東京徒歩旅行(2) 〜沖縄居酒屋編〜 その4 大田区・池上「一喜」


「一喜」のママと常連さん(としちゃん)です。


5/30/2002 池上「一喜」

[牛込神楽坂 → 市ヶ谷 → 赤坂 → 六本木 → 五反田 → 戸越公園 → 馬込銀座 → 池上 (晴のち曇)]

# 4-1
GW明けは慢性的に仕事がたまってた上に,悪い天気の日が続いて体調を崩したりもして,慌しい日が続きました。5月31日に関西への出張が入ったので,「東京徒歩旅行(2)」の第四弾は「この日しかない!」と,前日の5月30日の木曜日に実行しました。
池上という見知らぬ街で飲んで,翌朝には大阪の天満橋で仕事の打合せをしているというのも,なかなかオツな話です。
陽が長く,それほど暑くない季節ということで,今回めざす沖縄居酒屋は,神楽坂からの距離も遠い大田区池上の「一喜」(いっき)です(見積り距離は約18km)。下見をする時間はなく,ぶっつけ本番です。

# 4-2
これだけ距離が長いと「急いでもしかたがないし・・・」となり,昼食はなじみの納戸町の「ひろしま」で,大将と語らいながらのんびり天重を食べました。神楽坂から「ひろしま」経由市ヶ谷に向かう街並み(市谷砂土原町,市谷田町,市ヶ谷左内町あたり)は,邸宅もあるけれど,気楽に入ることができるお店もある,ほどほどに賑やかな親しみやすい街です。
浄瑠璃坂を下って外堀を渡ると千代田区に入ってJR市ヶ谷駅。広い堀のおかげで,都心にありながらずいぶん風景が広がって見えます。この日はぼんやりとした天気で,近くのはずの雪印の青い看板までかすんで見えました。

# 4-3
新坂を上がって番町界隈は,大使館もあるビジネス街。麹町には日本テレビがあるのですが,読売系列にしてなぜかあまり存在感がありません。新宿通りから上智大学の裏側を歩いて,たどり着いたのはホテルニューオータニ。ここはやたら存在感があります。
ニューオータニの対面には清水谷公園という小さな公園。大きな碑があると思えば,大久保利通公の哀悼碑。薩摩藩出身,時の内務大臣の大久保公は,明治11年(1878年)に紀尾井坂で金沢藩士によって暗殺されたとのこと。碑の回りでは,メモを取っている地元の中学生の集団に遭遇。その雰囲気は地図にメモを取りながら歩く徒歩旅行と似ていて,妙な親しみを感じました。

# 4-4
公園の奥に長い階段が見えたので,上がって行くと紀尾井町住宅。ここは一般人立入禁止という感じの仰々しさです。しばらく歩いて赤坂プリンスホテルの旧館は昭和5年(1930年)に建てられた英国調の近代建築。40階建ての新館とは好対照の落ち着きがありました。
富士見坂を下って,赤坂見附からは港区です。「グラフィティー」の前を過ぎて,左に折れた一ツ木通りではワゴンセールをやっていました。外国人も目立つ賑やかな通りは,少し暑い昼下がりということもあってアジアを感じさせます。商店街のノボリに「頑張れ,ベイスターズ!」という妙なコピーがあるのですが,近くのTBSが横浜ベイスターズと提携をした関係のようです。

# 4-5
赤坂TBS前をするりと越えて赤坂6丁目,氷川公園で一息ついていると,大きな鞄をもった時計売りのおねえさんが声をかけてきて,「今なら1000円!」。この界隈では,なかなか落ち着くことができません。氷川神社とか,落ち着きのある空間もあったのですが,あたりの建物は仰々しく,歩く人の数はまばらで,やたらタクシーや高級車が多く走っていました。
しばし歩くと六本木交差点。「アマンド」の前には定番のごとく外国人がたむろしていましたが,お店の前にまかれた氷に乗って数人の小学生の女の子が遊んでいるところ,お店の人が出てきて怒られたという一瞬の出来事が印象に残りました。

# 4-6
六本木というと何度か妻と一緒に行った「U.GOTO フローリスト」と「スイートベイジル139」。それと外苑東通りから見る東京タワー。たまに行ったときには変わらない雰囲気で迎えて欲しいものです。
芋洗坂を下って正面には,六本木ヒルズ(六本木6丁目再開発)。すぐそばにはテレビ朝日(今回は坂とテレビ局に縁があります)。ここが完成すると,六本木から麻布十番界隈の核になりそうです。六本木ヒルズの裏手の元麻布3丁目は,仰々しさの極地の超高級住宅地。見かけた歩行者は,宅配便の方と建設業関係の方だけでした。

