東京徒歩旅行(2) 〜沖縄居酒屋編〜 その6
世田谷区・経堂「残波の風」
「残波の風」のカウンターにて。TVでは阪神−巨人戦をやっていました。
7/23/2002 経堂「残波の風」
[牛込神楽坂 → 若松河田 → 新宿 → 初台 → 笹塚 → 東松原 → 経堂 (晴時々曇り)]
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# 6-1
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平成14年の東京地方の梅雨明けは7月20日の海の日(土曜日)でほぼ平年並み。私は塩原(栃木県)の妻の実家で迎えました。
夏本番ということで,徒歩旅行には不向きな季節。しかし,沖縄居酒屋で飲むにはちょうど良い季節でもあります。そんな7月下旬の徒歩旅行は,「どうせ暑いなら・・・」と,大暑の日,7月23日の火曜日に実行しました。
めざすは,小田急線沿線,世田谷区経堂の「残波の風」です。経堂(きょうどう)には,これまで一度も行ったことがなく,さらに小田急線自体が下北沢−成城学園前間の各駅にはまったくなじみがないという,縁の薄い沿線です。
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# 6-2
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なじみのないところというのも「どんなところだろう?」という好奇心が沸き立つということで,下見はなしのぶっつけ本番です。
昼食は,3月からネット上でも縁がある矢来町のレストラン「ラ・ペ」のランチ(ミックスフライ定食)。「残波の風」は午後7時開店とのことなので,出発時間も遅いめに調整です。コーヒーをおかわりして,ゆったりと時間を過ごすにはちょうどよいお店です。
チーフこと小嶋さんと5月にご一緒した廃村 峰の話などしながら過ごして,「ラ・ペ」を出たのは午後1時45分。お店の外はいきなりの熱波。数十メートルしか離れていない故古今亭志ん朝師匠の家の前を通った時点で,すでに汗がにじみ出ていました。
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# 6-3
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矢来町,南榎町,弁天町あたりの裏路地は坂が多くて静かで,探索にはちょうど良い雰囲気です。ただ,小道ばかりたどっていると行き止まりの箇所もあって,なかなか前に進めないというリスクもあります。
大江戸線(若松河田駅)の開通でさかんに再開発が行われている河田町には,2年前の冬に妻の見舞いで通った東京女子医大病院があります。そのとき気に入っていたレトロなレストラン「門」は,取り壊されて更地になっていました。暑いこともあるので,女子医大病院の中央病棟に正面から入って,東病棟のほうへ抜けました。ひとときの涼しさは快感です。
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# 6-4
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1年少しぶりに曙橋の商店街を歩き,右に折れて坂を上がると市谷台町。さらに富久町,四谷4丁目と,裏道には人しか通れない階段の道がたくさんあって,個人的に好みな道が続きます。
富久町西の交差点を渡ると新宿1丁目。花園公園の辺りにはまだ平凡な街並みです。新宿の喧騒の東の端は,新宿2丁目の太宗寺辺りからでしょうか。信州高遠藩内藤氏ゆかりのこのお寺には,大きな銅製の地蔵菩薩の鋳造像があり,都庁のほうを向いて座り込んでいました。いただいたパンフレットによると,大宗寺の辺りが甲州街道の内藤新宿(宿場町)の中心だったようです。
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# 6-5
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新宿2丁目はオカマバーが有名ですが,この時間に仲通りを横切ってもピンとはきません。「シャインマート」も普通のコンビニに見えます。逆に古めかしい質屋の看板や郵便局は,昼だから気がついた感じです。続く新宿3丁目は,炭火焼肉「長春館」,熊本ラーメン「桂花」となじみのお店が続き,伊勢丹前(明治通り,新宿追分交差点)に到着。
伊勢丹からアルタまではいわずと知れた雑踏の中心地。猛暑の中でもここはすごい数の人が歩いています。アルタの前から見えるビルの温度表示は36度。我れながらよく歩き続けているものです。JR線は駅北の地下道(角筈ガード)で東口から西口に抜けました。
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# 6-6
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新宿西口といえば高層ビル群。最初にたどり着いたには安田海上火災改め損保ジャパン本社ビル。隣りはフリーマーケットでなじみのある新宿野村ビル。南に進路をとって新宿三井ビル。隣りが京王プラザホテル。普段,並びを覚えるのが苦手な高層ビル群ですが,線としてたどれば,それぞれに個性的なビルに見えるから不思議です。
西に進路を取ると東京都庁。地下に都庁前駅があるのは,思えば当り前。都庁を過ぎると新宿中央公園の緑。正面の水の流れの「新宿ナイアガラの滝」は何か白々しい。公園に入って,あちこちにあるホームレスさんのテントは対照的にとてもリアルです。
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# 6-7
