WEB拍手お礼シリーズ23
<これも女装?編>








☆☆ 冒険者のお仕事?(1/3)

 ウィアとフェゼントに少し大きな仕事が入ったとかで、彼ら二人が3日程家をあける事になった。
 フェゼントはシーグルの食事の事を最後まで心配していたが、そのシーグル本人が一番力強く送り出した事で、彼らは二人にとっては初の大仕事に出かけたのだった。
 のだが。
 帰ってきた二人の様子はどこかおかしくて、シーグルは疑問に思う。

「どうしたんだ? 仕事は成功だったんLじゃないのか?」
「おーそりゃもうバッチリ、お礼もがっちりがっぽりだったぜー」
 だが、上機嫌のウィアに比べてフェゼントの表情は暗い。
「えぇ、確かに仕事は成功だったんですが」
 途中まで悲しそうにそう言った後、急にフェゼントはシーグルを思い詰めたように見あげてくる。
「私はそんなに女性に見えますか?」
 そこを聞かれるとシーグルも答えるのが難しい。兄を想う弟としてば否定したいところではあるが、シーグルはそういう部分で正直過ぎて、要領が悪すぎた。思わず言葉を詰まらせたシーグルに、またフェゼントはがっくりと肩を落とす。
「ウィア、一体今回の仕事は何だったんだ?」
 原因は仕事の事しか思い浮かばずそう聞けば、満面の笑顔でウィアは答える。
「んーずばり一言で言えば、身代わりお見合いかな」
 ただでさえ表情に乏しいシーグルの表情が固まる。
「フェズがいいとこのお嬢様役で俺が侍女の役な! なんてーかさーお嬢様ってのはってプライド高くて、破談にしたいけど、向こうから断られるのは嫌だって事でさ」
「他にやりようはなかったのか?」
「いやでもさー、向こうの男の好み聞いたらばっちりフェズが当てはまったからさー、そんで声かけてくれたみたいなんだよな」
 シーグルは頭が痛くなってきた。
「いやーおもしろかったぞー。もうフェズ見た途端相手はのぼせ上がっちまってさー」
「ウィア……そもそも兄さんの恋人としてそれでいいのか?」
 聞けばウィアは胸を張って得意げに返す。
「だっから俺が侍女やったんじゃねーか。手ぇ握ろうとしたら足ひっかけたり、間違ってお茶こぼしたりとかしてフェズを守ったんだからなっ」
 何か根本から間違っている気がするが、彼が守れたというならとりあえずそれ以上聞かない事にした。
「しかし、そんなに相手に気に入られたなら、よく揉めないで断れたものだな」
 ウィアがシーグルにむけていい笑顔でサムアップをする。
「あーそれな。『実はウチのお嬢様は叶わぬ想いとは分かりながらも、シルバスピナ家のシーグル様に恋焦がれているのです』っていったからな。流石に向こうもお前と張り合おうとは思わなかったようだぜ!」
 シーグルはそのまま頭を押さえた。


☆☆ 冒険者のお仕事?(2/3)

