東京徒歩旅行(2) 〜沖縄居酒屋編〜 その5
葛飾区・金町(水元)「かりゆし」
「かりゆし」で会った常連さん3人組,ナカコさん,クボちゃん,ヒゲケンさんです。
6/28/2002 金町(水元)「かりゆし」
[牛込神楽坂 → 水道橋 → 御徒町 → 浅草 → 曳舟 → 木根川橋 → 立石 → 金町 (曇時々晴)]
-
# 5-1
-
平成14年6月は,ワールドカップ@コリア・ジャパンということで,日本中にサッカーの波が押し寄せました。私も浦和のサッカーパブに行ったりで,いつになく外で飲む機会が多くなりました。梅雨ということもあり,徒歩旅行のタイミングは難かしかったのですが,6月最後の平日(28日の金曜日)は午後から仕事に空きができ,かつ天気もまずまずだったので,「このときしかない!」と実行に至りました。
めざすは,京成線沿線,葛飾区立石の「沖味亭」です。もちろん今回も下見なし,ぶっつけ本番です。立石はこの2月に近くに住む大学時代の友人との待合わせで初めて行ったのですが,5月には仕事(著者宅の訪問),そして今回と,このところ縁が重なる町です。
-
# 5-2
-
「徒歩旅行の昼食は,軽い目のほうが良い」との経験則から,昼食は筑土八幡町の「勝龍軒」の博多ラーメン。味玉入りで替え玉はなし。
江戸時代建立の鳥居がある筑土八幡神社を後目に,狭い路地を縫いながら神田川にかかる隆慶橋へ。ドブ川の上に首都高速がふたをしている情緒のない橋ですが,橋の袂にあるタバコ屋さんのレンガ造りの看板は印象的です。
この界隈は仕事上での付合いのある印刷屋さんがたくさんあって,十年来のなじみです。橋を渡った文京区後楽2丁目の小さな印刷屋さんは,飯田橋再開発のためどんどん無くなっていきました。新たにできた住友不動産のオフィスビルは,浮いた感じが否めません。
-
# 5-3
-
小石川運動場を回りながら,日中友好会館,さらに「小石川後楽園」。ここは旧後楽園球場(現東京ドーム)の西隣りにある特別史跡,特別名勝に指定された水戸徳川家ゆかりの庭園です。
300円を払って散策すると,滝や菖蒲園があったりで,なかなか優雅な気分です。時間のせいかカラスは見当たらず,かわりにハトが腹ばいになってのびていたりしました。ワールドカップに関連してか,外国人(白人)の方がチラホラ見られます。
この手の庭園の残念なところは,門がひとつしか開いていないことです。結局30分弱,およそ1kmの寄り道となりました。
-
# 5-4
-
外堀通りを通って水道橋の交差点まではなじみの道。交差点を渡ると本郷1丁目。忠弥坂というなじみのない坂を上がり,しばらく歩くと本郷給水所公苑という地味ながら和める公園がありました。バラ園の回りのベンチでは,若い学生からおじさんまで,ひとときの休みを楽しんでいました。私も一服して改めてルートを見直しました。
R.17の壱岐坂上交差点から湯島天神までは,高台ながら平たくて歩きやすい道程。湯島天神の近所はラブホテル密集地帯です。中坂を下りると台東区上野1丁目。上野広小路駅から御徒町駅にかけては都心にしてはなじみやすく,ふらりと松坂屋に立ち寄ってみたりしました。
-
# 5-5
-
関西人には難読地名の御徒町(おかちまち)。江戸時代に御徒士組(歩兵隊)の屋敷があったことからの名称とのこと。JR山手線の駅を越えると,ダイヤモンドや紳士服の卸の店,多慶屋という巨大ディスカウントストアなど,何か玄人好みな雰囲気の町並みが続きます。この界隈は碁盤の目状に道があり,裏道を探索してもロスがなく,好都合です。
やがてたどり着いたのは菊屋橋交差点。ここから北に向かうと合羽橋の道具屋街が続きます。東に折れて少し歩くと東京本願寺という東本願寺系統(浄土真宗)の大きな寺がありました。元浅草や西浅草に寺町があることは,今回歩いて初めて気がつきました。
-
# 5-6
-
雷門1丁目まで歩くと,浅草の繁華街。梅雨の合間の金曜日の午後,落ち着いた佇まいながらなかなか賑わっています。雷門の赤い提灯の前には人力車が止まっていて,引き手は茶髪の若いお兄ちゃん。私にとって浅草は,東京No.1の観光地です。
江戸通りを渡ると隅田川(吾妻橋),川向かいにはアサヒビールの金色の魂のモニュメント。川に沿った遊歩道には植栽帯があって,気持ちが和みます。東武線のガードをくぐると,ホームレスさんのテントがたくさん建っていました。都心の川沿いの空が広い空間は,妙な自由さが感じられます。桜橋の下には制服姿の女子高生がふたり。「ハテ?」と思って観察すると,メンソールのタバコを吸っていました。
-
# 5-7
-
