出来るようにしたものなどで、現在ではプロの鍼灸師にも利用されています。
粘着性台座を用いた製品(せんねん灸)は昭和51年に発売され、当時はちょっとしたブームになりました。

ヨモギの葉の効用

ヨモギの葉は生薬としても用いられ、「艾葉(がいよう)」と呼ばれます。ヨモギやオオヨモギの葉または枝先を乾燥させたものです。
漢方的には、温裏、止血、止痛の効能があるとされ、食欲不振や冷えによる腹痛、出血、流産の予防などに用いられます。また、浴用剤としても用いられるのはご承知の通りです。
また、民間療法として、生の葉をもんで虫に刺されたときや切り傷につけると殺菌と止血の作用があるとされます。

艾葉が配合される漢方薬としては、芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)があり、 不正出血、冷え症、月経異常、月経過多、痔、痔出血、皮下出血、貧血などに用いられます。