WEB拍手お礼シリーズ35 <可愛い?!編> ☆☆可愛いって?☆☆ (1/3)※ランダム表示 ある日、ウィアがお茶の時間で何気なく言った言葉が全ての始まり。 「え? シーグルって可愛いだろ?」 一瞬、その場にいた皆が口を閉ざし、返ってきた沈黙にウィアはきょろきょろと回りを見回した。 「何だよ、俺何かへんな事言ったか?」 「いやそれ身長はおいておいてもにーさんがいったならまだしもウィアだし……」 と、言ったのはラーク。 「そ、そうですね。子供の頃のシーグルは可愛かったですけど、今は可愛いというのとは方向性が違うような……あ、あぁ、その私から見て『可愛い弟』という意味だというなら勿論そうですよ」 と、ウィアの言葉を否定したくないけど同意をしていないというのが分かる言葉を返したのはフェゼント。 「そうですね、純粋過ぎる部分が可愛い、のかもしれません、が……、その、真っ先に出る言葉ではないと」 苦笑しつつやんわりとそう言ったのはロージェンティ。 「アルスオード様は、お美しくて、強くて、立派で、お優しくて……」 延々とシーグルに対する賛美の言葉を綴っているのはナレド。ちなみに、彼は既に10以上の単語を並べているが、勿論ウィアに同意する『可愛い』という言葉は入っていない。 そうして最後に、回りの反応を気まずそうに見ながら、シーグルが困ったように答えた。 「言われた事がないとは言わないが、そうそうに言われる言葉ではない、な」 ウィアはなんだかおもしろくなくて、唇をつんととがらせた。 「なんだよー、シーグルすごい可愛いじゃないか。なんで皆そんな否定的なんかなー」 「いや、ウィアさぁ、それウィアが言うから余計皆固まるんだよ。シーグルより年上だとか、シーグルより強いとか、体大きいとかさ、そういうシーグルより上って部分がある人が言うんだったら分かるけど、ウィアだから……」 「なーんだよ、そりゃ俺は可愛いけど、そういうのとは違う可愛さがシーグルにはあるって言ってんだよっ」 いつも通り、自分が可愛い事はあっさり認めた後でそう力説するウィアに、皆はこれ以上どうすればいいのか分からない、という微妙な顔のまま苦笑する。 「よっし、結構同意するやついるってのを確かめてくるっ」 テーブルを叩いて立ち上がったウィアは、そうして街中へと出かけていったのであった。 「何故そんな事に、ウィアはあそこまでムキになってるんだ?」 「さぁ?」 シーグルとラークが微妙な顔で珍しく互いに顔を見合わせていれば、とても申し訳なさそうに……というか恥ずかしそうに、フェゼントが説明した。 「その……どうもこの間、可愛いは本当に男にとって褒め言葉じゃないのか? 可愛いとかっこいいは両立できないのか、とか大真面目に騒いでいたからその所為かと……」 それから皆の目は一斉にシーグルに向いてから、各自納得の顔をした。 ☆☆可愛いって?☆☆ (2/3)※ランダム表示 ウィアは思った、シーグルは可愛い、と。だが同意してくれる人がいなかった為、ウィアはシーグルの関係者に聞いてみて回る事にした。 ――という事でまずウィアがやってきたのは、騎士団の兵舎。 休日の昼間というのもあって割合そこにいたシーグルの部下達に、ウィアは聞いてみる事にした。 「って事で、シーグルが可愛いと思う人っ」 といってウィアが手を上げてみせたのだが、それに続く者は残念ながらいなかった。 「えー、なんでだよー。シーグルって可愛いだろっ」 不満げにやっぱり唇を尖らせれば、ここのつっこみ役らしいグスとかいうおっさんに、わざわざしゃがんで目線を合わせてから言われた。 「まてまて、唐突に隊長が可愛いかどうかなんて言われても反応出来ないだろ、同意を求めたいなら、まずはお前さんが隊長のどういうところが可愛いか言ってみっといい」 成程、それは一理ある。と思ったウィアは腕を組んで首を傾げて考えた。……ちなみに、そんな姿のお前さんこそを『可愛い』というんじゃないかと思ったのは、その場にいた者全員だったりする。 「シーグルってさ、スレてないじゃん。考え方がまったくヒネてないから、ちょっと捻りの効いた冗談とか簡単に間に受けるし、知らない事教えるとすごい真剣に聞いてお礼言うし……」 「あー……」 今度は同意の声が上がる。 