※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。 【5】 「シーグル、今のお前は俺のものだ」 言って、彼を引き寄せる、その唇に唇を押し付ける。彼は抵抗はしなかった。一瞬こちらの腕を掴んだもののすぐにその手は離れて下に落ちる。だからセイネリアは更に深く唇を合わせ直し、彼の口腔内を蹂躙する。 ……けれども、いつもなら応えてくれる筈の彼はいつまで経っても応えてくれない。 舌を絡めとっても、擦りあわせても、唇を合わせても彼はただされるがままで応えてくれない。彼から自分を求めてくれない。 セイネリアは唇を離し、歯を噛みしめる。シーグルの顔を見れば、彼は涙を流したままじっとセイネリアを見ていた。 「……分ってる。全部分ってるんだセイネリア。お前の命には従う、それが最優先だ。俺が選んだのはお前と行く事だ。だがそれでも迷いは棄てられない。俺の為に悲しんでくれた人を見て割り切れはしない。彼らが俺を大切だと思ってくれるその気持ちは斬り捨てたくない。……それも、許してくれないのか?」 それには声に出さず、だめだ、と唇の動きだけで伝えて、セイネリアは腕の中の彼から鎧を剥ぎ取りだした。 「セイネリア……何、を?」 まさかこんなところでコトに及ぶと思っていないのか、今更にそんな事を聞いてくるシーグルにセイネリアは出来るだけ感情を殺した声で言ってやる。 「命令には従うんだろ、なら大人しく抱かれろ」 「待てっ、ここでか? やめろ、外には人がいるんだぞ、帰ってからなら付き合うから今は……」 「あぁそうだな、だから声は抑えろ、喘ぎ声をお前の妻に聞かれたくないだろ?」 「セイネリア?」 こちらの手を掴んで止めようとはしてくるものの、まだシーグルは本気で抵抗はしていない。ただ困惑の瞳を向けてくる彼は、まだこちらが本気だとは思っていないのかもしれない。 「大声を出せば向うの広間まで聞こえるだろうな、聞いて欲しいなら押さえなくてもいいが」 だから本気だと彼に分らせるため、わざと昏い笑みを浮かべて彼の目を見据える。彼の首から声を変えるをネックレスを取って目の前に見せつけ、それから床に落した。 「本気……か? 何を言っているんだ? もしここへ人が入ってきたらどうする気だ?」 当然ながら返された声が違和感のある作った声から彼の声になって、セイネリアは嬉しそうに目を細めた。 「安心しろ、まさかの時の言い訳は考えてある」 「どういうことだ、まっ――っく……うぁ」 やっと腕の中で本気でもがき出した彼を押さえつけて、有無を言わさず強引に装備を剥がしていく。時折曝された肌に歯を立てたり、彼の股間を握ってやれば、抵抗の手が止まって彼が声を押さえているのが分る。 「ちゃんと声を抑えていろ、命令だ。それとももう慣れ過ぎて、喘がずにはいられないような身体になったのか?」 「ん……うぅっ」 殆ど全裸になった彼の後孔に指を入れれば、彼の瞳に涙が浮かんで必死で歯を噛みしめて声を抑えているその顔が見える。前ならばこういう時にはいつも憎しみを込めて睨み返してきた青の瞳は、だがこちらを見た途端悲しそうに細められる。それに心が疼いても感情の抑えが利かない。縋るように自分の腕を掴んで『やめてくれ』と懇願する彼に、セイネリアは何も言わずその尻を掴んで広げ、下肢の熱を押し付ける。 「う、……ぐ、ぅ、ぅ、ぅ」 そのまま、後ろから無理矢理彼の中に自分の猛る肉を突き立てる。僅かしか濡らしも解しもしていないそこはいつも以上にきつくて、それでも強引に最奥まで自分の欲望を彼に埋め込む。 「う、う、う……ぐぅ……」 苦し気な彼の声が聞こえる度に心の疼きを感じても、ここで止める気はもうない。セイネリアは彼の両足を抱えて彼の体を持ち上げ椅子に座った。 「あぁっ……ぐ、ぅぁ……」 自重で更に深くまで達した事で、一瞬彼の口から大き目の声が漏れる。それでも彼は必死に声を押し殺して耐えるから、セイネリアはその耳元に唇を寄せて、耳朶を音を立てて吸ってから囁いた。 「お前の体はすっかり俺に慣れたな。嬉しそうに締め付けて俺を欲しがってる。俺を求める事にお前の体は慣れ過ぎてる」 言いながら片腕だけを離して彼の胸の小さな突起を指で擦れば、びくんと身体を震わせて、またシーグルは一瞬だけ喘ぎ声を漏らした。 「あ、ぅ……ん」 構わず指で嬲るように摘まんで擦ってやれば、シーグルは体を丸めて必死で耐えながら両手で口を塞ぐ。塞いだ口の中で唸りながら、目から涙を流して耐えようとする。――その姿は、まるで彼を遊びで犯していた時の反応のようで、彼が自分を拒絶していたその時の事をセイネリアに思い起こさせる。どれだけ思いを告げてもそれを否定された、その時の感覚と感情が蘇る。 セイネリアは思わず彼の足を離し、その身体を両手で抱きしめて彼の首元に顔を埋めた。 