歩行者・自転車専用の桜橋を渡ると墨田区。向島2丁目には古い料亭や旅館がいくつか見られました。3丁目,4丁目と進むごとに下町の風情が強くなり,東武曳船駅の西側は鳩の街という赤線跡。いわゆる「墨東」の雰囲気があります。
京成曳船駅のすぐ近くで,京成押上線は明治通りを踏切で渡っていました。私も明治通りを横切って八広新中通りを進むと,学校帰りの中学生や女子高生,お買い物姿のお母さん,小さな印刷所やプレス工場の機械の音,幼稚園の子供の声。平凡な風景のはずなのですが,普段の平日に味わえる雰囲気ではありません。道ばたのネコの姿にもその平凡さが嬉しく思えてしまいました。
-
# 5-8
-
高架で味気ない京成八広駅を過ぎると,荒川の堤防。登って木根川橋の袂で草の上に座って一服。木根川橋は私が高校生の頃にさだまさしさんの歌のタイトルで名を馳せた橋で,その頃一度渡ったことがあり,20数年ぶりです。しかし大きな川の川景色はどこでもそれほどの差はなく,何となく渡り切ってしまいました。
荒川を渡ると葛飾区に入って四ツ木駅。ここも高架の平凡な駅。駅を過ぎてしばらく歩くと「まいろーど四ツ木」という商店街。クルマが通る商店街にしては賑わっていました。枝道にもたくさんお店があるからかもしれません。
-
# 5-9
-
京成立石駅到着は午後5時50分。ここは地上にホームがある橋上駅。駅前の商店街は賑わっていて,良さそうな大衆酒場が何軒もありました。裏道に入って突如現れた「呑んべ横丁」という看板は,何か謂れがありそうだなと思い後で調べると,ここも赤線跡だったそうです。今回の徒歩旅行は,妙に赤線跡と縁があります。
立石「沖味亭」には,開店時間の午後6時ちょうどに到着。「よいタイミングだねー」とお店に入ると,すでに先客が数人居て「ご予約ですか?」との声。何でも今日は貸切りで,一般客は入れないとのこと。これは困ったことになりました。
-
# 5-10
-
王子「あんでぃら」の要領で,改めて出直すことも考えたのですが,日の長い季節でまだ明るかったので,ガイドに葛飾区内でもう一件掲載されている金町の「かりゆし」という沖縄居酒屋まで歩こうとなりました。調べると立石から金町まではそう遠くはないのですが,「かりゆし」は埼玉県(三郷市)との県境も近い水元4丁目にあり,6kmはあります。しかし,坂道はほとんどなさそうです。
迷っている時間はないので,急ぎ足で立石を後にすることになりました。線路沿いに青砥駅まで歩き,環七通りを渡って中川の堤防を歩き,水戸街道(中川大橋)で中川を渡ってJR新金線(貨物線)沿いを歩き・・・ と,脇を閉めての早歩きです。
-
# 5-11
-
JR常磐線を金町駅西側の地下道で横切ったのは6時52分。まだ空は明るいものの,だんだん茜色に変わっていきます。金町駅西から水元に向かう道は,車道,歩道に自転車道が加わっていました。通勤・通学帰りらしい自転車がたくさん私を抜かして走っていきます。この辺りはおそらく,都庁からはいちばん遠い東京23区です。
道は水元3丁目から急に細くなり,どんどん町外れに進んでいく途中,「夢庵」というファミレスの真向かいに「かりゆし」がありました。到着はちょうど夜の帳が下ろされた7時18分。立石からまったく迷わずに来れたのは,とてもラッキーでした。
-
# 5-12
-
お店は,カウンターが4席と板の間にテーブルが5つ。とりあえず,生ビールと「ソーミンチャンプル」を頼んでお店の様子を見てみると,カウンターの中にはお母さんと娘さん,カウンターには私ひとり,テーブルにはグループが2組。奥にステージがあり,三線にマイクとカラオケがありました。この日は金曜日。私の後にも複数のグループのお客さんが入ってきました。
うるまガイドによると,「かりゆし」は平成11年(1999年)創業,座席40席。月例で島唄ライブが行われるとのこと。ご主人は北部の伊是名(いぜな)島出身,お母さんは南部の玉城(たまぐすく)村出身とのこと。「かりゆし」の意味は「めでたいこと,縁起がよいこと」だそうです。
-
# 5-13
-
カウンターにはお客さんが来ず,カウンターの中は料理に忙しくで,入って2時間経っても特に話を膨らませるきっかけがありません。「どうしようかなぁ・・・」と考えた結果,「これはカラオケで唄を歌うしかない!」となり,まず「十九の春」を歌いました。
ステージに近いテーブルの女性(ナカコさん)から拍手をいただいたことから,ようやく話が始まり,形になってきました。沖縄唄を歌う分には問題はなさそうなので,「島唄」,「安里屋ユンタ」,「花」,「豊年音頭」,「ハイサイおじさん」と,合間を開けながらもひとりでカラオケを歌い続けることになりました。「かりゆし」の娘さん(かおりさん)と私の写真は,ナカコさんに撮ってもらいました。
..