# 4-7
行く手に野球のバットのように先が膨れた超高層マンションが見えたので,目指して狸坂を上がると「元麻布ヒルズ」という森ビル施工の28階建てのマンション。オープンルームをやっているということで,パンフレットをもらって見たら,150平米が120万円。「妙な価格だなあ・・・」と思ったら,月額の賃料だそうです。いやいや,世の中にはお金持ちがいるものなのですね。
仙台坂上交差点の手前では,一方通行の道でタクシーと高級車が渋滞を作っていました。「安藤記念教会」に良い雰囲気があっても,これでは引き立ちません。超高級住宅街は,散歩には今いち不向きなようです。

# 4-8
南麻布3丁目から絶江坂を下ると,明治通りの新古川橋交差点。橋を渡った白金1丁目には坂がなく,小さな商店や町工場が見えて,ホッと一息です。しかし白金2丁目に入って三光坂を上ると,また高級住宅街。坂のあるところには高級住宅街ありという感じです。
坂の上には聖心女学院があって,目黒通りの日吉坂上交差点までは,白い帽子が可愛い小学生軍団に紛れながら歩きました。
外国人(白人)向けの一戸建て住宅の区画が珍しい白金台3丁目を越えて,クルマが通れないような狭い道を抜けると,ようやく品川区で東五反田4丁目。関東病院の並びの道にはビワが実っていて,つまんで食べると妙に美味しかったです。

# 4-9
午後4時も過ぎて,ようやくJR五反田駅到着。山手線の駅には,サラリーマンとしては普通の生活のリズムがあります。目黒川と山手通りを渡って大崎広小路駅を過ぎると,街並みも急に親しみやすくなります。残念ながら陽は雲に食われてしまいましたが・・・
戸越1丁目と2丁目の境目には,戸越銀座という東西に1.3kmもある大きな商店街があります。地元の方がほとんどだと思われる商店街には不思議なくらい活気があって,一昔前の雰囲気です。私の進行方向(南北)にも,宮前通り,戸越公園通り,ゆたか商店街と1kmを超す商店街の並びがありました。商店街を通るクルマはほとんどなく,散歩も快適です。

# 4-10
西大井を過ぎて大田区に入り,山王から南馬込にかけて歩いていると,「馬込文士村」という看板が時折見かけられました。この界隈は明治から昭和の頃にかけて,多くの作家や出版に関係する方が住んでいたとのことで,最初に目にしたのが蘇峰公園。徳富蘇峰は熊本県出身,明治時代に「国民の友」という雑誌を発行した著名な編集者だそうです。開園は午後5時までで,中には入れませんでした。
蘇峰公園からすぐ,環七通り沿いにまとまった商店街があって,その名も馬込銀座。最寄りの駅(都営浅草線馬込駅)まで0.8kmもあり,そのローカルな佇まいは東京23区内とは思えません。


# 4-11
歩行距離も長くなり,よたよたと南馬込(馬込文士村)を行くと,続くのはどこまでも静かな住宅街。これほど住宅街が続くコースを歩いたのは,初めてかもしれません。葉桜の馬込桜並木は,陽翳りの夕方ということで,妙に暗く感じられました。
貴船坂をかすめて本門寺を着いたときには,あたりはすっかり暗くなっていました。日蓮宗・池上本門寺は,日蓮聖人入滅の地とのこと。丘の上に位置する寺はとても大きく,貫禄があります。山門をくぐって駅のほうへ向かうと,長い石段がありました。何でも戦国大名の加藤清正公が寄進したという謂れのある石段だそうですが,帰りに片道だけ使うというヤツも珍しいことでしょう。

# 4-12
池上「一喜」は,本門寺通り商店街から少し入ったところにありました。到着は7時少し前。まったくの一見がふらりと入ることができるのは,沖縄居酒屋巡りも回を重ねてきた成果でしょう。
うるまガイドによると,「一喜」は平成元年(1989年)創業,座席8〜10席。カウンターのみの小さなお店で,明後日(6月1日),開店16周年を迎えるとのこと。店名は「一度入ると喜びに出会えるお店」を期してとのこと。ご主人(ハツオさん)は大田区の方で,ママ(ヨシコさん)は沖縄中部の具志川出身とのこと。最初の一杯の生ビールは,喉が渇いていたこともあってはじけるような美味しさでした。

