弔いの鐘と秘密の欠片
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。




  【8】



 暗い天井を見つめてから、シーグルは目を閉じる。
 セイネリアにしがみついたまま、歯を食いしばって唸る。

「う、うぁぁ……ぁ、く」

 どれだけ覚悟していても、どれだけ彼を欲しいと思っていても、どうしても入れられる瞬間は嫌悪感が先立つ。自然と体も拒絶を返して緊張に強張る。それでも、奥まで満たされて苦しくて堪らないのに、そこで彼にキスをされれば次第に体が受け入れ出していく。今自分の中にいるのは彼なのだと、彼に求められているのだとそれを自覚して体の熱が苦しさを奪っていく。
 そうしてやっと苦しさに慣れてから目を開ければ、彼がらしくなく不安そうに見ているからシーグルはつい笑ってしまう。だからシーグルは覚悟を決めて、大きく息を吐き出してから彼に言うのだ。

「大丈夫、だ……動いて……いい」

 そうすれば確認のようなキスをされて、中の彼が動きだす。

「あぅっ……ん」

 最初はきつくて仕方ないから、彼の動きに体がつられて腰がずれる。動きながらも楽な体勢を探して自ら体を動かせば、セイネリアは足を抱えていた手を少し緩めてくれる。ゆっくり、ゆっくりとこちらの中を浅く突き上げながら、体を浮かせてくれたり、腰を引いてくれたりしてこちらが動きたい体勢にもっていってくれる。……そういうところに気付いた時はやはり慣れているだけあると思ったものだが、彼の顔を見れば少し苦しそうにみえるから、癪だと思った気分が少し晴れてなんだか安心してしまう。
 自分がただ彼の動きに合わせるだけになると、セイネリアの動きは速くなる。奥まで彼が届くようになって、自分の中がびくびくと震えて彼を締め付けているのが分かる。そうすればすぐに下肢は熱に覆われて、もどかしいような鈍い疼きが体を支配していく。擦られて生まれた快感に震えて、耐えようとして耐えなくてもいいのだと思い直して、かといって思い切り声を上げるのは嫌で、どうしようもなくて彼に縋りつく。その男として羨むような筋肉で覆われた体に抱きつけばそれだけで安心出来る何かがあって、シーグルは必死で腕に力を入れて彼に縋る。

「う、あ、ぁ、ぁ……」

 そうすればセイネリアは本格的に動きを速くして、シーグルもとうとう声が抑えられなくなる。喘いでいるのか悲鳴なのか分らないモノを吐き出して、ただ必死に目の前の男に縋りつく事しか出来ない。彼の動きにただ合わせて、与えられる感覚に翻弄される事しか出来ない。

「ふ、ぁ、ん、ぅ」

 深くを抉られる度に押し出されるように声が上がって、身体の芯を走っていく熱い感覚を感じれば全身にきゅうっと力が入る。腕だけで縋りつくのが足りなくて自由な方の足を彼の腰に絡め、出来るだけ体同士を密着させたがる。そうすれば彼も足を持つ腕に力を入れ、更に腰を上げられて深くを強く突き上げられた。
 擦られて生まれた熱が頭にまで回る。もどかくしてもどかくして溜まっていくだけで解放されない熱を持て余していれば、これ以上はないだろうと思っていたより深くを突かれて、シーグルは悲鳴と共に限界を迎えた。

「あ、あぁぁぁっ」

 身体中に力が入って強張る、全身で彼を締め付ける。びくん、びくんと解放された後の痙攣を抑え込もうとして彼に抱きついている腕に力を入れる。けれどセイネリアは止まらない。これ以上なく締め付けている中を強引に開いて、突いて、擦り上げる。もう止めて欲しいのに、限界を迎えてひくつく中を彼は乱暴に犯してくる。

「あ、だめ、だ。もう、やめ……セイネリアっ」

 この状態で少しも緩まない彼の動きに体の熱が落ち着けなくて、それどころか燻っていた熱がまた身体中を侵食しだして、感じ過ぎてガクガクと体が勝手に震えてしまう。

「だめ、や……」

 とにかくどうにか解放して欲しくて彼に縋りつけば、また唇を塞がれて体の奥にずんと強く突き込まれる。そこで一度止まったかと思えば、また引かれて再び奥を叩く程強く抉られ、そこに吐き出された。

「は、ぅぁ……あぁ……ぁぁ」

 熱い流れが体の中に注がれるのを感じて、ぞくぞくと背筋が震える。同時にまた自分が達してしまった事を感じる。他人の体温を体の深くで受け止めて、吐き出す吐息と共に唇が震えてわなないて言葉が出せない。そんな唇を追いかけるようにまたセイネリアが塞いで来て、そうして彼は抜かないまま手でこちらの股間を握ってきた。