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この公園あたりが新宿の喧騒の西の端と考えてよいでしょう。大宗寺(東の端)から1.6km,寄り道なしで35分かかりました。
公園を過ぎると十二社温泉がある西新宿4丁目。この辺りから西新宿3丁目にかけては,普通の街並みも残っていますが,いつ再開発に波が押し寄せてきても不思議ではありません。反対側には,威圧するようにNTT東日本本社ビルと東京オペラシティービルがそびえています。
高層ビルは飽きたので,初台交差点で山手通りと甲州街道を渡ると,玉川上水旧水路緑道をたどることにしました。ここから渋谷区です。この緑道は初台から幡ヶ谷,笹塚と京王線(甲州街道)の南側に3km近く続いていて,今回のルートには好都合です。
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# 6-8
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幡ヶ谷には平成元年に北海道で知り合った友達(高橋さん)の家があり,3月にはこの緑道で花見をしています。また,幡ヶ谷を過ぎてしばらく行った緑道沿いの消防試験センターには,平成5年に危険物取扱者の国家試験を受けに出かけたことがあります。なじみの緑道ということで気分的に余裕があり,幡ヶ谷近辺は,時間調整を兼ねてベンチに座ってケータイのメールを打ったりしました。
世田谷区(北沢)に入ったあたりでなじみはなくなり,冒険の始まりです。笹塚駅近くで,ずっと暗渠だった玉川上水が顔を出しました。歴史環境保存区域とのことで,柵の中の不自由な自然ながらも,オシロイバナの赤色やノカンゾウの黄色は目を楽しませてくれました。
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# 6-9
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笹塚駅到着は午後5時15分。この時はまだ余裕があったのですが,じわじわ暑さが堪えてきたのか,再び世田谷区(大原)に入ったあたりからだんだん頭がぼんやりしてきました。陽が翳ったこともあり,なじみのない裏路地は迷路のようです。
陽翳り,散在する木造の廃屋,コンクリートの塀,細くて曲がりくねった裏路地・・・ 人気も少なく,ひたすら高級っぽい住宅ばかりが続く街並みからは,何か廃墟に似た匂いが感じられました。
やがてたどり着いたのは京王井ノ頭線の東松原駅。鉄道の駅近くには人気もお店もあって,オアシスのようです。
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# 6-10
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東松原駅からの賑わいがなくなった松原6丁目では,ついに方向感覚が麻痺してしまい,歩いても歩いても松原6丁目から抜け出せないという状態に陥りました。さすがに見知らぬ裏路地を探索する余裕は消え去り,多少クルマが通っていてもはっきりと方角がわかる道が良いとなりました。しかし,意外にこの界隈はクルマが多く通る道がなく,赤堤2丁目にはかなり大きな畑がありました。
かなり時間をロスして東急世田谷線の松原駅に着いたのは6時半過ぎ。この線は,電車を見るのも初めてというなじみの薄さです。2両編成のカラフルな電車が時折発着するこの駅には駅員が居なかったので,ひとときホームのベンチに座ってクールダウンしました。
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# 6-11
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相当な疲れを引きずりながら,小田急線経堂駅北側の商店街(すずらん通り)に到着したのは7時5分前。経堂は,下北沢と成城学園前(ともに急行停車駅)のほぼ中間の準急(多摩急行)停車駅。初めてということもあるのですが,何かイメージを掴みにくい街です。
小田急線の開通は昭和2年。経堂の歴史は小田急線とともにという感じでしょうか。小田急線では複々線化の工事をしている様子です。
「残波の風」は商店街のはずれのほうにあり,お店に着いたときにちょうど看板に明かりが灯りました。お店に入って,まずは生ビールを一杯。暑さの中,歩き疲れた体には,染み入るような美味さです。
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# 6-12
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うるまガイドによると,「残波の風」は平成12年(2000年)創業(後で奥さんに尋ねてみたところ,平成10年(1998年)開業らしいです),座席は13席の若いご夫婦が切り盛りする小さな居酒屋。ご主人(宮里敏也さん)は中部の読谷(よみたん)村出身で,屋号の「残波の風」は,読谷村にある景勝地の残波(ざんぱ)岬と読谷を舞台とした大河ドラマ「琉球の風」に由来するとのこと。
今回の注文は,冷しトマトと「ミミガー」,あと生ビールの追加と,泡盛「残波」。「残波」にはザンシロ(透明の瓶,25度,フルーティーな香り)とザンクロ(黒い瓶,30度,泥臭い泡盛)の2種類があるのですが,この日の気分と値段の安さからザンクロを頼みました。
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# 6-13
