ここから先は:「トラッキー」さんの物語です

ガンガンに鳴り響いていたロックが消えると、彼は窓からにょきっと顔を出した。
相変わらずロクデナシっぽいおちゃらけた格好をしている。

「合コンがどうとかっていってただろ?」
「へぇ…めずしいじゃん?何?たまってんの?」

浩二は少し楽しそうな口調でにやにやとこちらを見ている。

「悪いかよ。」
「いや、人数多いほうが助かるけど。」

彼は意味ありげにこちらを物色している。
僕は不快感を隠しきれずにむっとする。

「こないだみたいなのは勘弁な。」
「こないだ?」
「お前、俺の女のダチ、ヤリ逃げしたろ?あれ、俺が叱られたんすけど。」

僕は少し前のことを思い出す。
合コンで知り合った馬鹿そうな女をホテルに連れ込んだはいいが、終わった後でしつこく付きまとわれた。
たぶん僕の見る目がなかったのだと思う。
化粧落とすと結構地味な顔の女で、意外と遊んでないのか初心そうな感じがした。
しまったかな、とは思ったが折角だからやらせていただいた。
確かその日はすごくイライラして堪りまくっていたから、かなりきついことまでしたようだった。
終わったらすっかり彼女は浸りきっていて、冷たい僕の態度に焦れた。
趣味とか何をしているのかとか、彼女は口うるさくたくさんの質問で僕を責め立てる。
僕はすっかり冷めてしまって鬱になった。
メールもがんがんきたし、電話も何度もしつこくなった。
最終的に「お前うぜぇよ。」とはっきりいってやるとヒステリックに泣き出して思いっきり頬を殴られた。

「あれは…お互い遊びだって割り切ってたつもりだ。」
「真面目そうな顔して、淡白だもんな。おお恐ッ」
「お前にいわれたくねぇ。」

相当遊んでいるはずの浩二にいわれると少し癇に障る。

「俺は女には優しいの。まあ、価値観いろいろだけど、本物の女と恋愛したこともないくせに恋だの愛だの滑稽だぜ?土いじりだけが生きがいの小説家さん。」
「むかつく。」

こんなアホそうな男にいわれると非常に腹が立つ。
図星なだけにぐさりと胸に突き刺さる。

「まあ、連絡取っとくから、たぶん8時ぐらいからになると思うぜ?」

彼はそういうとささっと部屋の中に消えていった。
腕時計を見てみる。
8時まではまだだいぶ時間がありそうだ。
さて、どうしようか。


  1. さて、どうしようか。
    (この分岐より先「雅」さんの物語です。)

  2. いったん部屋に帰った、が。
    (この分岐より先「みぃや」さんの物語です。)


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