-
# 5-14
-
「かりゆし」にはお店のホームページがあり,かおりさんからいただいた名刺にはURLが入っていました。ナカコさんのグループの男性ふたり(クボちゃん,ヒゲケンさん)はお店の三線サークルに通っているとのことで,クボちゃんが三線を持つ姿はサマになっています。
お店を出たのは11時10分頃。お勘定はちょうど3,000円。お店から金町駅は遠く,さすがに歩く気になれず,タクシーに乗ったら980円でした。ガイドでは徒歩15分なのですが,私の足でも20分では着かないと思われます。北千住,日暮里とJRを乗り継いで,南浦和の部屋には午前0時半頃に到着。早速「かりゆし」のホームページのBBSにご挨拶に行きました。
-
●歩行距離 21.6km
●時 間 6時間54分 (昼食休憩を除く)
最高気温 |
(平年) |
最低気温 |
(平年) |
湿度 |
25.0℃ |
(25.9℃) |
16.0℃ |
(19.8℃) |
53% |
時間 |
距離 |
ポイント |
区名 |
備考 |
12:08 |
0.0 |
牛込神楽坂駅 |
新宿区 |
都営大江戸線・大久保通り
|
12:16/12:32 |
0.3 |
筑土八幡町「勝龍軒」 |
新宿区 |
大久保通り
|
12:40 |
0.9 |
隆慶橋 |
新宿区 |
目白通り・神田川 |
12:55/13:24 |
1.4/2.3 |
小石川後楽園 |
文京区 |
|
13:36 |
3.3 |
水道橋駅 |
文京区 |
JR中央線・都営三田線・白山通り・外堀通り |
13:57 |
3.9 |
壱岐坂上 |
文京区 |
本郷通り(R.17) |
14:10 |
4.9 |
湯島天神 |
文京区 |
|
14:20/14:32 |
5.5 |
御徒町駅 |
台東区 |
JR山手線・営団銀座線・日比谷線・都営大江戸線・昭和通り(R.4)・春日通り |
15:00 |
7.1 |
菊屋橋(合羽橋入口) |
台東区 |
浅草通り |
15:17/15:40 |
8.1 |
浅草駅 |
台東区 |
東武伊勢崎線・営団銀座線・都営浅草線・江戸通り・浅草通り・隅田川 |
16:00 |
9.4 |
桜橋東詰 |
墨田区 |
隅田川 |
16:20 |
10.6 |
東武曳船駅 |
墨田区 |
東武伊勢崎線・亀戸線 |
16:34 |
11.4 |
京成曳船駅東 |
墨田区 |
明治通り・京成押上線 |
16:58/17:10 |
12.9 |
木根川橋西詰 |
墨田区 |
荒川 |
17:21 |
13.7 |
四ツ木駅 |
葛飾区 |
京成押上線 |
18:00/18:08 |
15.6 |
立石「沖味亭」 |
葛飾区 |
京成押上線 |
18:22 |
17.1 |
青砥駅東 |
葛飾区 |
環七通り・京成本線・押上線 |
18:36 |
18.4 |
中川大橋 |
葛飾区 |
水戸街道(R.6)・中川 |
18:52 |
19.5 |
金町駅西 |
葛飾区 |
JR常磐線・京成金町線 |
19:18 |
21.6 |
金町(水元)「かりゆし」 |
葛飾区 |
|
|
(23.6) |
金町駅 |
葛飾区 |
JR常磐線・京成金町線 |
-
【Column 05】 島唄・沖縄民謡
-
「かりゆし」にはステージのスペースがあって,定期的に島唄ライブ,琉球舞踊が行われます。三線サークルもあって,沖縄の芸能文化に触れるには良い感じのお店です。
-
島唄というか沖縄民謡というか・・・ これも沖縄居酒屋巡りをしているとあちこちで出会います。沖縄民謡の基本音階(琉球音階)は「ドミファソシ」で「レラ」を欠く五音階です(因みに内地民謡の基本音階(律音階)は「ドレミソラ」で「ファシ」を欠きます)。
-
ヤマトンチュの私の目で見ると,広く知れ渡っているのが「花」と「島唄」,ちょっと沖縄をかじると馴染みになるのが「安里屋ユンタ」と「十九の春」,古典的なもので馴染みやすいのが「安波節」,「てぃんさぐの花」という感じでしょうか。
-
工工四(クークーシー)という楽譜を見ると,一般的な「ドレミファソラシ/ドレミファ」は「合乙老四上中尺/工五六七八」となり,七音階全部が存在します。聴いている分では「七五工」(ファレド)とか,音の連なり方の特徴から沖縄風の音ができるような気がします。
「東京徒歩旅行(2)」ホームに戻る
|