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私のすぐ後に入ってきた常連さんと奥さんの会話には,横から声をかけることができる雰囲気はありません。1時間半ほど過ぎ,「どうしようかなぁ・・・」と考えた結果,オリオンビールを2本頼み,1本をご主人に差し上げるという形で,乾杯に漕ぎつけました。
「あなり沖縄くさくないね」とちょっと意地悪な質問に,ご主人は「常連さんの実情にあわせると,だんだん沖縄の色が薄くなった」と答えてくれました。見直すと,看板のサブタイトルは「沖縄居酒屋」ではなく「小さな居酒屋」となっています。「経堂ってどんな街ですか?」との問いに,ご主人の返答は「通り過ぎる街」。なぜか妙に納得する私でありました。
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# 6-14
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「残波の風」を出たのは9時少し過ぎ。お勘定は3,400円。お店から経堂駅までは歩いて5分ほど。
今一つ飲み足らないので,小田急線は下りの電車に乗って成城学園前で降りて,「東京徒歩旅行(1)」で立ち寄ったスナック「かおる」に3年近くぶりに足を運びました。「かおる」にはママと徒歩旅行でもお会いして手袋をいただいた小泉さんのふたりだけ。再会を祝して乾杯して,カラオケを3曲歌ったのですが,何を歌ったかの記憶は飛んでいました。
それでも南浦和駅には,終電の3本前(午前0時半頃)には帰っていたということで,疲れながらも気はしっかりしていたらしいです。
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●歩行距離 16.8km
●時 間 5時間28分 (昼食休憩を除く)
最高気温 |
(平年) |
最低気温 |
(平年) |
湿度 |
33.6℃ |
(30.0℃) |
26.6℃ |
(23.4℃) |
53% |
時間 |
距離 |
ポイント |
区名 |
備考 |
12:08 |
0.0 |
牛込神楽坂駅 |
新宿区 |
都営大江戸線・大久保通り
|
12:15/13:45 |
0.5 |
矢来町「ラ・ペ」 |
新宿区 |
|
14:02 |
1.6 |
牛込柳町駅 |
新宿区 |
都営大江戸線・外苑東通り・大久保通り |
14:15 |
2.4 |
若松河田駅 |
新宿区 |
都営大江戸線・大久保通り |
14:30 |
3.2 |
曙橋駅北 |
新宿区 |
都営新宿線・靖国通り |
14:49 |
4.4 |
富久町西 |
新宿区 |
靖国通り・外苑西通り |
15:20 |
5.6 |
新宿3丁目 |
新宿区 |
営団丸ノ内線・都営新宿線・明治通り・新宿通り |
15:25 |
6.1 |
新宿駅 |
新宿区 |
JR山手線・中央線・埼京線・営団丸ノ内線・都営新宿線・大江戸線 小田急線・京王線・西武新宿線・青梅街道・甲州街道(R.20) |
15:52 |
7.5 |
十二社温泉(西新宿4丁目) |
新宿区 |
|
16:02/16:18 |
8.4 |
初台駅 |
渋谷区 |
京王線・甲州街道(R.20)・山手通り |
16:48 |
9.6 |
幡ヶ谷駅南 |
渋谷区 |
京王線・甲州街道(R.20) |
17:15 |
11.1 |
笹塚駅 |
渋谷区 |
京王線・甲州街道(R.20) |
17:38 |
12.0 |
羽根木南 |
世田谷区 |
環七通り |
17:50/18:00 |
13.0 |
東松原駅 |
世田谷区 |
京王井の頭線 |
18:15 |
13.6 |
羽根木公園(松原6丁目) |
世田谷区 |
|
18:32/18:40 |
15.1 |
松原駅 |
世田谷区 |
東急世田谷線 |
18:57 |
16.4 |
経堂駅北 |
世田谷区 |
小田急線 |
19:06 |
16.8 |
経堂「残波の風」 |
世田谷区 |
|
|
(17.2) |
経堂駅 |
世田谷区 |
小田急線 |
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【Column 06】 なぜか癖になる沖縄料理(その2 豚・ポーク編)
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「残波の風」で注文したミミガーとは,豚の耳の皮を茹でたものです。「泣き声以外は全部食べる」といわれるほど,沖縄において豚は食卓に浸透しています。ポークランチョンミート(豚のくず肉をミンチにして固めたもの)の缶詰も豚ですし・・・
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豚の居酒屋メニューとしては,ミミガーのほか,足ティビチ(豚足の煮込み),ラフティー(バラ肉=三枚肉の角煮),スーチカー(バラ肉の塩着けの炒め物),ソーキ(骨付きバラ肉=スペアリブの煮込み),中身汁(内臓の入った澄まし汁)あたりが定番です。
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ポークランチョンミート(通称ポーク)の定番メニューといえば,やっぱり「ボーク玉子」。ポークと卵をフライパンで焼いたものです。ポークの缶詰は米軍の進駐に由来するもので,よく出回っているのは「TULIP」(デンマーク製)と「SPAM」(アメリカ製)です。
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ゴーヤチャンプルの具は,ゴーヤのほか,豚肉,ポーク,卵,豆腐,天ぷらなどですが,豚肉を使うかポークを使うかでかなり味が変わります。お店ごとにそれぞれの味があるのが沖縄居酒屋の面白いところです。
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