「まっ……て、ん……ぅんっ」

 焦って止めようとしても執拗に追いかけてくる唇からは逃げきれない。顔を倒して深く合わせて、舌同士を強く擦り合わせてきながらセイネリアの手はシーグルの雄を扱き出す。既にもう身体が言う事をきかない状態なのに、セイネリアの手によって強制的にまた熱を呼び起こされる。だからどうにか唇がずれた瞬間にシーグルは叫んだ。

「いい加減に……し、ろっ」

 それには何か言葉で返される事はなく、代わりに今度はセイネリアの口はこちらの胸に下りていく。そうしてすぐに胸の尖りを口で吸ったと思えば、舌で押しつぶし、先端を擦るように舐めてくる。

「あ、うぁ……ん」

 不意打ちのようにそんなところを弄られて、しかも欲望に膨れる雄も彼の手の中で、快感に対して敏感になっている体にはもう逃げ場がない。既に二度吐き出しているせいか濡れているそれは彼の手に擦られて卑猥な音を上げている。くち、くち、と濡れた音が下肢から聞こえて、ぴちゃぴちゃと唾液を絡めて舐める舌の音と混ざる。音でも熱を与えられて、シーグルの頭までもが快感に引きずられ出す。

「あぅ、あぁっ」

 感じるままに声を上げて体を曲げれば、中で彼が膨れていくのが分る。
 どくどくと脈打つ彼の存在を強く感じる。再び与えられるだろう感覚を思い出して体が熱くなる。
 あぁ、こいつ今日は潰すまでやる気だと、薄れる思考の中でうっすらと考えて、それでも今日は最後まで付き合うしかないとシーグルは自分に言い聞かせた。どうせやると決めた段階で分かっていたことではある。

 セイネリアがまた唇を押し付けてくる。
 それを受け止めて唇を合わせれば、体が揺らされて、中の彼が暴れ出した。

「あ、ぁ、ぁ……」

 大きく口を開いて喘ぎながら、シーグルはセイネリアにまた抱きついた。揺れる視界の中で縋りついた厚い筋肉に覆われた体は、どこまでも力強く自分を支えてくれる。けれどその動きが激しさを増せば、自然と唇は離れてシーグルは必死に彼の首に縋りつくしかなくなる。
 耳に聞こえてくるのは、ぎち、ぎち、と揺れる動きに合わせて鳴るベッドの軋む音と彼の少し乱れた息づかいの音。いつの間にか自分の喘ぐ声がそれに混じっている事にシーグルが気づけば、更に彼の動きが速くなって、シーグルは全身で彼にしがみついていた。

「セイ、ネリア……っ」

 今この手で抱きついている男の名を呼べば、届かない唇の代わりに耳元や首に彼の唇が触れてそこを吸われる。いよいよ耐えられなくてぎゅっと彼の体に抱きつけば、彼は上半身を動かすことなく腰だけで小刻みに中を突いてきて、シーグルは声を上げながらも自分の中に膨れ上がる快感がまた弾けた事を知った。

「あ、あ、あ、……あ、はぁ……」

 強すぎる快感が去れば力が抜ける、彼に縋りついていた腕が力を無くして落ちようとする。そうすればセイネリアは片腕でベッドの上に落ちようとする体を受け止めてくれて、最後に数度、深くを犯して中へまた吐き出した。

「ふぅ……ん……ぁ……」

 そこに濡れた感触を感じて、顔を顰めながらもシーグルは背筋を快感に震わせる。ぬめるそこには確かな質量を感じるのに、ひくりと肉が動いても滑って締め付けられていないような感覚がある。体は目一杯開かれている筈なのに滑る彼が動いて締め付けきれない感覚がある。
 それが何か物足りなさを感じてしまって、シーグルの中は彼の肉塊の熱さと確かさを感じたくてひくついて蠢く。そんな自分の体の浅ましい反応が恥ずかしくて、でも彼を感じたくて、半分呆けた頭のまま、また手を伸ばして彼の首に縋りついた。

「シーグル」

 まだ少し息が荒い彼の吐息のような声は、自分の名を呼んだ後に暫く口を開いて何かを言い掛け、そして苦笑に消える。
 そうしてこちらがやはり何も言えずにいれば、彼も何も言わずにキスというより顔のあちこちに唇で触れてくる。その感触は少しくすぐったくて、けれども心地良くて、ただ彼のしたいようにさせていれば、やがてゆっくりと彼が上半身を上げて体が離れていく。シーグルの腕も自然と離れ、けれど代わりにはっきりと目と目が合って、自然、お互いに見つめ合う。

「俺と、ずっと共にいてくれるか?」

 見おろしてくる琥珀の瞳は、いつもの自信に溢れた彼とは違ってどこか不安そうで、だからシーグルは笑って返す。

「当然だろ、それがお前との契約だ」

 そうすれば彼もまた笑って……笑って、けれどそれは苦笑になって、だがシーグルが何かを言う前に彼の顔が下りてくる。
 そうして、また長い口づけが彼から与えられた。




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 エロでした。っていうか今回本気でヤってるだけでした。
 大丈夫か、シーグル。



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