「……シーグル」 愛してる、と言い掛けてセイネリアは唇を噛みしめる。音に出来ない言葉が、行き場もなく頭の中に虚しく響く。 愛しているから、彼が欲しくて。 愛しているから、傍にいて欲しくて。 愛しているから、自分だけを見て欲しい。 愛しているから……彼が自分を愛している事を確かめたい、彼が自分のものであるという確かな実感が欲しい。 それを言葉に出来ない事が、苦しくて――だが今の自分の行動にはそれを言う権利もないと自嘲もする。今の自分は、ただ命令で縛って彼を好きにしているだけだ。最低の卑怯者……そう思われても否定出来ない、それだけの事をしている自覚はある。 何故自分はこんなにも不安なのか、何故こんなに臆病になったのか。 感情が制御しきれなくて、彼を傷つけると分かっていても自分を止められない。もしかしたらそれでも彼が自分を許すのを確認したいのかと、あまりにも愚かすぎる考えが頭をよぎる。自分はそんなに馬鹿だったのかと、自分自身が分らなくなる。 「シーグル……俺には、お前以外に優先すべきものなどない」 自分の想いをその言葉だけに留めて、セイネリアは腕の中の彼を抱きしめる。耐えて身を丸くしているその耳元に、首筋に唇で触れて、目元の涙を舐めとる。 「セイ、ネ、リア……何、がそんなに……」 シーグルが言い掛けたところで、何かあったのか部屋の外でどっと笑い声と拍手が起こった。それで状況を思い出したシーグルの体が緊張し、セイネリアを包む中がきゅうっと収縮した。セイネリアの口元に笑みが浮かぶ、我ながらなんと醜い、最低の笑みだろうと思っても、酷く昏い感情が笑みとして浮かび上がる。 「外が気になるか? ……そうだな、今なら多少は喘いでも聞こえないかもしれないぞ」 言いながらセイネリアはシーグルの足を掴み直し、その身体を浮かせてから落して、同時に下から突き上げた。覆った手の下で悲鳴に近い声を上げたシーグルの首筋を吸い、朱色の跡をつける。それから今度は止める事なく彼を動かして、深く、深く、彼の中を抉って突き上げた。 「う……ぁや、う、う、ぐぅっ」 喘ぎとは到底思えない苦しみだけの声を漏らす彼だが、それでも身体は素直に慣れた感触を受け入れていく。応えてくれなかった彼の唇と違って、彼の中は喜んでセイネリアの欲望を飲み込む、もっと欲しいと強請って肉が纏わりついてくる。ぐちぐちと、肉と肉が液体を纏って絡み合う音が早くなってくる。びくんびくんと彼の身体が突き上げる度に震えて、なお一層セイネリアの肉塊を締め付けてくる。 「う、や、ぁ――」 一際力を入れて突き上げてやれば、その衝撃に彼の手が唇から外れる。だがそれで外に放たれてしまいそうになった声は、口づけたセイネリアの口の中に消える。無理矢理顔を掴まれて苦しそうな彼が、そこで前を爆ぜさせる。ほぼ同時に、セイネリアも彼の中に放った。 腕の中の彼がぐったりと力を無くすのを支え、セイネリアはそのまま彼に深く口づける。抵抗する気力もない彼の舌に舌を絡めれば、僅かに反応した彼が弱弱しくも舌を絡ませて応えてくれる。だからセイネリアは更に深く彼と唇を合わせる、貪るように彼と舌を絡ませる。やがていつものように互いに相手の口腔内を求め合い、もどかし気にまだ繋がっている彼の腰が揺れ始める。 セイネリアはシーグルを持ち上げ、未だつながったままで彼の身体を無理矢理こちらに向かせる。辛そうに歯を噛みしめている彼の顔がこちらをむいてすぐ、唇を押し付け、今度は正面から抱き合うかたちで唇を合わせる。 「ん……ふ……」 舌で舌をくるみ、擦れ合わせ、粘膜を擦り付け合う。とろりとした液体が水音を鳴らし、相手の口内を舌で突きあう。相手を欲しくて、相手をより強く感じたくて、ただ何も考えずに目の前の存在だけを求める。 唇で飽きる事なく求め合いながらもセイネリアが下から彼を突き上げれば、シーグルがこちらに抱きつきながら自ら腰を揺らす。溢れる声は口づけの中で消えて、ただ互いに相手を感じ、快楽を追う。 荒い息が耳に響く。 汗で滑る彼の肌が金属の鎧にペタペタとぶつかって音を鳴らす。セイネリアは彼の足を持ち上げて彼の動きを助けるように浮かせてやる。 「ん、ン……うンッ……ぁ」 シーグルの腕に力が入る。セイネリアを引き寄せるように強く抱きついてきて、合せた彼の舌が震える。それに合わせるように、セイネリアが乱暴ともいえる速さで彼の中を小刻みに強く擦る。 「ふぁ、ぁ……ぁ」 開放と同時に自然と唇が離れても、幸いシーグルはもう大きな声を出せる気力もなく、か細い声を上げながら虚ろな瞳でセイネリアの胸にもたれかかってくる。 それを抱き留めてやってセイネリアは彼の髪を梳きながら、自分の鼻をその中に埋めた。 --------------------------------------------- セイネリアさん不安定って事で、なエロでした。エロさは今ひとつですね…… |