WEB拍手お礼シリーズ22
<子供シーグル編その1>








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 目の前に、ちょこんと座る銀髪の少年を見つめて、セイネリアはその横でにこにこしているフユに尋ねた。
「で、これはどういう事だ?」
「あー、そのっスねぇ、シーグル様がまたヘンな魔法使いに狙われましてぇ、でまぁ本人が派手に抵抗したせいで魔法使いの術が失敗したんでスよね。で、なんかそのせいでシーグル様が見た通り若返ってしまったわけで……まぁその姿で放置しとくのは問題っスから、とりあえず連れてきてみた訳っス」
「ボス、同人的お約束の受が子供になったら……ネタですので、あまり深く考えないでください、との事です」
 カリンに言われて納得(?)したセイネリアは、シーグル(推定年齢10歳程)をじっと見つめる。子供には視線を合わせただけで泣かせる自信があるセイネリアを、子供とはいえシーグルは変わらない深い青の瞳でじっと見つめ返してくる。
「貴方が、ここの責任者か?」
「あぁ、そうだ」
「なら、何故リシェに帰ってはいけないのか説明して貰えないだろうか」
 どうやらシーグルは外見だけでなく、中身の方も年相応に戻ってしまっているらしい。
「今そいつが言った通りだ。本来のお前は成人しているんだが、失敗した魔法に巻き込まれて今の年齢になっている。子供になったお前が家に戻ったら大騒ぎになるのは分かるだろ?」
 相当突拍子もない話だが、少年は信じたらしく、少し青い顔をして考え込んでいる。
「何、戻る方法はこちらで調べてやるから、暫くはここにいればいい」
「貴方は、どうして俺にそこまでしれくれるのだろうか」
 まだ警戒はしているものの素直な疑問の目でこちらを見てくる少年に、セイネリアの口元にはつい笑みが湧いてしまう。
「俺はお前の……友人、だからだ。お前は覚えていないがな」
「それは申し訳ない、では、暫くの間世話になる」
 と、いう事で、シーグル(推定10歳)は黒の剣傭兵団に滞在する事になったのだ……が。
「ボス、くれぐれも言っておきますが、今のシーグル様は体格が子供ですので、どう考えても最後までする事は出来ないと思います」
「たっだでさえ坊やは細かったっスからねぇ、それがこんなにこじんまりしちまったら、そりゃーボスのは無理だと思うっスよ」
「まぁ、やろうと思えば出来ない事はないだろう。きついだろうが、慣らせばどうにかなるさ」
 心配する部下達の忠告に、さらりと返すセイネリア。そこで会話を聞いていたシーグル少年が大真面目な顔で聞いてくる。
「最後までするとか、慣らすとかは何の事だろうか?」
「あぁ、剣の相手だ。お前と俺はよく手合せをしていた」
 それを聞いてシーグルの顔が子供らしく期待に輝き、頬を紅潮させる。
「それは……出来ればぜひお願いしたい。貴方はとても強いのだろう、子供の俺では相手にならないと思うが、もし、頼めるならぜひ貴方の剣を受けさせてくれないだろうか」
 セイネリアは期待と憧れ一杯で見上げてくる青い瞳を、嬉しそうに目を細めて見つめると、その頭に手を置いて銀の髪をかき混ぜるようにして撫ぜた。
「勿論だ」




☆☆お子様物語☆☆ (2/3)※ランダム表示

 襲ってきた魔法使いの術が失敗して、何故か10歳くらいの子供になってしまったシーグルは、黒の剣傭兵団に滞在する事になってしまった。

 平和な傭兵団の中庭。珍しく訓練場にセイネリアが現れたと思ったら、子供を連れていた。それだけでも驚くべき事だったのに、手合せを始めたその光景を見た傭兵団の面々は、自分が何が見間違ったのかと思ってまず目を擦って二度見をし、その後見てはいけないと判断して目をそらした。
 彼らは一様に顔を青ざめさせる。なにせ、首都では知らない者のない、最強の騎士であり、彼に逆らったら死ぬよりおそろしい目に合うといわれているセイネリア・クロッセスが、子供を相手にして笑っているのだ。