# 4-13
食べ物は,暑さから頼んだ「ところてん」と「ヒラヤーチ」という沖縄風お好み焼き。ヒラヤーチは,ニラの味が強くて,チヂミ(韓国風お好み焼き)に似た味わいでした。
飲み物は生ビール2杯に続いて,「久米仙」30度の水割りと,このお店オリジナルのモカハイ。
カウンターには,としちゃんという池上でカラオケ教室の先生をしているかたがひとり。「一喜」があった界隈は,本門寺門前町の赤線だったとの話が出たのですが,「赤線跡を歩く」を調べると,武蔵新田の赤線の業者が進出を試みたことがあるということ。

# 4-14
本門寺は,春のサクラと10月の御会式(おえしき)に賑わうとのこと。御会式とは,日蓮聖人の入滅(10月13日)に会わせた法事で,本門寺ではお通夜の12日に行われ,池上は大賑わいになるとのこと。東急池上線が東武大師線のように参詣を目的に作られたということは,このとき初めて気が付きました。
お店を出たのは10時少し前で,お勘定は3,350円。池上線は3両編成でローカル線の佇まいです。蒲田で京浜東北線に乗り換えて,南浦和は遠いものの乗換えはなしです。良い気分でまどろんでいると,お店から1時間半ほどで帰ることができました。


●歩行距離  20.6km
●時 間     6時間3分  (昼食休憩を除く)

最高気温 (平年) 最低気温 (平年) 湿度
26.2℃ (24.4℃) 18.5℃ (17.1℃) 61%


時間 距離  ポイント 区名 備考
12:12 0.0  牛込神楽坂駅 新宿区 都営大江戸線・大久保通り
12:20/12:55 0.7  納戸町「ひろしま」 新宿区  
13:12 1.8  市ヶ谷駅 千代田区 JR中央線・営団有楽町線・南北線・都営新宿線・外堀通り・靖国通り
13:22 2.6  麹町駅 千代田区 営団有楽町線・新宿通り(R.20)
13:49 4.0  赤坂見附駅 港区 営団銀座線・丸ノ内線・外堀通り・青山通り(R.246)
14:01 4.7  赤坂駅 港区 営団千代田線
14:29/14:42 6.1  六本木駅 港区 営団日比谷線・都営大江戸線・六本木通り・外苑東通り
15:18 8.4  仙台坂上 港区  
15:35 9.2  新古川橋 港区 明治通り・古川
15:58 10.6  日吉坂上 港区 目黒通り
16:20 12.4  五反田駅 品川区 JR山手線・東急池上線・都営浅草線
16:30 12.9  大崎広小路駅 品川区 東急池上線・山手通り
16:45/16:55 13.9  戸越銀座 品川区  
17:02 14.5  戸越公園駅 品川区 東急大井町線
17:20 15.8  西大井駅 品川区 JR横須賀線
17:42 17.2  馬込銀座 大田区 環七通り
18:05 18.4  馬込桜並木 大田区  
18:25/18:38 19.8  本門寺 大田区  
18:50 20.6  池上「一喜」 大田区  
  (20.8)  池上駅 大田区 東急池上線



【Column 04】 なぜか癖になる沖縄料理(その1)

  • 沖縄風お好み焼き「ヒラヤーチ」を初めて食べたのは「一喜」で,「何かわからないけどたのもっかー」と注文しました。その後,ヒラヤーチはすっかり好みの沖縄料理として馴染んでいます。食べ物との出会いのタイミングも面白いものです。
  • 沖縄料理の代表格といえばゴーヤチャンプルでしょうか。チャンプルはいろんな食材を混ぜ合わせて炒める料理で,沖縄居酒屋にはソーミンチャンプル(ソーメン),パパイヤチャンプル,ナーベラチャンプル(ヘチマ)など,各種チャンプルがあります。

  • 素材としては豚と豆腐を多用するのが特徴です。沖縄の豆腐(島豆腐)は,弾力が強くて大豆の風味が濃厚で,炒め物にも崩れません。居酒屋メニューでは,ジーマミ豆腐(ピーナッツを刷り込んだもの),スクガラス豆腐(小魚の塩漬を乗せたもの)あたりが定番です。
  • モズク,アーサ汁,海ぶどう,クーブイリチー(昆布の炒め煮)など,海草類もたくさん登場します。他にもグルクンの唐揚げ,紅芋の天ぷら,島らっきょう,タコライス(タコス+ライス)など,多種多様なのですが,どれをとっても沖縄の匂いがするのが不思議ですね。



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