 ウィアとフェゼントに少し大きな仕事が入ったとかで、彼ら二人は3日程家をあけた。のだが、無事仕事が終わったもののフェゼントの表情は優れなかった。

 重い空気の中、何も考えてないウィアの底抜けに明るい声が響く。
「そういやさー、シーグルは女顔って程じゃないけど細いしさー、仕事で女装とかってしたことないのかー?」
「女装とは違うが、女性のフリをしたことがない訳では……ない」
「おぉおおお、あるのか?! あるんだな?! 何々、何の仕事だったんだよー」
 妙に乗り気なウィアには引くものの、落ち込んでいたフェゼントが少し表情を明るくして聞きたそうにしているのを見てしまえば、シーグルも正直に白状せざる得なかった。
「仕事というか……ファンレーンが昔、女性を馬鹿にしてきた男騎士連中に喧嘩をふっかけた事があるんだ。それで、知り合いの女騎士に声を掛けて、その男騎士連中と模擬戦をする事になったんだが、その人数合わせで女騎士側に入らされた」
「って事は、あーゆー胸元やら足やら腹やら剥き出しの女騎士の恰好したのか?!」
 シーグルは一瞬、ウィアが言っている事が分からな過ぎて固まったが、現在のファンレーンの鎧を思い出して納得した。納得はしたが、頭はまた痛くなった。
「確かに彼女の予備の鎧を貸しては貰ったが……今フェゼントが着けているものとあまり大差はないぞ。そもそも彼女だって当時は騎士団所属だ、鎖帷子に追加装備で、肌が露出するような部分はまずない」
「なんだよー、んじゃ女装って程じゃないじゃん」
「だから、女性のフリをしただけだと言っただろ。当時は俺も今程背がなかったし、細かったから、鎧着て混じってれば女性だって誤魔化せる、とファンレーンに半ば強制的にだな……」
 その時の事を思い出すと少々恥ずかしいと思うものの、ウィア的にはそれはあまり面白くなかったらしい。
「そーゆーのじゃなくってさぁ、もっとこう……例えば、女装して侍女達に混じって噂話を聞いてくるとか、女装して依頼主の恋人と友達になって彼女の普段を探ってくるとか、鉱山で女の子のふりしてステージで歌ってきたりとか、彼女のふりしてペア限定のイベントに出たりとか、大食い大会で女性の部に出る為に女装したりとかだなっ!!」
「……もしかして、それはウィアが今までやった事なのか?」
「おう! ……まぁ、他にも慰問団の女神官が足りないからって女装するのは割とよくやったな」
 得意げに胸を張って言うウィアに対して、シーグルの頭には疑問符が飛び交う。
「ウィアは確か、『かわいい』と言われるのが嫌だったんじゃないのか?」
「そりゃそうだろ! 俺男だし! でも、女装するなら似合う奴がやらねーと気持ち悪いじゃねーか!! 女装ってのは似合う奴がやるもんだ!」
 シーグルはもう深く考えず、これ以上つっこまない事に決めた。



☆☆ 冒険者のお仕事?(3/3)

 ここはアッシセグ、セイネリアの執務室。椅子に座って、机に足を乗せたまま書類に目を通しているセイネリア。その横には書類の整理をしているカリンがいた。
「そういえば、セヴァンがこの間の仕事で女装させられた事を、未だに引きずっているようでした」
「そうなのか、女の恰好をするくらい珍しい事でもないだろう」
「……」
 カリンは一瞬、セイネリアの女装を考えて思考が停止しそうになったが、そういえば彼女の主は子供の頃女の子の恰好をさせられていた、という事を思い出して気を取り直した。
「そういえばボスは、娼館にいた頃は女の子の服を着せられていたのでしたね」
「別にガキの頃の話以外にもあるが」
 一度消した筈の別の怖い想像が浮かび上がりそうになって、カリンは思わず顔を左右に振る。
「どうした?」
「いえ、何でもありません。単にボスくらい身長があると、女性に見せかけるのは難しいのではと少し疑問に思っただけです」
 書類を見ているままだったセイネリアが、そこでカリンの顔を見た。
「腰に長い布を巻いてな、頭からストールを被って顔を隠して、後は少ししゃがんでいれば、暗い裏路地に立っている分には結構引っかかるぞ」
 それでカリンはセイネリアが何をしていたのかはすぐ察した。つまり、客引きしている娼婦のふりをして……。
「声でバレませんでしたか?」
「しゃべらなければいい。目的のヤツがうまくひっかかったら、ノったフリしてブツを握ってやるんだ。それでこのまま握り潰してやろうかと脅迫すれば、大抵の奴は情報でも金でも言いなりだったな」
 娼館育ちで、良くも悪くも娼婦慣れをしている主であれば、その手の騙し演技はそれなりだったのだろうかと彼女も思う。というか、その程度で想像を止めた方が精神衛生上いい為、そこで考えを止めた。
「では、化粧をしたりして完全に女性のフリをした事はないのですね?」
 一応不安になってカリンはついでに聞いてみた。
「それはないな。というか、そこまでやると逆に俺の場合バレるだろ」
「そ、そうですね……」
 ほっとして笑みを返したものの、女装に関する嫌悪感はないようなセイネリアの反応に、少しだけ怖くなったカリンであった。



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娼館育ちをなめてはいけません(==+。

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