「ぐっ」
 足を引っ掛けた事で盛大に転がった少年を見て、セイネリアが近づいていく。
「もうこのくらいにしておけ、足がマトモに動いていないだろ」
 言えば少年は自分で起き上がって、セイネリアの顔を見上げた。
「はい……ありがとうございました」
 その真っ直ぐ過ぎる瞳を見ているだけで、セイネリアは口元の笑みが抑えられなくなって、実は我ながら困っていたのだが。セイネリアはそれで、立ち上がろうとしたシーグルの体をひょいと持ち上げた。
「え、騎士セイネリア?」
 大人であっても軽いシーグルが子供になれば、セイネリアには片手で簡単に持ち上げる事が出来る。
「友人だといったろ、普通にセイネリアでいい」
「あの……おろしてくれないだろうか。自分で歩けるんだが」
「お前の歩く速度に合わせて歩くのが面倒だ、大人しく運ばれろ」
 言えば恥ずかしそうに僅かに顔を赤らめて、シーグルは片腕に座るように抱かれた彼の胸で、落ちないようにセイネリアのマントをぎゅっと掴んだ。
「どこへ行くんだ?」
「お前、頭からドロを被っているからな、まずは体を洗ってやる」
「湯浴みなら、一人で……」
「気にするな、俺も入るついでだ」

   * * * * *

「ボスと子供はどうした?」
 つい先ほどまで訓練場にいたと思った彼らを見失って、カリンは団員の一人に聞いた。
「あー、風呂いくってマスターが連れていきましたけど……あのガキは何もんですか? なんかマスターがやけに機嫌良く抱き上げてつれていきましたけど。まさかマスターの子? いやそのマスターくらいあちこちで相手いるといつか絶対出来るとは……」
「それは気にするな。一時的に預かっているだけの子どもだ」
 団員との会話はそれで止めて、カリンは急いでセイネリアを追う事にした。まだ、最後まで手を出していなければいいと思いながら。
 だが、そうしてセイネリアを探したカリンは、向うから歩いてくるそのセイネリア本人と、その後ろにぴったりくっついて歩くシーグルを見つけて安堵した。
「何を焦っているんだ、カリン」
 意地悪そうな笑みをうかべたセイネリアに、カリンは『何でもありません』と答えたが、その後にじとりと主に抗議する視線を向けた。
「大丈夫だ、ちゃんと慣らすと言ったろ」
 カリンはその言葉で、やはり不安になるのだった。




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 襲ってきた魔法使いの術が失敗して、何故か10歳くらいの子供になってしまったシーグルは、黒の剣傭兵団に滞在する事になってしまった。

 日が傾き、夕飯だ、という言葉を聞いた途端不安そうな顔をしたシーグル少年の頭を、セイネリアの手が撫でる。
「お前は何を食べる? ホットミルクか? 果物くらいは食べられるか? それともケルンの実か? お前が食えない事くらいは知ってる、無理しなくていいから、食えるものを言え」
 するとシーグルは沈んでいた顔を驚きと安堵に変えて、少し頬を紅潮させながらセイネリアを見上げた。
「なら、果物と、パンをほんの少しだけ貰えるだろうか」
「分かった、用意させる」
 少年は安堵したようにため息をつくと、それから満面の笑みをうかべる。
「本当に、貴方は俺の友人だったんだな。実は……正直、少し疑っていたんだ。だが、どうしてあの場にいたのか全く記憶がなかったし、その場にいた時の服装が皆大きくて着替えなくてはならなかったし……」
 少し不安そうに下をむいたシーグルを、セイネリアはまた抱き上げて、座っている自分の膝に乗せた。
「いや、その、何故抱き上げるんだ」
「生憎ウチには子ども用の椅子もテーブルになるものもなくてな。高さ調節の為だ」
「そ、そうか……すまない」
「気にするな」
 そして部屋で食べると言っていたセイネリアの元に食事を持ってきたカリンは、とても嬉しそうなセイネリアの膝にちょこんと乗っているシーグルの姿を見たのだった。

   * * * * *

 時間は更に遅くなって、就寝時間。セイネリアがシーグルを自分の寝室につれてくると、少年はやはり不安そうに見あげてきた。
「悪いがあいている部屋もベッドもないからな、俺のベッドに一緒で我慢しろ」
「その、いいのか?」
「構わん、子供一人増えたところで狭くなる訳でもない」
 そうして、一緒のベッドに入ると、シーグルはセイネリアから少し離れて、それから、実は疲れていたのかすぐに眠ってしまった。
「まったく、子供とはいえ、素直過ぎるだろ」
 よく寝ている事を確認すると、セイネリアはシーグルの体をそっと引き寄せる。そうすればシーグルは無意識なのか、自分から体温を求めるように体を摺り寄せてくる。セイネリアはだから出来るだけ優しく抱いてやって、自分もシーグルの頭に顔を近づけて目を瞑った。
 いつもこうして大人しく抱かれていてくれればいいんだが、と思いながら、子供特有の高い体温を感じて、セイネリアもまた驚く程簡単に眠ってしまった。
 ……ちなみに、部屋もベッドもあいてない、というのは勿論嘘である。



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お子様ネタのその1をその2をやる為更新してみました。

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