「いやほら、俺だってシーグルといえば、キリっとしたきつめの美形でいつでも背筋ビシっと伸ばしてさー、第一印象はカッコイイとか美人とかきつそうとか……そういう『可愛い』が入り込む余地がないものだと思うんだよ。でもさ、見た感じがそうだからこそ、時折そういう『うわシーグルってスレてないなー』って分かるような態度されるとさ、なんかすっごい『可愛いー』って思っちゃう訳だよ」 ウィアがそう熱弁を振るえば、今度は考え込んで頷く者多数。 「まぁ確かにあの人は、たまにちょっと子供っぽい表情をする事があって、その落差はそれはそれで……見れて得したなーと思う事が」 それには全員で頷く。 「まぁ、俺くらいの歳からすりゃ、そりゃ隊長くらいの歳下を見てりゃ可愛いなと思う事はあって当然だがな」 グスが頭を掻きながら言えば、もっと若めの元気の良さそうな騎士――マニクというらしい――が言う。 「勿論隊長に可愛いなんて言葉は言った事ないけどさ、確かに隊長のあのキリっとした顔がたまにふっと緩んでキョトンって顔したり、笑ってお礼いわれたりとか……そういう顔みるとおぉって思うよな」 更には、隊の中でも割合インテリ系に見えるセリスクという騎士がそれに続けた。 「ふふふマニク、そういうのはギャップモエと言うらしいぞ」 「えぇっ、隊長ってツンデレって奴じゃなかったのか?」 「いやまて、隊長のどこにデレがあるんだ」 なんだか、隊員同士による隊長のモエるところ談義になってしまった彼らを見ながらも、一応多少の同意を得られて納得したウィアは、ここはもういいかと思う事にした。 ☆☆可愛いって?☆☆ (3/3)※ランダム表示 ウィアは思った、シーグルは可愛い、と。だが同意してくれる人がいなかった為、ウィアはシーグルの関係者に聞いてみて回る事にした。 と、いう事があって後日、絶対に同意してくれる人物にあう機会があったウィアは、早速彼に聞いてみる事にした。 「って事で、シーグルって可愛いと思うよな?」 「あぁそうだな」 最初からあっさり認めた相手はセイネリアで、ウィアはやっぱりなとにんまりと笑う。 「なんていうかさ、スレてないからなんでも真面目に聞いてくれてさ……」 「嫌がりながらも、目と口をぎゅっと閉じて耐える顔は相当可愛いぞ」 真顔でそんな事をいう相手の顔を見て、ウィアは少し顔を引き攣らせた。 「普段いつもキリっとしてるのに、たまにすごい柔らかく笑うんだよな」 「泣きながら悔しそうに睨んでくる顔もだな」 ウィアは聞こえてきた言葉にまた軽く唇を引き攣らせた。あの強面で口元だけ嬉しそうに歪めてそういう事を言うと、微妙な変態臭を感じてしまうからなんだか怖い。 「えーと、うん、特にフェズの前だとなんか所作が子供っぽくなるんだよなぁ」 「自分でも耐えきれないという時にはな、顔を必死に振って嫌がるんだ、あれも可愛いと言っていいんだろうな」 ――マズイ、想像しちゃったじゃないか。 ウィアは、ちょっと下半身にくるものを感じて黙った。 そして何故か、セイネリアもそこで黙っていた。相手が相手だからなんだか沈黙がすさまじいプレッシャーで、ウィアはちらっとセイネリアと目を合わせると思わず言う。 「た、確かにそういうシーグルって可愛いんだろな」 「あいつが兄の前だと子供っぽいというのは例えばどういう感じだ?」 同時に言った言葉に、不機嫌そう、というよりタイミングを見誤って気まずくなったセイネリアが軽く舌打ちをする。 なんだか、最強とか言われて恐れられている人間が、シーグルの話だとこういう時に抑えられないとかさ――なんかすごい、この男も可愛いとこあるんじゃないか、なんて事をウィアはその時思ってしまった。 「あー、そりゃ言葉遣いから変わるんだよ。声もちょっと違うかな、話し方からしてさ、なんか子供っぽいというか、柔らかくなってさ、いつもより表情もよく変わるんだ」 「そうか……」 セイネリアが嬉しそうだというのがはっきり分かって、ウィアとしてもこちらまで嬉しくなってしまう。 「いやなんかさ、シーグルの事に関する時のあんたの反応って、結構可愛いよな」 ――その発言後、暫くしてから、セイネリアの笑い声が部屋から響いた。 後日、セイネリアが面白がってカリンにその話をしたところ、彼女は顔を引き攣らせて呟いたらしい。 「小さい外見に似合わず大物ですね」 --------------------------------------------- ウィアは大物です、いろいろと。 |